猫の出血が止まらないときの対処|正しい圧迫のしかたと、縛ってはいけない理由
出血しているときに家庭でできることは、清潔な布やガーゼを出血している場所に直接あて、しっかり押さえ続けることだけです。米国獣医師会(AVMA)の飼い主向け資料は、最低3分は押さえたままにして、止まったかどうかを確認するために途中で外さないこと、そして血が染みてきても当てた布は剥がさず、その上に重ねることを示しています。
そして、紐やゴムで傷の心臓側をきつく縛る方法(緊縛止血)は行わないでください。獣医学の標準的な推奨とは逆方向の処置です。この記事では、押さえ方の手順、縛ってはいけない理由、出血が少なくても受診が必要になる場合、そして怪我がないのに出血する場合を順に説明します。
鮮やかな赤い血が拍動して噴き出している場合、歯茎や舌が白い・灰色っぽい場合、体が冷たい・呼吸が速い・ぐったりして反応が鈍い場合は、押さえながらすぐ動物病院に電話してください。急な大量出血で血液量のおよそ3分の1を失うとショックと死につながるとされ、体の小さい猫ではその絶対量も小さくなります。
紐・ゴム・輪ゴム・ヘアゴム・針金などで傷の心臓側をきつく縛らないでください。獣医学の標準は直接圧迫と圧迫包帯で、重度の動脈性出血であっても細い止血帯は勧められていません。縛る道具を探している時間が、そのまま受診の遅れになります。
咬まれた場合、何かが刺さっている場合、殺鼠剤に触れた可能性がある場合は、出血が少なくても・出血がなくても受診の対象です。理由はこの記事の後半で説明します。
まず確認すること
押さえながらで構いません。次の6つを頭に入れて、そのまま動物病院に電話してください。分からないことは「分からない」と伝えて構いません。
- どこから、いくつ出血しているか(傷が複数あることは重要な情報です)
- 血の色と出方(鮮やかな赤で心拍に合わせて噴き出すか、暗い色でじわじわ広がるか)
- 何が起きたか(爪切り、ケンカ、落下、車、ガラス、咬まれた、不明 など)
- いつ始まったか(分からなければ「最後に普段どおりだった時刻」と「気づいた時刻」)
- 猫の体重・年齢、持病、飲んでいる薬
- 今の様子(歯茎の色、呼吸の速さ、意識、体が冷たくないか)
「拍動して噴き出す」と「暗い色でにじむ」
獣医学の標準的なリファレンスであるMerck Veterinary Manualは、動脈からの出血を「拍動する(pulsating)」、静脈からの出血を「暗い色でにじむ(dark, oozing)」と対比して記載しています。家庭での手がかりとしては、鮮やかな赤い血が心拍に合わせてビュッと出るか、暗い色の血がじわじわ広がるかという違いになります。
同書は、拍動する動脈性の出血は指による直接圧迫または圧迫包帯で制御すべきとしています。四肢からの静脈性出血については、押さえたままその足を心臓より高い位置にすることが挙げられています。
ただし、見分けること自体が目的ではありません。動脈性が疑われる時点で、押さえながらすぐに連絡する対象です。判断に時間を使わないでください。
見えている出血がすべてとは限らない
Merck Veterinary Manualの飼い主向けの解説は、出血は目に見える場合もあれば体の中で起きていて見えない場合もあると記載しています。飼い主が気づける所見として、歯茎の蒼白、脱力や元気の消失、心拍が速いことが挙げられています。
床に落ちている血の量が少なくても、胸やお腹の中で出血していることがあります。強い力が加わった後(車、高所からの落下、大型の動物に咬まれた)は、外に出ている血の量で重症度を判断しないでください。
すぐ動物病院へ相談すべきサイン
次のどれか一つでも当てはまれば、押さえながら動物病院へ電話してください。
- 鮮やかな赤い血が拍動して噴き出す(動脈性が疑われます)
- 押さえても出血が止まらない、または一度止まってもすぐ繰り返す
- 歯茎や舌が白い・灰色っぽい、体が冷たい、ぐったりして反応が鈍い(ショックを疑う所見)
- 呼吸が速い・浅い・苦しそう(胸の中での出血や胸部の損傷の可能性)
- 咬まれた、または咬まれた可能性がある(穴が小さくても、出血が少なくても対象です)
- 何かが刺さっている、貫通したように見える(抜かずに受診してください)
