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動物園の動物はストレスで死亡するのか?見えない真実と私たちの責任

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動物園で暮らす動物たちの死。その死因について、私たちはどれだけ真実を知っているのでしょうか。「老衰」や「病気」と発表される死因の背後に、ストレスという見えない要因が隠れている可能性について、考えたことはありますか。

 

 

動物園が「ストレス死」を公表しない理由

 

動物園で動物が死亡した際、その死因として「ストレス」が公式に発表されることは、ほとんどありません。これには明確な理由があります。

もし動物園が「ストレスによる死亡」と公表すれば、それは飼育環境の不備を認めることになります。来園者からの非難、動物愛護団体からの批判、さらにはメディアによる報道が殺到するでしょう。動物園の評判は地に落ち、入園者数の減少、スポンサーの撤退、最悪の場合は閉園に追い込まれる可能性すらあります。

だからこそ、多くの動物園は死因を「急性心不全」「感染症」「老衰」といった医学的な用語で説明します。これらは決して嘘ではありません。しかし、その根本的な原因にストレスがあったかもしれないという可能性については、語られることが少ないのです。

 

 

実際の死因は本当にストレスなのか?

 

ここで重要なのは、動物園で死亡した動物の死因が本当にストレスなのかどうか、私たち外部の人間には確実なことは分からないという点です。

動物の死には様々な要因が複雑に絡み合っています。加齢、遺伝的要因、感染症、事故、そしてストレス。これらを明確に切り分けることは、専門家でも困難です。ストレスが免疫力を低下させ、それが感染症を引き起こしたとしても、「直接の死因」は感染症となります。

しかし、私たちが見落としてはならないのは、動物園で暮らす動物たちが明らかにストレスを感じている証拠が、日々の行動に現れているという事実です。

 

 

動物園の動物が見せる異常行動

 

動物園を訪れたことがある人なら、一度は目にしたことがあるかもしれません。同じ場所を何度も往復する動物、首を不自然に振り続ける動物、檻の壁に体をこすりつけ続ける動物。

これらは「常同行動」と呼ばれる異常行動で、野生では決して見られない行動パターンです。

 

 

常同行動の具体例

 

ゾウの揺れ行動:ゾウが立ったまま体を左右に揺らし続ける行動は、動物園ではよく見られます。野生のゾウは一日に数十キロを移動しますが、動物園では限られた空間に閉じ込められています。この移動本能を満たせないストレスが、揺れ行動として現れると考えられています。

 

肉食動物のペーシング:トラやライオン、クマなどが、同じ経路を何時間も往復し続ける行動です。まるで見えない檻の中を歩いているかのように、正確に同じ場所で方向転換を繰り返します。この行動は、狩りという本能的行動を満たせない欲求不満の表れだと言われています。

 

霊長類の自傷行為:サルやチンパンジーが自分の毛を抜いたり、皮膚を傷つけたりする行動も報告されています。これは極度のストレスや退屈の兆候です。

 

鳥類の羽むしり:鳥が自分の羽を抜き続け、体が禿げてしまうケースもあります。広大な空を飛べないストレスや、単調な環境による精神的苦痛の現れと考えられます。

 

 

なぜ動物たちはこれほどストレスを感じるのか

 

動物園の動物がストレスを感じる理由は、一つではありません。

 

空間の制約

野生で数百平方キロメートルを移動する動物が、数百平方メートルの空間に閉じ込められています。これは、人間に例えるなら、一生をトイレ一室で過ごすようなものかもしれません。

 

本能的行動の抑制

狩り、採餌、繁殖、子育て、縄張り争い。野生動物の生活は、これらの本能的行動で満たされています。しかし動物園では、食事は決まった時間に与えられ、繁殖はコントロールされ、縄張りを守る必要もありません。本能を満たせない生活は、深い欲求不満を生み出します。

 

環境の単調さ

野生の環境は常に変化に富んでいます。季節の変化、天候の変化、地形の多様性、他の動物との関わり。しかし動物園の環境は、毎日同じ景色、同じ音、同じ匂い。この単調さが、精神的な苦痛を生み出します。

 

来園者からのストレス

毎日何百、何千という人間が、動物たちを見つめ、写真を撮り、時には大声を出したり、ガラスを叩いたりします。野生動物にとって、常に捕食者(人間)の視線にさらされ続けることは、計り知れないストレスです。

 

 

それでも動物園は必要なのか?

