猫スペースきぶん屋 猫スペースきぶん屋

海外から犬を連れてくる・外国産保護犬の輸入と検疫|手続きの全貌と動物福祉の視点から考える

海外から犬を連れてくる・外国産保護犬の輸入と検疫

 

SNSで目にする「海外の保護犬を日本に連れてきました」という投稿。

その裏には、長い準備期間と複雑な手続き、そして犬への深い愛情があります。

一方で、「感情に任せて動いた結果、犬が数ヶ月間も係留施設に閉じ込められた」という悲しい事例も少なくありません。

 

この記事では、外国産保護犬の輸入と検疫の手続きを正確に解説しながら、動物福祉の観点から「本当に犬のためになる選択とは何か」を一緒に考えていきます。

感情論ではなく、データと制度に基づいた専門的な視点でお伝えします。


海外から犬を連れてくることの現状と背景

 

なぜ今、外国産保護犬への関心が高まっているのか

近年、海外で保護犬活動に関わる日本人が増えています。

韓国、タイ、インド、ルーマニア——。 世界各地には、食用や虐待の現場から救出された犬たちを保護するシェルターがあります。

ボランティアとして関わった日本人が「この子を日本に連れて帰りたい」と思うのは、自然な感情です。

しかし同時に、日本国内の現状も見逃せません。

 

環境省のデータによると、2024年度(2023年4月1日〜2024年3月31日)に保健所などで引き取られた犬は1万9,352頭。そのうち1,964頭が殺処分されています。

令和6年度(2024年度)だけで、犬猫合わせて39,409頭が動物愛護センターに引き取られています。

 

こうした数字を前にすると、「国内にも助けを必要としている犬がいる」という声が上がるのも、また正しい指摘です。

外国産保護犬の輸入は、感情的な善意だけで判断できる問題ではありません。

制度の理解、動物福祉への影響、費用と時間——これらを冷静に把握した上で判断することが、犬のためになる第一歩です。


外国産保護犬の輸入に必要な法律と手続きの基本

 

輸入検疫を定める法律とは

日本に犬を輸入するには、主に以下の法律に基づく手続きが必要です。

  • 狂犬病予防法(農林水産省・動物検疫所が管轄)
  • 家畜伝染病予防法(農林水産省が管轄)

日本に輸入される犬は、狂犬病やレプトスピラ症について輸入検疫を受けなければなりません。違反した場合、家畜伝染病予防法に基づき、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(法人の場合は5,000万円以下の罰金)に処せられます。

これは「知らなかった」では済まされない、非常に重い規定です。

 

日本は狂犬病清浄国として世界的に認められており、厳格な検疫制度により動物の健康と安全を守っています。

その清浄国の地位を守るために、輸入手続きは厳密に設計されています。

 

指定地域と指定地域以外の違い

輸入手続きは、犬の出身国・地域によって大きく2つに分かれます。

 

指定地域(狂犬病の発生がない国・地域)

  • アイスランド、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー諸島、ハワイ、グアム

指定地域以外(上記以外のすべての国・地域)

  • アメリカ本土、韓国、タイ、インド、ルーマニアなど、大半の国が該当

外国産保護犬として日本に来る犬の多くは、指定地域以外からの輸入となります。

この区別は、必要な処置の内容や係留期間に直結するため、非常に重要です。


指定地域以外からの輸入:必要な処置と書類

 

ステップ別:輸入に必要な6つの手順

指定地域以外(アメリカ、韓国、タイなど)から犬を輸入する場合、以下のステップが必要です。

 

① マイクロチップの装着

マイクロチップ(ISO規格)による個体識別が必要です。ISO企画(11784または11785)のマイクロチップを使用する必要があり、ISO規格以外の場合は照合できず180日間の係留となります。

 

② 1回目の狂犬病ワクチン接種

マイクロチップ装着後、生後91日目以降に不活化ワクチンまたは遺伝子組換えワクチンを接種します。 生ワクチンは認められていません。

 

③ 2回目の狂犬病ワクチン接種

1回目接種から30日以上かつ1年以内に再度接種します。

 

④ 狂犬病抗体価検査

採血日から180日以上経過し、かつワクチンの有効期限以内にある場合は、12時間以内の係留で日本到着が可能となります。

抗体価は0.5 IU/ml以上が必要です。 また、抗体価検査は農林水産大臣が指定する検査施設でのみ実施可能です。

 

⑤ 180日間の待機

抗体検査で基準を満たした後、輸出国で180日間待機します。

この待機期間は、狂犬病の潜伏期間(最長180日)に対応したものです。 待機を満了しない場合、不足分を日本の係留施設で過ごすことになります。

 

⑥ 輸出国政府機関による証明書の取得

すべての処置内容を記載した、輸出国政府機関(例:アメリカの場合はUSDA)の裏書き証明(エンドースメント)付き健康証明書が必要です。

日本政府の推奨する証明書様式(Form AC)を入手し、処置を行った獣医師に必要事項を記載してもらい、最後に輸出国政府機関のエンドースメント・スタンプを取得する方法が推奨されています。