- 胸やお腹の傷、あるいは車・高所からの落下など強い力が加わった後の出血
- 複数の場所から同時に出血する、体のあちこちにあざができる、鼻血が出る、黒いタール状の便が出る、小さな傷からの出血が長引く(血が固まりにくくなっている可能性)
- 殺鼠剤を置いてある場所に入った、殺鼠剤やネズミを口にした可能性がある(出血がなくても対象です)
- 外に出る猫・保護したばかりの猫で、原因の分からない元気消失に鼻血や呼吸の苦しさが加わっている
- 妊娠中・出産後、あるいは手術のあとの出血
- 口の中からの出血で、量が多い・繰り返す・呼吸が苦しそう
出血を押さえる|直接圧迫の手順
ここに書くのは治療ではありません。動物病院に着くまでに、これ以上失血させないための一時的な処置です。AVMAは「応急処置は獣医療の代わりにはならない」と明記しています。
使う材料は特別なものでなくて構いません。Merck Veterinary Manualは、長い布やガーゼでよく、ハンドタオルやウォッシュクロスでも十分だとしています。
いちばん多い失敗は、3分たっていないのに「止まったかな」とガーゼを外して覗いてしまうことです。できかけた血の塊が壊れて、振り出しに戻ります。染みてきたときも同じで、取り替えずに上から重ねてください。
- 清潔なガーゼ・ハンドタオル・ウォッシュクロスなどを、出血している場所に直接あてる
- 手のひらか指で、しっかりと押さえる
- 最低3分は押さえたままにする。止まったかどうかを確認するために途中で外さない
- 血が染みてきても、当てた布は剥がさず、その上に新しい布を重ねる
- 四肢からの暗い色のにじむような出血なら、押さえたままその足を心臓より高い位置にする
- 押さえながら動物病院へ電話し、出血している部位・出血の勢い・いつからかを伝える
「何分押さえても止まらなければ受診」という数値の目安は、今回の調査では一次資料で確認できませんでした。この記事では時間の線引きを示しません。押さえても止まらない、あるいは止まってもすぐ繰り返す時点で受診の対象と考えてください。拍動して噴き出しているなら、時間を測る前に電話してください。
けがをした猫は、普段おとなしくても痛みと恐怖で予測がつかなくなります。AVMAは、けがをした動物を抱きしめようとしないこと、顔を口に近づけないことを挙げています。厚手のタオル越しに扱い、噛みそうなら無理をしないでください。押さえることより、飼い主が噛まれずに病院へ着くことのほうが優先されます。
「縛って止める」は標準の逆|家庭で止血帯を使わない理由
出血が止まらないときに、紐・ゴム・輪ゴム・ヘアゴム・針金などで傷の心臓側をきつく縛る方法が語られることがあります。これは行わないでください。現在の獣医学の標準は、あくまで直接圧迫と圧迫包帯です。
Merck Veterinary Manualの創傷初期管理の項は、重度の動脈性出血の場合であっても、止血帯ではなく空気カフや圧迫ラップを使うべきだとしています。理由も併記されていて、細い止血帯に伴いうる神経や血管の合併症を避けるためだと説明されています。つまり「細いもので強く縛る」というやり方は、推奨されている方向とちょうど逆です。
止血帯そのものが完全に否定されているわけではありませんが、その位置づけは限定的です。同書は、使うのは四肢や尾に限られること、圧迫包帯で出血を制御できなかったときの手段であること、そして5〜10分ごとに緩めて先の部分に血を通し、2分後に締め直すという管理が必要だとしています。移動中の車内で飼い主が安全に行える種類の処置ではありません。
- 細く強く縛ると、神経や血管の合併症を伴うことがあるとされています
- 装着が長引くと血流が途絶えることで筋肉が壊れる状態(横紋筋融解)、血管の損傷、末梢神経の障害が起こりうるとされています
- その結果として四肢の永久的な損傷や喪失、急性腎障害につながりうると記載されています
- 装着自体が強い痛みを伴います
- 人用の止血帯(軍用のものを含む)は、動物の円錐形の肢では先のほうへずり落ちてしまい、有効に働かないとされています
「昔は縛ると教わった」という方は少なくありません。現在は勧められていません。押さえても止まらないなら、押さえたまま病院へ向かうことが正しい行動です。縛るための道具を探している時間は、そのまま受診の遅れになります。
