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犬が呼んでも来ない原因と「おいで」を確実に覚えさせる科学的トレーニング法

犬が呼んでも来ない原因と「おいで」を確実に覚えさせる科学的トレーニング法

 

 

監修基準:動物福祉・行動学・環境省ガイドラインに基づく専門記事


「おいで!」と声をかけても、知らんぷりして走り去っていく愛犬。
その背中を追いかけながら、「なんでわかってくれないの?」と思ったことはありませんか?

実は、この問題には明確な原因と、再現性の高い解決法があります。

「おいで(来い・カム)」は、犬のしつけの中でも最重要コマンドのひとつです。

環境省が発行する「家庭犬のしつけガイドライン」でも、リコール(呼び戻し)は飼い主と犬の安全を守る基本スキルとして位置づけられています。

 

この記事では、犬が呼んでも来ない本当の理由から、動物福祉の観点に基づいた科学的なトレーニング方法まで、この記事だけで完結できる情報をすべてお伝えします。


なぜ犬は呼んでも来ないのか?根本原因を理解する

 

「言うことを聞かない」ではなく「来る理由がない」

犬が呼んでも来ないとき、多くの飼い主は「うちの子はわがまま」「反抗している」と感じます。

しかし、犬の行動学から見ると、犬は「損か得か」で行動を判断しています。

飼い主のもとへ来ることよりも、今やっていること(においを嗅ぐ、遊ぶ、走る)の方が楽しい。それだけなのです。

 

PREP法で整理すると:
結論:犬が来ないのは「来る動機がないから」
理由:犬は常に「利益が高い行動」を選択する
:公園で走り回っている犬に「おいで」→帰宅になるなら損だと学習済み
再結論:「おいで=良いこと」を再学習させることが解決への近道


呼んでも来ない3大原因

① 「おいで」が「嫌なことの合図」になっている

よくあるのが、「おいで」と呼んだ後に爪切り、お風呂、帰宅など、犬が嫌いなことが続くケースです。

犬はこれを瞬時に学習します。

「おいで=嫌なことが起きる」というパターンが脳に刻まれると、どんなに呼んでも来なくなります。


② トレーニング中に怒られた経験がある

「おいで」と呼んだのに来なくて、追いかけて捕まえて叱る——これは最悪のパターンです。

犬の立場から見ると、「呼ばれて行ったら叱られた」という学習が起きます。

呼んでも来なくなるのは当然の結果です。


③ コマンドの意味が定着していない

単純に、まだ「おいで」という言葉と「飼い主のもとへ行く」という行動が結びついていない場合もあります。

特に子犬や迎えたばかりの成犬に多いケースです。


データで見る「呼び戻し失敗」のリスク

環境省の令和4年度調査によると、全国の犬の収容数は約2万頭以上。

そのうち迷子になった犬(逸走)が占める割合も少なくありません。

また、農林水産省や各自治体の動物愛護センターのデータでは、リードなし散歩中の交通事故や他の動物とのトラブルが重大な問題として挙げられています。

「おいで」が確実に機能しないことは、命に関わるリスクにもつながるのです。


「おいで」を教える前に知っておくべき犬の行動学

 

犬のトレーニングに使われる「オペラント条件付け」とは

犬のしつけの科学的基盤は、オペラント条件付け(B.F.スキナーが提唱)です。

簡単に言えば、「良いことが起きる行動は増え、嫌なことが起きる行動は減る」という原理です。

 

行動の結果 効果
良いことが起きる(正の強化) 行動が増える
嫌なことがなくなる(負の強化) 行動が増える
嫌なことが起きる(正の罰) 行動が減る
良いことがなくなる(負の罰) 行動が減る

 

「おいで」のトレーニングで最も効果的かつ犬の福祉に配慮した方法は、正の強化(ポジティブ・リインフォースメント)です。


なぜ罰は逆効果なのか

一部の古いトレーニング法では、来なかったときに罰を与える手法もあります。

しかし、アメリカ獣医行動学会(AVSAB)は声明の中で、「罰に基づくトレーニングは攻撃性・恐怖・不安を高めるリスクがある」と指摘しています。

 

恐怖で従わせることは、短期的には効果があるように見えても、犬との信頼関係を壊し、長期的には問題行動を増やす可能性が高いのです。

動物福祉の観点からも、恐怖・痛みを使わないトレーニングが世界標準になりつつあります。


「強化のタイミング」が命

犬の学習で極めて重要なのが、強化のタイミングです。

行動から0.5〜1秒以内に報酬を与えないと、犬は「何に対してご褒美をもらったのか」がわからなくなります。

これがクリッカートレーニングが効果的な理由のひとつです。

クリック音という明確なサインで「今の行動が正解」と即座に伝えることができます。


おいでを確実に覚えさせる5ステップトレーニング

 

