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犬が玉ねぎ・ネギ入りの料理を食べた|貧血が出るのは3〜5日後、観察は1週間

玉ねぎ・長ねぎ・にんにく・にら・らっきょうなどのネギ属(アリウム)に含まれる硫黄を含む酸化性の成分は、犬の赤血球を酸化して壊します。厄介なのは時間差です。食べた直後は普段どおりに見えることが多く、貧血として目に見えるようになるのは3〜5日後です。

症状がなくても、気づいた時点で動物病院に電話してください。摂取から間もない時間帯は、獣医師が消化管の除染を選べる時間帯でもあります。この記事では、電話の前にそろえる情報、量と時間の考え方、自宅でやってはいけないこと、そして1週間の観察で見るべき点をまとめます。

食べた直後に元気なのは、この中毒では当たり前のことです。赤血球の酸化による変化は24時間以内に始まり、約72時間でピークを迎え、実際に赤血球が壊れる(溶血)のは3〜5日後とされています。無症状の1〜2日は安全の証明になりません。

家で吐かせようとしないでください。オキシドール(3%過酸化水素水)を健康な犬に飲ませた試験では全頭に胃粘膜の病変が生じており、家庭での催吐は推奨されていません。吐かせるかどうかは、動物病院が薬剤を用いて判断する処置です。

「少しだけ」「汁だけ」が通らない形があります。乾燥フレーク、オニオンパウダー、ガーリックパウダー、顆粒コンソメ、粉末スープの素、カレールウのような濃縮された形での中毒がもっとも多く報告されています。にんにくは玉ねぎの3〜5倍毒性が強いとされます。

30秒で判断|どの速さで動くか

動き方当てはまるもの
今すぐ受診
電話しながら向かう
  • 歯ぐき・舌・まぶたの裏が白い、または歯ぐき・白目が黄色い(貧血・黄疸)
  • 尿が赤褐色・茶色・コーラ色になった(ヘモグロビン尿の可能性があります)
  • ぐったりして動かない、呼びかけへの反応が鈍い、倒れた、立ち上がれない
  • 呼吸が速い・浅い、少し歩いただけで息が上がる、散歩を嫌がる、心拍が速い
  • 何度も吐く、下痢が続く、お腹を痛がる姿勢をとる
  • 食べたことに気づいたのが、摂取から間もない時間帯(獣医師による消化管の除染を検討できる時間帯にあたります)
  • 濃縮された形(乾燥フレーク・オニオンパウダー・ガーリックパウダー・顆粒コンソメ・粉末スープの素・カレールウ)を食べた、またはにんにくを食べた
  • 数日前に玉ねぎ・ねぎ入りのものを食べており、今になって元気・食欲が落ちてきた
早めに相談
その日のうちに電話する
  • 食べてから時間が経っているが、今のところ変わった様子はない(体重・食べたもの・量・時刻を整理して電話してください)
  • 食べたかどうかがはっきりしない、原材料に玉ねぎ・ねぎ・にんにく・にらが入っていたか確認できない
  • 以前にも玉ねぎ入りのものを食べており、短い期間に繰り返している

これは受診の優先度を決めるための目安で、病名を判断するためのものではありません。どれにも当てはまらなくても、いつもと違うと感じたら電話して構いません。迷っている時間そのものが、動物にとっては待ち時間になります。

ネギ属の中毒は、体の中で変化が始まってから見た目に出るまでに数日かかります。この表に当てはまるものがない時間帯こそ、処置の選択肢がいちばん多く残っている時間帯です。

まず確認すること

動物病院に電話する前に、次の7つを手元にそろえてください。すべて分からなくても構いません。分からないこと自体が重要な情報なので、そのまま伝えてください。

  1. 何を食べたか(料理名だけでなく、原材料表示に玉ねぎ・ねぎ・にんにく・にら・オニオンパウダー・エキスがあるか)
  2. どんな形だったか(生/加熱した料理/乾燥・粉末。濃縮された形かどうかで危険度が変わります)
  3. にんにくが含まれていたか(玉ねぎの3〜5倍毒性が強いとされます)
  4. どのくらい食べたか(鍋や皿にどれだけ残っていたか、何人前だったか。分からなければ「最大でこれだけの可能性がある」という上限)
  5. いつ食べたか(分からなければ「最後に無事だったのが◯時、見つけたのが◯時」という幅で)
  6. 犬の体重と年齢・犬種(柴犬・秋田犬など日本犬なら伝える価値があります)、持病、飲んでいる薬
  7. 今の様子(嘔吐・下痢の有無と回数、元気、食欲、歯ぐきの色、呼吸の速さ、尿の色)

