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象牙の残酷な真実:かわいそうな象たちのために私たちができること

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はじめに:象牙という美しさの裏側にある悲劇

 

象牙製品を見たことがあるでしょうか。美しい白色の光沢、滑らかな質感、細やかな彫刻が施された印鑑や置物。かつては富と権力の象徴として珍重されてきた象牙ですが、その美しさの裏には、想像を絶する残酷な現実が隠されています。

 

象牙とは、象の牙そのものです。そして、その牙を手に入れるために、毎年何万頭もの象が命を奪われているという事実を、私たちはどれだけ深く理解しているでしょうか。

 

この記事では、象牙をめぐる残酷な真実、象たちが直面している悲惨な状況、そして私たち一人ひとりができることについて、詳しくお伝えしていきます。

 

 

象牙採取の残酷な実態:象の命を奪う非情なプロセス

 

象牙のために殺される象たち

象牙を手に入れるプロセスは、想像以上に残酷です。象の牙は、人間の歯と同じように生きている間ずっと成長し続け、象の頭蓋骨の奥深くまで根を張っています。つまり、象牙を「採取」するということは、象の命を奪うことと同義なのです。

 

密猟者たちは、象の群れを見つけると、自動小銃などの武器を使って無差別に射殺します。特に大きな牙を持つ成熟した象が標的となりますが、群れ全体が攻撃されることも少なくありません。射殺された象は、その場で顔面を切り取られ、牙をくり抜かれます。

 

このプロセスは極めて非人道的で、時には象が完全に息絶える前に牙の摘出が始まることもあります。密猟者たちは迅速に作業を終えて逃走する必要があるため、象の苦痛など一切顧みられることはありません。

 

 

象の家族にもたらされる悲劇

象は非常に社会性の高い動物で、強い家族の絆で結ばれています。群れのリーダーである年長のメス象(マトリアーク)は、何十年もの経験と知恵を持ち、群れ全体を導く重要な存在です。

 

密猟によって家族の一員、特にマトリアークが殺されると、残された象たちは深い悲しみに暮れます。象は死んだ仲間を悼み、その遺体のそばを何日も離れないことが観察されています。また、親を失った子象は、生存に必要な知識や保護を失い、多くが命を落とします。

 

このように、一頭の象が殺されることは、単に一つの命が失われるだけでなく、群れ全体の生存を脅かす深刻な事態なのです。

 

 

象牙の必要性を問う:現代社会で本当に必要なものなのか

 

象牙製品の用途と代替可能性

歴史的に象牙は、印鑑、装飾品、楽器の一部、美術工芸品などに使用されてきました。しかし、現代では技術の進歩により、象牙と同等かそれ以上の品質を持つ代替素材が数多く開発されています。

 

印鑑であれば、チタン、柘植など、耐久性と美しさを兼ね備えた素材が豊富にあります。ピアノの鍵盤も、かつては象牙が使われていましたが、現在は人工素材で十分に代替可能です。美術工芸品においても、樹脂や他の天然素材を使った作品が高く評価されています。

 

つまり、実用面において象牙は決して「必要不可欠」なものではなく、単なる「伝統」や「贅沢品」としての価値しか持っていないのが現実です。

 

 

文化や伝統と動物の命:何を優先すべきか

「象牙は伝統文化の一部だ」という主張を耳にすることがあります。確かに、象牙細工は長い歴史を持つ伝統技術であり、文化的価値を認めることは重要です。

 

しかし、伝統や文化を守ることと、生きている動物の命を奪うことは、果たして同列に論じられるべきでしょうか。伝統は時代とともに変化し、進化していくものです。かつて当たり前だった慣習が、現代の倫理観や価値観に合わせて見直されることは、むしろ健全な社会の成長と言えます。

 

象牙を使わずとも、職人の技術や美意識は他の素材で表現できます。真に守るべきは、動物を犠牲にすることではなく、職人の技術そのものであり、その技術を現代に適した形で継承していくことではないでしょうか。

 

 

象牙取引が禁止された理由:国際社会の決断

 

ワシントン条約による規制

1989年、ワシントン条約(CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)によって、アフリカ象の象牙の国際商業取引が全面的に禁止されました。この決定の背景には、1970年代から80年代にかけて、象牙需要の急増により、アフリカ象の個体数が半分以下に激減したという深刻な事実がありました。

 

この規制により、一時的に密猟は減少しましたが、完全になくなることはありませんでした。それどころか、近年では再び密猟が増加傾向にあり、2010年代には年間3万頭以上の象が違法に殺されていたと推定されています。

 

 

象の絶滅危機と生態系への影響

現在、アフリカ象の個体数は約40万頭、アジア象は約5万頭まで減少しており、特にアジア象は深刻な絶滅危機に瀕しています。過去100年間で、象の個体数は実に90%以上も減少したと言われています。

 

象は「生態系エンジニア」とも呼ばれ、森林や草原の生態系において極めて重要な役割を果たしています。象が移動しながら植物の種子を運ぶことで森林が再生され、象が水場を作ることで他の動物たちも恩恵を受けます。象が絶滅すれば、生態系全体のバランスが崩壊し、多くの生物種に影響が及ぶのです。

