犬がキシリトールを食べた|低血糖と肝障害は、閾値も出る時間も別
キシリトールは、犬では膵臓からのインスリンの急激な放出を引き起こし、重い低血糖を招きます。人を含む大半の哺乳類ではインスリンにほとんど影響しない、犬に固有の反応です。さらに量が多いと、低血糖とは別に肝臓の障害が起こります。
重要なのは、この2つが別の量で、別の時間に来ることです。低血糖は体重1kgあたり約100mgを超えるあたりから、肝障害は500mgを超えるあたりから。低血糖は30分以内のこともあれば12〜18時間遅れることもあり、肝障害の症状は24〜48時間以降です。食べたと分かった時点で、症状がなくても動物病院に電話してください。
量が計算できたとしても、それだけで安全は判断できません。犬192頭の研究では、低血糖になった犬とならなかった犬とで推定摂取量に有意な差がありませんでした。体重1kgあたり0.03g(30mg)で低血糖になった犬も報告されています。
「低血糖が出なかったから安心」とは言えません。獣医学の標準マニュアルは、キシリトールによる肝障害を起こした犬のすべてが低血糖になるわけではないと明記しています。低血糖と肝障害は、必ずしも連続して起こる2段階ではありません。
家で吐かせようとしないでください。キシリトールでは低血糖が急に来るため、吐かせようとしている最中に意識が落ちると誤嚥の危険があります。オキシドール(3%過酸化水素水)による家庭での催吐は、胃粘膜の病変の報告があり推奨されていません。まず電話してください。
30秒で判断|どの速さで動くか
| 動き方 | 当てはまるもの |
|---|---|
| 今すぐ受診 電話しながら向かう |
|
| 早めに相談 その日のうちに電話する |
|
これは受診の優先度を決めるための目安で、病名を判断するためのものではありません。どれにも当てはまらなくても、いつもと違うと感じたら電話して構いません。迷っている時間そのものが、動物にとっては待ち時間になります。
この中毒では用量だけで安全を判断できません。閾値の数字は、病院が管理の方針(入院するか、何時間監視するか)を決めるためのものです。「計算したら閾値に届かないから受診しない」という使い方はできません。
まず確認すること
動物病院に電話する前に、次の7つを手元にそろえてください。すべて分からなくても構いません。分からないこと自体が重要な情報なので、そのまま伝えてください。
- 何を食べたか(製品名とメーカー名。パッケージの現物、なければ写真)
- 原材料表示に「甘味料(キシリトール)」があるか、あれば何番目に書かれているか(重量の多い順に並びます)
- 特定保健用食品なら、栄養成分表示の「関与成分キシリトール ◯g」の値(1パック何gに何gか)
- どのくらい食べたか(ボトルなら残った粒を数える、何粒入りの何粒がなくなったか、包装シートの空いた数、袋の残量)
- いつ食べたか(推定で構いません)と、気づいた時刻
- 犬の体重と年齢・犬種、持病(とくに肝臓の病気)、飲んでいる薬
- 今の様子と出た時刻(嘔吐、ふらつき、震え、けいれん、黄疸。食事の直後だったか空腹だったかも)
キシリトールはガムだけにあるわけではない
獣医学の標準マニュアルは、キシリトールの供給源として次のものを挙げています。「食べ物ではないから安全」とは言えません。
- ガム、キャンディ、ミント、タブレット、焼き菓子などのシュガーレス製品
- 歯磨き粉、マウスウォッシュなどの口腔ケア用品(人用の歯磨き粉を犬の歯みがきに使わないでください。犬はうがいができず飲み込みます)
- チュアブルタイプのビタミン・サプリメント
- 日焼け止め、化粧品、デオドラント、ヘアケア用品
- 医薬品。とくにシュガーレスのシロップやエリキシルなど、薬の甘味の基剤に高い頻度で含まれるとされています
- ピーナッツバター(主に海外市場の低糖質・シュガーレス製品の問題です。日本で流通する製品での使用例は今回確認できませんでした。輸入品や「低糖質」「シュガーレス」をうたう製品では原材料表示を確認してください)
