シャトレーゼが動物福祉に本気で取り組む理由|YATSUDOKIの平飼い卵スイーツが注目される背景
はじめに:お菓子メーカーが挑戦する動物福祉の新しいカタチ
「シャトレーゼ」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは手頃な価格で美味しいケーキやアイスクリームではないでしょうか。しかし今、このシャトレーゼが動物福祉という社会的な課題に真正面から取り組み、業界内外で注目を集めています。
2024年現在、日本でも徐々に広がりを見せている「アニマルウェルフェア(動物福祉)」への関心。特に食用動物の飼育環境を改善する動きは、欧米諸国に比べて遅れていると指摘されてきました。そんな中、大手スイーツメーカーであるシャトレーゼが、プレミアムブランド「YATSUDOKI(ヤツドキ)」を通じて平飼い卵を使用した商品を展開し、自社で平飼い養鶏場まで運営しているという事実は、日本の食品業界における大きな転換点と言えるでしょう。
この記事では、シャトレーゼの動物福祉への取り組み、YATSUDOKIの平飼い卵スイーツの魅力、そして私たち消費者がどのようにこの変化に参加できるのかを詳しく解説していきます。
シャトレーゼが挑むアニマルウェルフェアとは?
動物福祉の基本概念
アニマルウェルフェア(Animal Welfare)とは、動物が心身ともに健康で、本来の習性に従って生活できる状態を保障する考え方です。国際的には「5つの自由」として知られる基準があります。
- 飢えと渇きからの自由
- 不快からの自由
- 痛み、傷、病気からの自由
- 正常な行動を発現する自由
- 恐怖や抑圧からの自由
特に養鶏業界では、この「正常な行動を発現する自由」が大きな焦点となっています。
日本の養鶏業界が抱える課題:バタリーケージ問題
日本の採卵鶏の約90%以上が「バタリーケージ」と呼ばれる狭いケージ内で飼育されています。これは複数段に積み重ねられた金網のケージで、1羽あたりの飼育面積はわずかB5用紙程度。鶏は翼を広げることもできず、砂浴びや止まり木での休息といった本能的な行動が制限されています。
一方、欧州連合(EU)では2012年からバタリーケージの使用が禁止され、アメリカの一部の州やニュージーランドなども段階的な禁止を進めています。日本でも2020年に農林水産省が「アニマルウェルフェアに配慮した採卵鶏の飼養管理指針」を策定しましたが、法的拘束力はなく、業界の自主的な取り組みに委ねられているのが現状です。
平飼いという選択肢
「平飼い(ひらがい)」は、鶏が地面で自由に動き回れる飼育方法です。鶏舎内や屋外の地面で飼育され、鶏は砂浴びをしたり、止まり木で休んだり、巣箱で卵を産んだりと、自然な行動をとることができます。
平飼い卵はバタリーケージ卵と比較して:
- ストレスが少ない環境で育つため、鶏の健康状態が良好
- 卵の味や栄養価が高いとされる研究結果も
- 生産コストが高くなるため、価格はやや高め
- 日本ではまだ全体の数%程度の流通量
という特徴があります。
YATSUDOKIの革新:自社養鶏場から始まる変革
YATSUDOKIブランドの誕生背景
シャトレーゼが2018年に立ち上げたプレミアムブランド「YATSUDOKI」。八ヶ岳の自然の恵みと、厳選された素材を使用したワンランク上のスイーツを提供するというコンセプトで誕生しました。
その中でも特に注目すべきは、平飼い卵を使用したシュークリームとプリンです。これらの商品には、シャトレーゼが自社で運営する平飼い養鶏場で育てられた鶏の卵が使用されています。
自社養鶏場という大胆な決断
多くの食品メーカーが原材料を外部から調達する中、シャトレーゼは自社で平飼い養鶏場を運営するという大胆な決断をしました。これには以下のような意義があります。
1. トレーサビリティの確保 卵の生産過程を完全に管理できることで、品質と安全性を徹底的に追求できます。
2. 動物福祉基準の徹底 自社運営だからこそ、理想とする飼育環境を妥協なく実現できます。
3. 安定供給の実現 必要な量を計画的に生産できるため、商品展開が安定します。
4. コストコントロール 中間マージンを削減し、品質の高い平飼い卵を使いながらも手頃な価格を実現できます。
この取り組みは、「原材料から製品まで一貫して責任を持つ」という企業姿勢の表れであり、動物福祉への本気度を示すものと言えるでしょう。
実食レポート:御影店で体験したYATSUDOKIの魅力
平日でも賑わう店内