トレーニング前の準備

 

用意するもの:

  • 犬が大好きな高価値おやつ(チキン、チーズなど)
  • クリッカー(なくてもOK)
  • リード(初期段階)
  • 静かで集中できる環境

セッションのルール:

  • 1回5〜10分以内で終える
  • 必ず成功体験で終わる
  • 疲れているときはやらない
  • 怒らない・焦らない

ステップ1:「おいで」の土台を作る(室内から始める)

まずは必ず成功できる距離・環境から始めることが鉄則です。

 

やり方:

  1. リードをつけた状態で、犬から1〜2メートル離れる
  2. しゃがんで笑顔で「おいで!」と明るく呼ぶ
  3. 犬が来たら、すぐにクリック+おやつを与える
  4. たっぷり褒める(「よし!えらい!」と声もかける)
  5. 来なかったらリードで軽く引き寄せ、来た瞬間に褒める

ポイント:

  • コマンドは1回だけ言う(何度も言うと「何度も言われてから来ればいい」と学習する)
  • 来るまで待つ(追いかけない)
  • 来てくれたときは「パーティー」くらいの喜び方をする

ステップ2:距離を少しずつ伸ばす

室内で100%成功するようになったら、距離を伸ばします。

3m → 5m → 10m → 別の部屋からと段階的に難易度を上げてください。

焦って難易度を上げすぎると失敗が増え、犬がコマンドへの信頼を失います。

 

具体例:
柴犬のハナちゃん(2歳・メス)の飼い主さんは、室内での成功率が95%以上になるまで2週間かけました。
「遅すぎるかな」と思っていたそうですが、その後の屋外トレーニングが驚くほどスムーズで、1ヶ月後にはドッグランでも完璧に呼び戻せるようになったそうです。


ステップ3:「おいで」のあとに楽しいことを必ずセットする

「おいで=良いことが起きる」を徹底的に犬に学習させます。

 

良いことの例:

  • 最高のおやつを1〜3粒あげる
  • 好きなおもちゃで遊ぶ
  • 思い切り撫でる・褒める
  • また自由にさせる(帰宅ではなくリリース)

特に「来たら遊びが終わる」をなくすことが大切です。

呼ぶたびに帰宅させていると、「おいで=楽しい時間の終わり」と学習します。

散歩中は10回に1〜2回だけ呼んで、おやつをあげてすぐ解放する練習を繰り返しましょう。


ステップ4:屋外・刺激が多い環境での練習

室内で完璧になったら、屋外に場所を移します。

 

難易度の段階(低→高):

  1. 静かな庭・ベランダ
  2. 人が少ない公園(早朝・平日)
  3. 普通の公園(リードあり)
  4. 他の犬がいる場所(ロングリード使用)
  5. ドッグラン(フェンス内)

屋外では室内の10分の1くらいの成功率になることも多いです。

それは当然のことで、失敗しても怒らず、できたら思い切り褒める姿勢を崩さないことが重要です。


ステップ5:「おいで」を日常に溶け込ませる

トレーニングは特別な時間だけではありません。

日常生活の中にさりげなく「おいで」の練習を組み込むことで、コマンドが確実に定着します。

 

日常での練習チャンス:

  • 食事前に「おいで」→ご飯が報酬になる
  • 散歩のリードを装着する前に「おいで」→散歩が報酬になる
  • おやつを持って別の部屋から「おいで」→来た瞬間に渡す

こうした生活の中の自然な強化が、トレーニングを本物の行動として定着させます。


よくある失敗パターンと対処法

 

NG行動と対処法一覧

 

❌ 来なかったら何度もコマンドを繰り返す

→ 犬は「3回呼ばれてから行けばいい」と学習します。1回だけ言ったら、来るまで待つか、リードで優しく誘導してください。


❌ 来たのに怒る・叱る

→ 来るのが遅かったとしても、来た瞬間は必ず褒めます。来た行動を強化することが最優先です。


❌ おやつをやめた途端に来なくなった

→ おやつをやめるタイミングが早すぎます。コマンドが完全に定着するまで(数ヶ月〜1年程度)は、高頻度でおやつを使い続けてください。その後、徐々に「おやつあり」と「おやつなし」を混ぜていきます。


❌ 追いかけて捕まえる

→ 犬にとって「追いかけっこ」は楽しいゲームです。来ないからといって追いかけると、逃げることが強化されます。逆方向に歩く・しゃがんで興味を引くなどの方法を試してください。


❌ コマンドを「おいで」「来い」「カム」とバラバラに使う

→ 家族全員が同じコマンドを使うことが重要です。犬は音の違いに敏感で、別のコマンドだと認識してしまいます。


応用編:散歩中・ドッグランでの呼び戻し強化

 