標準マニュアルの要点にはこう書かれています。食品・ガム・キャンディ・薬(とくに液剤)などに「シュガーレス」と書かれていたら、原材料表示でキシリトールの有無を確認せよと。
空腹時の拾い食いがいちばん条件が悪い
公益社団法人 埼玉県獣医師会の解説によると、ビーグル犬への長期投与試験では、体重1kgあたり約1.3gのキシリトールを食事とともに2年間毎日与えても影響が出ず、約2.7g/kgまで増やすと肝障害を示す指標が上昇しました。
同会は「キシリトールによって起こされる低血糖は、ブドウ糖のもとになる食事が同時に与えられていると起こりにくいようです。逆にいうと単独でキシリトールを食べた場合、食べた量が少量でも危険だと考えられます」と結論しています。
犬が空腹時に、床に落ちたガムやカバンから出したタブレットを拾い食いするという、もっとも起こりやすい状況が、もっとも条件の悪い状況にあたります。電話のときは、食事の直後だったか空腹だったかも伝えてください。
すぐ動物病院へ相談すべきサイン
次のどれか一つでも当てはまれば、時間帯にかかわらず動物病院へ電話してください。低血糖のサインと肝障害のサインは見え方が違うので、両方を並べます。
- キシリトール入りの製品を食べた(食べたかもしれない)と分かった。症状がなくても該当します
- 「シュガーレス」「糖類ゼロ」「ノンシュガー」表示の製品や、原材料に「甘味料(キシリトール)」とある製品をかじった・飲み込んだ
- 嘔吐(最初に出やすいサインです)
- ふらつく、まっすぐ歩けない、立てない(運動失調・脱力)
- 元気がない、呼んでも反応が鈍い、ぐったりしている
- 全身または一部の震え・ぴくつきが止まらない
- けいれんしている(5分を超えて続く発作、短時間の発作を繰り返す場合はとくに緊急です)
- 意識がもうろうとしている、昏睡
- 歯ぐきが白い・青白い
- 黄疸(歯ぐき・白目・皮膚が黄色い)。肝障害を疑うサインで、24〜48時間以降に出ることがあります
- 皮膚や歯ぐきの点状出血・あざ、鼻血、血便、黒いタール状の便(凝固の異常)
- 食欲がまったくない、水も飲まない
- 体重の小さい犬である(同じ1粒でも体重あたりの量が跳ね上がります)
二段構えの中毒|低血糖と肝障害は別の量、別の時間
獣医学の標準マニュアルは、低血糖は体重1kgあたり約100mgを超える用量と関連づけられ、体重1kgあたり500mgを超えて摂取した犬の一部は重度の肝機能不全あるいは肝不全を起こしうるとしています。5倍の開きがあり、同じ「キシリトール中毒」でも量によって起こることが変わります。
| 低血糖 | 肝障害 | |
|---|---|---|
| 起こる量の目安 | 体重1kgあたり約100mg超 | 体重1kgあたり500mg超 |
| 症状が出る時間 | 摂取後30分以内のことがある。ガムなど吸収を遅らせる基剤に入っている場合は12〜18時間遅れることがある | 24〜48時間以降のことが多い(血液検査での肝酵素の上昇は4〜12時間以内に検出できることが多い) |
| 見えるサイン | 嘔吐、脱力、ふらつき(運動失調)、元気消失、けいれん、昏睡 | 元気消失、嘔吐、黄疸、出血傾向(点状出血、あざ、血便) |
| 病院での監視 | 血糖を1〜2時間ごとに最低12時間 | 肝酵素を24時間ごとに最低72時間 |
| 予後 | 単純な低血糖なら、早く治療を始められれば良好とされる | 肝障害の症状が出た犬では、積極的な治療にもかかわらず62.5%が死亡または安楽死となったという報告がある |
この表を「まず低血糖、次に肝障害」という一本道として読まないでください。標準マニュアルは、キシリトールによる肝障害を起こした犬のすべてが低血糖になるわけではないと明記しています。インスリンの過剰投与のときに見られるのと同じような、血糖の反跳的な上昇が背景にある可能性が示されています。
つまり、「今日は血糖が下がらなかった」ことは、肝臓が無事であることの証明になりません。肝酵素を72時間見るという方針は、そのためにあります。
体重あたりの量と、粒数への換算
