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風力発電のデメリット:鳥への影響とバードストライクの実態

 

はじめに

 

クリーンエネルギーとして注目を集める風力発電。二酸化炭素を排出せず、環境に優しい再生可能エネルギーとして世界中で導入が進んでいます。しかし、その裏側には見過ごせない問題が潜んでいます。それが「バードストライク」です。

 

風力発電は本当に環境に優しいのでしょうか?鳥類への影響という観点から、風力発電の抱える課題と、真のエコな発電方法について考えていきましょう。

 

 

バードストライクとは何か

 

バードストライクの定義

バードストライクとは、飛翔中の野鳥が風力発電施設のブレード(羽根)に衝突し、死傷する事故のことを指します。航空機でも同様の問題が発生しますが、風力発電におけるバードストライクは、その規模と継続性において深刻な環境問題となっています。

 

 

被害の実態

アメリカでは年間最大40万羽の鳥がバードストライクにより死亡していると推定されています。日本においても状況は深刻です。日本野鳥の会の調査によると、国内22カ所の風力発電施設で2000年からの10年間に、合計102件のバードストライクが確認されています。

 

しかし、これは氷山の一角に過ぎません。地面に落下した鳥の死骸はキツネなどの捕食者に持ち去られることが多く、実際の被害数はさらに多いとされています。

 

 

希少種への脅威

特に深刻なのが、希少な鳥類への影響です。絶滅危惧IB類に分類されるオジロワシについては、判明している限り風力発電施設へのバードストライクが最も多い死因となっています。このように、風力発電は生物多様性の保全という観点から大きな課題を抱えています。

 

 

なぜ鳥は風車に衝突するのか

鳥がバードストライクに遭う理由は複数考えられています。

 

視覚的な問題 高速で回転する風車のブレードを鳥が認識しにくいという「モーションスミア」現象が指摘されています。人間の目にはゆっくり回っているように見える風車でも、鳥の視覚では正確に捉えられない可能性があります。

 

注意力の問題 飛翔中に餌や他の個体に注意が向いていると、風車に気づかずに衝突してしまうケースもあります。

 

回避困難 天敵から逃げている最中など、やむを得ず風車に近づかざるを得ない状況も発生します。

 

 

バードストライク以外の鳥類への影響

 

風力発電が鳥類に与える影響は、バードストライクだけではありません。

 

生息地の喪失

風車建設のために森林が切り開かれることで、鳥の生息地が失われることが指摘されています。国内外の研究では、風車の建設前と比較して、建設後に鳥の生息種数や密度が減少したことが報告されています。

 

 

障壁効果によるエネルギー消費の増加

鳥が風車を避けることで最短の移動ルートが利用できなくなる「障壁効果」も問題となっています。これにより鳥は迂回飛翔を余儀なくされ、余計なエネルギーを消費することになります。

 

繁殖期間中のカワウでは、風車を避けるために採餌距離が10km延びると、1日あたり20%ものエネルギーが余計にかかると推定されています。この追加的なエネルギー消費は、繁殖成功率や生存率に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

ドイツで風力発電が進まなくなった理由

 

風力発電の先進国として知られるドイツですが、近年、新規建設が大幅に減少しています。その背景には複数の要因が絡み合っています。

 

 

バードストライクによる反対運動

動物保護団体が、発電に必要な巨大なプロペラに鳥類が巻き込まれる事故により希少種が危機に瀕していることを理由に、建設反対運動を展開しています。自然保護団体や市民グループが、希少な鳥類が危険にさらされていることなどを理由に、規制や訴訟などあらゆる手段を講じて風車の新設に反対しています。

 

 

住民の健康被害

風力発電が発生させる低周波が長時間にわたって健康被害を及ぼし、近隣住民が耳鳴りや吐き気を感じるようになったケースがあります。訴訟の結果、住民が勝訴し、健康被害の原因となった風力発電が撤去されました。この裁判をきっかけに、反対運動が全国に広がりました。

 

 

景観破壊への懸念

住民運動の反対理由として、野鳥の衝突死や地下水汚染も挙げられますが、最も大きいのは景観が破壊されることです。風光明媚な観光地や農村地帯では、巨大な風車が林立することへの抵抗感が強いのです。

 

 