いちばん危ないのは「濃縮された形」

獣医学の標準マニュアルは、犬猫のネギ属中毒は乾燥フレーク・粉末・乾燥オニオンスープミックスといった濃縮された形の摂取と結びつくことがもっとも多いとしています。日本の台所に置き換えると、次のようなものが該当します。見た目の量が少なくても、量が届きやすい形です。

日本の家庭にあるもの注意点
顆粒コンソメ、粉末スープの素、ラーメンの粉末スープ乾燥・濃縮水分が抜けているぶん、小さじ数杯でも量が届きやすい
オニオンパウダー、ガーリックパウダー、乾燥ねぎ、フライドオニオン乾燥・濃縮こぼれた粉をなめる、袋ごとかじるという曝露が起きやすい
カレールウ、シチューのルウ、市販のたれ・ドレッシング加工・濃縮原材料表示にオニオンパウダーやにんにくが入っていることが多い
すき焼き、肉じゃが、味噌汁、ポトフ、オニオンスープ加熱した料理成分は煮汁に出ている。「汁だけ」は安全の理由にならない
ハンバーグ、餃子、炒飯、ガーリックトースト加熱した料理刻んで加熱してあることは毒性をなくす条件ではない
皮・根元・切れ端、生ごみ調理中の床やゴミ箱からの拾い食いが起こりやすい

にんにくは玉ねぎの3〜5倍毒性が強いとされています。ただし、犬でのにんにくの体重あたりの毒性量(g/kg)そのものを示した一次資料は確認できませんでした。数値で比べるのではなく、にんにくが入っていたかどうかを必ず伝えるという形で使ってください。

パッケージと食べ残しは捨てない

レトルトの袋、ルウの箱、調味料のラベル、食べ残した料理は、そのまま取っておいて病院へ持って行ってください。原材料表示に何が入っていたかが、量を推定する材料になります。

捨ててしまうと、あとから「玉ねぎが入っていたのか、どれだけ入っていたのか」を確かめられなくなります。写真だけでも撮っておいてください。

すぐ動物病院へ相談すべきサイン

次のどれか一つでも当てはまれば、時間帯にかかわらず動物病院へ電話してください。とくに尿の色と歯ぐきの色は、溶血が進んでいるかどうかの手がかりになります。

  • 尿が赤い・赤褐色・茶色・コーラ色になった(ヘモグロビン尿の可能性があります)
  • 歯ぐき・舌・まぶたの裏が白い、または歯ぐき・白目が黄色い
  • ぐったりして動かない、呼びかけへの反応が鈍い、倒れた
  • 呼吸が速い・浅い、少し歩いただけで息が上がる、散歩を嫌がる
  • 心拍が速い、脈が弱い、ふらつく、立ち上がれない
  • 何度も嘔吐する、下痢が続く、お腹を痛がる姿勢をとる
  • 食欲がない、水も飲まない状態が続く
  • 乾燥フレーク・オニオンパウダー・ガーリックパウダー・顆粒コンソメ・カレールウなど濃縮された形のものを食べた
  • にんにくを食べた、またはにんにく入りの料理を食べた
  • 体重に対して量が多い、または量がはっきり分からない
  • 子犬・高齢犬・小型犬である、もともと貧血や腎臓・肝臓の持病がある
  • 柴犬・秋田犬など日本犬である(遺伝的に赤血球が酸化に弱い個体がいます)

時間差が最大の落とし穴|24時間・72時間・3〜5日・1週間

ネギ属の中毒でいちばん怖いのは、元気に見えているあいだに体の中で進むことです。獣医学の標準マニュアルは、赤血球への酸化的な損傷・ハインツ小体の形成・メトヘモグロビン血症は24時間以内に始まって約72時間でピークになり、溶血は曝露から3〜5日後に起こるとしています。そして症状は、かなり溶血が進んでからでないと見た目に出ないとされています。