含有量が分かっている製品の例として、ロッテの「キシリトールガム<ライムミント>」があります。特定保健用食品なので、公式サイトに1パック21g(14粒)にキシリトール7.0gと表示されています。1粒あたり約0.5g(=500mg)という計算になります。
この値を、標準マニュアルの目安に当てはめると次のようになります。あくまで、この製品の値を当てはめた場合の計算です。
この表は、危険がどれだけ身近かを示すためのもので、安全を判定するためのものではありません。1粒あたりの量は製品によって大きく違い、含有量が表示されていない製品のほうが多いためです。
そして何より、閾値を下回れば安全という関係が成り立っていません。
| 体重 | 100mg/kg(低血糖の目安)に相当する量 | 500mg/kg(肝障害の目安)に相当する量 | 1粒500mgのガムなら |
|---|---|---|---|
| 2kg | 200mg | 1,000mg(1g) | 低血糖の目安は半粒未満、肝障害の目安は約2粒 |
| 5kg | 500mg | 2,500mg(2.5g) | 低血糖の目安は約1粒、肝障害の目安は約5粒 |
| 10kg | 1,000mg(1g) | 5,000mg(5g) | 低血糖の目安は約2粒、肝障害の目安は約10粒 |
| 20kg | 2,000mg(2g) | 10,000mg(10g) | 低血糖の目安は約4粒、肝障害の目安は約20粒 |
米国の3つの大学病院で犬192頭を解析した研究では、推定摂取量の中央値は体重1kgあたり0.32g(範囲0.03〜3.64g)でした。症状が出たのは41頭(21%)、低血糖になったのは30頭(15.6%)でしたが、低血糖になった犬とならなかった犬とで、推定摂取量に有意な差はありませんでした。体重1kgあたり0.03g(30mg)で低血糖になった犬も報告されています。
より新しい犬95頭の研究でも、摂取量は肝障害の発生と関連せず、受診前に症状が出ていた犬は肝障害を起こしやすく、催吐を受けた犬は肝障害を起こしにくかったという結果でした。量の計算より、早く病院に着くことのほうが結果を変えています。
日本の表示では「何mg入っているか」が分からない
飼い主が体重あたりの量を自分で計算しようとしても、日本の食品表示にはそもそも必要な数字が載っていません。制度上の理由が2つあります。
理由1|添加物に含有量の表示義務がない
消費者庁の解説資料によると、加工食品の食品添加物は「添加物欄」または「原材料名欄」に、食品中の添加物に占める重量の割合の高いものから順に、原則としてその物質名で表示されます。甘味料・着色料・保存料などは用途名を併記することになっており、甘味料の代表例としてキシリトールが挙げられています。
つまりパッケージには「甘味料(キシリトール)」とは書かれますが、何mg入っているかは書かれません。分かるのは「重量の多い順のどこに位置するか」という順序の情報だけです。
含有量が分かるのは、特定保健用食品などで「関与成分キシリトール ◯g」と表示されている場合に限られます。同じ棚に並ぶ製品でも、量が分かるものと分からないものがあります。
理由2|「糖類ゼロ」でもキシリトールは入っている
食品表示基準でいう「糖類」は、単糖類および二糖類であって糖アルコールでないものに限ると定義されています。キシリトールは糖アルコールなので、この「糖類」には含まれません。
そのため、食品100g(飲料は100mL)あたり糖類0.5g未満であれば「糖類ゼロ」「無糖」「ノンシュガー」「シュガーレス」と表示できます。実際、先ほどのガムは栄養成分表示が「糖類0g」でありながら、1パックにキシリトールを7.0g含みます。
「シュガーレス」は、安全の印ではなく、むしろキシリトールが入っている可能性を示すサインとして読んでください。
だからパッケージごと持って行く
量が分からないまま受診して構いません。「分からない」ことも情報として伝えてください。そのうえで、パッケージ・残った製品・空き袋をそのまま病院へ持って行くのが、量を推定するもっとも確実な方法です。
