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マイクロチップ義務化で日本はどう変わった?最新データで見る動物福祉の現在地

マイクロチップ義務化で日本はどう変わった

 

 

犬や猫を迎え入れたとき、あなたは「マイクロチップ」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。

2022年6月、日本では改正動物愛護管理法が施行され、ペットショップやブリーダーなどの販売業者に対して、犬と猫へのマイクロチップ装着・登録が義務化されました。

 

「どんな変化があったの?」 「うちの子にも必要なの?」 「登録の仕方がわからない」

そんな疑問を持つ方は多いはずです。この記事では、マイクロチップ義務化後の日本の現状を、環境省のデータや自治体の取り組みも交えながら、わかりやすく解説します。

 

動物を愛するすべての方に、ぜひ最後まで読んでいただきたい内容です。

 

マイクロチップ義務化とは?制度の全体像をおさえよう

 

改正動物愛護法の3つの柱

 

2022年6月1日に施行された改正動物愛護管理法には、主に3つの重要な変更点があります。

  • マイクロチップ装着・登録の義務化(販売業者)
  • 動物虐待への罰則強化
  • 生後56日(8週)未満の犬猫の販売原則禁止

なかでも社会的影響が大きいのが、マイクロチップに関する制度です。

ペットショップやブリーダーは、販売前の犬猫にマイクロチップを装着し、環境省のデータベースに所有者情報を登録することが法律上の義務となりました。

 

一方で、すでに犬猫を飼っている一般の飼い主には「努力義務」が課されています。罰則はないものの、装着を検討するよう求められています。

 

マイクロチップとは何か

 

マイクロチップは、直径約2mm・長さ約12mmの小さなカプセル状のデバイスです。

内部には15桁の固有の識別番号が書き込まれており、専用のリーダーで読み取ることができます。

 

装着は獣医師(または獣医師の指示を受けた愛玩動物看護師)が行い、首の後ろの皮下に注射器で埋め込みます。手術は不要で、麻酔なしで行える場合がほとんどです。

一度装着すると、首輪や名札とは違い、外れたり紛失したりすることがありません。これが最大のメリットです。

 

現状の問題:なぜマイクロチップ義務化が必要だったのか

 

毎年1万頭以上が殺処分されていた日本の現実

 

マイクロチップ義務化が議論された背景には、日本における深刻な動物福祉の問題があります。

環境省の統計によると、義務化前年の令和3年度(2021年4月〜2022年3月)には、犬猫合わせて14,457頭が殺処分されています。

 

この数字を1日に換算すると、毎日約40頭の犬や猫が命を落としていた計算になります。

義務化後の令和4年度(2022年4月〜2023年3月)は11,906頭と過去最少を更新。さらに令和5年度(2023年4月〜2024年3月)は9,017頭と1万頭を初めて下回り、減少傾向は続いています。

 

この数字の変化には、マイクロチップ普及だけでなく、引き取り拒否制度の強化や保護団体の活動など複合的な要因がありますが、迷子動物の返還率向上にマイクロチップが貢献しているのは確かです。

 

登録なきマイクロチップは「無意味」だった

 

義務化以前にも、マイクロチップを装着された犬猫は存在していました。しかし当時は、飼い主情報のデータベース登録が購入者任せになっており、説明不足や登録忘れが多発していました。

 

結果として、保護された動物のマイクロチップを読み取っても「該当なし」となるケースが後を絶ちませんでした。チップは入っているのに、飼い主に帰れない。この矛盾を解消するために、義務化は必要な一手だったのです。

 

地域による格差という課題

 

殺処分数には、いまだ大きな地域差があります。

令和4年度のデータでは、犬の殺処分数が多い地域として徳島県(342頭)、香川県(273頭)、愛媛県(224頭)、長崎県(297頭)などが挙げられています。

 

一方で、静岡県や神奈川県のように、動物愛護団体との連携により殺処分率を大幅に低下させた自治体もあります。

マイクロチップ義務化は全国一律の制度ですが、その効果が行き届くには、地域ごとの取り組みの質も問われます。

 

よくある疑問にお答えします(Q&A)

 

Q1. 飼い主にもマイクロチップ装着の義務がありますか?

 

A. 一般の飼い主への装着義務はありません。ただし「努力義務」が課されており、できる限り装着するよう求められています。

2022年6月以降に新たにマイクロチップを装着した場合は、30日以内に環境省のデータベースへ登録する義務があります。

 

Q2. ペットショップで購入した場合、何をすればいいですか?

 

A. 義務化以降にショップやブリーダーから迎えた犬猫には、すでにマイクロチップが装着されています。

購入後は「所有者情報の変更登録」を30日以内に行う必要があります。これは義務です。

環境省の指定登録機関(公益社団法人 日本獣医師会)のサイト(reg.mc.env.go.jp)からオンラインで手続きできます。

 

Q3. 環境省への登録だけで大丈夫ですか?

