子犬の下痢が止まらないとき|成犬より急ぐ理由と、パルボを疑うサイン
子犬の下痢に、成犬と同じ物差しは使えません。「何時間なら様子を見てよい」と示した資料は見つかりませんでした。だから時間ではなく、所見で線を引きます。ワクチンが未接種または接種の途中、元気がない、嘔吐を伴う、血便、悪臭の強い水様便、震えやふらつき、体が冷たい。このどれかがあれば、その日のうちに動物病院へ電話してください。
そして、家でやりがちな2つを先に止めておきます。子犬を絶食させないこと。水を止めないこと。子犬はブドウ糖の蓄えがほとんどなく、わずかな絶食でも低血糖になりうるとされています。この記事は、迎えたばかりの子犬が今日下痢をしている、その状況で何を確認していつ動くかをまとめたものです。成犬の嘔吐・下痢が続くときの考え方は別の記事にまとめてあります。
ワクチンが未接種・接種途中の子犬の下痢では、動物病院に着く前に電話してください。パルボウイルスは環境中で1年以上生存し、便・吐いた物・人の靴底や衣服を介して他の犬に広がります。待合室での接触を避けられるよう、電話の段階で「未接種の子犬の下痢」と伝えてください。
人用の下痢止めを与えないでください。ロペラミド(イモジウム)は、MDR1という遺伝子変異のある犬では、下痢の治療に使う量でも神経毒性を起こします。この変異は北米のデータでコリー70%、シェットランド・シープドッグ15%、雑種5%などに見られ、純血種でなくても無関係ではありません。
「明日になっても治らなかったら行く」と決めて夜を越さないでください。パルボの初期症状は元気消失・食欲不振・発熱という非特異的なもので、そこから24〜48時間で嘔吐と出血性の下痢へ進むとされています。「まだ元気」に見える時期が、進行前の段階であることがあります。
30秒で判断|どの速さで動くか
| 動き方 | 当てはまるもの |
|---|---|
| 今すぐ受診 電話しながら向かう |
|
| 早めに相談 その日のうちに電話する |
|
これは受診の優先度を決めるための目安で、病名を判断するためのものではありません。どれにも当てはまらなくても、いつもと違うと感じたら電話して構いません。迷っている時間そのものが、動物にとっては待ち時間になります。
成犬向けによく示される「48〜72時間で治らなければ受診」という目安は、子犬にはそのまま当てはめられません。子犬の下痢について「何時間なら待ってよいか」を示した資料が見つからなかったため、この記事では『条件つきで経過観察』の行を置いていません。
まず確認すること
電話の前に、次の5つを手元にそろえてください。とくに1と2は、獣医師が最初に知りたい情報です。
- 週齢(生年月日)と体重。今日の値と、分かれば数日前の値
- ワクチンの接種歴(接種日・回数・種類。証明書があれば現物を持参してください)
- 迎えた日と入手先(ペットショップ・ブリーダー・保護団体・知人)、駆虫の有無と実施日
- 下痢の様子(始まった時刻、これまでの回数、色、かたさ、血の有無、におい)。便の写真
- 最後に食べた時刻・飲んだ時刻と、嘔吐の有無・回数
「1回打ったから大丈夫」ではありません
パルボウイルス腸炎に最も感受性が高いのは、生後6週〜6か月の、未接種または接種が完了していない犬だとされています。ワクチンを受けた母犬から生まれた子犬は当初は移行抗体で守られますが、その抗体が下がるにつれて感受性が上がります。
つまり、「接種を1回しただけ」「あと1回残っている」という段階は、守られていない可能性がある時期です。まず確認すべきは、証明書の日付と回数になります。
接種スケジュールそのものについては、ワクチンを扱った記事のほうが詳しいので、落ち着いてから読んでください。
便は写真に撮り、可能なら持って行く
便の色・かたさ・血の有無は、時間が経つと変わります。その場で写真を撮ってください。新しい便の一部をビニール袋に入れて持って行けば、そのまま検査に使えます。
寄生虫の検査は、糞便の遠心浮遊法や抗原検査・PCRを組み合わせて行うものとされています。便があるかないかで、初診でできることが変わります。
