猫がご飯を食べないけどちゅーるは食べる理由と対処法【獣医師監修】
愛猫が突然ご飯を食べなくなったとき、飼い主さんは心配で夜も眠れないほど不安になりますよね。でも、ちゅーるなどのおやつは喜んで食べる…そんな状況に直面している方は少なくありません。
この記事では、猫がご飯を食べないのにちゅーるは食べる理由、その背後に隠れている可能性のある病気、そして今すぐできる対処法について、詳しく解説していきます。
なぜ猫はご飯を食べないのにちゅーるは食べるのか
嗜好性の高さが鍵
ちゅーるをはじめとするおやつ系のフードは、猫の食欲を刺激するように設計されています。香りが強く、味も濃厚で、柔らかいペースト状という食感も猫にとって魅力的です。
一方、普段のキャットフードは栄養バランスを重視して作られているため、おやつほどの嗜好性はありません。そのため、体調が優れないときや気分が乗らないとき、猫は「美味しくて食べやすいもの」だけを選ぶことがあります。
食欲不振の段階を示すサイン
実は、「ちゅーるは食べられる」という状態は、病気の進行度を判断する上で重要な指標になります。
軽度の食欲不振:通常のご飯は食べないが、嗜好性の高いおやつやちゅーるは食べられる状態です。この段階であれば、まだ回復しやすい時期と言えます。
重度の食欲不振:ちゅーるさえも食べなくなった状態は、かなり深刻な状況です。体調が著しく悪化しているサインで、緊急の受診が必要になります。
つまり、「ちゅーるは食べる」という今の状態は、早期に対処すれば改善の可能性が高いタイミングなのです。
考えられる原因は大きく2つ
1. 単なる飽きやわがまま
健康な猫でも、同じフードを食べ続けると飽きてしまうことがあります。特に以下のような状況では、わがままで食べないケースが多いです。
- 元気で活発に動いている
- 毛並みがツヤツヤしている
- 排泄も正常
- 遊びにも興味を示す
- 体重の変化がない
この場合、フードを変えてみたり、ちゅーるをフードに混ぜたりすることで食べてくれることがあります。
2. 何らかの体調不良や病気
一方、以下のような症状が見られる場合は、病気が隠れている可能性があります。
- 元気がなく、寝ている時間が増えた
- 嘔吐や下痢がある
- よだれが出ている
- 口臭が強くなった
- 体重が減少している
- 毛づやが悪くなった
- 目やにや鼻水が出ている
- 呼吸が荒い
- トイレの回数や尿量が変わった
このような症状がある場合は、早めに動物病院を受診することをおすすめします。
猫がご飯を食べない原因となる主な病気
口腔内の問題
歯周病・口内炎:口の中が痛むため、硬いドライフードは食べられないけれど、柔らかいちゅーるなら食べられることがあります。歯茎の赤みや腫れ、口臭がサインです。
歯の破折:歯が欠けたり折れたりすると、咀嚼時に痛みを感じます。
消化器系の問題
胃腸炎:胃や腸に炎症があると食欲が落ちます。嘔吐や下痢を伴うことが多いです。
毛球症:飲み込んだ毛が胃腸に詰まると、食欲不振や嘔吐の原因になります。
便秘:お腹が張って苦しいため、食欲が落ちることがあります。
内臓疾患
腎臓病:猫に非常に多い病気です。慢性腎臓病では徐々に食欲が低下し、嘔吐や体重減少が見られます。
肝臓病:肝機能が低下すると食欲不振、黄疸、嘔吐などの症状が現れます。
膵炎:急性膵炎では激しい腹痛と食欲不振が起こります。
甲状腺機能亢進症:高齢猫に多く、食欲はあるのに痩せていく場合もありますが、食欲不振になることもあります。
その他の原因
ストレス:引っ越し、新しいペットの加入、家族構成の変化などがストレスとなり、食欲不振を引き起こします。
発熱:感染症などで熱があると食欲が落ちます。
薬の副作用:服薬中の薬が原因で食欲不振になることもあります。
今すぐできる対処法
まずは様子を観察する
食べない期間が半日〜1日程度で、他に症状がなく元気であれば、少し様子を見ても良いでしょう。ただし、24時間以上まったく食べない場合は注意が必要です。
猫は絶食状態が続くと「肝リピドーシス(脂肪肝)」という深刻な病気を発症するリスクがあります。特に太った猫は要注意です。
フードを変えてみる
単なる飽きの可能性を考えて、以下を試してみましょう。
別のブランドのフード:今までと違う味や食感のものを用意します。
ウェットフードに変更:ドライフードを食べないなら、水分が多くて香りも強いウェットフードを試してみましょう。
フードを温める:電子レンジで数秒温めると香りが立ち、食欲を刺激します。人肌程度(37〜38度)が理想です。
ちゅーるをトッピング:普段のフードにちゅーるを少量混ぜると、食べてくれることがあります。
新鮮な食事:フードが古くなっていないか、酸化していないか確認し、新しいものを与えます。
食事環境を見直す
静かな場所で与える:騒がしい場所や人通りの多い場所は避けましょう。
食器を変える:プラスチック製は臭いが付きやすいので、陶器やステンレス製に変えてみます。
食器の高さを調整:首を下げて食べるのが辛い場合もあるので、高さのある食器台を使用します。
複数飼いの場合は離す:他の猫が気になって食べられないこともあります。
ちゅーるでエネルギー補給する方法
何も食べないよりは、ちゅーるでもカロリーを摂取できた方が良いです。ただし、ちゅーるだけでは栄養が不十分なので、あくまで短期的な対策として考えましょう。
エネルギー補給に適したちゅーる
