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伊藤ハム アニマルウェルフェア:日本の食肉業界を変える大きな一歩

伊藤ハム アニマルウェルフェア

 

 

はじめに

 

「伊藤ハム アニマルウェルフェア」と検索されたあなたは、食品企業の社会的責任や、動物福祉に関心をお持ちかもしれません。あるいは、毎日の食卓に並ぶ食品がどのように生産されているのか、気になっているのではないでしょうか。

 

近年、世界的に注目を集めているアニマルウェルフェア(動物福祉)。伊藤ハムをはじめとする日本の食肉大手企業がこの取り組みを始めたことは、日本の畜産業界にとって大きな転換点となっています。本記事では、伊藤ハムのアニマルウェルフェアへの取り組みと、それが私たち消費者にもたらす意味について、詳しく解説していきます。

 

 

アニマルウェルフェアとは何か

 

基本的な定義

アニマルウェルフェアとは、国際獣疫事務局(OIE、現WOAH)によって「動物の生活とその死に関わる環境と関連する動物の身体的・心的状態」と定義されています。簡単に言えば、家畜として飼育される動物たちが、できる限りストレスの少ない環境で、本来の行動様式を発現できるような飼育方法を目指す考え方です。

 

 

5つの自由

アニマルウェルフェアの基本原則として、イギリス政府の農用動物福祉審議会が1993年に策定した「5つの自由」があります。

  1. 飢え、渇き及び栄養不良からの自由 – 適切な食事と水へのアクセス
  2. 恐怖及び苦悩からの自由 – 精神的苦痛を与えない環境
  3. 物理的、熱の不快さからの自由 – 快適な温度と空間の提供
  4. 苦痛、傷害及び疾病からの自由 – 健康管理の徹底
  5. 通常の行動様式を発現する自由 – 動物本来の行動ができる環境

これらの原則は、畜産動物が心身ともに健康で、本来の動物らしく生きられることを目指しています。

 

 

動物愛護との違い

よく混同されがちですが、アニマルウェルフェアと動物愛護には明確な違いがあります。動物愛護は人間の感情を主体として「かわいそう」「愛らしい」といった気持ちから動物を保護する考え方です。

 

一方、アニマルウェルフェアは、動物を主体に考え、家畜として利用することは認めた上で、その生涯をできるだけストレスの少ない環境で過ごせるようにするという、より科学的で客観的なアプローチをとります。

 

 

世界と日本のアニマルウェルフェアの現状

 

欧米諸国の先進的な取り組み

欧州連合(EU)では、2012年から採卵鶏のバタリーケージ(狭いケージに鶏を詰め込む方式)を全面禁止しています。アメリカやカナダ、オーストラリアでも、アニマルウェルフェアに関する法律や規約が制定され、着実に取り組みが進んでいます。

 

イギリスでは2006年にアニマルウェルフェア法(Animal Welfare Act 2006)が制定され、「闘牛や闘犬などの動物を戦わせる行為の禁止」や「検査官による動物保護のための強制措置」など、非常に具体的で踏み込んだ内容が法制化されています。

 

 

日本の遅れと変化の兆し

世界動物保護協会(WAP)が2020年に発表した動物保護指数レポートでは、日本の「畜産動物福祉」の評価は世界50か国中、最低ランクのGと評価されました。これは、日本がアニマルウェルフェア後進国と言われる所以です。

 

しかし、ここ数年で状況は確実に変化しています。農林水産省が「アニマルウェルフェアに関する飼養管理指針」を公表し、一般社団法人アニマルウェルフェア畜産協会による認証制度も開始されました。イオンなどの大手スーパーでは平飼い卵の全国展開が始まり、消費者の認知度も徐々に高まってきています。

 

アニマルライツセンターの調査によると、「アニマルウェルフェア」という言葉を知っている人の割合は、2016年の4.9%から2023年には9.2%へと上昇。2024年には25%にまで達したとされており、着実に認知が広がっていることがわかります。

 

 

伊藤ハムのアニマルウェルフェアへの取り組み

 

アニマルウェルフェアポリシーの制定

伊藤ハム米久グループは、2021年度に7つのマテリアリティ(重要課題)を特定し、その中の一つとして「持続可能な調達と安定供給の推進」を掲げました。そして、アニマルウェルフェアへの配慮を環境や人権と並んで取り組むべき社会課題の一つと位置づけ、「アニマルウェルフェアポリシー」を制定しています。