すぐ動物病院へ相談すべきサイン
次のどれか一つでも当てはまれば、時間帯にかかわらず電話してください。時間ではなく、この一覧で線を引いてください。
- ワクチンが未接種、または接種途中(最終回が終わっていない)
- 迎えてから2週間以内
- 血便(鮮血が混じる、または黒いタール状の便)
- 水様の下痢に強い悪臭がある
- 嘔吐を伴う。とくに水を飲んでも吐く、水も飲めない
- 元気がない、呼びかけへの反応が鈍い、ぐったりして寝たまま起きない
- 震えている、ふらつく、けいれん、意識がはっきりしない
- 体(とくに耳や足先、お腹)が冷たい
- 皮膚をつまんで戻りが遅い、歯ぐきが乾いている・白い・灰色っぽい
- 食べない・飲まない状態が続いている
- 体重が減ってきている
- 同居犬や同腹の兄弟犬にも下痢や嘔吐が出ている
- お腹が膨らんでいる、便や吐いた物に虫が混じっている
- 誤食の可能性がある(おもちゃ・ひも・ペットシーツ・観葉植物など)
- 生後8週齢未満、あるいは体重1kg前後の超小型犬種の子犬
脱水を自分で確定させようとしないでください。皮膚をつまむ方法や歯ぐきの湿り気は獣医師が使う所見ですが、飼い主が子犬で行った場合の精度を検討した資料は確認できませんでした。「あやしければ電話する」でかまいません。
なぜ成犬より急ぐのか|子犬の3つの弱点
「同じ下痢なのに、なぜ子犬だけ急ぐのか」。理由は根性論ではなく、体のつくりの違いです。獣医学のリファレンスが挙げているのは次の3点です。
| 弱点 | 何が書かれているか | 下痢のときに何が起きるか |
|---|---|---|
| 体液の余裕がない | 新生子は成犬より体水分の割合が高く、体脂肪が少ない | 同じ量を失っても、体にとっての比率が大きい。予備のエネルギーもない |
| 低血糖になりやすい | ブドウ糖の予備がなく、糖新生(体内で糖を作る働き)の能力は最小限しかない。わずかな絶食でも低血糖になりうる | 食べられない・吸収できない時間が、そのまま低血糖につながる。震え・ふらつき・けいれん・意識の低下として出る |
| 体温を保てない | 子犬・子猫は4週齢まで体温調節の機構を持たない。低体温はイレウス(腸が動かなくなること)を起こし、吐き戻しと誤嚥につながりうる | 冷えると腸が止まる。冷えた子犬の口に水や食べ物を入れると、誤嚥の危険が上がる |
この3点は、そのまま家でできることの中身になります。体を冷やさない。水を止めない。食事を長く止めない。そして、震えやふらつきが出たら低血糖のサインとして扱い、電話してください。
そこに、未接種・接種途中の時期にはパルボという進行の速い原因が加わります。だから子犬では、成犬向けの目安がそのまま使えません。
パルボウイルスを疑うかどうか|今日の判断材料
ここで扱うのは、今この下痢でパルボを疑うかどうかを決めるための材料だけです。病気そのものの解説、感染経路の詳細、消毒の方法、ワクチンスケジュールは、パルボを扱った記事のほうが詳しく書いてあります。
- 週齢と接種状況:生後6週〜6か月の未接種・接種途中がもっとも感受性が高いとされています
- 時間の経過:初期症状は元気消失・食欲不振・発熱という非特異的なもので、そこから24〜48時間で嘔吐と出血性の小腸性下痢へ進みうるとされています。潜伏期は通常5〜7日、幅は2〜14日
- 血便の有無だけでは決まらない:約25%は非出血性の下痢だとされています。「血が出ていないからパルボではない」とは言えません
- 便の性状:粘液様から純粋な出血性まで幅があり、強い悪臭を伴うとされています。ただし、においで他の病気と区別できるとした資料は見つかりませんでした
重症例では、虚脱、毛細血管再充満時間の延長、脈が弱い、頻脈、低体温といった、敗血症性ショックに一致する所見が現れるとされています。ここまで来る前に受診してください。