エネルギーちゅーる:通常のちゅーるよりカロリーが高く、少量でもエネルギー補給できるタイプがあります。
総合栄養食タイプ:おやつではなく、総合栄養食基準を満たしたちゅーるも販売されています。栄養バランスが考慮されているので、一時的に頼るならこちらがおすすめです。
投薬補助用:投薬のために作られた製品は、しっかりとしたカロリーと栄養が含まれていることが多いです。
与え方のポイント
- 1日に必要なカロリーを計算し、可能な限り摂取できるように複数回に分けて与える
- 体重1kgあたり約70〜80kcal程度が目安(個体差あり)
- 水分補給も忘れずに
- 2〜3日以上ちゅーるだけに頼るのは避ける
いつ病院に行くべきか
すぐに受診が必要なケース
以下の症状がある場合は、できるだけ早く動物病院を受診してください。
- 24時間以上何も食べない
- ちゅーるさえも食べなくなった
- 嘔吐や下痢が続いている
- ぐったりして動かない
- 呼吸が荒い、苦しそう
- けいれんを起こしている
- 歯茎や舌が白っぽい、または黄色い
- 血便や血尿が出ている
数日以内の受診を検討するケース
- 2〜3日食欲不振が続いている
- 少しずつ体重が減っている
- 元気はあるが食べる量が明らかに減った
- 他のフードに変えても食べない
- 口臭が気になる
- よだれが増えた
動物病院での検査
基本的な検査
身体検査:体温、心拍数、呼吸数のチェック、触診で腹部の異常や痛みがないか確認します。
口腔内検査:歯や歯茎、舌、喉の状態を確認します。
必要に応じた精密検査
血液検査:腎臓、肝臓、膵臓などの内臓機能、炎症の有無、貧血の有無などを調べます。
尿検査:腎臓病や膀胱炎、糖尿病などの診断に役立ちます。
レントゲン検査:胸部や腹部の臓器の大きさや形、異物の有無を確認します。
超音波検査:内臓の詳細な状態を観察できます。
便検査:寄生虫や消化不良の有無を調べます。
血液検査などの精密検査を受けることで、目に見えない病気を早期発見できます。「大したことないかも」と思っても、検査で重大な病気が見つかることは少なくありません。
飼い主さんの不安解消のためにも受診を
愛猫がご飯を食べない姿を見るのは、飼い主さんにとって大きなストレスです。「このまま衰弱してしまったらどうしよう」「何か重い病気だったら」と、不安で押しつぶされそうになることもあるでしょう。
その不安を解消するためにも、動物病院を受診することをおすすめします。
受診のメリット
原因が明確になる:検査によって食欲不振の原因がはっきりすれば、適切な治療や対処ができます。
安心感が得られる:「特に問題ない」と言われれば、安心して様子を見られます。
早期発見・早期治療:重大な病気でも、早期に発見できれば治療の選択肢が広がり、予後も良くなります。
プロのアドバイス:自宅でできるケア方法や食事の工夫について、獣医師から具体的なアドバイスがもらえます。
受診時に伝えるべき情報
診察をスムーズに進めるため、以下の情報を整理しておきましょう。
- いつから食べなくなったか
- どのくらいの量を食べているか(全く食べない、半分程度など)
- ちゅーるなどのおやつは食べるか
- 飲水量は変わったか
- 排泄の状態(便の硬さ、回数、尿の色や量)
- 他に気になる症状はあるか
- 最近の生活環境の変化
- 普段与えているフードの種類
予防のためにできること
定期的な健康診断
年に1〜2回の健康診断を受けることで、病気の早期発見につながります。特に7歳以上のシニア猫は、年2回の検査が推奨されます。
デンタルケア
歯周病は食欲不振の大きな原因です。日頃から歯磨きやデンタルケア用のおやつで口腔内の健康を保ちましょう。
ストレス管理
急激な環境変化を避け、猫が安心できる生活環境を整えます。隠れられる場所、高い場所など、猫が落ち着けるスペースを確保しましょう。
適切な食事管理
栄養バランスの取れた良質なフードを選び、新鮮な状態で与えます。おやつは全体の食事量の10%以内に抑えましょう。
水分摂取の確保
脱水は様々な病気の引き金になります。常に新鮮な水を用意し、複数箇所に水飲み場を設置するのも効果的です。
まとめ:早めの対処が愛猫を守る
猫がご飯を食べないけどちゅーるは食べるという状況は、決して楽観視できるものではありません。しかし、「ちゅーるは食べられる」という段階であれば、まだ回復しやすい時期とも言えます。
重要なのは、早めに原因を突き止め、適切な対処をすることです。
まずは他のフードに変えてみて、それでも食べない場合や、何か気になる症状がある場合は、迷わず動物病院を受診しましょう。血液検査などの精密検査を受けることで、隠れた病気を早期発見できます。
そして何より、飼い主さん自身の不安を解消するためにも、専門家である獣医師の診察を受けることをおすすめします。一人で悩まず、プロの力を借りることが、愛猫の健康を守る最善の方法です。
ちゅーるは短期的なエネルギー補給として有効ですが、あくまで一時的な対策です。エネルギー補給に適したタイプを選び、早めに根本的な解決を目指しましょう。
あなたの愛猫が一日も早く元気に食事を楽しめるようになることを願っています。何か心配なことがあれば、すぐに信頼できる動物病院に相談してくださいね。
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