ボトルタイプなら残った粒を数え、もとの入り数との差から食べた数を推定できます。原材料表示でキシリトールが何番目に書かれているかも、判断の材料になります。
今、自宅でできること
ここに書くのは治療ではありません。病院に着くまでに、これ以上悪くしないことと、診察に必要な情報をそろえることが目的です。
- 動物病院へ電話する。最初に「キシリトール入りのガム(お菓子)を食べた」と伝えてください。夜間・休診日ならこのあとの案内を見てください
- 残っている製品を犬の届かない場所へ片付ける(追加で食べさせない)
- パッケージ・原材料表示・残った製品をそのまま取っておく。写真も撮っておく
- 量を推定する材料をそろえる(残った粒を数える、何粒入りの何粒がなくなったか、包装シートの空いた数、袋の残量)
- 特定保健用食品なら、栄養成分表示の「関与成分キシリトール ◯g」を確認して伝える
- 食べた時刻と、気づいた時刻を分けてメモする。食事の直後だったか、空腹時だったかも
- 犬の体重を確認する(用量の判断に使われます)
- 症状が出た時刻・内容・回数を時系列でメモする。ふらつき・震え・けいれんは動画に残すと診察で役立ちます
- 吐いた場合は吐いた物を写真に撮り、可能なら保存する(ガムのかけらが出ていないか)
- 静かで安全な場所に移し、段差や階段から遠ざける(ふらついて転落する危険があります)
- キャリー・タオル・持病の薬の情報を用意し、移動中も犬から目を離さない
- 同じ製品を他の犬が食べていないか確認する
糖分を与えるかどうかは、自宅で口に何かを入れる前に、電話でつながった獣医師の指示を受けてください。摂取直後に何かを与えることが、病院での処置や検査の判断に影響することがあります。
やってはいけないこと
以下は犬を危険にさらすか、受診を遅らせる行為です。ひとつも行わないでください。
- 自宅で吐かせようとする。オキシドール(3%過酸化水素水)、食塩水、指を喉に入れる方法は、いずれも行わないでください。キシリトールでは低血糖が急に来るため、吐かせようとしている最中に意識が落ちると誤嚥の危険があります
- 意識がはっきりしない犬・けいれんしている犬の口に、砂糖水・はちみつ・ガムシロップ・食べ物・水を入れる。誤嚥と気道閉塞の危険があります
- 低血糖を治すつもりで、シュガーレス/カロリーゼロの飴・シロップ・ガムを与える。そこにキシリトールが入っていれば、悪化させることになります
- 市販の活性炭やサプリメントを自己判断で与える(活性炭はキシリトールをほとんど吸着せず、推奨されていません)
- 「1粒だけだから」「元気そうだから」と自己判断で受診を見送る
- 30分〜数時間なんともなかったことを根拠に受診をやめる(ガムでは12〜18時間遅れることがあり、肝障害の症状は24〜48時間以降です)
- 血糖がその場で上がったことを理由に、肝臓の確認をやめる
- 獣医師の指示なしに人用の薬(血糖の薬、吐き気止め、鎮静薬など)を与える
- パッケージを捨てる(量の推定と成分の確認ができなくなります)
- けいれんしている犬の口に指や物を入れる、抱きしめて押さえ込む
- 獣医師の指示なしに、自己判断で絶食させる
「まず砂糖をなめさせてから病院へ」という説明を見かけることがあります。しかし低血糖は24時間以上続くことがあり、治療は補助のブドウ糖なしで血糖が保てるようになるまで続けるものとされています。標準マニュアルは、体重1kgあたり100mgを超えて摂取した犬について入院と1〜2時間ごとの血糖測定を求めています。自宅で糖分を与えることは、この時間を短くする代わりにはなりません。
自宅ですでに糖分を与えてしまった場合は、何をどれくらい何時に与えたかを、必ず正直に病院へ伝えてください。叱られる話ではなく、その後の判断に必要な情報です。
動物病院へ伝える情報
- 犬種・年齢・体重(用量の判断に使われます)
- 製品名とメーカー名。可能ならパッケージの現物、なければ写真
- 原材料表示に「甘味料(キシリトール)」があるか、何番目に書かれているか(重量の多い順に並びます)