受診をためらわないための情報も、あわせて置いておきます。適切な支持療法を受ければ70〜90%が生存し、入院して管理した場合の生存率は90%を超えるとされています。一方、治療を受けなかった場合の生存率は9%程度まで下がりうるという報告があります。「治療しても助からない病気」ではなく、「早く始めれば大半が助かる病気」です。受診の遅れが、そのまま結果に響きます。
パルボ以外に多い原因|「ストレスでしょう」で終わらせない
環境が変わって下痢をすること自体はあります。ただし「ストレス性」は、他の原因を除外したうえで初めて言えることです。迎えたばかりの子犬では、次のような原因が実際に多いとされています。ここでも扱うのは鑑別の材料までで、治療や駆虫薬の選び方は別の記事に譲ります。
ジアルジア
急性・間欠性・慢性のいずれの下痢も起こし、便はしばしば悪臭があり、粘液を含むことがあるとされています。おならや嘔吐を伴うこともあります。多くは症状の出ない感染で、シェルター・繁殖施設・ケンネルの動物のほうが保有しやすいと、寄生虫のガイドラインが述べています。ペットショップやブリーダーから迎えた直後という状況は、まさにこの集団にあたります。
診断には、直接塗抹・遠心浮遊法・感度と特異度の高い糞便の抗原検査またはPCRを組み合わせることが推奨されています。1回の便検査で出ないこともある、ということです。
コクシジウム
体重減少と脱水を伴う下痢を起こし、出血はまれとされています。若い動物のほうが感染しやすいとされています。
注意すべきなのは、「便から出たから原因はこれ」と決められないことです。ガイドラインは「糞便中にオーシストがあることだけでは、それが症状の原因である証拠にはならない」と明記しています。寄生虫が見つかっても、パルボなど他の原因が同時にあることがあります。
回虫
犬回虫は母犬から胎盤を通じて子犬へ移行します。胎内で感染した子犬は2.5〜3週齢から虫卵を出し始めるとされ、迎えた時点ですでに感染していることがあります。子犬では発育不良、体重が増えない、毛づやが悪い、そしてお腹がぽっこり膨れるのが典型とされています。
ガイドラインは、すべての子犬に2・4・6・8週齢での駆虫を行い、以降は毎月の予防薬を続けることを求めています。「駆虫歴が分からない」という状態は、それ自体が相談する理由になります。
市販の駆虫薬を自己判断で使わないでください。回虫と、コクシジウム・ジアルジア(どちらも原虫)では対処が違います。薬を選ぶには、まず原因を決める必要があります。そして自己判断で薬を試すあいだに、パルボのように急ぐ原因の受診が遅れます。
子犬では絶食させないでください
「下痢をしたらまず絶食させて胃腸を休ませる」という説明は、いまでもよく見かけます。子犬では、これが危険になります。
理由の1つめは低血糖です。獣医学のリファレンスは、新生子について「ブドウ糖の予備を欠き、糖新生の能力は最小限しかない」「わずかな絶食でも低血糖になりうる」と明記しています。臨床的な低血糖は血糖値30〜40mg/dL未満とされています。
2つめは、重症の症例を対象にした比較試験の結果です。重度のパルボ腸炎の犬30頭をランダムに2群に分けた研究(Mohrら, 2003)では、嘔吐が止まるまで絶食させた群(実際には入院から平均50時間の絶食)より、入院12時間後から経鼻食道チューブで栄養を始めた群のほうが、元気・食欲・嘔吐・下痢の正常化がいずれも1日早く、体重も有意に増えました。腸の透過性の指標も、栄養を早く入れた群で改善しています。現在のリファレンスも、早期の経腸栄養が早い臨床的改善・体重増加・腸のバリア機能の改善と関連するとして、これを支持しています。
以上から、この記事の立場は「子犬を絶食させない。食事を止めるとしても12時間を超えない」です。ただし正直に書いておくと、12という数字そのものを直接定めた一次資料は確認できませんでした。根拠は上の2点(わずかな絶食でも低血糖になりうること、12時間後から栄養を入れた群のほうが良好だったこと)で、覚えておくべきは数字より原則のほうです。
そして、何をいつから食べさせるかは治療の一部です。上の研究はチューブを使った獣医療の話であって、家庭での強制給餌を勧めるものではありません。水は止めないでください。点滴を受けている場合を除き、飲水を制限すると脱水が悪化します。食事の再開の仕方は、自己判断せず病院に電話して指示を受けてください。