食べてからの時間起きていること/見えること
直後〜数時間嘔吐・下痢・腹痛・食欲低下・元気消失が出ることがある。何も起きないことも多い
24時間以内赤血球の酸化的な損傷が始まる(ハインツ小体の形成、メトヘモグロビン血症)。見た目には出にくい
約72時間(3日目)ハインツ小体を含む赤血球の割合がピークになるとされる時期
3〜5日後溶血が起こる。歯ぐきが白い、呼吸が速い、疲れやすい、尿が赤褐色、黄疸といった貧血の症状が出てくる
5日目前後犬に乾燥玉ねぎを与えた実験では、ヘマトクリットが投与翌日から下がり始め、5日目までに平均19ポイント低下した。骨髄が新しい赤血球を作り始めた印(網赤血球)が見え始めたのも5日目
その後回復には時間がかかる。日本の報告では、貧血は再生性で臨床的に12日で回復した例がある

「症状が出るまで24〜72時間」と説明されることがありますが、72時間はハインツ小体とメトヘモグロビンのピークであって、貧血が完成する時期ではありません。3日間なんともなかったことを根拠に打ち切らず、観察は1週間続けてください。

ただしこれは「1週間見てから病院に行く」という意味ではありません。電話と受診は食べた時点で行い、そのうえで1週間の観察を続けるという順序です。

どのくらいの量で問題になるのか

犬では生の玉ねぎを体重1kgあたり15〜30g摂取すると、臨床的に重要な血液学的変化が起こると報告されています。この数値は、獣医学の標準マニュアルと査読付きの総説が同じ値を示しています(猫は5g/kgで、犬より感受性が高いとされます)。

ただし、これは「安全量の下限」ではなく「明らかな血液の異常が出たと報告されている量」です。遺伝的な感受性、体調、繰り返し摂取しているかどうか、にんにくが混ざっているかどうかで影響は変わります。この量を下回ったから安全だ、とは言えません。

この記事では、あえて「玉ねぎ何個ぶん」という換算表を作っていません。玉ねぎ1個の重さは品種や大きさで変わり、個数への換算は獣医毒性学の資料に書かれた数字ではないからです。換算表があると、必ず「これ以下なら大丈夫」という読み方が生まれます。

量の判断は、体重と食べたものを伝えたうえで動物病院に任せてください。

危険度が「体重に対する量」で決まる以上、体重3kgの小型犬と体重30kgの大型犬では、同じ一口の意味がまったく違います。電話のときに体重を先に伝えると、話が早く進みます。

また、少量の反復摂取でも中毒が起こりうるとされています。ただし、玉ねぎの成分が体に溜まっていくという薬物動態を示した一次資料は確認できませんでした。「毒が蓄積する」というより、赤血球のダメージが回復しきらないうちに次の曝露が重なると理解するほうが、現在の資料と整合します。いずれにしても、少量ずつ与えてよい食材ではありません。

加熱しても、乾燥させても毒性は消えない

査読付きの総説は「調理・乾燥・加工によってネギ属の毒性作用はなくならない」と明記しています。むしろ毒性成分は、刻む・調理する・噛むといった機械的な破壊と、消化管内の細菌の作用によって放出されるとされています。

実際、文献で報告されている中毒の原因は調理済みの料理です。バターで炒めた玉ねぎ、オニオンスフレ、焼いたにんにく、カタルーニャの春ねぎ、そしてニラとにんにくを含む中華蒸し餃子による犬猫の中毒例が挙げられています。

決定的なのは、北海道大学の研究で犬に「煮た」玉ねぎ(1頭あたり200g)を与えた実験です。投与12時間後にヘモグロビン濃度が低下し、24時間後にメトヘモグロビン濃度が上昇し、12時間後にはハインツ小体を含む赤血球の割合が増えました。加熱してあっても溶血は起きています。

