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熊 なぜ増えた?人里への出没が急増する理由と私たちにできること

熊 なぜ増えた

 

 

近年、「熊が街中に出没した」というニュースを目にする機会が増えています。スーパーマーケットへの侵入、住宅街での目撃、登山道での遭遇事故など、かつては山奥にいるはずだった熊が、私たちの生活圏に現れるケースが後を絶ちません。

「熊 なぜ増えた」と疑問に思う方も多いでしょう。この記事では、熊の個体数の実態から人里への出没が増えた背景、そして私たちができる対策まで、熊問題の全体像を詳しく解説します。

 

 

熊の個体数は本当に増えているのか?

 

統計データが示す個体数の増加傾向

結論から言えば、熊の個体数は確実に増加しています

北海道のヒグマは1990年には約5,000頭だったものが2023年には約11,600頭と2倍以上に増加しています。また、全国のツキノワグマも2020年度で約11,700頭(中央値)と増加傾向にあり、30年間で頭数が2倍以上、分布域も約1.4倍に拡大しています。

さらに地域別に見ると、紀伊半島では1998年度調査の180頭から2024年度には467頭と2.5倍以上に増加したという報告もあります。

 

 

なぜ個体数が増えたのか?

個体数増加の背景には、いくつかの要因があります。

 

1. 狩猟規制と保護政策の影響

1966年から約30年間行われていた「春グマ駆除」が、絶滅の恐れから廃止され、その結果として生息数が右肩上がりで増え続けた経緯があります。保護を優先した政策が、結果的に個体数の急増につながったのです。

 

2. 天敵の消滅

熊の天敵だったニホンオオカミとエゾオオカミが1905年に絶滅し、天敵がいなくなった熊は繁殖し続けている状況です。自然界における個体数調整機能が失われたことも、増加の一因となっています。

 

3. 狩猟者の減少

1990年代以降、狩猟者数が減少する一方で個体数が増え始めたというデータもあります。人間による捕獲圧が低下したことで、熊の繁殖がより活発になりました。

 

 

個体数増加だけが問題ではない:「人を恐れない熊」の出現

 

新世代熊という新たな脅威

個体数の増加以上に深刻なのが、人を恐れない熊が増えているという事実です。

岩手県と宮城県では「新世代熊」と呼ばれる人間の活動音に慣れた熊が増加しており、専門家が警戒を呼びかけている状況です。これらの熊は、従来の熊のように人間を避けるのではなく、平然と人里に降りてくるという特徴があります。

 

 

なぜ熊は人を恐れなくなったのか?

 

1. 人間の食べ物の味を覚えた熊の増加

熊は頭の良い動物で、一度でも人間の食べ物の味を覚えてしまうと、危険を冒してでも繰り返し人里に現れるようになる傾向があるのです。

農作物、生ゴミ、放置された果実などを一度でも食べた熊は、「人里=簡単に餌が手に入る場所」と学習します。この学習効果により、人間への警戒心が薄れ、むしろ積極的に人里を目指すようになります。

 

2. 山と人里の境界の曖昧化

耕作放棄地の増加により山と人里の境界が曖昧になり、熊が安心して移動できる範囲が広がったことも要因です。かつては明確だった人間の生活圏と熊の生息域の境界線が消失し、熊が人里に侵入しやすくなっています。

 

3. 若い熊の経験不足

若い熊は好奇心から、あるいは経験不足から人里に迷い込むことがあるのも問題です。個体数が増えた結果、人間との適切な距離感を学ぶ機会がないまま成長した熊が増えています。

 

 

なぜ熊は人里に降りてくるのか?