 

国際社会が象牙取引を禁止した理由は、単に象がかわいそうだからではありません。象という種の存続、そして地球の生態系を守るという、人類全体にとっての重大な課題だからです。

 

 

なぜ日本では象牙の販売が許可されているのか

 

日本の象牙市場の特殊性

国際的に象牙取引が禁止されているにもかかわらず、日本では一定の条件下で象牙の国内取引が許可されています。これは、日本が条約加盟前から保有していた在庫や、条約で例外的に認められた一度きりの輸入による「既存在庫」の取引が認められているためです。

 

経済産業省の管理下で、全形を保持した象牙(全形牙)には登録制度が設けられており、登録された象牙のみが取引できることになっています。また、印鑑などの加工品については、特定国際種事業者として届け出た事業者のみが扱うことができます。

 

しかし、この「合法的な」国内市場の存在が、違法な象牙の流通を助長しているという指摘が国際社会から繰り返しなされています。

 

 

国際的な批判と日本の対応

日本の象牙市場は、世界最大規模と言われており、国際的な環境保護団体や各国政府から強い批判を受けています。なぜなら、合法市場の存在が違法象牙のロンダリングの温床となり、密猟を助長しているとされるためです。

 

実際、日本国内でも違法な象牙の流通が摘発されるケースが後を絶ちません。登録制度の抜け穴を利用したり、虚偽の申告をしたりして、違法象牙が「合法」として市場に流れ込んでいる可能性が指摘されています。

 

2019年には、中国が国内の象牙市場を完全閉鎖し、EU諸国も次々と規制を強化する中、日本の対応は国際的に見て遅れていると言わざるを得ません。

 

 

日本における象牙のニーズ

それでは、現代の日本で象牙に対する需要は本当にあるのでしょうか。

主な需要は印鑑です。日本独特の印鑑文化において、象牙印鑑は「最高級品」として一部で珍重されてきました。しかし、若い世代を中心に、印鑑自体の使用頻度が減少しており、デジタル化の進展とともに印鑑需要そのものが縮小しています。

 

また、環境意識の高まりとともに、「象牙印鑑は使いたくない」という消費者も増えています。多くの印鑑店では、代替素材の印鑑を積極的に勧めるようになっており、わざわざ象牙を選ぶ必然性は極めて低くなっています。

 

つまり、日本における象牙需要は、実質的にはほとんど存在しないか、急速に縮小している状況です。それにもかかわらず、既得権益や一部の業界の利益のために市場が維持されているという側面は否定できません。

 

 

毛皮が示した道:価値観の変化と産業の衰退

 

毛皮産業に起きた変化

象牙問題を考える上で、毛皮産業の変化は大きな示唆を与えてくれます。

かつて、毛皮のコートは富と地位の象徴でした。しかし、動物愛護運動の高まりとともに、「ファッションのために動物を殺すのは残酷だ」という価値観が世界中に広まりました。有名ファッションブランドが次々と毛皮の使用を中止し、毛皮ファームの閉鎖が相次ぎました。

 

グッチ、プラダ、バーバリー、シャネルといった世界的ハイブランドは、毛皮を使わない方針を明確にしています。毛皮を着用する芸能人は批判の対象となり、「フェイクファー」(人工毛皮)の技術が進歩したこともあり、毛皮需要は急速に減少しました。

 

 

消費者の選択が産業を変える

毛皮産業の衰退が示すのは、「消費者が買わなければ、供給も消える」という単純な市場原理です。企業は利益を追求しますから、需要がなければ生産する意味がありません。

 

逆に言えば、消費者が「動物を犠牲にした製品は買わない」という明確な意思を示せば、産業構造は必ず変化します。これは企業への批判というより、私たち消費者一人ひとりの選択の積み重ねが社会を変える力を持っているという、希望のメッセージでもあります。

 

象牙についても、同じことが言えます。誰も象牙を買わなくなれば、象牙を手に入れるために象を殺す理由はなくなります。密猟という犯罪行為は、利益があるから行われるのであって、利益がなければ自然と消滅していくのです。

 

 

動物の命を搾取するビジネスモデルの終焉

 

倫理的消費の台頭

近年、「エシカル消費」(倫理的消費)という言葉が広く知られるようになりました。これは、環境や社会、動物福祉などに配慮した製品を選ぶ消費行動のことです。

 

若い世代を中心に、「安ければいい」「有名ブランドだから」という理由だけで製品を選ぶのではなく、「その製品がどのように作られたか」「誰か(何か)を犠牲にしていないか」を重視する消費者が増えています。

 

象牙、毛皮、サメのヒレ、クジラ肉など、動物の命を不必要に奪う製品に対する拒否反応は、世界的な潮流となっています。これは一時的な流行ではなく、人間社会が成熟し、倫理観が進化している証しと言えるでしょう。

 

 

サステナビリティへの関心

気候変動、生物多様性の喪失、環境破壊といった地球規模の課題に対する関心が高まる中、「持続可能性(サステナビリティ)」が重要なキーワードになっています。

 