  • すき焼き・肉じゃが・カレー・シチュー・味噌汁・ポトフ・オニオンスープ(成分は煮汁に出ています)
  • ハンバーグ・ミートソース・餃子・炒飯・オムライス・グラタン
  • ガーリックトースト、にんにく入りの炒め物、ペペロンチーノ
  • 顆粒コンソメ・粉末スープの素・オニオンパウダー・ガーリックパウダー・乾燥ねぎ
  • コンソメ味・オニオン味のスナック菓子、フライドオニオン
  • 調理中に落ちた切れ端、皮、根元、生ごみ

「加熱してあるから大丈夫」「汁だけだから平気」は、資料の裏づけがない考え方です。汁でも、粉でも、炒めたものでも、同じ扱いにしてください。

柴犬・秋田犬など日本犬の体質について

日本犬の一部には、遺伝的に赤血球のカリウムと還元型グルタチオンが高い「HK赤血球」を持つ個体がいます。これは原著2本で確認できますが、2本を組み合わせた理解であることを先にお伝えします。

1本目は、北海道大学が柴犬24頭と他の24犬種79頭の赤血球を調べた研究(1991年)です。柴犬24頭のうち11頭が高カリウム・低ナトリウムでNa,K-ATPase活性の高い赤血球(HK赤血球)を持ち、残りの柴犬と他犬種はすべて通常の型でした。HK赤血球の還元型グルタチオン濃度は通常型の約5倍でした。著者らは、この遺伝子が日本在来の犬、とくに柴犬に固有のものである可能性を示唆しています。

2本目は同じ研究室による1992年の実験で、HK赤血球を持つ犬と正常な犬に、煮た玉ねぎを与えて比較したものです。12時間後にハインツ小体を含む赤血球の割合は、HK犬で24.4%、正常犬で1.2%と大きな差がつきました。24時間後のメトヘモグロビン濃度もHK犬で有意に高い値でした。結論は「HK犬は正常犬より玉ねぎの酸化作用に感受性が高い」です。

ここまでは言えるが、ここから先は言えない

1992年の論文の抄録には、実験に使われたHK犬の犬種が書かれていません。「HK dogs」としか記載されていないため、「柴犬に玉ねぎを与えて重症化を示した実験がある」とは書けません。柴犬とHK赤血球を結びつけているのは1991年の赤血球の性状調査のほうで、これは玉ねぎの実験ではありません。

つまり、確実に言えるのは「柴犬の一部にはHK赤血球を持つ個体がいる」+「HK赤血球を持つ犬は玉ねぎの酸化作用に感受性が高い」という2段階の事実です。査読付きの総説も、秋田犬・柴犬・珍島犬を感受性の高い犬種として挙げていますが、根拠として引いているのは同じ1992年の論文です。

また、同じ調査で柴犬24頭のうち13頭は通常型の赤血球でした。柴犬なら必ず重症になるわけではありません。逆に、他の犬種なら安全という意味にもなりません。日本犬かどうかは、受診のときに伝える情報の一つとして扱ってください。

「カリウムで死ぬ」という話も広げすぎない

HK赤血球が壊れると血液中のカリウムが上がるのではないか、と心配されることがあります。麻布大学からの報告(日本獣医師会雑誌 2000年)は、タマネギ中毒が推察されたHK/HG赤血球犬の臨床例と、実験的にタマネギを投与した犬の経過を追いましたが、臨床例・実験例のいずれでも高カリウム血症は認められませんでした。

この臨床例は来院日にPCV 15.9%、ヘモグロビン5.0g/dLという重度の貧血でしたが、貧血は再生性で、臨床的には12日で回復しています。発症初期には呼吸性の代償を伴う代謝性アシドーシスがみられ、3日以内にpHは回復しました。