私も実際に、YATSUDOKI御影店を訪れて平飼い卵を使用したシュークリームとプリンを購入してきました。平日の午後にもかかわらず、店内には多くのお客さんが訪れており、その人気ぶりを肌で感じることができました。
店内は洗練された雰囲気で、シャトレーゼの既存店舗とは一線を画すプレミアム感があります。商品棚には、通常のシャトレーゼ商品に加えて、YATSUDOKIブランドの特別な商品が並んでいました。
平飼い卵シュークリームの味わい
まず手に取ったのは、平飼い卵を使用したシュークリームです。
見た目: ふっくらとした生地に、たっぷりのカスタードクリームが詰まっています。一般的なシュークリームと比べて、やや黄色みが強いクリームの色が印象的です。
味わい: 一口食べて驚いたのは、カスタードクリームの濃厚さとコク。卵の風味がしっかりと感じられ、それでいて後味は軽やか。シュー生地もサクサクとして、クリームとの相性が抜群です。
価格: プレミアムブランドながら、200円台という驚きの価格設定。平飼い卵を使用していることを考えると、非常にリーズナブルです。
平飼い卵プリンの絶品ぶり
続いてプリンも試してみました。
食感: なめらかで、スプーンを入れるとトゥルンと崩れる絶妙な固さ。昔ながらの蒸しプリンのような、しっかりとした卵の存在感があります。
風味: 卵の濃厚な味わいとミルクの優しい甘さが調和して、懐かしくも新しい味わい。カラメルソースのほろ苦さが、全体を引き締めています。
満足度: 一つ食べるだけで十分な満足感があり、「卵ってこんなに美味しかったんだ」と再認識させられる一品です。
なぜ今、平飼い卵が注目されるのか?
消費者意識の変化
実際に御影店を訪れて感じたのは、「平飼い卵」を求める消費者が確実に増えているということです。平日にもかかわらず多くの人が訪れていたことは、単に美味しいスイーツが食べたいという欲求だけでなく、「より良い飼育環境で育った卵を選びたい」という意識の表れではないでしょうか。
近年の調査でも、日本の消費者の動物福祉への関心は高まっています。特に若い世代を中心に、価格だけでなく、商品の背景にあるストーリーや倫理的な側面を重視する傾向が強まっています。
企業の対応が加速
シャトレーゼのような取り組みは、決して孤立したものではありません。
- 大手コーヒーチェーンが平飼い卵使用を宣言
- ファミリーレストランチェーンが段階的にケージフリー卵へ移行
- コンビニエンスストアが一部商品で平飼い卵を採用
- 高級ホテルが調達基準に動物福祉を追加
このように、様々な業界で動物福祉に配慮した調達への移行が進んでいます。これは単なる流行ではなく、持続可能な社会を実現するための必然的な流れと言えるでしょう。
「美味しさ」が変化を後押しする
ここで重要なのは、平飼い卵のスイーツが「倫理的だから食べる」だけでなく、「美味しいから食べる」という選択肢になっているということです。
YATSUDOKIの商品が示しているのは、動物福祉に配慮した食材は、味や品質の面でも優れているという事実。そして、その美味しさを手頃な価格で提供できるという可能性です。
問題に対してネガティブな情報だけを流すのではなく、「こんなに美味しい選択肢があるんだ」「ちょっと意識するだけで変化に参加できるんだ」という、ポジティブで楽しいアプローチが、より多くの人を巻き込む力を持っています。
美味しく楽しく、みんなで変えていく。YATSUDOKIの取り組みは、まさにそんな理想的な変化の形を示していると言えるでしょう。
シャトレーゼの動物福祉への取り組みが持つ意義
業界への波及効果
大手スイーツメーカーであるシャトレーゼが動物福祉に真剣に取り組むことの影響は計り知れません。
1. 業界標準の引き上げ シャトレーゼが成功すれば、他の企業も追随する可能性が高まります。業界全体の動物福祉基準の底上げにつながるでしょう。
2. 消費者教育 全国に展開する店舗網を通じて、多くの消費者が平飼い卵や動物福祉について知る機会が生まれます。
3. 価格イメージの改善 「平飼い卵=高価」というイメージを払拭し、より身近な選択肢として認識されるようになります。
4. サプライチェーンの変革 大手企業が自社養鶏場を運営することで、養鶏業界全体に新しいビジネスモデルを提示します。
持続可能性への貢献
動物福祉への配慮は、SDGs(持続可能な開発目標)の複数の目標とも関連しています。
- 目標2(飢餓をゼロに): 持続可能な農業の推進
- 目標12(つくる責任つかう責任): 持続可能な生産消費形態の確保
- 目標15(陸の豊かさも守ろう): 生物多様性の保全
企業として社会的責任を果たしながら、ビジネスとしても成立させるシャトレーゼの取り組みは、「サステナビリティ」の理想的なモデルと言えます。