厳しい距離規制

これらの問題を受けて、ドイツ政府は規制を強化しました。バイエルン州では風車と最寄りの住宅地との距離が風車の高さの10倍でなければならないという「10Hルール」があり、最近の風車は高さ200メートルなので、2キロの距離が必要となります。これにより多くのプロジェクトが実施不可能になっています。

 

 

建設数の激減

その結果、風車の新規設置数は2016年の1,624基、2017年の1,792基から、2018年は743基に急減し、2019年も9月までに150基しか建設されていません。風力発電業界は深刻な危機に直面しています。

 

 

補助金終了による経営危機

2000年から施行されているドイツの再生可能エネルギー法は、風力発電事業者に20年間の補助金を保証してきましたが、これが今後数年で切れます。補助金がなければ収益性はなく、2025年までにはドイツの陸上風力発電の4分の1以上に相当する15,000MWのプロジェクトが失われる恐れがあります。

 

 

バードストライク対策の現状

 

ブレードの塗装による対策

興味深い対策として、ブレードの塗装があります。ノルウェーの研究では、風力発電機の羽の1枚を黒く塗ることで鳥の衝突事故を大幅に減らすことができると報告されています。色に変化をつけることで、鳥が羽の回転を認識しやすくなると考えられています。

 

 

最新の監視システム

日本気象協会は、レーダーによる鳥類軌跡抽出システムや赤外線カメラとAIを活用したバードストライク検知システムで構成される鳥類監視システムを開発しています。このシステムにより、風車近傍の鳥類の飛翔を24時間連続で遠隔監視することが可能になります。

 

 

立地選定の重要性

風力発電の鳥への悪影響を最小限とするためには、十分な調査を実施し、繁殖地や渡りのルート、中継地など鳥が多く分布する地域を避けて建設地を選定することが不可欠です。

 

欧州の多くの施設では、建設後も継続的なモニタリング調査を行い、鳥の渡り時期や夜間、悪天候時などにバードストライクのリスクが高まる場合、風車の稼働を一時的に停止するなど柔軟な保全措置がとられています。

 

 

エコな発電方法とは何か

 

では、真に環境に優しい発電方法とは何でしょうか。風力発電の課題を踏まえて、様々な発電方法を検討してみましょう。

 

 

太陽光発電

太陽光発電は、屋根や空き地に設置でき、鳥類への直接的な影響が少ない発電方法です。パネルの設置による生息地の改変はありますが、風力発電のような致命的な衝突事故は発生しません。

 

メリット

  • 鳥類への直接的な被害がない
  • 設置場所の柔軟性が高い
  • メンテナンスが比較的容易
  • 騒音や低周波の問題がない

デメリット

  • 天候や時間帯に発電量が左右される
  • 広大な設置面積が必要
  • パネルの製造・廃棄に環境負荷がある

 

水力発電

水力発電は、最も古い再生可能エネルギーの一つです。ダムや川の流れを利用して安定した電力を供給できます。

 

メリット

  • 安定した電力供給が可能
  • 長寿命で実績がある
  • 発電時に温室効果ガスを排出しない
  • 水位調整により需要に応じた発電が可能

デメリット

  • ダム建設による生態系への大きな影響
  • 河川環境の改変
  • 建設に莫大なコストと時間がかかる
  • 適地が限られる

 

地熱発電

日本のような火山国に適した発電方法です。地球内部の熱を利用するため、天候に左右されず安定した電力供給が可能です。

 

メリット

  • 24時間安定した発電が可能
  • CO2排出量が非常に少ない
  • 鳥類への直接的な影響が少ない
  • 燃料を必要としない

デメリット

  • 国立公園などの自然保護区域と重なることが多い
  • 開発コストが高い
  • 地熱資源のある場所が限定的
  • 温泉資源への影響懸念

 

バイオマス発電

有機物を燃料として利用する発電方法です。廃棄物の有効活用にもつながります。

 

メリット

  • 廃棄物の有効利用が可能
  • カーボンニュートラルとされる
  • 安定した電力供給が可能
  • 地域の資源を活用できる

デメリット

  • 燃料の安定確保が課題
  • 燃焼時に大気汚染物質が発生する可能性
  • 収集・運搬のコストがかかる
  • 土地利用の競合問題

 

洋上風力発電

陸上風力の課題を克服する方法として、洋上風力発電が注目されています。

 

