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猫が紐・糸・リボンを飲み込んだときの対処法|口やお尻から出ていても引っ張らないでください

口やお尻から紐が出ていても、絶対に引っ張らないでください。紐のもう一方の端は、舌の付け根や胃の出口に引っかかって固定されていることがあります。その状態で引くと、腸の壁が内側から裂けます。

紐・糸・リボンのような細長いものは、線状異物と呼ばれ、丸い異物とはまったく別の危険を持ちます。飲み込んだ可能性がある時点で、症状がなくても動物病院へ電話してください。

引っ張らない。切らない。指を入れない。この3つだけは、この先を読む前に守ってください。

外に出ている紐は、触らずに写真だけ撮ってください。すでに引っ張ってしまった場合も、そのことを必ず病院に伝えてください。叱られることを心配するより、正確に伝えることのほうが猫にとって重要です。

元気で食欲があっても、それは安全の根拠になりません。線状異物は症状が出るまでに時間差があることが知られています。

まず確認すること

  1. 口や肛門から紐が出ていないか(出ていれば触らず写真を撮る)
  2. 何を飲み込んだか(毛糸・裁縫糸・リボン・ヘアゴム・デンタルフロス・釣り糸・猫じゃらしの紐など)
  3. 元の長さと、残っている長さ(どれくらい体内にあるかの推定に使います)
  4. いつか(分からなければ「最後に普段どおりだった時刻」と「気づいた時刻」)
  5. 今の症状(嘔吐の回数、食欲、元気、最後の排便)
  6. 猫の体重と年齢、持病、飲んでいる薬

同じ紐の残りや同一の製品があれば、袋に入れて病院へ持って行ってください。素材と太さが治療方針の判断材料になります。

多頭飼育で、同じ紐で他の猫も遊んでいた場合は、その猫の様子も記録しておいてください。

すぐ動物病院へ相談すべきサイン

次のどれか一つでも当てはまれば、動物病院へ電話してください。とくに最初の3つは、症状がなくても受診の理由になります。

  • 口や肛門から紐や糸が出ている(最優先。引っ張らずに電話)
  • 紐・リボン・ヘアゴム・デンタルフロス・釣り糸・猫じゃらしの紐などが無くなっている、または途中で切れて先端が見当たらない
  • 飲み込む場面を見た
  • 繰り返し吐く。とくに食べていないのに吐く、吐こうとして何も出ない
  • 食欲がない、水も飲まない、ごはんの前で固まる
  • 元気がなく、暗い場所に隠れて出てこない(猫の腹痛のサインです)
  • お腹を触ろうとすると嫌がる、背中を丸めた姿勢でじっとしている
  • うんちが出ていない、下痢、便に血が混じる
  • よだれが出る、口を気にする、前足で口をこする(舌の付け根に紐が回っている可能性
  • 発熱または体温低下、呼吸が速い、ぐったりして反応が鈍い(腹膜炎を疑う状態です。きわめて緊急)

これらが夜間や休診日に起きた場合も、翌朝まで待たずに夜間・救急動物病院へ連絡してください。

なぜ紐は丸い異物より危険なのか

丸い異物は「詰まった1か所」の問題ですが、線状異物は長い範囲が同時に傷つくのが違いです。順を追うと、次のように進みます。

  1. 紐の一端が舌の付け根(舌根部)または胃の出口(幽門)に引っかかって固定される。獣医師向けの臨床資料では、固定部位のおよそ半分が舌の下だとされています
  2. 反対側の端は、腸の蠕動運動によって先へ先へと送られ続ける
  3. 紐が張り詰め、腸のほうが紐にたぐり寄せられて、アコーディオンのように短く縮む
  4. 張った紐が腸の壁を鋸のように切り進み、腸間膜のある側に穴が開く
  5. 腸の内容物が腹腔にもれ、敗血症性腹膜炎になる

この機序があるため、外に出ている紐を引くことは「腸を内側から切る操作」になり得ます。手術でも紐は引き抜きません。まず固定点を外し、必要であれば腸を何か所も切開して、紐を短く切りながら少しずつ回収します。国内の施設の症例では、小腸を5か所切開して摘出した例が報告されています。