出血が少なくても受診が必要なとき|咬傷は「氷山の一角」
咬まれた傷は、出血の量では判断できません。Journal of Feline Medicine and Surgeryに掲載された、犬に咬まれた猫72例の後ろ向き研究は、目に見える皮膚の傷は、その下の皮下組織やさらに深い部分の損傷の程度を反映しないことが多く、しばしば「氷山の一角」と呼ばれると述べています。
Merck Veterinary Manualも同様に、表面には小さな刺し傷や打撲しか見えなくても、肋骨が折れていたり内臓が重度に損傷していることがあると記載しています。咬傷は損傷の範囲を確定するために、外科的に傷を延長して十分に中を調べる必要があるとされています。
先の72例の研究では、治療を受けた68頭のうち32%が壊死組織を取り除く外科処置を要し、18%が開腹または開胸に至っています。生存して退院したのは72頭中57頭(79%)で、21%が死亡または安楽死となりました。「穴が小さくて血もすぐ止まった」は、様子を見てよい理由になりません。
猫同士のケンカによる咬傷は、数日後に腫れとして現れる
猫の咬傷は感染しやすく、Merck Veterinary Manualは膿瘍として扱い、培養・壊死組織の除去・抗菌薬・排膿を行うものだとしています。汚染があるため、傷を完全に閉じて縫うことは通常勧められないとも記載されています。
外に出る猫や多頭飼育では、ケンカの直後は小さな穴にしか見えず、数日たってから腫れや発熱として現れることがあります。受診の判断を、その場の出血量だけで行わないでください。
「そのうち治る」が猫では成り立ちにくい
Journal of Feline Medicine and Surgeryの総説は、猫の皮膚の傷は犬と治り方が異なり、肉芽組織の形成が乏しく、上皮でおおわれていかないこと(pseudohealing)があると述べています。傷の底が肉芽形成に失敗すると、大きな傷が上皮化も収縮もしないまま治らないことがあるとされています。
「小さいから」「自然に治るだろう」と自宅で経過を見る判断は、猫では特に成り立ちにくいということです。
何かが刺さっているとき
刺さっている物は抜かないでください。Merck Veterinary Manualは、体に刺さった異物(枝、矢など)は搬送の間そのままにしておくべきだとし、動かないように固定することを示しています。長いものについては、AVMAの資料では体外に7〜15cmほど残して切ったうえで受診するとされています。
抜いてはいけない理由は2つあります。刺さっている物が出血を塞いでいることがあり、抜くと出血が一気に増えること。そして抜くときに深い部分の損傷が広がることです。無理に引っ張らず、動かないように支えるだけにしてください。
怪我がないのに出血する|血が固まりにくくなっている場合
出血が「けが」ではなく、血が固まらないことによって起きていることがあります。Merck Veterinary Manualの飼い主向けの解説は、飼い主が気づく所見として歯茎や皮膚のあざ、鼻出血、黒いタール状の便、けがのあとに出血が長引くことを挙げています。重い場合には関節の中や体腔内への出血、大きな血腫が生じるとされています。
原因として、抗凝血性の殺鼠剤、肝臓の病気、免疫が関わる血小板の減少、腫瘍、感染症、薬剤、DIC、そして血友病Aのような生まれつきの凝固因子の欠損が挙げられています。同ページには「殺鼠剤への曝露が疑われる場合は、すぐに獣医師の診察を受けてください」と明記されています。
殺鼠剤は「数日後に出る」ことが重要
抗凝血性の殺鼠剤で見落とされやすいのは、症状が出るまでに時間差があることです。MSD Veterinary Manualは、凝固の検査値が悪くなるのは摂取から2〜5日遅れ、出血が臨床的に明らかになるのは通常3〜7日後だと記載しています。それまでは見た目が正常なことがあります。
つまり「食べたかもしれないけれど元気だから」は、受診しない理由になりません。元気に見える期間があること自体が、この中毒の特徴です。
| 摂取からの時間 | 起きていること |
|---|---|