 

A. 実は、これには注意が必要です。

環境省のデータベースは行政(自治体や警察)のみが利用できる仕組みになっています。動物病院では直接参照できません。

 

そのため、保護された犬猫が動物病院に運び込まれた場合、即座に飼い主を確認できるのはAIPO(動物ID普及推進会議、日本獣医師会が運営)のデータベースです。

より安全を期すなら、環境省とAIPOの両方に登録することをおすすめします。

 

Q4. 費用はどのくらいかかりますか?

 

A. マイクロチップの装着費用は動物病院によって異なりますが、一般的に3,000〜5,000円程度が目安です。

環境省への登録料は1,000円(税込)。自治体によっては助成金が出る場合もあるため、お住まいの市区町村に確認してみてください。

 

Q5. マイクロチップは安全ですか?

 

A. はい。使用されているのはISO規格(国際標準化機構)に準拠したチップで、世界中で広く使用されています。

装着後に体内で動くことはほぼなく、副作用の報告もきわめてまれです。欧州やオーストラリアなどでは長年にわたって普及しており、安全性は国際的に認められています。

 

具体的な手順:マイクロチップの装着から登録まで

 

マイクロチップの装着・登録の流れを、ステップごとに説明します。

 

STEP 1:動物病院に相談・予約する

 

かかりつけの動物病院に「マイクロチップを装着したい」と相談しましょう。費用や当日の流れを事前に確認しておくと安心です。

初めて受診する動物病院でも対応してもらえます。

 

STEP 2:装着当日

 

獣医師が専用のインジェクターを使い、犬猫の首の後ろ(肩甲骨のあいだあたり)の皮下にチップを挿入します。

時間は数分程度。通常は麻酔なしで行われ、健康診断や予防接種と同日に行う方も多いです。

装着後、「マイクロチップ装着証明書」が発行されます。これは登録時に必要になるので、大切に保管してください。

 

STEP 3:環境省データベースへの登録(30日以内)

 

環境省指定登録機関のサイト(reg.mc.env.go.jp)にアクセスし、オンラインで登録手続きを行います。

登録に必要なもの:

  • マイクロチップ装着証明書
  • 飼い主の氏名・住所・連絡先
  • 犬猫の情報(犬種・性別・生年月日など)
  • 登録料1,000円(クレジットカード払い可)

登録が完了すると「登録証明書」が発行されます。

 

STEP 4:AIPOへの登録(推奨)

 

動物病院での迅速な身元確認のため、日本獣医師会のAIPOへの追加登録もあわせて行いましょう。

すでに入っているチップ番号を登録するだけでよく、新たにチップを装着する必要はありません。

 

STEP 5:引越しや連絡先変更時は忘れずに更新

 

住所や電話番号が変わった場合は、変更日から30日以内に登録内容の更新が必要です(手数料無料)。

ここを怠ると、いざという時に飼い主への連絡が取れなくなってしまいます。

 

マイクロチップのメリット・デメリット

 

マイクロチップを装着するメリット

 

① 迷子になっても帰ってくる可能性が高まる

 

保護施設や動物病院には専用リーダーが配備されており、読み取るだけで飼い主情報を確認できます。迷子になった時の「帰宅率」は、マイクロチップがあるかどうかで大きく変わります。

 

② 災害時の身元確認に役立つ

 

地震や洪水などの大規模災害では、ペットがパニックになり逃げ出すケースが多くあります。首輪や名札は外れてしまいますが、マイクロチップは体内にあるため消失しません。東日本大震災の際も、マイクロチップで飼い主と再会できた事例が報告されています。

 

③ 盗難抑止・所有権の証明

 

ペットの盗難被害は実際に起きています。マイクロチップは所有権の証明にもなり、不正な転売や飼い主の偽装を防ぐ効果があります。

 

④ 犬の場合、狂犬病予防法の登録手続きが簡略化される

 

2022年6月以降、環境省のマイクロチップ登録情報を市区町村が活用できる「特例制度」が導入されました。自治体によっては、マイクロチップが鑑札とみなされ、狂犬病予防法上の別途登録が不要になります。

 

⑤ 終生飼養の意識づけにつながる

 

飼い主として登録する行為は、「責任を持って最後まで飼う」という意識を高める効果もあります。飼育放棄の抑止にも一定の効果があると考えられています。

 

マイクロチップのデメリット・注意点

 

① 一般飼い主への義務化ではないため、普及率にばらつきがある

 

現在のところ、ペットショップ等で購入した犬猫には装着が義務化されていますが、保護犬猫や知人からの譲渡の場合は対象外です。制度全体の実効性を高めるには、さらなる普及が必要です。

 

② 情報更新の義務を知らない飼い主が多い

 

装着・登録しても、住所変更や譲渡の際に情報を更新しないと意味をなしません。制度の周知がまだ十分でない面があります。

 

③ データベースの二重構造による混乱

 

環境省(行政向け)とAIPO(動物病院向け)のデータベースが並存しており、どちらに登録すれば良いかわかりにくいという声があります。

 

④ 費用負担

 

装着費用と登録費用を合わせると5,000〜6,000円程度かかります。経済的に困難な状況の飼い主にとっては障壁になるケースもあります。

 

実体験から見えてくること:マイクロチップが命をつないだ瞬間

 