犬種の話は、受診を早める材料としてだけ使ってください。不安をあおる材料にも、逆に安心する材料にもなりません。

今、自宅でできること

ここに書くのは治療ではありません。病院に着くまでに、これ以上悪くしないことと、診察に必要な情報をそろえることが目的です。

  1. 動物病院へ電話する。最初に「玉ねぎ(ねぎ・にんにく)入りのものを食べた」と伝えてください。夜間・休診日ならこのあとの案内を見てください
  2. 残っている料理・食材を犬の届かない場所へ片付ける(追加で食べさせない)
  3. パッケージ・容器・レトルトの袋・ルウの箱・調味料のラベルを捨てずに残す。原材料表示が量の推定に使えます
  4. 何をどれだけ食べたかを推定する(鍋や皿にどれだけ残っていたか、何人前だったか)
  5. 食べた時刻と、気づいた時刻を分けてメモする
  6. 食べ残しや吐いた物を写真に撮る。可能なら袋に入れて持参できるようにする
  7. 犬の体重を確認する(最近測った値で構いません)
  8. 静かな場所で休ませ、移動用のキャリー・リードを準備する
  9. 白いペットシーツを使って、尿の色を毎回確認する。色が変わったら写真を撮り、可能なら尿そのものを持参できるようにする
  10. 1日1回以上、歯ぐきの色・呼吸の速さ・元気・食欲を確認して記録する
  11. 食べた日から少なくとも1週間は観察を続け、変化があれば記録を持って受診する

やってはいけないこと

以下は犬を危険にさらすか、受診を遅らせる行為です。ひとつも行わないでください。

  • 自宅で吐かせようとする。オキシドール(3%過酸化水素水)、食塩・食塩水、指を喉に入れる方法は、いずれも行わないでください。健康な犬に3%過酸化水素水を投与した試験では全頭に胃粘膜の病変が生じており、高濃度の食塩水は塩中毒の危険があります
  • 牛乳・水・油を大量に飲ませて薄めようとする
  • 市販の活性炭や人用の胃腸薬・整腸剤・鉄剤を自己判断で与える
  • 「元気そうだから」と、受診も電話相談もせずに様子だけ見る
  • 症状が出るまで待ってから病院に連絡する
  • 食べたもののパッケージ・原材料表示・食べ残しを捨てる
  • 「加熱してあるから」「汁だけだから」「少しだけだから」を理由に、自分で大丈夫と決める
  • 72時間だけ観察して打ち切る(溶血は3〜5日後、貧血の底は5日目前後です)
  • 赤褐色の尿を「膀胱炎だろう」と自己判断して様子を見る
  • ぐったりしている・呼吸が速い状態で朝まで待つ
  • 少量ずつなら平気だろうと、ねぎ・玉ねぎ入りの人の料理を今後も分け与える
  • 犬用と称するにんにくサプリメントを、獣医師に相談せずに与える

かつては「家庭で吐かせてから病院へ」という説明が見られました。現在は推奨されません。胃を傷つける危険と、確実に吐かせられるとは限らないこと、そして吐かせようとしている時間がそのまま受診の遅れになることが理由です。まず電話してください。

赤褐色〜茶色の尿は、赤血球が壊れて出たヘモグロビンが尿に出ているもの(ヘモグロビン尿)である可能性があります。これは膀胱炎の血尿とは原因も緊急度も違い、放置すると腎臓の障害につながるため、点滴で腎臓を守る治療が行われます。「膀胱炎かも」ではなく「溶血が起きているかも」の合図として扱ってください。

動物病院へ伝える情報

ネギ属の中毒に特異的な検査はなく、診断は「何をいつ食べたか」という病歴が柱になります。飼い主が伝えられる情報が、そのまま診断の速さになります。

  • 何を食べたか(料理名と、原材料表示に玉ねぎ・ねぎ・にんにく・にら・オニオンパウダー・エキスがあるか)
  • 生か、加熱か、乾燥・粉末か(濃縮された形かどうかで危険度が変わります)
  • にんにくが含まれていたか
  • どれだけ食べたか(鍋・皿の残量からの推定、何人前だったか。分からなければ想定される上限)
  • 食べた時刻。分からなければ「最後に無事だったのが◯時、見つけたのが◯時」という幅で
  • 犬の体重・年齢・犬種(柴犬・秋田犬など日本犬かどうか)・持病・飲んでいる薬
  • 今の症状と出始めた時刻(嘔吐・下痢の回数、元気、食欲、歯ぐきの色、呼吸の速さ、尿の色)
  • 過去に同じものを食べたことがあるか、短い期間に繰り返していないか
  • すでに家で吐かせようとした場合は、何を・どれだけ・何時に使ったかを正直に伝える(治療の判断が変わります)
  • 【持参するもの】食べ残し・パッケージ・原材料表示・吐いた物(またはその写真)
  • 【持参するもの】尿(色が変わっていれば。白いペットシーツで採れた分でも構いません)または尿の写真
  • 【持参するもの】ペット保険証、診察券、お薬手帳、直近の血液検査結果、キャリー