 

このポリシーでは、国際獣疫事務局(OIE)が示した「5つの自由」の考え方に賛同し、家畜の生命を尊重した生産・調達活動を推進することを明言しています。

 

 

具体的な取り組み内容

伊藤ハムのアニマルウェルフェアへの取り組みは、以下のような具体的な施策に表れています。

 

飼養管理の改善

  • 農林水産省の「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針」に則った飼育管理
  • 家畜の快適性に配慮した環境づくり
  • 生産、輸送、処理の各工程における具体的な行動基準の策定

教育と協働

  • 社内におけるアニマルウェルフェアに関する教育の実施
  • ステークホルダーとの対話と協議
  • ビジネスパートナーへの普及・浸透活動
  • 飼養管理の改善に向けた協力・支援

情報発信と透明性

  • アニマルウェルフェアガイドラインの公開
  • 取り組み内容の積極的な情報発信
  • サステナビリティ委員会での討議と取締役会への報告

 

なぜ今、取り組むのか

伊藤ハムがアニマルウェルフェアに取り組む背景には、複数の要因があります。

 

世界的な潮流 ESG投資(環境・社会・統治を考慮した投資)において、アニマルウェルフェアは重要な評価指標となっています。グローバルに事業を展開する企業として、国際基準に対応することは必須となりつつあります。

 

消費者意識の変化 エシカル消費(倫理的消費)への関心が高まり、「どのように生産されたか」を重視する消費者が増えています。環境や社会に配慮した商品を選ぶ人々が確実に増加しており、企業はこのニーズに応える必要があります。

 

食の安全性向上 ストレスの少ない環境で育った家畜は、病気になりにくく、薬剤の投与も減らせます。結果として、より安全で質の高い畜産物の提供につながります。

 

畜産産業の持続可能性 伊藤ハムは「主事業は畜産産業の持続性に密接に関連する」と認識しています。動物福祉への配慮は、長期的な視点で畜産業を維持するための必須条件となりつつあります。

 

 

日本の食肉大手企業がアニマルウェルフェアに取り組む意義

 

業界全体への波及効果

伊藤ハムのような日本の食肉大手企業がアニマルウェルフェアに取り組むことの影響は、計り知れません。

 

サプライチェーン全体への影響 大手企業がアニマルウェルフェアを重視することで、飼育農家、輸送業者、処理場など、サプライチェーン全体に取り組みが波及します。ビジネスパートナーへの協力・支援を通じて、日本の畜産業界全体の底上げが期待できます。

 

中小企業への模範となる 大手企業の取り組みは、中小規模の食肉企業にとってのベンチマークとなります。「伊藤ハムが実践している」という事実は、業界全体に大きな影響を与え、標準的な取り組みへと昇華していく可能性があります。

 

国際競争力の向上 海外では既にアニマルウェルフェアへの配慮が求められており、日本の畜産物を輸出する際の必須条件となりつつあります。大手企業が率先して取り組むことで、日本の畜産業全体の国際競争力が向上します。

 

 

消費者との新しい関係

大手企業のアニマルウェルフェアへの取り組みは、企業と消費者の関係性をも変えていきます。

 

認知度の向上 大手企業が積極的に情報発信することで、一般消費者のアニマルウェルフェアに対する認知度が飛躍的に向上します。店頭での商品選択時に、動物福祉を考慮する消費者が増えることが期待されます。

 

選択肢の提供 アニマルウェルフェアに配慮した商品が大手企業から提供されることで、消費者は「選ぶ」ことができるようになります。これまでは「知っていても選べない」状況でしたが、選択肢が増えることで、消費者の意思表示が可能になります。

 

 

消費者の選択が未来を変える

 

買うこと、買わないことは意思表示

私たち消費者にとって、「何を買うか」「何を買わないか」は、最も強力な意思表示の手段です。

アニマルウェルフェアに配慮した商品を選ぶことは、「このような取り組みを支持する」という明確なメッセージになります。逆に、そうでない商品を避けることも、「改善を求める」という意思表示となります。

 

企業にとって、消費者の購買行動はニーズを知るための重要なデータです。アニマルウェルフェアに配慮した商品が売れれば、企業は「消費者がこれを求めている」と認識し、さらに取り組みを強化していきます。