ぐったりしている子犬、意識がはっきりしない子犬、体が冷えている子犬の口に、水・ミルク・砂糖水・食べ物を入れないでください。誤嚥の危険があります。低体温では腸の動きが止まり、吐き戻しが起こりやすくなるとされています。
この状態は「家で糖分を入れる場面」ではなく、「すぐ運ぶ場面」です。電話をしながら向かってください。
人用の下痢止めを与えないでください|ロペラミドとMDR1
家にある人用の下痢止めを少しだけ、というのは、犬種によっては命に関わります。ワシントン州立大学の獣医診断検査室は、ロペラミド(イモジウム)について「下痢の治療に用いる用量で、MDR1変異のある犬に神経毒性を起こす。この薬はMDR1変異のあるすべての犬で避けるべきである」と明記しています。同大学は、この変異を最初に発見し遺伝子検査を開発した研究機関です。
MDR1変異の保有率は犬種によって大きく違います。北米のデータでは、コリー70%、オーストラリアン・シェパード(ミニチュアを含む)50%、シェットランド・シープドッグ15%、イングリッシュ・シェパード15%、ジャーマン・シェパード10%、牧羊犬系の交雑犬10%、雑種5%、オールド・イングリッシュ・シープドッグ5%、ボーダー・コリー5%未満と報告されています。日本で飼育頭数の多い犬種も含まれており、「うちはコリーではないから」とは言えません。これは北米の頻度で、日本国内の保有率のデータは確認できませんでした。
コーネル大学獣医学部も、犬の下痢の解説で「獣医師の指示がない限り、ペプトビスモル(ビスマスサリチル酸)やイモジウム(ロペラミド)のような人用の薬は決して試さないこと。犬によっては有害になりうる」と述べています。
人用の整腸薬・胃薬・解熱鎮痛薬(ロキソプロフェン、イブプロフェン、アセトアミノフェンなど)も同じです。すでに飲ませてしまった場合は、隠さず病院に伝えてください。治療の判断が変わります。
今、自宅でできること
ここに書くのは治療ではありません。病院に着くまでに、これ以上悪くしないことと、診察に必要な情報をそろえることが目的です。
- 動物病院へ電話する。子犬であること、週齢、ワクチン歴、下痢の様子、迎えた時期を伝え、来院前に指示を受ける
- 水は止めない。自分で飲める状態なら、いつでも飲めるようにしておく
- 体を冷やさない。毛布やタオルで包み、室温を保つ(保温器具を使うなら低温やけどに注意し、子犬が自分で離れられる配置にする)
- 下痢の開始時刻、回数、色、血の有無、においを、時刻とともに記録する
- 便を写真に撮る。可能なら新しい便の一部をビニール袋に入れて持って行く
- 嘔吐があれば回数と時刻、吐いた物の見た目も記録する
- 最後に食べた時刻・飲んだ時刻を記録する
- 毎日同じ時間に体重を量って記録する
- ワクチン接種証明書、駆虫の記録、迎えた日付と入手先の書類を用意する
- 他の犬から隔離する。トイレシーツはすぐ片づけ、床と手を洗う。散歩やドッグランは中止する
- キャリーとタオルを用意し、移動中は静かに保つ
- 食事をいつからどう再開するかは、自己判断せず病院に電話して指示を受ける
やってはいけないこと
以下は子犬を危険にさらすか、受診を遅らせる行為です。ひとつも行わないでください。
- 人用の下痢止め(ロペラミド/イモジウム、ビスマスサリチル酸/ペプトビスモル)を与える。MDR1変異のある犬では、下痢の治療量でも神経毒性を起こします
- 人用の整腸薬・胃薬・解熱鎮痛薬(ロキソプロフェン、イブプロフェン、アセトアミノフェンなど)を与える
- 獣医師の指示なしに、成犬用や他の犬に処方された薬を飲ませる
- 「胃腸を休ませる」といって絶食させる。食事を止めるとしても12時間を超えないでください
- 水を止める(点滴を受けている場合を除きます)
- ぐったりしている・意識がはっきりしない・体が冷えている子犬の口に、水・ミルク・砂糖水・食べ物を入れる(誤嚥の危険があります)
