猫の死期が近づくとみられる兆候と、飼い主として知っておきたいこと
愛猫との別れは、飼い主にとって想像したくない瞬間です。しかし、猫の命には限りがあり、いつかは必ずその時がやってきます。大切な家族である猫が安らかに最期を迎えられるよう、飼い主として死期が近づいたときの兆候を知り、適切なケアをしてあげることが何よりも大切です。
この記事では、猫の死期が近づくとみられる行動や身体の変化、病院へ連れて行くべきかの判断基準、そして後悔しないために今できることについて、詳しくお伝えします。
猫の死期が近づくとみられる代表的な兆候
猫は本能的に弱っている姿を隠そうとする動物です。そのため、明らかな変化が現れたときには、すでにかなり体調が悪化していることも少なくありません。以下のような兆候がみられたら、注意深く観察してあげてください。
1. 食べなくなる・飲まなくなる
最も顕著な変化のひとつが、食欲の減退です。大好きだったおやつにも興味を示さなくなったり、水を飲む量が極端に減ったりします。これは体の機能が低下し、もはや栄養を摂取する必要性を感じなくなっているサインかもしれません。
数日間ほとんど何も口にしない状態が続く場合、体力は急速に失われていきます。脱水症状も進行するため、猫の体は徐々に衰弱していきます。
2. 動かなくなる・寝ている時間が増える
高齢の猫はもともと寝ている時間が長いものですが、死期が近づくとほとんど動かず、一日中同じ場所で丸くなっていることが増えます。トイレに行く気力もなくなり、その場で排泄してしまうこともあります。
呼びかけても反応が薄くなり、撫でてもほとんど動かない状態になることもあります。これは体力が極限まで低下しているサインです。
3. 呼吸の変化
呼吸が浅く速くなったり、逆にゆっくりと不規則になったりします。口を開けて苦しそうに呼吸することもあります。また、喉の奥でゴロゴロという音がする場合もあります。
これらは心肺機能の低下を示しており、体に十分な酸素が行き渡っていない可能性があります。
4. 体温の低下
健康な猫の体温は38〜39度程度ですが、死期が近づくと体温が下がり始めます。耳や肉球を触ってみて、いつもより冷たく感じる場合は、血液循環が悪くなっているサインです。
体が冷えると猫は本能的に暖かい場所を求めますが、動く気力がない場合はその場でじっとしていることもあります。
5. 隠れる・静かな場所を求める
野生の本能から、弱った姿を見せまいとして押し入れやベッドの下など、暗くて静かな場所に隠れることがあります。これは「死に場所を探している」ともいわれる行動です。
いつもは人懐っこい猫が急に距離を置くようになったり、逆に普段はクールな猫が飼い主のそばを離れなくなったりすることもあります。
6. 目の輝きの消失
健康な猫の目は潤いがあり、キラキラと輝いています。しかし死期が近づくと、目がくぼんで落ち窪んだようになり、光を失ったように見えることがあります。瞳孔の反応も鈍くなります。
7. グルーミングをしなくなる
猫は本来とても清潔好きな動物で、毎日念入りにグルーミングをします。しかし体調が悪化すると、毛づくろいをする気力がなくなり、被毛がパサパサになったり、汚れたままになったりします。
病院に連れて行くべきか?判断のポイント
愛猫に上記のような症状が現れたとき、飼い主として最も悩むのが「病院に連れて行くべきかどうか」という判断です。
治療できる病気であれば必ず病院へ
まず大前提として、治療可能な病気や怪我が原因で体調が悪化している可能性がある場合は、必ず動物病院を受診してください。
例えば次のようなケースでは、適切な治療によって回復が期待できます。
- 腎臓病の急性増悪(点滴治療で改善する可能性)
- 感染症による発熱や食欲不振
- 口内炎や歯周病による食欲低下
- 便秘や尿路閉塞などの排泄障害
- 糖尿病のコントロール不良
- 甲状腺機能亢進症の未治療