動物の命を搾取するビジネスモデルは、本質的に持続不可能です。象を殺し続ければ、いずれ象は絶滅します。絶滅してしまえば、象牙ビジネスも終わります。つまり、自らの利益のために資源を枯渇させる自滅的な構造なのです。

 

これからの時代に求められるのは、自然と共存し、生態系を保全しながら経済活動を行う「持続可能なビジネス」です。動物を殺して利益を得るモデルは、時代遅れの遺物として淘汰されていくでしょう。

 

 

私たちにできること:象牙のない未来に向けて

 

買わない、使わない、求めない

最も重要で、誰にでもできることは、「象牙を買わない」という選択です。

印鑑を作る際、象牙以外の素材を選ぶ。アンティークショップで美しい象牙製品を見かけても、購入しない。贈り物として象牙製品を選ばない。こうした小さな選択の積み重ねが、需要を減らし、最終的には密猟を減少させることにつながります。

 

また、すでに象牙製品を持っている場合、それを他人に譲ったり、販売したりすることも、需要を維持することになります。象牙製品は使わず、新たな流通サイクルに乗せないことが大切です。

 

 

声を上げる:政策への働きかけ

個人の消費行動とともに重要なのが、政策レベルでの変化を求める声を上げることです。

日本政府に対して、象牙市場の完全閉鎖を求める署名活動や、国会議員への意見表明などが行われています。環境保護団体の活動を支援したり、SNSで情報を共有したりすることも、社会的な認識を高める上で有効です。

 

政治家や企業は、国民や消費者の声に敏感です。「象牙取引は許されない」という世論が形成されれば、政策も必ず変わります。

 

 

教育と啓発活動

多くの人は、象牙製品の背後にある残酷な現実を知りません。あるいは、知っていても「自分には関係ない」と感じているかもしれません。

 

家族や友人との会話の中で、象牙問題について話題にすること。SNSで正確な情報を共有すること。子どもたちに、動物の命の大切さと、自分の選択が世界に影響を与えることを教えること。こうした草の根レベルの啓発活動が、社会全体の意識を変えていきます。

 

 

象を支援する活動への参加

直接的に象の保護活動を支援する方法もあります。

アフリカやアジアの野生動物保護団体への寄付、象の保護区への支援、エコツーリズムへの参加など、様々な形で象の保全に貢献できます。また、象の生息地で暮らす人々の生活を支援し、密猟以外の収入源を確保することも、長期的な解決策として重要です。

 

 

象牙のない世界を実現するために

 

一人ひとりの選択が未来を作る

象牙問題の解決は、決して不可能ではありません。毛皮産業の衰退が示したように、消費者の意識と行動が変われば、産業構造も変わります。

 

象の牙を得るために命を奪うという残酷な行為は、現代社会において正当化できるものではありません。文化や伝統、経済的利益といった理由は、生きている動物の命の価値を上回るものではないはずです。

 

 

かわいそうな象たちのために

群れで暮らし、家族を愛し、仲間の死を悼む象たち。彼らは私たちと同じように、感情を持ち、痛みを感じ、生きる権利を持つ存在です。

 

象牙製品の美しさの裏で、何頭の象が苦しみながら命を落としているか。残された子象が、母親を失って悲しみに暮れている姿を、私たちは想像すべきです。

 

「かわいそう」という感情は、決して弱さではありません。それは、共感する能力、他者の痛みを自分のこととして感じられる、人間が持つ最も尊い特性の一つです。

 

 

象牙を見かけない日が来ることを願って

私たち一人ひとりが、「象牙を買わない」という選択をすること。それが、象たちを救う最も確実な方法です。

象牙の印鑑、象牙のアクセサリー、象牙の置物。こうした製品を市場で見かけることがなくなる日。それは、もう象を殺す理由がなくなった日であり、象たちが安心して暮らせる世界が実現した日です。

 

その日が一日でも早く来るように、今日から行動を始めませんか。

象牙を選ばない。象牙を買わない。象牙を求めない。この小さな決断が、遠くアフリカやアジアの草原で暮らす象たちの命を救います。

 

美しい地球、多様な生命が共存する世界を次世代に引き継ぐために、私たちにできることは確かに存在します。象牙のない未来は、私たち自身の手で作り出すことができるのです。

 

 

まとめ

 

象牙は、象の命と引き換えに得られる残酷な産物です。現代社会において象牙の実用的必要性はほとんどなく、代替素材で十分に対応可能です。国際的に象牙取引は禁止されていますが、日本では許可制で取引が続いており、これが密猟を助長しているとの批判があります。

 

毛皮産業の衰退が示したように、消費者が「買わない」という選択をすれば、動物を犠牲にするビジネスは自然と消滅します。象牙を買わない、使わない、求めないという一人ひとりの決断が、象たちの命を救い、象牙のない未来を実現する力となります。

 

私たちの選択が、未来を変えます。象たちが安心して暮らせる世界のために、今日から行動を始めましょう。

 

 

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この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

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