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センザンコウの密猟はなぜ絶えないのか?世界で最も密猟される動物の真実

センザンコウの密猟

 

 

センザンコウという動物をご存知でしょうか。

ウロコに覆われた小さな哺乳類で、見た目は「歩く松ぼっくり」とも呼ばれます。動きはゆっくりで、攻撃性もなく、ただ静かに生きている——そんな無害な動物が、いま地球上で「最も密猟される哺乳類」という不名誉な称号を持っています。

 

なぜセンザンコウは密猟され続けるのか。どの国が関係しているのか。そして私たちに何ができるのか。

この記事では、センザンコウ密猟の現状をデータや公的機関の情報をもとに徹底解説します。感情論だけでなく、構造的な問題を理解することが、真の解決策への第一歩です。

 

センザンコウとは何か? 基礎知識を押さえよう

 

センザンコウ(穿山甲)は、センザンコウ目センザンコウ科に属する哺乳類で、アフリカと東南アジアに計8種が生息しています。全身をケラチン製のウロコで覆われており、脅威を感じると球状に丸まって身を守ります。

 

主食はアリやシロアリで、長い舌を使って巣穴から虫を舐め取ります。夜行性で単独行動が多く、繁殖率も非常に低い(年に1〜2頭しか産まない)ことから、個体数の回復に時間がかかる生き物です。

 

8種のセンザンコウの分布:

  • アジア産:ミミセンザンコウ、インドセンザンコウ、フィリピンセンザンコウ、マレーセンザンコウ(4種)
  • アフリカ産:キョダイセンザンコウ、サバンナセンザンコウ、マルオセンザンコウ、テナガセンザンコウ(4種)

現在、すべての種がIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで「絶滅危惧」または「危急」に指定されており、アジアの4種は特に「絶滅危惧IA類(CR)」または「絶滅危惧IB類(EN)」という深刻な状況にあります。

 

センザンコウ密猟の現状:衝撃のデータ

 

世界で最も密猟される哺乳類

 

TRAFFIC(野生生物取引監視ネットワーク)の調査によると、2000年から2019年の約20年間で、少なくとも89万5,000頭以上のセンザンコウが密猟・取引されたと推計されています。これは確認できた数字であり、実際の密猟数はさらに多いとされています。

 

WWF(世界自然保護基金)は、センザンコウを「世界で最も違法取引される哺乳類」と明言しており、年間で数十万頭が密猟されているとみています。

 

押収量が示す現実

 

国際刑事警察機構(INTERPOL)と国連薬物犯罪事務所(UNODC)の合同報告書によれば:

  • 2016〜2019年の間、アジア・アフリカで押収されたセンザンコウのウロコは数百トン規模
  • 2019年にシンガポールで押収されたウロコは約14トン(推定3万〜4万頭分)
  • 2020年にはマレーシアでも30トン超のウロコが単独の摘発で押収された

これらの数字は氷山の一角にすぎません。専門家は「押収されるのは実際の取引量の10〜20%程度」とも指摘しています。

 

日本との関係

 

日本も無関係ではありません。環境省の資料によれば、センザンコウはワシントン条約(CITES)の附属書Iに掲載されており、商業目的の国際取引は全面禁止です。しかし日本国内でも過去に違法なウロコや剥製の流通が確認されており、税関での摘発事例が報告されています。

 

日本の漢方薬市場における需要や、ペット目的の輸入への懸念も指摘されており、消費国としての責任は小さくありません。

 

なぜセンザンコウの密猟は絶えないのか? 根本的な理由

 

理由①:巨大な経済的インセンティブ

 

センザンコウのウロコは漢方薬の原料として中国・ベトナムを中心に非常に高値で取引されます。密猟者にとっては、農業や一般的な労働で得られる収入の何倍もの金額を一夜で稼げる「ビジネス」です。