 

主な出没理由

 

1. 山の食料不足

最も大きな理由は餌不足です。

知床では夏から秋にかけての主要食物(ハイマツの球果、サケ科魚類、ミズナラ堅果など)の不足が、多くのヒグマの行動圏を拡大させ、人里近くへの移動を引き起こしたことが確認されています。

8〜9月頃になると山の草本類は花をつけ硬くなり、栄養価も下がることから、熊にとって良い餌とは言えず、結果として人里に降りてきて栄養価のある農作物に手を出してしまうのです。

特にブナの実が凶作の年には出没が急増する傾向があり、2023年は東北でブナの実が「2000年以降最も悪い」状態だったため、大量出没が発生しました。

 

 

2. 気候変動の影響

温暖化により気温が上昇することで、熊が冬眠に入る時期が遅れ、冬眠から覚める時期が早まるなど、熊の活動期間が長くなっていることも出没増加の一因です。活動期間が長ければ、それだけ餌を必要とし、人里に接近する機会も増えます。

 

 

3. 生息地の縮小

都市開発が進み、人間の生活圏が拡大するにつれ、熊の生息地である森林が減少し、食料も減って人里にある食べ物を求めて降りてくるという構造的な問題もあります。

 

 

出没がもたらす被害の実態

 

農作物被害

北海道では2022年度に2億7,000万円もの農作物被害が発生しています。熊が一度餌場として認識した農地には繰り返し現れるため、同じ農家が継続的な被害を受けるケースが多いのが特徴です。

 

人身被害の急増

2024年度(4〜8月)では58人が被害を受け、2人が死亡しています。令和5年度は9月以降にツキノワグマの出没件数が増加し、10月の出没件数は過去最多を記録するなど、被害は年々深刻化しています。

2023年にはツキノワグマの出没件数が24,169件、人身被害も192件と史上最多を更新しており、もはや一過性の現象ではなく構造的な問題となっています。

 

 

私たちにできること:個人レベルの対策

 

山に入る際の基本対策

 

1. 音を出して存在を知らせる

熊は本来臆病で用心深い動物であり、積極的に人間を襲うことは稀で、音や匂いで人間の接近を察知すれば自らその場を離れてくれることがほとんどです。

熊鈴やホイッスル、定期的な声掛けなど、意図的に音を出すことで不意の遭遇を防ぐことができます。特に見通しの悪い場所、沢沿い、風の強い日などは、音が届きにくいため注意が必要です。

 

2. 熊の活動時間帯を避ける

熊は主に朝方と夕方に活発に行動する「薄明薄暮性」の傾向があり、この時間帯は人間の活動が少なくなるため、熊が安心して餌を探しに出てきやすい時間です。山に入る際は日中の明るい時間帯を選び、早朝や夕方の行動は避けるのが賢明です。

 

3. 複数人での行動

できるだけ一人での入山を避け、複数人で行動しましょう。人数が多ければ自然と会話が生まれ、物音が大きくなるため、熊に人間の存在を知らせやすくなります。

 

4. 食べ物の適切な管理

熊は非常に嗅覚が優れており、遠くにある食べ物の匂いを嗅ぎつけることができ、一度人間の食べ物の味を覚えると繰り返し現れるようになり大変危険です。

登山やキャンプの際は、食料を密閉容器に入れ、ゴミは必ず持ち帰りましょう。テント内に食料を置いたまま就寝するのは厳禁です。

 

5. 熊対策グッズの携帯

熊鈴だけでなく、万が一の遭遇に備えて熊撃退スプレーも携帯することをお勧めします。熊撃退スプレーは、熊が接近してきた際の最後の切り札となります。

ただし、使用方法を事前に確認し、すぐに取り出せる位置に携行すること、使用期限を定期的に確認することが重要です。

 

6. 最新の出没情報を確認

山に入る前には、必ず自治体のウェブサイトやSNSで最新の熊出没情報を確認しましょう。多くの自治体がリアルタイムで情報を更新しており、危険なエリアを事前に把握できます。

 

 

日常生活での注意点

 

1. ゴミの適切な管理

生ゴミは熊を引き寄せる最大の要因です。ゴミ出しは当日の朝に行い、前夜から外に出しておかないようにしましょう。特に山間部や熊の出没が報告されている地域では、ゴミ箱を屋外に置かず、屋内で管理することが推奨されます。