 

到着40日前までの事前届出が必須

到着40日前までの輸入予定の届出を怠り、日本に到着した場合は出発国に返送することもあります。緊急の帰国など40日に満たない場合でも、直ちに検疫所に相談してください。

この事前届出は、係留施設の空き状況確認のためにも非常に重要です。

届出が提出された動物検疫所では、係留予定期間および到着予定時期の係留施設の空き状況等を確認し、輸入者に「届出受理書」を交付します。係留施設の空室状況等により、輸入の時期または場所の変更をお願いすることがあります。


係留検査とは何か:犬にとっての「係留」を正しく知る

 

係留検査の仕組みと期間

書類・処置が完璧に整っていれば、到着時の係留は12時間以内で終了します。

しかし、不備があった場合は状況が一変します。

輸入条件を完備している場合は短時間で終了しますが、不備がある場合は、最長180日間となります。また、検査の結果、輸入が認められないこともあります。

180日——約6ヶ月間です。

その間、犬は係留施設に留まり続けます。

 

係留施設での生活とは

係留検査中の飼養管理は、全て輸入者の責任と負担で行います。飼養管理業者が常駐している係留施設は、成田支所、羽田空港支所、関西空港支所です。係留検査中は、輸出国に返送する場合を除き、いかなる事情があっても、係留施設から犬・猫を持ち出すことはできません。犬・猫の治療行為は、民間獣医師による往診のみ可能です。

係留中の費用は、すべて輸入者(つまり、犬を連れてくる人)の自己負担です。

飼育管理費用は施設によって異なりますが、長期係留になると数十万円に上ることも珍しくありません。

これは「感情だけで動いてはいけない」理由の一つです。

 

犬が入国できる空港・港は限られている

犬を輸入できるのは以下の空海港のみです。(空港)新千歳空港、成田国際空港、東京国際空港(羽田)、中部国際空港、関西国際空港、大阪国際空港(伊丹)、神戸空港、北九州空港、福岡空港、鹿児島空港、那覇空港(海港)苫小牧港、京浜港、名古屋港、阪神港、関門港、博多港、鹿児島港、那覇港

自分が住んでいる地域の近くに対応した空港があるかどうか、事前に確認が必要です。


外国産保護犬の輸入にかかる費用と時間の現実

 

最短でも約8〜10ヶ月が必要

外国産保護犬を輸入するには、スムーズに進んだ場合でも最短で約8〜10ヶ月かかります。

その内訳は以下のとおりです。

  • マイクロチップ装着〜1回目ワクチン接種:1ヶ月以上
  • 2回目ワクチン接種まで:さらに1ヶ月以上
  • 抗体検査のための採血〜結果確認:数週間
  • 輸出国での180日間待機:約6ヶ月

書類の不備や検査施設の予約状況によっては、さらに時間がかかります。

「今すぐ助けたい」という気持ちはわかります。 しかし焦りが、犬を長期係留という苦境に追いやることになりかねません。

 

費用の目安

費用は犬の出身国や利用するフライト、係留の有無によって大きく変わります。 一般的な目安として、以下の項目が発生します。

  • 現地での獣医師費用(ワクチン接種、抗体検査など)
  • 政府機関による証明書取得費用
  • 航空輸送費用(航空会社・経路により異なる)
  • 動物検疫所への届出・検査費用
  • 係留施設への飼育管理費(係留が発生した場合)
  • 国内での健康診断・ワクチン追加接種費用

総額で数十万円〜100万円以上になることも珍しくありません。


動物福祉の視点から考える:外国産保護犬輸入の光と影

 

輸入の「善意」が犬を苦しめることがある

動物福祉の観点から、外国産保護犬の輸入には光と影の両面があります。

 

光の側面

  • 殺処分や劣悪な環境から犬の命を救える
  • 国際的な動物福祉活動への参加・支援につながる
  • 保護活動をしている現地シェルターへの関心が高まる

影の側面

  • 書類の不備による長期係留は、犬に大きなストレスを与える
  • 航空輸送そのものが犬にとって身体的・精神的な負担になる
  • 日本国内の保護犬が里親を待ち続けている現実がある

この減少の背景には、動物愛護管理法の改正や自治体の取り組み強化が影響しています。しかし動物愛護団体にも収容キャパや労力の限界があります。

日本国内でも、里親を待つ犬たちがいます。 「海外の犬を救いたい」という気持ちと並行して、国内の現状にも目を向けることが、動物福祉全体への貢献につながります。

 

輸入を考える前に確認すべきこと

外国産保護犬の輸入を検討する前に、以下を自分自身に問いかけてみてください。

  • その犬の輸入手続きを完全に理解しているか
  • 費用の全額を用意できるか
  • 時間的な余裕(最短でも8〜10ヶ月)があるか
  • 輸入後の生活環境(住居、医療アクセスなど)は整っているか
  • 不備が生じた場合の係留費用にも対応できるか

これらを満たした上で行動することが、犬のための「本当の救助」です。


輸入手続きを専門家・代行業者に依頼する選択肢

 