全身麻酔をかけた専門施設ですらこの手順を踏むということが、家庭で引っ張ってはいけない理由をよく表しています。

今、自宅でできること

ここに書くのは治療ではありません。病院に着くまでに悪化させないことと、診察に必要な情報をそろえることが目的です。

  1. 動物病院へ電話する。「紐状のものを飲み込んだ可能性がある」ことと、外に出ている紐があるかどうかを最初に伝える
  2. 外に出ている紐がある場合は、触らずに写真を撮る(長さ・太さ・素材が分かるように)
  3. 残っている紐・おもちゃ・同じ製品を確保し、どれだけ無くなったかを確認する
  4. 飲み込んだ(または無くなったことに気づいた)時刻と、最後に普段どおりだった時刻を記録する
  5. その後の嘔吐の回数と時刻を記録し、吐いた物の写真を撮る
  6. 最後の排便の時刻と便の状態を記録する
  7. 猫を静かな部屋に移し、他の紐やおもちゃを片づける。走り回らせない
  8. キャリーを準備し、移動中に猫が暴れないよう安全を確保する

やってはいけないこと

  • 口やお尻から出ている紐を引っ張る。最も危険な行為です。腸が裂けます
  • 紐を少しずつ引き出してみる、何かに引っ掛けて回収しようとする
  • 自己判断でハサミで切る。切ってよいかどうかは電話で獣医師に確認してください(家庭でのハサミの使用を勧めている信頼できる資料は見つかりませんでした)
  • 口の奥や喉に指を入れる、舌を無理に持ち上げて紐を探す(見えないうえ、猫にも自分にも危険です)
  • 家庭でオキシドール(過酸化水素水)や食塩水を飲ませて吐かせる。猫では効果が乏しく出血性の胃炎を起こしやすいうえ、線状異物では催吐そのものが腸を引く方向に働き得ます
  • 下剤・浣腸・オリーブオイルなどを飲ませて、排出を促そうとする
  • 「出てくるまで待つ」「元気だから明日にする」と受診を先送りする
  • ごはんやおやつを与えて様子を見る(手術になれば絶食が必要になり、嘔吐による誤嚥の危険もあります)
  • 人用の胃薬・吐き気止め・鎮痛薬を与える

「うんちと一緒に出てくるのを待つ」という考え方は、丸い異物のイメージから来るものです。片端が固定された線状異物は、待っても出てきません。待っている間に腸がたぐり寄せられていきます。

動物病院へ伝える情報

  • 飲み込んだと思われる物(素材・太さ・長さ・製品名)。同じ物の残りを持参する
  • 元の長さと、いま残っている長さ
  • 飲み込んだ時刻、または最後に普段どおりだった時刻と異変に気づいた時刻
  • 口や肛門から紐が出ているか。出ている場合は写真と、いつから出ているか
  • すでに引っ張ったり切ったりしたかどうか(必ず正直に。処置の方針が変わります)
  • 嘔吐の回数・時刻・吐いた物の写真
  • 最後の食事と、最後の排便の時刻・便の状態
  • 猫の体重、年齢、持病と現在飲んでいる薬
  • 元気・食欲・痛がるそぶり・隠れているかなどの変化と、始まった時刻
  • 他に同じ紐で遊んでいた猫がいるか

病院での検査と治療|「レントゲンに写らない」ことがある

紐や糸そのものは、X線写真に写らないことが多い異物です。手がかりになるのは異物の像ではなく、腸がひだ状に短縮している所見や、コンマの形をしたガスの像といった間接的なサインで、超音波検査のほうが有用とされています。

つまり、「レントゲンで何も写らなかった=異物はない」とは言えません。症状が続くときは、超音波検査や再検査について改めて相談してください。

治療は多くの場合、全身麻酔下で行われます。まず固定点を外し、内視鏡または開腹で回収します。前述のとおり紐は引き抜かず、必要に応じて腸を複数箇所切開して分割して取り出します。穿孔や腸の壊死があれば腸を切除して腹腔を洗浄することになり、入院期間も回復も大きく変わります。