  • 中国・ベトナムの闇市場でのウロコの推定価格:1kgあたり数万円〜数十万円
  • 生体のセンザンコウ(高級食材として):1頭で数十万円の取引例も

需要がある限り、供給を断つことは困難です。これは麻薬密売と同じ構造的問題であり、「捕まるリスク」を上回る「利益」がある間は密猟者が現れ続けます。

 

理由②:センザンコウが捕まりやすい動物であること

 

センザンコウは身を守る手段が「丸まること」だけです。牙も毒もなく、逃げ足も速くありません。脅威を感じると球状に丸まり——これが密猟者にとって「持ち運びやすい」という皮肉な結果を生んでいます。

さらに夜行性で単独行動するため、群れで警戒するような行動もありません。森林で1頭見つければ、ほぼ確実に捕獲できてしまいます。

 

理由③:取り締まりの困難さと汚職

 

密猟が横行する地域の多くでは、法執行機関の人員・予算が不足しています。加えて、組織的な密猟ネットワークが地域の官僚や警察と癒着しているケースも報告されており、摘発が形骸化するケースがあります。

 

TRAFFICの報告書は、東南アジアの複数国において「密猟ネットワークが国境を越えた組織犯罪と連携している」と指摘しています。単純な「密猟者の逮捕」では解決しない、犯罪組織の構造的問題があります。

 

理由④:根強い伝統医学への信仰と需要

 

センザンコウのウロコは漢方医学(Traditional Chinese Medicine: TCM)において、「血行促進」「母乳の出を良くする」「炎症を抑える」などの効果があるとされ、長年使用されてきました。

 

重要なのは、科学的根拠がほとんどないにもかかわらず、文化的・伝統的な信仰が需要を支え続けているという点です。中国政府は2020年に中医薬典(薬局方)からセンザンコウを削除しましたが、依然として闇市場での需要は続いています。

 

どこの国が関係しているのか? 密猟・取引の国別問題

 

需要国:中国・ベトナム

 

最大の需要国は中国です。センザンコウのウロコは中医薬として、また高級食材として、裕福な中国人消費者の間で需要があります。2020年の規制強化後も闇市場での取引は続いています。

 

ベトナムも主要な消費・経由国です。センザンコウの肉は高級レストランで提供され、ウロコは伝統薬として流通しています。2020年のCOVID-19パンデミックを受け、ベトナム政府は野生動物取引の規制強化を宣言しましたが、実施は不十分とされています。

 

密猟・供給国:東南アジア・アフリカ

 

インドネシア・マレーシア・フィリピンはマレーセンザンコウ、フィリピンセンザンコウの主な生息地であり、密猟の最前線となっています。

 

近年は東南アジアのセンザンコウが激減したため、密猟の矛先はアフリカへ向かっています。ナイジェリア、カメルーン、ガーナ、コンゴ民主共和国などが主要な供給地となっており、アフリカのセンザンコウも急速に個体数を減らしています。

 

経由・中継国:シンガポール・香港

 

シンガポール香港は地理的・経済的に密輸品の中継地点となりやすく、大規模な押収がたびたび行われています。2019年のシンガポールでの14トン押収事件は、アフリカから直送された大規模な密輸ルートの存在を示しました。

 

日本の位置づけ

日本は消費国としての関与が懸念されています。漢方薬の一部原料や、コレクター向けの剥製・標本として流通するケースがあり、税関での水際対策が求められています。環境省はワシントン条約に基づく規制を実施していますが、インターネットを通じた闇取引の監視は課題として残ります。

 

よくある疑問にお答えします(Q&A)

 

Q1. センザンコウのウロコは本当に薬効があるのですか?

 

A. 科学的なエビデンスはほとんどありません。センザンコウのウロコはほぼ純粋なケラチンで構成されており、これは人間の爪や髪の毛と同じ成分です。複数の科学研究は「薬効を支持する証拠はない」と結論付けています。にもかかわらず、文化的信仰と高い希少性が「ありがたみ」を生み出し、需要が維持されています。

 

Q2. ワシントン条約で禁止されているのに、なぜ取引が続くのですか?