ペット輸送代行サービスとは

輸入手続きは複雑で、書類の不備が犬に直接影響します。

そのため、ペット輸送専門の代行業者を利用する選択肢もあります。

代行業者は以下のようなサポートを提供しています。

  • 輸出国での証明書取得サポート
  • 航空会社との調整・手配
  • 動物検疫所への事前届出代行
  • 輸送中のケアと管理

費用は追加でかかりますが、書類不備によるリスクを大幅に軽減できます。

特に現地語でのやりとりや、輸出国政府機関(USDAなど)とのやりとりが必要な場合は、専門家のサポートを強く推奨します。

 

現地の保護団体・シェルターとの連携が不可欠

外国産保護犬の輸入では、現地シェルターの協力が不可欠です。

信頼できる現地シェルターは、以下の点で助けになります。

  • ワクチン接種や抗体検査の記録管理
  • 輸出国政府機関との証明書取得のサポート
  • 犬の健康状態の継続的な把握

SNSで見つけた個人やシェルターから感情的に「引き取る約束」をしてしまうケースがあります。 しかし証明書の準備や待機期間の確保ができていない状態で動くと、犬が長期係留を余儀なくされます。

まず手続きの全体像を理解してから動くことが、犬への最大の配慮です。


国内の保護犬という選択肢も忘れずに

 

日本国内でも助けを待つ犬がいる

外国産保護犬の輸入を考えている方に、一度立ち止まって知ってほしいことがあります。

2024年度(2023年4月1日〜2024年3月31日)に保健所などで引き取られた犬は1万9,352頭。殺処分されたのは1,964頭でした。

1日に換算すると、約5頭以上の犬が今も命を失っています。

国内の保護犬・保護施設にも、温かい家庭を待っている犬たちがいます。

「わざわざ海外から連れてくる必要があるのか」という問いに対する答えは一つではありません。

ただ、どちらの選択をするにしても、犬の立場から考えることが何よりも大切です。

 

国内の保護犬を探す方法

国内保護犬の里親になる場合は、以下のルートがあります。

  • 各都道府県の動物愛護センター・愛護施設
  • 民間の保護犬団体・NPO法人
  • 自治体が運営する譲渡会

輸入後に必要な国内手続き

 

狂犬病予防法に基づく登録が必要

日本に到着した後も、手続きは続きます。

犬の輸入後は、以下の国内手続きが必要です。

 

狂犬病予防法に基づく登録・予防接種

  • 市区町村への犬の登録(生涯1回)
  • 年1回の狂犬病予防接種

輸入検疫証明書のコピーで、日本国内でのマイクロチップ番号(ISO規格に限る)の登録ができます。詳しくは、AIPO(動物ID普及推進会議)にお問い合わせください。

 

獣医師による健康診断の推奨

海外で保護された犬は、日本では一般的でない疾患(リーシュマニア症、エールリキア症など)を保有している可能性があります。

輸入後、早期に専門の獣医師による健康診断を受けることを強くお勧めします。


まとめ:外国産保護犬の輸入に必要なのは「愛情」と「知識」の両方

 

外国産保護犬の輸入は、犬の命を救う素晴らしい行為です。

しかしその善意が、犬を苦しめる結果になることもあります。

この記事でお伝えした要点を、最後に整理します。

  • 輸入には狂犬病予防法・家畜伝染病予防法に基づく厳格な手続きが必要
  • 指定地域以外からの輸入は、マイクロチップ・2回のワクチン・抗体検査・180日待機が必要
  • 書類の不備があると最長180日間の係留が発生し、費用もすべて輸入者の負担
  • 手続きには最短でも8〜10ヶ月かかる
  • 事前に到着40日前の届出が必須
  • 費用は数十万円〜100万円以上になることも
  • 国内にも助けを必要としている保護犬がいることを忘れない

動物福祉の未来は、感情だけでも、規則だけでも作られません。 正しい知識を持った上での行動が、犬たちの命を守り、日本の動物福祉を前進させます。


外国産保護犬の輸入を具体的に検討されている方は、まず農林水産省動物検疫所(https://www.maff.go.jp/aqs/)に相談することから始めてみてください。一頭の犬の命を守るために、確かな一歩を踏み出しましょう。


参考・問い合わせ先


最終更新:2026年5月|情報は執筆時点のものです。最新の輸入条件は必ず農林水産省動物検疫所の公式サイトでご確認ください。

 

 

ペットの社会問題について、殺処分・野良猫・多頭飼育崩壊・ペット業界の課題などを
体系的にまとめたページです。

 

犬猫に関する社会問題まとめ|殺処分・野良猫・多頭飼育崩壊・繁殖問題までわかりやすく解説

 

 

古着買取、ヴィーガン食品やペットフードの買い物で支援など皆様にしてもらいたいことをまとめています。
参加しやすいものにぜひ協力してください!

 

猫スペースきぶん屋が皆様に協力していただきたいこと一覧

この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

SNS LINK

この著者の記事一覧

関連情報

コメントは受け付けていません。

特集

Instagram でフォロー