- 無理に吐かせようとする(オキシドールや食塩水を飲ませる、指を入れるといった方法は、いずれも危険です)
- 市販の駆虫薬を自己判断で与える
- 未接種の子犬を、電話なしで動物病院の待合室へ連れて行く。ドッグランや公園など、他の犬がいる場所へも行かない
- 「明日になっても治らなかったら行く」と決めて夜を越す
- インターネットで見た手作りの経口補水液や民間療法を試す
- すでに家庭で何かを飲ませたことを、言いにくさから病院に黙っている
動物病院へ伝える情報
- 生年月日・週齢、犬種、体重(今日の値と、分かれば数日前の値)
- 迎えた日と入手先(ペットショップ・ブリーダー・保護団体・知人)
- ワクチンの接種歴(接種日・回数・種類。証明書があれば現物を)
- 駆虫の有無と実施日、使った薬の名前
- 下痢が始まった時刻、これまでの回数、便の色・かたさ・血の有無・におい(写真があれば)
- 嘔吐の有無、回数、吐いた物の内容
- 最後に食べた時刻・食べた量、最後に水を飲んだ時刻
- フードの種類。迎えてからフードを切り替えたか、いつ、どのように
- 誤食の可能性(なくなっているおもちゃ・ひも・ペットシーツの破片など)
- 元気・反応の変化、震えやけいれんがあればその時刻と持続時間
- 同居している犬・猫の有無と、その子たちの体調
- これまでに家庭で与えたもの(食べ物・薬・サプリメント)をすべて正直に
- 可能なら便のサンプル(新しいもの)
- 自宅から病院までの移動にかかる時間
受診の前に電話する理由|他の犬にうつさないために
未接種の子犬の下痢で来院するとき、電話を先にすることには感染管理上の意味があります。パルボウイルスは環境中で1年以上生存しうるとされ、便・吐いた物・人の靴底や衣服を介して他の犬に広がります。待合室での接触を避けるために、別の入口や車で待つといった案内をしてもらえることがあります。
家族への影響についても整理しておきます。パルボウイルスは人には感染しません。犬のコクシジウム(Cystoisospora)も、人への感染の意義は知られていないとされています。ジアルジアは、犬から人への伝播はまれと考えられています。
一方で回虫は、人にとって重要な人獣共通寄生虫として扱われています。土を口に入れやすい小さな子どもでは、幼虫移行症の危険が挙げられています。便はすぐ片づけ、手を洗ってください。砂場や庭で遊んだあとも同じです。
同居犬や同腹の兄弟犬にも下痢や嘔吐が出ている場合は、そのことも電話で伝えてください。1頭の話ではなくなります。
夜間・休日でかかりつけの動物病院が閉まっている場合
夜間や休診日にかかりつけの病院が閉まっているときは、近くの夜間・救急動物病院を確認してください。向かう前に必ず電話をしてください。夜間は予約制のところや、受け入れられる状態かどうかがその時々で変わるところがあります。
電話では、「何が起きたか」「いつからか」「犬の年齢と体重」「今の様子」を伝えてください。その場でできることを教えてもらえたり、より適した病院を案内してもらえることがあります。
- 全国の夜間・救急動物病院まとめ(都道府県・市区別)
- 東京23区 都心3区(千代田・中央・港)の夜間・救急動物病院
- 横浜市の夜間・救急動物病院
- 大阪市の夜間・救急動物病院
- 名古屋市の夜間・救急動物病院
- 札幌市の夜間・救急動物病院
- 福岡市の夜間・救急動物病院
- 夜間救急動物病院に連れて行くべき症状の判断基準(犬猫共通)
電話では「生後◯か月の子犬」「ワクチンは◯回目まで」「下痢と嘔吐がある」の3点を最初に伝えてください。この3つで、受け入れの可否と急ぎ方の判断が早くなります。
夜間の病院でも、未接種の子犬であることを伝えれば、他の犬との接触を避ける案内をしてもらえることがあります。
あわせて読みたい
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- 子犬のワクチン接種スケジュールと費用の目安|獣医師監修・完全ガイド2026
よくある質問
子犬の下痢は、何時間くらい様子を見ていいですか?