- 特定保健用食品なら、栄養成分表示の「関与成分キシリトール ◯g/1パック◯g」の値
- 内容量と残量から推定した摂取量(粒数・g)。分からなければ想定される上限
- 食べた時刻(推定で構いません)と、気づいた時刻
- 食事の直前・直後だったか、空腹時だったか
- 現在の症状の有無、出た時刻、内容、回数(嘔吐・ふらつき・震え・けいれん・黄疸など)
- けいれんがあれば開始時刻・続いた時間・回数(動画があれば見せる)
- 既往(肝臓の病気、糖尿病、低血糖の既往)と、飲んでいる薬・サプリメント
- 他に同時に食べた可能性のあるもの(チョコレート、ぶどう・レーズン、人の薬など)
- 自宅で糖分を与えたなら、何をどれくらい何時に与えたか(獣医師の指示があったかどうかも含めて正直に)
- 測れる状況なら体温
病院での検査と治療|日帰りで終わらないことがある
早期で症状がない場合には、獣医師の管理下での催吐(消化管の除染)が検討されます。活性炭はキシリトールをほとんど吸着しないため使われません。
そのうえで、標準マニュアルは監視の時間をはっきり決めています。体重1kgあたり100mgを超えて摂取した犬は入院させて血糖を測り、1〜2時間ごとに最低12時間監視する。500mgを超えて摂取した犬は、血糖が正常でもブドウ糖を投与し、肝酵素を24時間ごとに最低72時間評価する、という方針です。
低血糖は24時間以上続くことがあり、補助のブドウ糖なしで血糖が保てるようになるまで治療を続けるとされています。肝臓を守る薬(N-アセチルシステイン、SAMe、シリマリンなど)が検討されることもありますが、その有効性は不明とも書かれています。
つまり、最短でも半日、状況によっては3日程度の入院になりうる中毒です。日帰りで終わらない前提で、預ける準備をして向かってください。具体的な治療と入院期間は、犬の状態と摂取量で変わります。担当の獣医師の説明に従ってください。
予後には二面あります。単純な低血糖であれば、早く治療を始められた場合の見通しは良好とされています。一方で、肝障害の症状が出た犬では、積極的な治療にもかかわらず62.5%が死亡または安楽死となったという報告があります。早く行けば助かりやすい中毒であり、遅れると重くなる中毒でもあるということです。
夜間・休日でかかりつけの動物病院が閉まっている場合
夜間や休診日にかかりつけの病院が閉まっているときは、近くの夜間・救急動物病院を確認してください。向かう前に必ず電話をしてください。夜間は予約制のところや、受け入れられる状態かどうかがその時々で変わるところがあります。
電話では、「何が起きたか」「いつからか」「犬の年齢と体重」「今の様子」を伝えてください。その場でできることを教えてもらえたり、より適した病院を案内してもらえることがあります。
- 全国の夜間・救急動物病院まとめ(都道府県・市区別)
- 東京23区 都心3区(千代田・中央・港)の夜間・救急動物病院
- 横浜市の夜間・救急動物病院
- 大阪市の夜間・救急動物病院
- 名古屋市の夜間・救急動物病院
- 札幌市の夜間・救急動物病院
- 福岡市の夜間・救急動物病院
- 夜間救急動物病院に連れて行くべき症状の判断基準(犬猫共通)
電話の最初に「キシリトール入りのものを食べた」と伝えてください。血糖と肝酵素の監視が必要になる中毒だと分かれば、受け入れの可否や準備の判断が早くなります。
向かうときはパッケージと残った製品を持って行ってください。夜間は開いている店がなく、あとから同じ製品の表示を確認できません。
なお、「食べたかどうか分からないまま、子犬が急にぐったりして震えている」という状況は、この記事とは入口が違います。この記事は「食べた(かもしれない)」ところから始まる話で、子犬に特有の低血糖の原因や、けいれんしている犬への対応は別のテーマとして扱います。いずれの場合も、まず動物病院へ電話してください。
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よくある質問
ガムを何粒食べたら危険ですか?