メリット

  • 陸上より強く安定した風が得られる
  • 住宅地から離れているため騒音問題が少ない
  • 景観への影響が小さい
  • より大型の風車を設置できる

デメリット

  • 建設・メンテナンスコストが高い
  • 鳥類への影響は依然として存在し、新たに海洋生物や水質環境への影響も考慮する必要があります
  • 漁業権との調整が必要
  • 台風などの自然災害リスク

 

総合的な視点で考えるエネルギー戦略

 

エネルギーミックスの重要性

単一の発電方法に依存するのではなく、複数の発電方法を組み合わせる「エネルギーミックス」の考え方が重要です。それぞれの発電方法の長所を活かし、短所を補い合うことで、より安定的で環境負荷の少ない電力供給システムを構築できます。

 

 

地域特性を活かした発電

地域の自然条件や社会条件に応じて、最適な発電方法を選択することが大切です。

  • 日照時間が長い地域:太陽光発電
  • 風況の良い沿岸部:洋上風力発電
  • 火山地帯:地熱発電
  • 河川や高低差のある地域:小水力発電
  • 農林業が盛んな地域:バイオマス発電

 

環境アセスメントの徹底

どの発電方法を選択する場合でも、事前の環境影響評価が不可欠です。特に野生動物への影響については、長期的なモニタリングと適切な対策が求められます。

 

風力発電が他の発電産業に比べて経済的または安全上の利点を多数有していることに疑いはありません。しかし、十分な鳥類モニタリングと適切な影響軽減措置を講じることで、風力発電が「真のクリーンエネルギー」となることが期待されています。

 

 

人間活動全体の見直し

同研究では、自動車に轢かれて死亡する鳥は年間8,000万羽、飼い猫やノネコに殺される鳥は年間10億羽もいると推定されています。つまり、風力発電だけでなく、私たちの日常生活全体が鳥類に大きな影響を与えているのです。

 

環境に優しい社会を構築するためには、風力発電の改善はもちろん、交通システムの見直し、ペットの適切な管理、都市計画における野生生物への配慮など、あらゆる人間活動を見直す必要があります。

 

 

未来に向けて:技術革新と共生の道

 

技術開発の進展

バードストライクを防ぐための技術開発は日々進歩しています。AIを活用した鳥類検知システム、ブレードの最適な塗装方法、鳥を遠ざける音響システムなど、様々な研究が進められています。

 

 

順応的管理の導入

建設前の予測には限界があります。そのため、建設後も継続的にモニタリングを行い、予期せぬ影響が確認された場合には迅速に対応を見直す「順応的管理」の考え方が重要です。

 

 

社会全体での取り組み

エネルギー問題は、技術だけでは解決できません。私たち一人ひとりが省エネルギーを心がけ、持続可能なライフスタイルを選択することが、最も効果的な「エコな発電」につながります。

 

 

まとめ

 

風力発電は、確かにクリーンエネルギーとして重要な役割を果たしています。しかし、バードストライクをはじめとする鳥類への影響という深刻なデメリットも存在します。

 

ドイツの事例が示すように、環境保護を目的とした風力発電が、別の環境問題を引き起こすというジレンマは簡単には解決できません。景観保護、騒音・低周波問題、そして野生動物保護など、多面的な配慮が必要です。

 

真にエコな発電とは、単にCO2を排出しないだけでなく、生物多様性を保全し、地域住民の生活環境にも配慮したものでなければなりません。太陽光、水力、地熱、バイオマスなど、それぞれの発電方法には長所と短所があり、地域の特性に応じて最適な組み合わせを選択することが重要です。

 

また、洋上風力発電のように、陸上風力の課題を克服しようとする試みも進んでいますが、これもまた新たな環境への影響を慎重に評価する必要があります。

 

私たちに求められているのは、エネルギー問題と環境保護のバランスを取りながら、持続可能な社会を構築していくことです。風力発電の課題を直視し、適切な対策を講じながら、真に環境と調和したエネルギーシステムを目指していくことが、今後の課題となるでしょう。

 

エネルギー選択は、私たち一人ひとりの選択でもあります。環境に優しい電力プランを選ぶ、省エネルギーを実践する、地域のエネルギー政策に関心を持つなど、できることから始めていくことが大切です。

 

風力発電と鳥類の共存は可能なのか。この問いに対する答えを見つけるために、今後も技術開発、環境モニタリング、そして社会全体での議論を続けていく必要があるのです。

 

 

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この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

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