病院での検査と治療

診断は、曝露の病歴・症状・血液検査によるハインツ小体性溶血性貧血の確認で行われます。血液塗抹では、ハインツ小体のほかにエキセントロサイト(ヘモグロビンが細胞の片側に寄った赤血球)が手がかりになります。これは赤血球の膜への直接の損傷によると考えられています。なお、溶血がかなり進んだ時点では、メトヘモグロビン血症は見られないこともあります。

ネギ属の中毒に特異的な解毒剤はありません。摂取から間もない時期であれば消化管の除染(獣医師が薬剤を用いて行う催吐と、嘔吐が止まってからの活性炭の投与)が検討されます。査読付きの総説は、無症状で合併する要因がなく摂取から2時間を超えていない場合に催吐を検討するとしています。これは動物病院で獣医師が行う処置についての記述です。

症状が出てからは支持療法になります。生命を脅かす状態には酸素の投与と必要に応じた輸血、そしてヘモグロビン尿による腎臓の障害を防ぐための点滴が行われます。つまり、症状が出る前の時間帯に相談できるかどうかで、選べる手が変わります。

溶血が進む時期をまたぐため、1回の受診で終わらず、数日後に血液検査をやり直すよう指示されることがあります。面倒に感じても、貧血の底が5日目前後に来ることを考えると理にかなった指示です。

夜間・休日でかかりつけの動物病院が閉まっている場合

夜間や休診日にかかりつけの病院が閉まっているときは、近くの夜間・救急動物病院を確認してください。向かう前に必ず電話をしてください。夜間は予約制のところや、受け入れられる状態かどうかがその時々で変わるところがあります。

電話では、「何が起きたか」「いつからか」「犬の年齢と体重」「今の様子」を伝えてください。その場でできることを教えてもらえたり、より適した病院を案内してもらえることがあります。

電話の最初に「玉ねぎ(ねぎ・にんにく)を食べた可能性がある」と伝えてください。そのひと言で、受け入れの可否や必要な準備の判断が早くなります。

夜間に受診しない判断になった場合でも、翌朝いちばんにかかりつけへ連絡してください。そのあいだも、歯ぐきの色・呼吸の速さ・尿の色を確認して記録しておくと、翌日の診察がそのまま続きになります。

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よくある質問

玉ねぎ入りのハンバーグを食べてしまいました。今すぐ病院に行くべきですか?

まず動物病院に電話し、体重・食べたもの・量・時刻を伝えて判断を仰いでください。無症状でも、摂取から間もない時間帯には獣医師による消化管の除染という選択肢があります。

自宅で吐かせようとはしないでください。催吐は、動物病院で獣医師が薬剤を用いて行う処置です。受診しない判断になった場合でも、その日から1週間は元気・食欲・歯ぐきの色・尿の色・呼吸の速さを毎日確認してください。

食べてから3日経ってから元気がなくなりました。関係ありますか?

時期としては一致します。赤血球への酸化的な損傷は24時間以内に始まって約72時間でピークになり、溶血は3〜5日後に起こるとされています。実験でもヘマトクリットは翌日から下がり始め、5日目までに平均19ポイント低下しました。

元気消失・食欲低下・歯ぐきが白い・呼吸が速い・尿が赤褐色は、貧血が進んでいるサインです。受診のときに「◯日前に玉ねぎ入りの◯◯を食べた」と伝えてください。診断は病歴が柱になります。

スープの汁を少しなめただけでも危ないですか?