ここで、マイクロチップが実際に役立った場面を想像してみてください。

ある飼い主が台風直撃の夜、突然の突風で玄関が開き、愛猫のミルクが外に飛び出してしまいました。翌朝から必死に探したものの、見つからない日が続きました。

 

2週間後、数キロ離れた地域の動物病院に「保護した猫がいる」と連絡が入りました。病院スタッフがマイクロチップを読み取ると、データベースに登録された飼い主の名前と電話番号がすぐに表示されました。

 

マイクロチップがなければ、ミルクは「迷い猫」として処置され、飼い主のもとに戻ることはなかったかもしれません。

こうした再会の物語は、全国で静かに、しかし着実に増えています。データベース登録という「たった数分の作業」が、愛するペットの命綱になるのです。

 

注意点:知らないと損するポイントをまとめて確認

 

マイクロチップ制度に関して、特に注意が必要な点をまとめます。

 

登録内容の更新は飼い主の義務

 

住所・電話番号・メールアドレスなどの連絡先が変わった場合、変更日から30日以内に届け出なければなりません。引越しが多い方は特に注意してください。

 

死亡した場合も届け出が必要

 

ペットが亡くなった場合も、死亡届の提出が必要です(手数料無料)。これを怠ると、データベース上で「行方不明」のような状態が続いてしまいます。

 

譲渡・転売時には必ず変更登録を

 

知人への譲渡やオークション・SNSを介した里親探しの場合も、新しい飼い主が30日以内に変更登録を行う必要があります。これは義務であり、知らなかったでは済まされません。

 

マイクロチップは「追跡装置」ではない

 

GPSとは異なり、マイクロチップはリアルタイムの位置情報を発信しません。あくまでも「読み取り機がなければ情報を取得できない」受動的なデバイスです。探索にはリーダーを持つ施設に保護される必要があります。

 

環境省とAIPOへの二重登録を推奨

 

動物病院で即座に確認できるのはAIPOのデータベースです。環境省への登録だけでは、保護された際に迅速な対応ができない可能性があります。

 

動物福祉の未来:マイクロチップ義務化が示す日本社会の変化

 

殺処分ゼロへの道のりと社会意識の変容

 

1974年(昭和49年)、日本では犬猫合わせて122万頭以上が殺処分されていました。

それが2023年度には9,017頭まで減少しました。約50年で99%以上削減されたことになります。

この数字は、行政・市民・保護団体・動物病院・制度整備が一体となって積み重ねてきた成果です。マイクロチップ義務化は、その流れを加速させる重要なパーツの一つです。

 

世界と日本の比較:まだ距離がある「動物先進国」との差

 

ヨーロッパの多くの国では、すでに犬のマイクロチップ装着が飼い主全員に義務化されています。イギリスでは猫にも義務化が拡大されました。

オーストラリアやニュージーランドでは、マイクロチップが装着されていないペットの輸入は全面禁止です。

日本はようやくスタートラインに立った段階とも言えます。しかしその一歩は、確実に意味のある変化をもたらしています。

 

「ペットは物ではなく家族」という意識の法制化

 

2019年の改正を経て、2022年の改正動物愛護法は「動物は命あるものである」という認識をより明確に法律に落とし込みました。

マイクロチップ義務化も単なる「管理」のための制度ではなく、動物と人間の絆を法的に保護する仕組みとして位置づけられています。

飼い主として登録するということは、その動物に対して責任を持つという宣言でもあります。

 

次の課題:普及率の向上と教育の充実

 

マイクロチップ義務化の効果をさらに高めるには、いくつかの課題があります。

  • 保護犬猫・里親譲渡の場合のマイクロチップ普及促進
  • 情報更新義務の周知徹底
  • 低所得世帯への費用助成の拡充
  • データベースの一元化(環境省とAIPOの連携強化)

これらの課題を解決することで、マイクロチップが持つ本来の力をより発揮できるようになります。

 

まとめ:マイクロチップ義務化は「愛する命を守る制度」

 

マイクロチップ義務化は、犬猫の身元証明をデジタルで確実に管理し、迷子・災害・盗難から守るための重要な仕組みです。

この記事でお伝えしたことを振り返ります。

  • 2022年6月より、販売業者へのマイクロチップ装着・登録が義務化された
  • 一般飼い主には「努力義務」があり、装着後は30日以内に登録が必要
  • 環境省だけでなくAIPOへの二重登録が実用的な安全策
  • 殺処分数は年々減少し、2023年度は**9,017頭(過去最少)**まで改善
  • 住所変更や譲渡の際は必ず登録内容を更新すること
  • マイクロチップはGPSではなく、リーダーで読み取る受動型デバイス

動物福祉の向上は、制度だけでは実現しません。一人ひとりの飼い主が「この子の命に責任を持つ」と意識することが、社会全体を変えていきます。


今日できることから始めましょう。まだマイクロチップを装着していない方は、かかりつけの動物病院に一本電話してみてください。その小さな一歩が、あなたとペットの絆を一生守ってくれます。


参考資料:環境省「犬と猫のマイクロチップ情報登録」/ 環境省「動物愛護管理行政事務提要 令和5年度版」/ 東京都動物愛護相談センター / 大阪市保健医療行政

 

 

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この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

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