早く診断して手術できた場合の見通しは良好とされる一方、腹膜炎が起きてからでは大きく悪化します。「待つ」余地が小さいのが線状異物の特徴です。

夜間・休日でかかりつけの動物病院が閉まっている場合

夜間や休診日にかかりつけの病院が閉まっているときは、近くの夜間・救急動物病院を確認してください。向かう前に必ず電話をしてください。夜間は予約制のところや、受け入れられる状態かどうかがその時々で変わるところがあります。

電話では、「何が起きたか」「いつからか」「猫の年齢と体重」「今の様子」を伝えてください。その場でできることを教えてもらえたり、より適した病院を案内してもらえることがあります。

電話では最初に「紐状のものを飲み込んだ可能性がある」「外に紐が出ている/出ていない」を伝えてください。この2点で、緊急度と必要な準備の判断が変わります。

あわせて読みたい

よくある質問

お尻から紐が出ています。引っ張って抜いてもいいですか?

絶対に引っ張らないでください。反対側の端が舌の付け根や胃の出口で固定されていることがあり、引くと腸の壁が裂けて穴が開きます。獣医学のリファレンスにも「牽引で取り出してはならない」と明記されています。

触らずに写真を撮り、すぐ動物病院へ電話してください。切ってよいかどうかも自己判断せず、電話で確認してください。

元気で食欲もあります。少し様子を見てもいいですか?

様子見は勧められません。線状異物は症状が出るまでに時間差があり、部分的な閉塞が長く続いた症例報告もあります。

症状が出てからでは、穿孔や腹膜炎が進んでいる可能性があります。飲み込んだ疑いがある時点で電話し、受診が必要かどうかを獣医師に判断してもらってください。

レントゲンで何も写らなかったと言われました。安心していいですか?

紐や糸自体はX線に写らないことが多く、「写らなかった=異物がない」とは言えません。

腸がひだ状に縮んでいる所見やコンマ状のガス像などの間接所見、そして超音波検査が手がかりになります。症状が続く場合は、超音波や再検査について改めて相談してください。

どんな物が線状異物になりますか?

毛糸、裁縫糸、タコ糸、リボン、ラッピングの紐、ヘアゴム、デンタルフロス、釣り糸、ビニールひも、クリスマスのモール。猫じゃらしの紐部分や、おもちゃに付いた紐・羽根の軸もそうです。

長さが短くても同じことが起こります。問題は長さではなく、細長い形であることと、片端が固定されるかどうかです。

なぜ猫に多いのですか?

紐状のものが猫の狩りの行動を強く刺激し、遊びの延長で口に入りやすいためです。獣医学の資料は、猫が紐・毛糸・フロス・紐付きのおもちゃで遊ぶうちに飲み込むことを主な原因として挙げています。

「猫の舌のざらざらが後ろ向きなので吐き出せない」という説明もよく語られますが、これを検証した学術資料は確認できませんでした。この記事では原因として断定しません。

予防のためにできることは?

紐付きのおもちゃは遊んだあとに必ず片づけ、猫の手が届かない場所にしまってください。留守番中に出しっぱなしにしないことが特に重要です。

裁縫箱、ヘアゴム、リボン、デンタルフロス、釣り具、ラッピング材も同じです。紐が切れかけたおもちゃは処分してください。

まとめ

  • 口やお尻から出ている紐は、絶対に引っ張らない。反対側が固定されていると、腸の壁が裂ける
  • 自己判断で切らない。指を入れない。触らずに写真を撮る
  • 線状異物は腸がたぐり寄せられて紐が壁を切り進むため、丸い異物とは危険の種類が違う
  • 「うんちと一緒に出るのを待つ」は通用しない。元気に見える時間帯があっても、安全の根拠にならない
  • 家で吐かせない。猫では効果が乏しく、線状異物では催吐自体が腸を引く方向に働き得る
  • X線に写らないことが多い異物。「何も写らなかった」で終わりにせず、超音波や再検査を相談する

参考資料

この記事は次の資料を参照して作成しました(2026年9月9日確認)。記載内容は一般的な情報であり、個々の症例の診断・治療に代わるものではありません。判断に迷うときは、自己判断せず動物病院に相談してください。

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