 

 

ニーズの変化に対応する企業を支える

伊藤ハムのように、消費者ニーズの変化に敏感に対応し、社会課題に真摯に向き合う企業を、私たち消費者が支えることが重要です。

 

企業の変革には時間とコストがかかります。アニマルウェルフェアに配慮した飼育方法は、従来の方法と比べて手間もコストもかかることが多いのが現実です。しかし、そのような取り組みを行う企業の商品を積極的に選ぶことで、「この方向性は正しい」というフィードバックを企業に送ることができます。

 

これによって、益々動物福祉を考える企業が増え、業界全体の変革につながっていくのです。

 

 

現状の課題:認知度と意識のギャップ

消費者が変われば、必ず動物福祉も変えられます。しかし、現実はどうでしょうか。

 

認知度の低さ 2024年時点でアニマルウェルフェアの認知度は25%程度。つまり、4人に3人はまだこの言葉すら知らないのが現状です。

 

優先順位の問題 知っていても、実際の購買行動にまで反映させている人はさらに少数です。価格、味、便利さといった要素が優先され、動物福祉まで考慮する余裕がないという消費者も多いでしょう。

 

情報不足 どの商品がアニマルウェルフェアに配慮しているのか、店頭では判断しにくいという問題もあります。認証マークや表示の統一化が進んでいないため、消費者が選びたくても選べないという状況があります。

 

 

知ることから始まる変化

 

現実を知ることの重要性

私は、現実を知った人が増えることで、畜産動物がもっとストレスのない環境で育つようになると信じています。

多くの人は、スーパーで売られている食肉が、どのような環境で育てられた動物から得られたものなのか、深く考える機会がありません。狭いケージに閉じ込められ、ほとんど動くこともできない環境で育てられる鶏。妊娠ストールと呼ばれる狭い檻の中で、身動きが取れない状態で過ごす母豚。こうした現実を知らない、もしくは知っていても「仕方がない」と諦めている人が大多数です。

 

しかし、知識は行動の第一歩です。現実を知り、「これは改善されるべきだ」と感じる人が増えれば、その人たちの購買行動が変わります。そして、その変化が企業を動かし、業界を変えていくのです。

 

 

できることから始める

アニマルウェルフェアへの貢献は、決して難しいことではありません。

 

情報を得る

  • アニマルウェルフェアについて学ぶ
  • 企業の取り組みを調べる
  • 商品のラベルや認証マークに注目する

選択する

  • アニマルウェルフェアに配慮した商品を選ぶ
  • 平飼い卵など、わかりやすい選択肢から始める
  • 少し高くても、動物福祉に配慮した商品を試してみる

広める

  • 家族や友人と情報を共有する
  • SNSで関心を表明する
  • 企業に意見や要望を伝える

一人ひとりの小さな行動が、やがて大きな変化を生み出します。

 

 

企業の取り組みを見極めるポイント

 

本気度を測る指標

企業のアニマルウェルフェアへの取り組みが本物かどうかを見極めるには、いくつかのポイントがあります。

 

明確なポリシーの有無 伊藤ハムのように、明文化されたアニマルウェルフェアポリシーを公開しているかどうかは重要な指標です。単なる意識表明ではなく、具体的な方針が示されているかをチェックしましょう。

 

具体的な行動計画 「取り組む」という宣言だけでなく、いつまでに何をするのか、具体的な目標とタイムラインが示されているかが重要です。

 

透明性と情報公開 取り組みの進捗状況を定期的に報告しているか、第三者による認証を受けているかなど、透明性の高い運営をしているかを確認しましょう。

 

サプライチェーン全体への配慮 自社だけでなく、取引先や協力企業にも働きかけているかどうかも、本気度を測る重要な要素です。

 

 

継続的な改善への姿勢

アニマルウェルフェアは、一度取り組めば終わりというものではありません。継続的な改善と進化が必要です。

企業が定期的に取り組み内容を見直し、より良い方法を模索しているか、新しい知見や技術を取り入れているかなど、進化し続ける姿勢があるかどうかも重要なポイントです。

 

 

アニマルウェルフェアがもたらす副次的効果

 