ロングリードを活用した安全な練習法

屋外での呼び戻し練習には、5〜10mのロングリードが非常に役立ちます。

リードなしで練習するのは、屋外での成功率が95%を超えてから。

それまでロングリードを使うことで、失敗しても安全に対応でき、犬も飼い主も焦らず練習できます。


「止まる→振り返る→走ってくる」の3段階を確認する

本当に「おいで」が定着しているかを確認するチェックリスト:

  • 呼んだ瞬間に動きが止まる
  • 飼い主のほうを向く
  • 一直線に走ってくる
  • 飼い主のそばで止まる(通り過ぎない)

これが全てできて初めて「おいで」が完成したと言えます。


緊急時のバックアップ手段を持つ

完璧なトレーニングを積んでいても、パニック状態の犬にはコマンドが届かないことがあります。

緊急時のために:

  • 犬が大好きな「魔法のおやつ」(普段は絶対にあげない特別なもの)を散歩時に携帯する
  • 笛やおもちゃで注意を引く練習もしておく
  • フェンスがない場所では絶対にリードを外さない、というルールを徹底する

動物福祉の観点から見た正しいしつけとは

 

動物福祉の「5つの自由」とトレーニングの関係

動物福祉の国際基準である「5つの自由(Five Freedoms)」は、1979年にイギリスで提唱されました。

日本でも環境省や農林水産省がこの概念を動物愛護の指針として採用しています。

 

5つの自由 トレーニングへの応用
飢えと渇きからの自由 おやつはご褒美。空腹すぎるトレーニングはしない
不快からの自由 暑すぎる・寒すぎる環境でのトレーニングは避ける
痛み・傷害・疾病からの自由 チョークチェーンなど痛みを伴う道具は使わない
正常な行動を表現する自由 犬らしい行動を尊重しながら教える
恐怖・苦痛からの自由 罰ではなく報酬でトレーニングする

 

「おいで」を教えるとき、恐怖や痛みを使う必要はまったくありません。

ポジティブ・リインフォースメントは、動物福祉の観点からも、学習効率の観点からも、最適な方法です。


信頼関係がすべての土台

「おいで」が確実に機能するかどうかは、飼い主と犬の信頼関係の深さに比例します。

 

日頃から:

  • 犬の気持ちを観察する習慣を持つ
  • 叱るより「できた」を見つけて褒める
  • 犬が安心できる家庭環境を整える

こうした積み重ねが、いざというときに「飼い主のもとへ駆け寄る」犬を育てます。

トレーニングは命令の練習ではなく、絆を深めるコミュニケーションです。


専門家に相談するタイミング

以下のような場合は、動物行動学を学んだ専門家(動物行動コンサルタント・ドッグトレーナー)への相談を検討してください:

  • 6ヶ月以上トレーニングしても改善が見られない
  • 呼ぶと逃げる・攻撃的になる
  • 恐怖症・分離不安などが疑われる
  • 保護犬で過去にトラウマがある可能性がある

日本では、JAHA(日本動物病院協会)やペットパートナーズなどが認定するトレーナーを探すことができます。

また、かかりつけの獣医師に相談することも、問題行動の背景に健康上の原因がある場合を見つける助けになります。


まとめ

 

犬が呼んでも来ない問題は、「犬が悪い」のではなく「来る理由がない」または「来ると嫌なことがある」と学習していることが大半の原因です。

この記事でお伝えした核心をまとめます:

 

原因の理解:

  • 「おいで=嫌なことの合図」になっている
  • 来たときに叱られた経験がある
  • コマンドの意味がそもそも入っていない

トレーニングの原則:

  • 必ず成功できるところから始める
  • 来たら必ず褒める(たとえ遅くても)
  • 「おいで=良いことが起きる」を繰り返し学習させる
  • コマンドは1回だけ、家族全員が統一する
  • 日常に練習を溶け込ませる

動物福祉の視点:

  • 恐怖・痛みを使わないトレーニングが世界標準
  • 信頼関係がすべての土台
  • 困ったら専門家へ相談する

「おいで」は、犬の命を守るコマンドです。

同時に、それがスムーズにできる関係は、飼い主と犬が互いを信頼し合っているという証でもあります。

焦らず、怒らず、ひとつひとつの「来てくれた」を大切に積み重ねてください。


今日からできることがあります。

まずは室内で1〜2メートルの距離から、「おいで」と呼んで来てくれたら最高のおやつをあげる練習を1日5分、試してみてください。

その小さな一歩が、愛犬との深い絆と、命を守る確かなスキルへとつながっていきます。


参考資料・関連情報:

  • 環境省「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」
  • 農林水産省「動物の愛護及び管理に関する法律」
  • アメリカ獣医行動学会(AVSAB)ポジション・ステートメント(2021年)
  • JAHA(公益社団法人日本動物病院協会)認定家庭犬しつけインストラクター制度

 

 

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この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

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