これらは治療によってQOL(生活の質)を大きく改善できる可能性があります。特に比較的若い猫(10歳未満)の場合は、一時的な体調不良である可能性が高いため、早めの受診が重要です。
獣医師の診察を受けることで、正確な診断と適切な治療方針を立てることができます。「様子を見よう」と判断する前に、まずは専門家の意見を聞くことをお勧めします。
末期症状で延命治療しかできないとき
一方で、高齢猫ですでに末期のがんや臓器不全と診断されており、これ以上の積極的治療が難しいケースもあります。
このような状況で獣医師から「延命治療として点滴や強制給餌を続けることはできますが…」と提案された場合、飼い主としては非常に難しい決断を迫られます。
個人的には、末期症状で苦痛を伴う延命治療しか選択肢がない場合、無理をさせないという選択も愛情のひとつだと考えています。
病院への移動自体が猫にとって大きなストレスになることもあります。慣れない場所で処置を受けることは、体力が衰えた猫にとって負担になる場合があります。
延命治療を選ぶべきか、自然な最期を迎えさせるべきかは、以下のような点を考慮して判断するとよいでしょう。
- 猫が明らかに苦しんでいるか
- 治療によって苦痛が軽減されるか
- 猫の性格(病院が極度に苦手など)
- 残された時間の質を重視するか、長さを重視するか
- 家族全員の気持ち
正解はありません。獣医師とよく相談し、「この子にとって何が最善か」を第一に考えて決断してください。
緩和ケア(ターミナルケア)という選択肢
最近では、動物医療でも「緩和ケア」という考え方が広がっています。治癒を目的とするのではなく、痛みや不快感を和らげ、できるだけ穏やかに過ごせるようサポートすることに重点を置くケアです。
在宅での点滴や痛み止めの処方など、猫の負担を最小限にしながらQOLを保つ方法もあります。「もう何もできない」と諦める前に、緩和ケアについて獣医師に相談してみるのもひとつの方法です。
猫の最期に寄り添うためにできること
猫の死期が近いと感じたとき、飼い主として何をしてあげられるでしょうか。
静かで安心できる環境を整える
猫が落ち着いて過ごせるよう、静かで温度が適切な場所を用意してあげましょう。柔らかい毛布やタオルで寝床を作り、体温が下がっている場合はゆるやかに温めてあげます(湯たんぽなどを毛布で包んで近くに置くなど)。
大きな音や急な動きは避け、穏やかな雰囲気を保ちます。
そばにいてあげる
猫は最期に飼い主のそばにいたいと感じることもあれば、一人になりたいと感じることもあります。猫の様子を見ながら、そっと寄り添ってあげてください。
優しく声をかけたり、そっと撫でてあげたりすることで、猫は安心感を得られます。「ありがとう」「大好きだよ」という気持ちを伝えてあげてください。
無理に食べさせない
食欲がなくなった猫に無理やり食べさせようとすると、かえってストレスになります。食べたがらない場合は、そっと見守ってあげることも大切です。
少しでも口にできそうなら、好きだった食べ物を少量与えてみるのもよいでしょう。
家族で見送る
可能であれば、家族全員で猫の最期を見送ってあげてください。子どもがいる場合は、年齢に応じて「命」について話し合う大切な機会にもなります。
猫が安らかに旅立てるよう、愛情を持って見守ってあげることが、飼い主として最後にできることです。
生きている以上、必ず死は訪れる―後悔しないために今できること
どんなに愛している猫でも、永遠に一緒にいることはできません。猫の寿命は人間よりもずっと短く、平均で15年前後です。生きている以上、必ず別れの日はやってきます。
だからこそ、その日が来たときに「もっと○○してあげればよかった」と後悔しないよう、今この瞬間を大切にすることが何よりも重要です。
「もっと遊んであげればよかった」と後悔しないために
猫を亡くした多くの飼い主が口にするのが「もっと遊んであげればよかった」「もっと一緒に過ごす時間を作ればよかった」という後悔の言葉です。