 

ここまで読んで、「では動物園は廃止すべきなのか」という疑問を持つかもしれません。

動物園には確かに存在意義があります。絶滅危惧種の保護と繁殖、環境教育、研究の場としての役割。動物園がなければ、すでに絶滅していた種も存在します。子どもたちが実際に動物を見て、生命の多様性を学ぶ場としての価値も否定できません。

しかし、その役割のために、動物たちに異常行動を起こすほどのストレスを与えることは正当化されるのでしょうか。

 

 

私たちの望みが社会を形成する

 

動物園という施設は、私たち人間の「動物を見たい」という欲求によって成り立っています。週末に家族で動物園に行く。遠足で訪れる。デートスポットとして選ぶ。これらの小さな選択の積み重ねが、動物園という産業を支え、社会の中での存在を正当化しています。

つまり、動物園で苦しむ動物たちの存在は、間接的に私たち自身の選択の結果でもあるのです。

私は動物園という存在そのものを全否定するつもりはありません。適切に管理され、動物の福祉を最優先に考えた施設であれば、その存在意義は認められるべきでしょう。

 

 

せめて最低限の環境改善を

 

しかし、異常行動を起こすレベルの生活環境で動物たちを飼育し続けることは、明らかに問題です。

 

具体的に求められる改善

飼育スペースの拡大:現在の何倍もの広さを確保し、できるだけ自然に近い環境を再現すること。

環境エンリッチメント:動物たちの退屈を減らすために、餌の隠し場所を変えたり、新しい遊具を導入したり、環境に変化を持たせること。

繁殖の自然化:可能な限り、動物たちの自然な繁殖行動を尊重すること。

来園者教育の強化:ガラスを叩かない、大声を出さない、フラッシュ撮影をしないなど、動物たちのストレスを減らすためのマナーを徹底すること。

透明性の確保:動物の死因や健康状態について、より詳細で正直な情報開示を行うこと。

 

 

私たち一人ひとりにできること

 

では、私たち一般市民には何ができるのでしょうか。

まず、動物園を訪れる際には、動物たちの行動をよく観察してください。同じ場所を往復していないか、不自然な行動をしていないか。もしそうした行動を見かけたら、動物園のスタッフに質問してみてください。「この動物はいつもこの行動をしているのですか?」と。

次に、動物福祉に配慮した動物園を選んで訪れましょう。広大な敷地、自然に近い環境、動物の行動学に基づいた展示を行っている施設を支援することで、業界全体の水準向上につながります。

SNSなどで動物園の動物の様子をシェアする際も、異常行動を「かわいい」「面白い」と称賛するのではなく、その背景にあるストレスの可能性について考えを巡らせてみてください。

また、動物園以外の方法で動物について学ぶ機会も探してみましょう。ドキュメンタリー番組、書籍、野生動物の保護活動への参加など、動物を檻に閉じ込めなくても、私たちは多くを学べます。

 

 

まとめ:見えない真実に目を向ける

 

動物園の動物がストレスで死亡しているのか。その真実は、おそらく私たちには完全には分かりません。死因は複雑で、多くの要因が絡み合っています。

しかし確実なのは、動物園で暮らす多くの動物たちが、異常行動を通じてストレスのサインを発しているということです。そして、そのストレスの積み重ねが、彼らの健康や寿命に影響を与えている可能性は否定できません。

動物園という存在を全否定する必要はありません。しかし、異常行動を起こすレベルの環境で動物を飼育し続けることを、私たちは見過ごしてはいけません。

動物園を訪れるたび、私たちは選択をしています。この施設を支持するのか、改善を求めるのか。無関心でいるのか、声を上げるのか。

動物たちは話すことができません。檻を開けて逃げ出すこともできません。彼らができるのは、ただ異常な行動を通じて、苦痛のサインを発し続けることだけです。

そのサインに気づき、行動を起こすのは、私たち人間の責任ではないでしょうか。動物園での動物の死が「ストレス」と公表されることはほとんどないかもしれません。しかし、その見えない真実に目を向け、せめて彼らの生活環境を改善するために、私たち一人ひとりができることを考え、実行していく時が来ています。

 

 

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この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

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