| 直後〜数日 | 見た目は正常なことがある。ここで受診できると有利 |
| 2〜5日 | 血液を固める働きの検査値が悪くなってくる |
| 3〜7日 | 出血が明らかになる。鼻出血、皮下のあざ、吐物や便への血液、胸の中での出血による呼吸困難など |
MSD Veterinary Manualは、毒餌を食べたネズミやその死骸を食べることによる二次的な中毒(relay toxicosis)も明記しています。外に出る猫やネズミを捕る猫では、飼い主が殺鼠剤を置いていなくても起こりえます。
治療にはビタミンK1の投与があり、数週間続ける必要があるとされています。用量や期間は猫の状態と薬剤の種類で変わるため、動物病院で決めるものです。市販のサプリメントで代わりにしようとしないでください。
今、自宅でできること
圧迫のしかたは前の節のとおりです。ここでは、それ以外に病院へ着くまでにできることをまとめます。治療を行う場所ではありません。
- 押さえたまま動物病院へ電話する。出血している部位、出血の勢い、いつからか、猫の体重を伝える
- 猫を暗く静かな場所へ移し、興奮させない(動き回ると出血が増えます)
- 顔を近づけない、抱きしめない。厚手のタオル越しに扱う
- 刺さっている物がある場合は、動かないように支えるだけにする
- 出血の様子(部位・色・広がり方)を写真に撮っておく
- 出血が始まった時刻と、何が起きたか(分かる範囲で)をメモする
- 血が染みたタオルの枚数を覚えておく(出血量を伝える手がかりになります)
- 殺鼠剤や誤食が疑われるなら、製品のパッケージ・現物・食べた可能性のある場所を確保する
- キャリーを準備し、中でできるだけ動かないようにする。強い力が加わった後は、頭・首・背骨の動きを最小限にし、板・段ボール・厚手の布など平らで硬いもので支えて運ぶ
やってはいけないこと
以下は、猫を危険にさらすか、受診を遅らせる行為です。ひとつも行わないでください。
- 紐・ゴム・輪ゴム・ヘアゴム・針金などで傷の心臓側をきつく縛る(緊縛止血)。獣医学の標準的な推奨とは逆方向で、神経や血管の合併症、四肢の喪失、急性腎障害につながりうるとされています
- 止血帯を自己判断で装着したまま病院へ向かう(緩めて締め直す管理が必要とされており、家庭では安全に行えません)
- 止まったかどうかを確認するために、ガーゼを何度も剥がして覗く
- 血が染みた布を取り替える(剥がさず上から重ねてください)
- オキシドール(過酸化水素)や消毒用アルコールを傷にかける。過酸化水素は健常な組織に毒性があるとされて洗浄に使うべきでないとされ、アルコールも痛みを与えて治癒を妨げるとされています
- 刺さっている物を抜く。無理に引っ張らないでください
- 傷口をこする、傷の中に指を入れる
- 獣医師の指示なしに人用の鎮痛薬や止血薬を与える(猫では特に危険です)
- 意識が落ちている猫に水や食べ物を与える
- 咬まれた傷や貫通した傷を「小さいから」と自宅で経過観察する
- 殺鼠剤に触れた可能性があるのに、「元気だから」と待つ
- 自宅で吐かせようとする(殺鼠剤などの誤食が疑われる場合も、獣医師の指示なしに行わないでください)
傷を洗うことについても、家庭では優先事項ではありません。まず出血を止めることが先で、傷の洗浄と処置は動物病院で行うものです。過酸化水素やアルコールで洗うことは、痛みを与えるうえに治りを妨げるとされており、勧められていません。
動物病院へ伝える情報
電話の段階で分かる範囲を伝えてください。全部そろっていなくて構いません。
- 出血が始まった時刻(分からなければ、最後に普段どおりだった時刻)
- 何が起きたか(爪切り・ケンカ・落下・車・ガラス・咬まれた・不明 など)
- 出血している部位と、その数
- 血の色と出方(鮮やかで拍動する/暗くてにじむ)
- おおよその出血量(血が染みたタオルの枚数、床の広がりなど。写真があると確実です)
- 自宅で何をしたか(押さえた時間、使った物、消毒薬を使ったかどうか)
- 猫の体重、年齢、避妊去勢の有無
- 現在の様子(歯茎の色、呼吸の速さ、意識、測れていれば体温)
- 外に出る猫かどうか、保護したばかりかどうか、他の動物との接触があったか