 

A. ワシントン条約(CITES)は1975年に発効し、センザンコウは2016年から全8種が附属書Iに掲載され、商業取引が全面禁止となりました。しかし条約に署名していても、国内法整備・取り締まり能力・司法の独立性が国によって大きく異なります。罰則が軽く「割に合う」と判断される国では、密猟者のリスク計算が変わりません。

 

Q3. センザンコウを飼育することはできますか?

 

A. 日本国内での飼育は、ワシントン条約および外来生物法等により、適切な許可なしには不可能です。またセンザンコウはストレスに非常に弱く、飼育下での生存率は著しく低い動物です。動物園でも飼育が困難とされており、ペットとして飼う行為は動物福祉の観点からも問題があります。

 

Q4. 日本人にできることは何ですか?

 

A. 主に3つあります。①漢方薬を購入する際に原料を確認する、②センザンコウ保護を支援するNGO・WWFなどへの寄付、③SNSやこのような記事をシェアして認知を広げること。「知ること」が行動の出発点です。

 

センザンコウ保護のために今できる具体的な行動

 

ステップ1:情報を確認する

 

漢方薬や自然由来のサプリメントを購入する際は、原材料を確認しましょう。「穿山甲」「センザンコウ」という表記があれば、それは違法品の可能性があります。正規品であっても、需要が密猟を支える構造があることを意識してください。

 

ステップ2:信頼できる団体を支援する

 

以下の団体がセンザンコウ保護活動を行っています:

  • WWFジャパン(www.wwf.or.jp):国際的な野生生物保護プログラムを支援
  • TRAFFIC:野生生物取引監視と政策提言
  • Pangolin Crisis Fund:センザンコウ専門の保護基金
  • Save Pangolins:啓発・保護活動を展開するNGO

月額数百円からの寄付が、現地の保護活動員の活動費・密猟者対策・コミュニティ支援につながります。

 

ステップ3:声を上げる・広める

 

SNSでセンザンコウの現状を発信することも、立派な保護活動です。毎年**2月の第3土曜日は「世界センザンコウの日」**に指定されており、この日に合わせた啓発投稿は大きな効果を生みます。

 

また、日本政府に対して野生生物取引への規制強化や税関での監視強化を求めるパブリックコメントへの参加も有効な手段です。

 

保護活動のメリットと課題(現実的な視点で)

 

保護活動のメリット

 

センザンコウを守ることは、生態系全体の保全につながります。センザンコウはアリやシロアリの天敵であり、土壌形成にも貢献する「生態系エンジニア」です。1頭のセンザンコウが年間に食べるアリ・シロアリは推計7,000万匹以上ともいわれ、害虫のコントロールに不可欠な役割を果たしています。

 

センザンコウが絶滅すれば、森林や農地への害虫被害が増大し、間接的に人間社会にも影響が及びます。生物多様性を守ることは、結局のところ私たち人間の利益にもなるのです。

 

課題:需要を変えることの難しさ

 

最大の課題は、文化的に根付いた需要をどう変えるかです。規制だけでは密猟はなくなりません。消費者の意識変革が必要であり、それには教育・啓発活動に長期的な投資が求められます。

 

中国では一部の芸能人やインフルエンサーがセンザンコウ保護を訴え始めており、若い世代を中心に意識変化の兆しもあります。しかし文化的価値観の変容には、数十年単位の時間がかかります。

 

現場からの声:密猟対策に関わる人々のリアル

 

ボルネオ島の自然保護区で密猟監視に携わるレンジャー(匿名)は、こう語ります。

 

「夜中に森を巡回していると、罠にかかったセンザンコウを見つけることがある。丸まって動かないその姿を見るたびに、胸が痛くなる。捕まえた密猟者のほとんどは貧しい農村の住民で、彼らを責めるだけでは何も変わらない。問題の根っこは、遠い都市の消費者と、その間に立つ犯罪組織にある」

 