仕事で疲れて帰ってきたとき、猫が遊んでほしそうにおもちゃを持ってきても「明日ね」と先延ばしにしてしまうことはありませんか。スマホを見る時間は長いのに、猫と向き合う時間は後回しになっていませんか。
その「明日」がいつまでもあると思ってはいけません。
今日、たった10分でもいいので、猫と真剣に遊んであげてください。猫じゃらしを振って一緒に走り回ったり、ブラッシングしながら話しかけたり、ただ膝の上に乗せて撫でてあげたり―そんな何気ない時間が、いつか何よりも大切な思い出になります。
日常のささいな瞬間を大切に
特別なことをする必要はありません。毎日の「おはよう」「いってきます」「おかえり」「おやすみ」という挨拶、ご飯をあげるとき、トイレを掃除するとき、名前を呼んで振り向いてくれたとき―そのすべてが、かけがえのない時間です。
いつもと変わらない日常の中に、愛猫との幸せな時間は溢れています。それを当たり前だと思わず、一日一日を大切に過ごしてください。
写真や動画を残しておく
後悔として多いのが「もっと写真や動画を撮っておけばよかった」という声です。
元気に走り回る姿、眠っている寝顔、鳴き声、あくびをする瞬間―日常の何気ない姿を記録に残しておきましょう。その時は「また今度でいいや」と思っても、いざその時が来ると「もっと撮っておけばよかった」と感じるものです。
特に猫の鳴き声は、亡くなった後に「もう一度聞きたい」と強く思う飼い主が多いです。動画で声を残しておくことをお勧めします。
定期的な健康チェックと早期発見
後悔しないためには、猫の健康管理も大切です。定期的な健康診断を受けさせ、病気の早期発見に努めましょう。
特に7歳を超えたら、年に1〜2回の血液検査をお勧めします。腎臓病や甲状腺疾患など、高齢猫に多い病気を早期に見つけることで、治療の選択肢が広がります。
「もっと早く病院に連れて行けばよかった」という後悔は、飼い主にとって最もつらいものです。愛猫の小さな変化を見逃さず、気になることがあればすぐに獣医師に相談する習慣をつけましょう。
感謝の気持ちを伝える
猫には言葉が通じないかもしれませんが、毎日「ありがとう」「大好きだよ」と声に出して伝えてあげてください。
猫と暮らすことで得られる癒しや幸せ、笑顔、温もり―それらすべてが、猫からの贈り物です。その感謝の気持ちを、生きている今、たくさん伝えてあげましょう。
最期の瞬間に立ち会えないこともある
多くの飼い主さんが「最期を看取れなかった」と後悔します。
しかし猫はあえて飼い主のいない隙に静かに旅立つこともあります。
それは「悲しませたくない」という猫なりの優しさとも言われます。
だから、最期の瞬間に立ち会えなかったとしても、あなたが悪いわけではありません。
最期の瞬間を迎えたあとにできること
もし猫が息を引き取ったら、慌てる必要はありません。しばらくの間、そっと撫でて、お別れの時間を持ってください。
体が硬くなる前(2〜3時間以内)に、手足を優しく曲げて自然な姿勢にしてあげると、棺に納めるときに楽です。目が開いている場合は、そっと閉じてあげましょう。
ペット葬儀社に連絡するか、自治体によっては火葬サービスを提供しているところもあります。大切に見送ってあげてください。
まとめ:今この瞬間を大切に
猫の死期が近づくとみられる兆候について解説してきましたが、最も大切なのは「その時が来る前に、今できることをする」ことです。
いつか必ず訪れる別れの日に、「あの子と過ごした日々は幸せだった」「できることはすべてしてあげた」と思えるよう、今日という日を大切に過ごしてください。
愛猫が見せてくれる小さな幸せに気づき、感謝し、たくさんの愛情を注いであげましょう。毎日の「当たり前」が、実は何よりも特別な時間なのです。
猫との時間は有限です。だからこそ、その一瞬一瞬が輝いています。
後悔のない、愛情に満ちた日々を、愛猫と共に過ごしてください。
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