「何時間なら待ってよい」と示した資料は見つかりませんでした。だから時間ではなく症状で線を引きます。ワクチンが未接種・接種途中、元気消失、嘔吐を伴う、血便、悪臭の強い水様便、震えやふらつき、体が冷たい。このどれかがあれば、その日のうちに電話してください。
パルボは初期には元気消失・食欲不振・発熱という非特異的な症状しか出ないことがあり、そこから24〜48時間で嘔吐と出血性の下痢に進むとされています。成犬向けの「48〜72時間で治らなければ受診」という目安を、そのまま子犬に当てはめないでください。
下痢のときは絶食させると聞きましたが、子犬でもそうですか?
子犬では絶食させないでください。子犬はブドウ糖の蓄えがほとんどなく、糖新生の能力も乏しいため、わずかな絶食でも低血糖になりうるとされています。食事を止めるとしても12時間を超えないでください。
重度のパルボ腸炎の犬30頭を対象にしたランダム化比較試験では、嘔吐が止まるまで絶食させた群(平均50時間)より、入院12時間後から栄養を入れた群のほうが回復が1日早く、体重も有意に増えました。水は止めないでください。何をいつから食べさせるかは治療の一部なので、自己判断せず病院に電話して指示を受けてください。
血便が出ていなければ、パルボではないですよね?
そうとは言えません。獣医学のリファレンスは、パルボ腸炎の犬の約25%は非出血性の下痢であるとしています。においや色だけでも判断できません。
血便の有無よりも、週齢と接種歴のほうがはるかに重要な手がかりになります。検査は動物病院で行えるので、疑うなら電話して相談してください。
人間用の下痢止めを、少しだけ飲ませてもいいですか?
やめてください。ロペラミド(イモジウム)は、MDR1という遺伝子変異のある犬では下痢の治療量でも神経毒性を起こします。ワシントン州立大学は、MDR1変異のあるすべての犬でこの薬を避けるべきとしています。
この変異は北米のデータでコリー70%、オーストラリアン・シェパード50%、シェットランド・シープドッグ15%、ジャーマン・シェパード10%、雑種5%に見られます。純血種でなくても無関係ではありません。コーネル大学も、ペプトビスモルやイモジウムを獣医師の指示なく試さないよう明示しています。
迎えたばかりで、環境が変わったストレスかもしれません
環境の変化で下痢が起きること自体はありますが、「ストレス性」は他の原因を除外したうえで初めて言えることです。ペットショップ・繁殖施設・シェルターの犬はジアルジアの保有率が高いことが、寄生虫のガイドラインで指摘されています。
回虫は母犬から胎盤を通じて移行し、胎内で感染した子犬は2.5〜3週齢から虫卵を出し始めるため、迎えた時点ですでに感染していることがあります。そして最も急ぐのがパルボです。ワクチンが完了していない時期は、ここを最初に確かめる必要があります。
市販の駆虫薬を飲ませれば治りますか?
原因によって対処が違います。回虫にはパモ酸ピランテルなどが用いられますが、コクシジウムやジアルジアは原虫で、回虫用の駆虫薬では対処できません。
寄生虫のガイドラインは、糞便にコクシジウムのオーシストが出たことだけでは症状の原因である証拠にならないとしています。自己判断で薬を選ぶと、パルボのように急ぐ原因の受診が遅れます。便を持って受診し、検査で原因を決めてもらってください。
他の犬や家族にうつりますか?