この言葉は、密猟問題の複雑さを如実に示しています。密猟者個人を悪者にするだけでは、構造的な問題は解決しません。貧困対策・代替収入の創出・消費者教育——複合的なアプローチが必要です。

 

実際、WWFやWCS(野生生物保全協会)は現地コミュニティとの協力による「コミュニティベース保護」を推進しており、密猟者を保護活動の担い手に転換する試みも各地で始まっています。

 

センザンコウ密猟に関する注意点

 

「認定済み」漢方薬にも注意を

 

「正規品」「認定済み」と表示されていても、密猟品が混入している可能性は否定できません。サプライチェーンの透明性が低い業界では、原料の出自を完全にトレースすることは困難です。不確かな場合は購入を控えるのが最善策です。

 

オンラインオークション・フリマアプリへの注意

 

センザンコウのウロコ・剥製・工芸品などが、国内のオンラインプラットフォームで違法に出品されるケースがあります。購入はもちろん、出品も違法であり、発見した場合はプラットフォームへの通報が有効な対策となります。

 

旅行先での土産物に注意

 

東南アジア・アフリカを旅行した際、センザンコウを使用した土産物(財布・ウロコのアクセサリーなど)の購入・持ち込みは、ワシントン条約違反となります。日本への持ち込みは税関で没収・罰則の対象です。

 

動物福祉の未来:センザンコウ問題が示す社会的課題

 

センザンコウ密猟の問題は、単なる「動物かわいそう」の話では終わりません。これはグローバルサプライチェーン・貧困・法の支配・伝統文化と科学の対立が絡み合う、複合的な社会問題です。

 

2020年のCOVID-19パンデミックでは、センザンコウが中間宿主として疑われる議論がありました(科学的には未確定)。しかしこの出来事は、野生動物の違法取引が人獣共通感染症のリスクを高めるという事実に、世界の目を向けさせました。

WHO(世界保健機関)も野生動物の違法取引と感染症リスクの関連を指摘しており、「動物福祉は人間の健康と表裏一体」という認識が国際社会で広がりつつあります。

 

日本においても、生物多様性条約(CBD)に基づく「昆明-モントリオール生物多様性枠組」(2022年採択)では、2030年までに陸域・海域の30%を保護区とする「30by30」目標が掲げられました。環境省はこの目標に向けた施策を展開しており、国内外の生物多様性保護に取り組む姿勢を示しています。

 

センザンコウ1種の保護は、この大きなうねりの中の一部に過ぎません。しかし、小さな命を守ることの積み重ねが、豊かな地球の未来を作ります。

 

まとめ:センザンコウを守ることは、地球の未来を守ること

 

この記事でお伝えしてきたことを整理しましょう。

  • センザンコウは世界で最も密猟される哺乳類であり、全8種が絶滅危惧状態にある
  • 密猟が絶えない理由は「高い経済的インセンティブ」「捕まりやすい生態」「法執行の限界」「根強い需要」の4つが絡み合っている
  • 需要国は主に中国・ベトナム、供給地は東南アジアからアフリカへと移行しつつある
  • 日本も消費国・経由地として無関係ではなく、私たちにも問題への関与と責任がある
  • 解決には「規制強化」「需要の変革」「コミュニティ支援」の複合的アプローチが必要

センザンコウ密猟問題は遠い国の話ではなく、私たちの消費行動・情報の発信・支援の選択が、確実に現地の状況を変える力を持っています。

 

今日、あなたにできることから始めてみてください。この記事をシェアすること、WWFへの寄付、漢方薬の原料確認——小さな一歩が、センザンコウの生存率を少しずつ高めていきます。

 


参考・関連情報:

  • IUCN レッドリスト(センザンコウ各種のステータス)
  • TRAFFIC 野生生物取引レポート 2020
  • WWFジャパン「センザンコウ保護プロジェクト」
  • 環境省 ワシントン条約(CITES)国内実施情報
  • UNODC「World Wildlife Crime Report」

 

 

 

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この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

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