- 殺鼠剤・毒餌・死んだネズミへの接触の可能性と、いつ・どこでか
- 持病、飲んでいる薬・サプリメント、直近の手術や処置
- 過去に「小さな傷なのに血が止まりにくい」と感じたことがあるか
動物病院ではどうするのか
まず行われるのは、出血の制御と全身状態の安定です。Merck Veterinary Manualの飼い主向けの解説は、急な大量出血で血液量のおよそ3分の1を失うとショックと死につながるとし、静脈からの輸液や輸血による迅速な治療が必要だとしています。猫は体が小さいため、同じ「3分の1」でも失う血液の絶対量は少なくなります。
咬傷では、見えている傷の大きさに関わらず深い部分の評価が行われます。前述の72例の研究では、壊死組織を取り除く外科処置や、開腹・開胸に至った例が報告されています。猫の咬傷が膿瘍になっている場合は、培養・壊死組織の除去・抗菌薬・排膿という扱いになり、汚染のため傷を完全に閉じることは通常勧められないとされています。
けががないのに出血傾向がある場合は、血液を固める働きの検査が行われます。抗凝血性の殺鼠剤が疑われる場合の治療にはビタミンK1の投与があり、数週間続ける必要があるとされています。製品のパッケージが手元にあると、薬剤の種類が分かって治療の判断が早くなります。
夜間・休日でかかりつけの動物病院が閉まっている場合
夜間や休診日にかかりつけの病院が閉まっているときは、近くの夜間・救急動物病院を確認してください。向かう前に必ず電話をしてください。夜間は予約制のところや、受け入れられる状態かどうかがその時々で変わるところがあります。
電話では、「何が起きたか」「いつからか」「猫の年齢と体重」「今の様子」を伝えてください。その場でできることを教えてもらえたり、より適した病院を案内してもらえることがあります。
- 全国の夜間・救急動物病院まとめ(都道府県・市区別)
- 東京23区 都心3区(千代田・中央・港)の夜間・救急動物病院
- 横浜市の夜間・救急動物病院
- 大阪市の夜間・救急動物病院
- 名古屋市の夜間・救急動物病院
- 札幌市の夜間・救急動物病院
- 福岡市の夜間・救急動物病院
- 猫の夜間救急に行くべきか迷った時の判断チェックリスト
- 夜間救急動物病院に連れて行くべき症状の判断基準(犬猫共通)
出血しているときは、電話の最初に「出血が止まらない」「咬まれた」「殺鼠剤に触れたかもしれない」と一言で伝えてください。受け入れの可否と、到着までの準備の判断が早くなります。
可能であれば、押さえる人と運転する人を分けてください。一人で向かう場合は、布を当てて包み、キャリーの中で猫が動き回らないようにしてから出発してください。
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よくある質問
何分押さえれば止まりますか?
AVMAの飼い主向け資料が示しているのは、最低3分は押さえたままにして、確認のために外さないということだけです。「何分で止まらなければ受診」という数値の基準は、今回の調査では一次資料で確認できませんでした。
そのため、この記事では時間の線引きを示しません。押さえても止まらない、あるいは止まってもすぐ再出血する時点で受診の対象と考えてください。拍動して噴き出しているなら、時間を測る前に電話してください。
紐やゴムで縛って止めてはいけませんか?
行わないでください。獣医学の標準は直接圧迫と圧迫包帯です。Merck Veterinary Manualは、重度の動脈性出血であっても細い止血帯ではなく空気カフや圧迫ラップを使うべきだとし、細い止血帯に伴いうる神経・血管の合併症を避けるためだと説明しています。
止血帯を使う場合でも四肢や尾に限られ、圧迫包帯で止まらなかったときの手段で、5〜10分ごとに緩めて締め直す管理が必要とされています。移動中に安全に行えるものではありません。長時間の装着は血流の途絶により、四肢の喪失や急性腎障害につながりうるとされています。
血が染みてきたガーゼは替えたほうがよいですか?
替えないでください。AVMAは、血が染みてきても取り除かず、その上に重ねるよう明記しています。
理由は、できかけた血の塊を壊さないためです。剥がすと出血が振り出しに戻ります。
消毒はしたほうがよいですか?