消費者として私たちができること
「買う」という投票行動
私たちが日々の買い物で何を選ぶか。それは単なる消費行動ではなく、「どんな世界を支持するか」という投票行動でもあります。
平飼い卵を使用した商品を選ぶことは
- 動物福祉に配慮した企業を支持する意思表示
- より良い飼育環境への需要を示すシグナル
- 業界全体の変革を後押しする力
となります。
完璧を求めず、できることから始める
「すべての卵を平飼いにしなければ」と考える必要はありません。まずは
- 週に一度、意識的に平飼い卵の商品を選んでみる
- 贈り物やご褒美スイーツとして選ぶ
- 家族や友人と、こうした取り組みについて話してみる
こうした小さな行動の積み重ねが、大きな変化を生み出します。
情報を共有し、対話を広げる
SNSで体験をシェアしたり、周りの人に美味しさを伝えたりすることも、重要なアクションです。「説教臭い話」ではなく、「こんな美味しいもの見つけた!」という気軽な共有が、自然な形で意識の変化を広げていきます。
YATSUDOKIの今後の展開と期待
店舗展開の拡大
現在、YATSUDOKIは全国主要都市を中心に店舗を展開していますが、今後さらなる拡大が期待されます。より多くの人が平飼い卵スイーツにアクセスできるようになれば、動物福祉への関心もさらに高まるでしょう。
商品ラインナップの充実
シュークリームとプリンに加えて、平飼い卵を使用した新しいスイーツの開発も期待されます。例えば
- ロールケーキやショートケーキ
- カスタードタルト
- エッグタルト
- カステラ
- バウムクーヘン
など、卵の美味しさを活かした様々な商品展開の可能性があります。
他の動物福祉分野への展開
卵の次は、乳製品や食肉など、他の動物性食材でも動物福祉に配慮した取り組みが広がる可能性があります。シャトレーゼのような大手企業がリードすることで、業界全体の変革が加速するでしょう。
世界から見た日本の動物福祉の現状
国際比較
動物福祉において、日本は欧米諸国と比べてまだ発展途上と言わざるを得ません。
- EU: 2012年からバタリーケージ禁止、厳格な動物福祉法
- スイス: 1992年からバタリーケージ禁止、世界最高水準の法規制
- アメリカ: 州によって異なるが、カリフォルニア州などで段階的禁止
- 日本: 法的規制なし、業界の自主的な取り組みに依存
グローバル企業の動き
多国籍企業の多くは、グローバルな動物福祉方針を掲げており
- ユニリーバ: 2025年までにケージフリー卵100%
- ネスレ: 2025年までに世界でケージフリー卵へ移行
- マクドナルド: 地域ごとに段階的にケージフリー卵へ移行
日本企業も、グローバル基準に合わせた対応が求められる時代になっています。
日本企業の優位性を活かすチャンス
一方で、日本企業には「品質へのこだわり」「細やかな配慮」「技術力」という強みがあります。シャトレーゼのように、これらの強みを活かして、美味しさと動物福祉を両立させる取り組みは、世界に誇れるモデルとなる可能性を秘めています。
まとめ:美味しさと優しさが共存する未来へ
シャトレーゼのYATSUDOKIが示してくれたのは、「動物福祉に配慮すること」と「美味しくて手頃な商品を提供すること」は決して相反するものではないという事実です。
平飼い卵を使ったシュークリームとプリンは、本当に美味しい。御影店で実際に購入して食べてみて、その品質の高さに感動しました。平日にもかかわらず多くのお客さんで賑わっていたことからも、このような商品を求める人が確実に増えていることが分かります。
バタリーケージの問題は、決して遠い国の話ではありません。私たちが日々食べている卵、その卵を使った食品の背景には、この課題が存在しています。しかし、ネガティブな情報だけを流して罪悪感を煽るのではなく、「こんな美味しい選択肢がある」「楽しく変化に参加できる」というポジティブなアプローチこそが、持続可能な変革につながるのではないでしょうか。
シャトレーゼの取り組みは、まだ始まったばかりです。しかし、大手企業が自社養鶏場を運営してまで動物福祉に本気で取り組む姿勢は、日本の食品業界に新しい風を吹き込んでいます。
私たち消費者も、日々の小さな選択を通じて、この変化を後押しすることができます。次にスイーツを買うとき、ちょっとYATSUDOKIの平飼い卵商品を手に取ってみませんか?その美味しさに驚くとともに、より良い未来への一歩を踏み出すことができるはずです。
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