危険は粒数ではなく、体重1kgあたりのキシリトール量で決まります。低血糖は約100mg/kg超、肝障害は500mg/kg超が目安です。含有量が確認できた例では、あるトクホのガムが1パック21g(14粒)にキシリトール7.0g=1粒あたり約500mgでした。この値なら、体重5kgの犬は1粒で100mg/kg、5粒で500mg/kgに達する計算になります。
ただし1粒あたりの量は製品によって違い、日本では含有量が表示されない製品のほうが多いのが実情です。パッケージごと持って受診するのが最短です。加えて、体重1kgあたり0.03gで低血糖になった犬も報告されており、計算上の閾値を下回るから安全とは言えません。
「シュガーレス」なら糖分が入っていないのに、なぜ危険なのですか?
食品表示基準でいう「糖類」は、単糖類および二糖類であって糖アルコールでないものに限られます。糖アルコールであるキシリトールは、この「糖類」に含まれません。そのため食品100gあたり糖類0.5g未満であれば「糖類ゼロ」「無糖」「ノンシュガー」「シュガーレス」と表示できます。
実際に、栄養成分表示が「糖類0g」でありながらキシリトールを7.0g含むガム製品があります。「シュガーレス」は、むしろキシリトールが入っている可能性を示すサインです。獣医学の標準マニュアルの要点も、シュガーレスと書かれていたら原材料表示で確認せよとしています。
何時間後に症状が出ますか?
低血糖の症状は摂取後30分以内に出ることがありますが、ガムなど吸収を遅らせる基剤に入っている場合は12〜18時間遅れることがあります。症状は嘔吐、脱力、ふらつき、元気消失、けいれん、昏睡です。
肝障害の症状は24〜48時間以降に出ることが多く、血液検査での肝酵素の上昇は摂取後4〜12時間で検出できることが多いとされています。「30分たっても元気」「今日は何ともなかった」は、安全の証明になりません。
低血糖が出ませんでした。もう大丈夫ということですか?
そうとは言えません。獣医学の標準マニュアルは、キシリトールによる肝障害を起こした犬のすべてが低血糖になるわけではないと明記しています。インスリンの過剰投与のときに見られるのと同じような、血糖の反跳的な上昇が背景にある可能性が示されています。
だからこそ、500mg/kgを超えて摂取した犬では血糖が正常でもブドウ糖を投与し、肝酵素を24時間ごとに最低72時間評価するという方針になっています。血糖と肝臓は別々に確認してもらってください。
砂糖をなめさせて元気になりました。受診しなくてもいいですか?
受診してください。低血糖は24時間以上続くことがあり、補助のブドウ糖なしで血糖が保てるようになるまで治療を続ける必要があるとされています。その場で血糖が上がっても、肝障害のリスクは別に残ります。
また、意識が落ちている犬の口に何かを入れるのは誤嚥・気道閉塞の危険があります。自宅で糖分を与えるのは、電話でつながった獣医師の指示があるときだけにしてください。与えた場合は、何をどれくらい何時に与えたかを必ず正直に伝えてください。
パッケージに何mg入っているか書いてありません。どうすればいいですか?
日本の食品表示では、添加物は物質名(甘味料は用途名を併記)で重量の多い順に書かれるだけで、含有量の表示義務がありません。含有量が分かるのは、特定保健用食品などで「関与成分キシリトール ◯g」と表示されている場合です。
分からないまま受診して構いません。パッケージ・残った製品・空き袋をそのまま持って行けば、原材料の並び順や内容量から推定が進みます。ボトルタイプなら残った粒を数え、もとの入り数との差から食べた数を伝えてください。
歯磨き粉やタブレットも危ないですか?