環境への好影響

アニマルウェルフェアに配慮した飼育は、環境負荷の軽減にもつながります。

ストレスの少ない環境で育った家畜は、過度な薬剤投与が不要になります。また、放牧型の飼育では、飼料の輸入依存度を下げることができ、輸送によるCO2排出削減にも貢献します。

 

 

食の安全性向上

健康に育った家畜から得られる畜産物は、より安全性が高いと言えます。抗生物質などの使用が抑えられることで、薬剤耐性菌のリスクも低減されます。

 

 

生産者の満足度向上

動物に配慮した飼育方法は、生産者自身の満足度や働きがいの向上にもつながります。命を育んでいる実感が得られ、誇りを持って仕事ができる環境づくりは、人材確保の面でもプラスに働きます。

 

 

教育的価値

子どもたちに「命をいただく」ことの意味を教える際、アニマルウェルフェアの概念は重要な教材となります。動物の生命を尊重しながら、食という恵みをいただく。このバランス感覚を持った世代を育てることは、持続可能な社会の実現に不可欠です。

 

 

今後の展望と課題

 

日本の畜産業界が目指すべき方向

日本のアニマルウェルフェアは、欧米と比べて遅れているのは事実です。しかし、伊藤ハムのような大手企業の取り組みを皮切りに、確実に前進しています。

 

今後は、以下のような発展が期待されます。

 

法制化の進展 現在は指針レベルの取り組みですが、将来的にはEUのような法律による規制も視野に入ってくるでしょう。

 

認証制度の普及 アニマルウェルフェア畜産協会などの認証制度がさらに普及し、消費者が商品を選びやすくなることが期待されます。

 

技術革新 IoTやAIを活用した飼育管理技術の発展により、動物福祉と生産効率の両立が可能になっていくでしょう。

 

 

解決すべき課題

一方で、クリアすべき課題も多く存在します。

 

コスト問題 アニマルウェルフェアに配慮した飼育は、従来の方法よりコストがかかります。このコストを誰がどう負担するのか、社会全体で考える必要があります。

 

生産性とのバランス 日本の食料自給率は低く、効率的な生産も重要です。動物福祉と生産性のバランスをどう取るかは、難しい課題です。

 

教育と啓発 消費者の認知度向上と、生産者への技術支援・教育の両方が必要です。

 

中小企業への支援 大手企業だけでなく、中小規模の生産者もアニマルウェルフェアに取り組めるよう、技術支援や資金援助の仕組みが必要です。

 

 

まとめ:私たち一人ひとりができること

 

伊藤ハムのアニマルウェルフェアへの取り組みは、日本の食肉業界における大きな一歩です。しかし、この動きを確実なものにし、さらに広げていくためには、私たち消費者の役割が極めて重要です。

 

買うこと、買わないことは意思表示です アニマルウェルフェアに配慮した商品を選ぶことで、企業に対して「この方向性を支持する」というメッセージを送ることができます。

 

企業のニーズはデータから生まれます 消費者の購買行動というデータを通じて、企業はニーズを把握します。私たちの選択が、企業の方針を決定づけるのです。

 

ニーズの変化に対応する企業を支えましょう 伊藤ハムのように社会課題に真摯に向き合う企業を支えることで、益々動物福祉を考える企業が増えていきます。

 

現状を知る人を増やすことが重要です まだまだ多くの人がアニマルウェルフェアを知らない、もしくは知っていても重視していないのが現状です。私たちが情報を広め、対話を重ねることで、認知度を高めていく必要があります。

 

現実を知った人が増えることで、畜産動物がもっとストレスのない環境で育つようになると、私は信じています。 

 

一人ひとりの小さな選択と行動が、やがて大きな変化を生み出します。「伊藤ハム アニマルウェルフェア」というキーワードでこの記事にたどり着いたあなたは、既に第一歩を踏み出しています。

 

次は、その知識を行動に移す番です。次の買い物で、少しだけ商品のラベルに目を向けてみる。家族や友人にアニマルウェルフェアについて話してみる。SNSで関心を表明してみる。そんな小さな一歩が、日本の畜産業界の未来を、そして動物たちの未来を変えていくのです。

 

私たち消費者が変われば、必ず動物福祉も変えられます。そして、より持続可能で、倫理的で、豊かな食の未来を、共に創り上げていくことができるのです。

 

 

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この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

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