 

2. 家庭菜園・果樹の管理

庭の果樹は熟したらすぐに収穫し、放置しないことが重要です。落果も速やかに片付けましょう。野菜くずや生ゴミをコンポストで処理している場合も、熊を引き寄せる可能性があるため、設置場所や管理方法に注意が必要です。

 

3. 夜間の外出に注意

熊の活動が活発になる夜間から明け方の時間帯は、外出や犬の散歩を控えめにしましょう。やむを得ず外出する場合は、懐中電灯を携帯し、周囲に十分注意を払ってください。

 

 

私たちにできること:地域レベルの対策

 

地域全体での取り組みの重要性

熊対策は個人の努力だけでは限界があります。地域全体での組織的な取り組みが不可欠です。

 

1. 電気柵の設置

農地や集落の周辺に電気柵を設置することで、熊の侵入を物理的に防ぐことができます。特に被害が集中している地域では、行政の補助金を活用した広域的な設置が効果的です。

 

2. 緩衝地帯の整備

山林と人里の境界部分の草刈りを定期的に行い、見通しを良くすることで、熊が隠れられる場所をなくします。これにより熊の侵入を早期に発見でき、人間の存在を熊に認識させやすくなります。

 

3. 情報共有体制の構築

地域住民間での迅速な情報共有が重要です。熊の目撃情報をすぐに共有できるLINEグループやメーリングリストの設置、自治体との連絡体制の確立などが有効です。

 

4. 地域住民への教育・啓発

熊の生態や適切な対処法について、地域住民全体が理解を深めることが重要です。説明会の開催、啓発資料の配布、子どもへの教育プログラムの実施などが考えられます。

 

5. 専門家との連携

野生動物の専門家や猟友会との連携体制を構築し、緊急時に迅速に対応できる仕組みを整えておくことも大切です。

 

 

長期的な視点:共存への道

熊を単に駆除するだけでは問題の根本的な解決にはなりません。長期的には、人間と熊が適切な距離を保ちながら共存していく仕組みづくりが必要です。

 

科学的管理への転換

かつての「熊の保護」を基本姿勢とする政策から、近年は保護と被害防止を両立する「科学的管理」に移行しています。個体数のモニタリング、計画的な捕獲、被害対策の徹底など、科学的データに基づいた管理が進められています。

 

環境保全と地域振興

森林環境の保全、耕作放棄地の再生、地域コミュニティの活性化など、根本的な環境改善も重要です。人間の活動が活発な地域では、熊も自然と距離を保つ傾向があります。

 

指定管理鳥獣としての対応

2024年4月に熊類が「指定管理鳥獣」に指定され、個体数や生息状況のモニタリング調査、計画的な捕獲の実行、被害対策の徹底と継続的な体制構築、人材育成などが促進される仕組みが整ったことは、一歩前進と言えるでしょう。

 

 

まとめ:熊問題に向き合うために

 

「熊 なぜ増えた」という疑問に対する答えは、単純な個体数増加だけではありません。

個体数の確実な増加に加え、人を恐れない熊の出現山の食料不足生息地の変化人間側の対応の遅れなど、複数の要因が絡み合って現在の状況を生み出しています。

私たちにできることは、決して少なくありません。

  • 山に入る際の基本的な対策を徹底する
  • 日常生活で熊を引き寄せない工夫をする
  • 最新の出没情報に常に注意を払う
  • 地域全体での取り組みに積極的に参加する
  • 熊との共存を意識した長期的な視点を持つ

熊問題は、私たち人間社会のあり方そのものを問い直す機会でもあります。自然との適切な距離感、持続可能な地域社会の構築、野生動物との共存など、これらの課題に真摯に向き合うことが求められています。

一人ひとりの小さな行動の積み重ねが、やがて大きな変化を生み出します。熊との不幸な遭遇を避け、人間も熊も安全に暮らせる社会を実現するために、今日からできることを始めてみませんか。

 

 

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この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

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