オキシドール(過酸化水素)と消毒用アルコールは使わないでください。過酸化水素は健常な組織に毒性があるとされ、洗浄に使うべきでないとされています。アルコールも痛みを与え、治癒を妨げるとされています。
まず出血を止めることが優先です。傷の洗浄と処置は動物病院で行います。何を使ったかは、必ず正直に伝えてください。
咬まれた穴が小さくて、血もほとんど出ていません。様子を見てよいですか?
受診してください。咬傷は「氷山の一角」と呼ばれ、見えている皮膚の傷は深い部分の損傷を反映しません。表面が小さな穴でも、肋骨が折れていたり内臓が重度に損傷していることがあります。
犬に咬まれた猫72例の研究では、18%が開腹または開胸を要し、21%が死亡または安楽死となりました。猫同士のケンカによる咬傷も感染しやすく、数日たってから腫れや発熱として現れることがあります。
出血は少ないのに、体のあちこちにあざができています
血が固まりにくくなっている可能性を考える所見です。歯茎や皮膚のあざ、鼻血、黒いタール状の便、小さな傷からの出血が長引く、といったサインが複数出るのが特徴です。
原因には抗凝血性の殺鼠剤、肝臓の病気、血小板の異常、腫瘍、生まれつきの凝固因子の欠損などがあります。殺鼠剤に触れた可能性があるなら、すぐ受診してください。
殺鼠剤を口にしたかもしれませんが、元気そうです
元気に見える時期があることが、抗凝血性の殺鼠剤の特徴です。凝固の検査値が悪くなるのは摂取から2〜5日遅れ、出血が明らかになるのは通常3〜7日後とされています。
毒餌を食べたネズミを食べただけでも中毒が起こりうるとされています。症状が出る前に受診してください。製品のパッケージがあれば持参してください。
刺さっている物は抜いてから連れて行くべきですか?
抜かないでください。Merck Veterinary Manualは、刺さった異物は搬送の間そのままにし、動かないように固定するとしています。長いものは体外に一部を残して切ることがあるとされていますが、無理はしないでください。
抜くと、塞がれていた出血が一気に増えたり、深い部分の損傷が広がったりします。
まとめ
- 家庭でできるのは直接圧迫だけ。清潔な布を出血部位に直接あて、手のひらか指でしっかり押さえる
- 最低3分は外さない。血が染みても剥がさず上に重ねる。剥がすとできかけた血の塊が壊れる
- 紐やゴムで縛らない。標準は直接圧迫と圧迫包帯で、細い止血帯は神経・血管の合併症を伴いうるとされ、勧められていない
- 「何分で止まらなければ受診」という数値の基準は確認できていない。止まらない・すぐ繰り返す時点で受診の対象
- 咬傷は「氷山の一角」。穴が小さく出血が少なくても、深い部分の損傷や感染が起きていることがある
- 刺さっている物は抜かず、動かないように支えて搬送する
- 抗凝血性の殺鼠剤は時間差で出る。出血が明らかになるのは通常3〜7日後で、それまでは元気に見えることがある
参考資料
この記事は次の資料を参照して作成しました(2026年9月9日確認)。記載内容は一般的な情報であり、個々の症例の診断・治療に代わるものではありません。判断に迷うときは、自己判断せず動物病院に相談してください。
- First Aid and Transport of Small Animals(出血の初期対応と搬送)(Merck Veterinary Manual)
- Initial Wound Management in Small Animals(圧迫止血・洗浄液の選択)(Merck Veterinary Manual)
- Management of Specific Wounds in Small Animals(咬傷・貫通創)(Merck Veterinary Manual)
- PET FIRST AID(飼い主向けリーフレット 2025年版・PDF)(American Veterinary Medical Association(米国獣医師会))
- Bleeding and Clotting Disorders in Cats(猫で血が固まりにくくなる原因)(Merck Veterinary Manual(飼い主向け版))
- Anticoagulant Rodenticide Poisoning in Animals(抗凝血性殺鼠剤の時間経過と治療)(MSD Veterinary Manual)
- Dog bite wounds in cats: 犬に咬まれた猫72例の後ろ向き研究(J Feline Med Surg. 2022, PMID 33980052)(Europe PMC(抄録))
- EMS Canine Tourniquet Use(止血帯を長時間装着したときの合併症)(StatPearls/NCBI Bookshelf(米国国立医学図書館))