獣医学の標準マニュアルは、キシリトールの供給源としてガム・キャンディ・ミント・焼き菓子のほか、歯磨き粉などの口腔ケア用品、チュアブルのビタミン・サプリメント、日焼け止め、化粧品、医薬品を挙げています。シュガーレスのシロップやエリキシルなど、薬の甘味の基剤にも高い頻度で含まれるとされています。
人用の歯磨き粉を犬の歯みがきに使わないでください。犬はうがいができず、飲み込みます。人の薬、とくに液剤・シロップ・チュアブル錠については、添加物の表示にキシリトールがないかを確認してください。
猫がキシリトールを食べた場合はどうですか?
獣医学の標準マニュアルは、キシリトール中毒が報告されている家畜動物種は犬のみだとしています。一方で、日本の獣医師会の解説は「猫に対する影響はわかっていません」としており、資料によって記述に差があります。
この記事で言えるのは「猫では報告がない」というところまでです。安全だから与えてよい、という意味にはなりません。猫が食べた場合も動物病院に相談してください。
子犬が食べました。何か違いますか?
同じキシリトール中毒ですが、子犬・小型犬は体重が小さいぶん、同じ1粒でも体重あたりの量が跳ね上がります。もともと肝臓のグリコーゲンの蓄えが乏しく低血糖になりやすいことも重なります。
対応は同じです。量にかかわらず動物病院に電話し、パッケージを持って受診してください。なお、キシリトールを食べたかどうか分からないまま子犬がぐったりして震えている場合は、絶食や感染症など別の原因も考えられるため、症状の側から相談してください。
まとめ
- 犬に固有の中毒。キシリトールがインスリンの急激な放出を起こす。人を含む大半の哺乳類ではこの反応は起きない
- 低血糖は約100mg/kg超、肝障害は500mg/kg超と閾値が別。低血糖は30分以内〜ガムでは12〜18時間遅延、肝障害の症状は24〜48時間以降
- 「低血糖が出なかったから安心」とは言えない。肝障害を起こした犬のすべてが低血糖になるわけではないと明記されている
- 用量だけで安全は判断できない。192頭の研究で低血糖群と非低血糖群に摂取量の有意差はなく、0.03g/kgで低血糖になった犬がいる
- 日本の表示では含有量が分からない。添加物の量に表示義務はなく、糖アルコールは「糖類ゼロ」と書ける。パッケージごと持って受診する
- 無症状でも監視の時間が決まっている(血糖は最低12時間、肝酵素は最低72時間)。日帰りで終わらないことがある
- 家で吐かせない。活性炭も効かない。低血糖を治すつもりでシュガーレス製品を使わない
- 猫については報告がないというところまでで、安全という意味ではない
参考資料
この記事は次の資料を参照して作成しました(2026年9月9日確認)。記載内容は一般的な情報であり、個々の症例の診断・治療に代わるものではありません。判断に迷うときは、自己判断せず動物病院に相談してください。
- Xylitol Toxicosis in Dogs(用量の閾値、時間経過、監視の時間、治療、予後)(Merck Veterinary Manual(Professional版))
- 犬のキシリトール中毒に注意!!(公益社団法人 埼玉県獣医師会)
- Household Food Items Toxic to Dogs and Cats(Front Vet Sci. 2016;3:26。キシリトールの節。犬192頭の研究を引用)(Cortinovis C, Caloni F.(ミラノ大学)PubMed Central(PMC4801869))
- 糖に関する表示について〜新たな食品表示基準の下で〜(「糖類ゼロ」の定義と糖アルコールの扱い)(独立行政法人 農畜産業振興機構(alic)/執筆:精糖工業会)
- 食品表示の内容を正しく理解するための“食品添加物表示に関するマメ知識”(PDF)(消費者庁)
- キシリトールガム<ライムミント>(原材料・栄養成分表示。1パック21g/14粒にキシリトール7.0g)(株式会社ロッテ 公式サイト)