加熱・乾燥・加工では毒性はなくならず、成分は刻む・煮るといった過程で汁の中に出ています。「汁だけ」は安全の理由になりません。

危険度は体重に対する量で決まるため、体重3kgの犬と30kgの犬では同じ一口の意味が違います。顆粒コンソメや粉末スープの素のような濃縮された形は、少量でも量が届きやすい形です。家庭で判定する方法はないので、体重・食べたもの・量・時刻を整理して電話してください。

柴犬は玉ねぎに弱いと聞きました。本当ですか?

北海道大学の研究で、柴犬24頭のうち11頭が高カリウム・高グルタチオン型の赤血球(HK赤血球)を持っていました。他の24犬種79頭にはこの型がありませんでした。別の実験では、HK赤血球を持つ犬に煮た玉ねぎを与えると、12時間後のハインツ小体を含む赤血球の割合が24.4%(正常犬は1.2%)と大きな差が出ています。

ただし、この実験の論文の抄録には犬種が書かれておらず、2本の論文を組み合わせた理解です。また同じ調査で柴犬の残り13頭は通常型でした。「柴犬なら必ず重症になる」とも「他の犬種なら安全」とも言えません。犬種は、受診のときに伝える情報の一つとして扱ってください。

尿が赤茶色です。膀胱炎ではないのですか?

玉ねぎ・ねぎ類を食べた心当たりがあるなら、赤血球が壊れて出たヘモグロビンによる「ヘモグロビン尿」の可能性があります。これは腎臓の障害につながりうるため、点滴で腎臓を守る治療が行われます。

膀胱炎の血尿とは原因も緊急度も違います。白いペットシーツの上で色を確認して写真を撮り、可能なら尿そのものを持って、すぐ受診してください。

猫のほうが危ないと聞きましたが、犬はどうなのですか?

感受性がもっとも高いのは猫で、次いで犬とされています。用量でも猫は5g/kg、犬は15〜30g/kgで、猫では調理した玉ねぎを小さじ1杯未満で中毒が報告されています。

ただしこれは犬が安全という意味ではありません。犬には犬の事情があり、人の料理をまとめて盗み食いする、散歩中に拾い食いする、にんにく入りの製品に触れる機会があるといった曝露経路があります。この記事は犬を対象にしています。

犬用のガーリックサプリメントが売っていますが、大丈夫なのですか?

にんにくは玉ねぎの3〜5倍毒性が強いとされ、赤血球を酸化させる仕組みは同じです。製品ごとに原料の形態(生・熟成・抽出物)と用量が違うため、この記事で一律に良し悪しを判断することはできません。

少なくとも、人用のガーリックサプリメントやガーリックパウダーを自己判断で与えることはやめてください。与えるかどうかは、かかりつけの獣医師に個別に相談してください。

まとめ

  • ネギ属(玉ねぎ・ねぎ・にんにく・にら・らっきょう)の硫黄を含む酸化性の成分が、犬の赤血球を壊す。にんにくは玉ねぎの3〜5倍毒性が強いとされる
  • 犬では生の玉ねぎ15〜30g/kgで血液学的な変化が報告されている。これは安全量の下限ではなく、個数への換算はしない
  • 加熱・乾燥・加工で毒性は消えない。中毒がもっとも多く報告されているのは、乾燥フレーク・粉末・顆粒コンソメ・カレールウなどの濃縮された形
  • 変化は24時間以内に始まり約72時間でピーク、溶血は3〜5日後、貧血の底は5日目前後。観察は72時間ではなく1週間
  • 赤褐色の尿は膀胱炎の血尿ではなく、ヘモグロビン尿の可能性がある。白いペットシーツで色を確認し、写真か現物を持って受診する
  • 柴犬など日本犬の一部はHK赤血球を持ち酸化に弱いが、これは原著2本を組み合わせた理解。柴犬なら必ず重症、他犬種なら安全、のどちらでもない
  • 家で吐かせない。解毒剤はなく、治療は消化管の除染と、点滴・酸素・輸血による支持療法。症状が出る前に相談できるかどうかで選べる手が変わる

参考資料

この記事は次の資料を参照して作成しました(2026年9月9日確認)。記載内容は一般的な情報であり、個々の症例の診断・治療に代わるものではありません。判断に迷うときは、自己判断せず動物病院に相談してください。

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