パルボウイルスは環境中で1年以上生存し、便・吐いた物・人の靴底や衣服を介して他の犬に広がります。人には感染しません。ジアルジアは犬から人への伝播はまれとされ、犬のコクシジウムは人への感染の意義が知られていないとされています。
一方で回虫は人にとって重要な人獣共通寄生虫で、土を口に入れやすい小さな子どもでは幼虫移行症の危険が挙げられています。便はすぐ片づけ、手を洗ってください。受診の前に電話して、待合室での他の犬との接触を避けられるよう相談してください。
成犬の下痢の記事と書いてあることが違うのは、なぜですか?
子犬は体水分の割合が高く体脂肪が少ないため、同じ量を失っても体への影響が大きくなります。ブドウ糖の蓄えがほとんどなく糖新生の能力も乏しいので、食べられない時間が低血糖に直結します。生後4週齢まで体温調節ができず、低体温になると腸が動かなくなって吐き戻しや誤嚥が起こります。
そこに、未接種・接種途中の時期にはパルボという進行の速い原因が加わります。成犬向けの目安をそのまま使えないのは、このためです。成犬の場合の考え方は、嘔吐・下痢が続くときの記事にまとめてあります。
まとめ
- 子犬に成犬と同じ物差しは使えない。「何時間なら待ってよい」と示した資料はなく、時間ではなく所見で線を引く
- 急ぐ理由は3つ。体水分の割合が高く体脂肪が少ない/ブドウ糖の蓄えがなく、わずかな絶食でも低血糖になりうる/4週齢まで体温調節ができず、低体温で腸が止まる
- 絶食させない。食事を止めるとしても12時間を超えない。水は止めない。重度のパルボ腸炎の比較試験では、早く栄養を入れた群のほうが回復が1日早かった
- 人用の下痢止めを与えない。ロペラミドはMDR1変異のある犬で下痢の治療量でも神経毒性を起こす。北米のデータでコリー70%、シェルティ15%、雑種5%
- パルボを疑う材料は週齢6週〜6か月と接種状況、初期は非特異的で24〜48時間で進行すること、約25%は血便を伴わないこと、悪臭のある粘液様〜出血性の便
- 「ストレス性」は他の原因を除外して初めて言える。ジアルジア、コクシジウム、回虫も多く、便から虫が出たことだけでは原因と決められない
- 受診の前に電話する。パルボは環境中で1年以上生存し、待合室で他の犬に広がる。回虫は人(とくに小さな子ども)にも危険がある
参考資料
この記事は次の資料を参照して作成しました(2026年9月9日確認)。記載内容は一般的な情報であり、個々の症例の診断・治療に代わるものではありません。判断に迷うときは、自己判断せず動物病院に相談してください。
- Management of the Neonate in Dogs and Cats(子犬の体水分と体脂肪、低血糖、4週齢までの体温調節と低体温によるイレウス)(Merck Veterinary Manual)
- Canine Parvovirus Infection (Parvoviral Enteritis) in Dogs(好発週齢と接種状況、24〜48時間での進行、約25%は非出血性、支持療法での生存率、早期経腸栄養)(Merck Veterinary Manual)
- Mohr AJ ほか. 重度のパルボウイルス腸炎の犬における早期経腸栄養の効果(J Vet Intern Med. 2003;17(6):791-798, PMID 14658714)(Europe PMC(抄録))
- Problem medications for dogs(ロペラミドはMDR1変異のあるすべての犬で避けるべきとする記載)(ワシントン州立大学 獣医診断検査室(WADDL))
- MDR1 in Dogs(犬種別のMDR1変異保有率。北米のデータ)(ワシントン州立大学 獣医診断検査室(WADDL))
- Diarrhea(犬の下痢。受診の目安と、人用薬を獣医師の指示なく使わないこと)(コーネル大学獣医学部 Riney Canine Health Center)
- Giardia Guidelines(症状、シェルター・繁殖施設での保有率、診断に複数の検査を組み合わせること)(Companion Animal Parasite Council (CAPC))