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老猫が夜中にぐるぐる回る原因と認知症ケア|獣医師も注目する正しい対処法

老猫が夜中にぐるぐる回る原因と認知症ケア

 


愛猫が深夜に同じ場所をぐるぐると歩き回り、鳴き続ける——。

そんな光景を目にしたとき、飼い主の心に最初によぎるのは「どこか痛いの?」という不安ではないでしょうか。

しかし実際には、老猫がぐるぐる回る行動の背景には、身体的な痛みよりもさらに根深い問題が隠れていることがあります。それが猫の認知症(認知機能不全症候群)です。

 

この記事では、老猫が夜中に同じ場所をぐるぐる回る行動の医学的な原因から、自宅でできる具体的なケア方法、そして専門家への相談タイミングまでを網羅的にお伝えします。

「この記事を読めば、今夜から何かできることがある」——そう感じていただける内容を目指しました。


老猫が夜中にぐるぐる回る行動とは何か

 

「ぐるぐる回る」は認知症のサインかもしれない

老猫がぐるぐる回る行動は、医学的には「旋回行動(circling behavior)」と呼ばれます。

この行動が夜中に繰り返されるとき、単なる癖や気まぐれではなく、脳や神経系になんらかの変化が生じているサインである可能性が高いとされています。

 

特に注目されているのが、猫の認知機能不全症候群(Feline Cognitive Dysfunction Syndrome:FCDS)です。

人間のアルツハイマー病に類似したこの疾患は、脳内にアミロイドβタンパク質が蓄積することで認知機能が低下し、見当識障害・睡眠障害・夜間徘徊などの症状として現れます。


老猫における認知症の有病率

驚くべきことに、猫の認知症は決してまれな疾患ではありません。

アメリカの研究(Gunn-Moore et al., 2007)では、11〜14歳の猫の約28%に認知機能低下のサインが見られ、15歳以上になるとその割合は50%を超えると報告されています。

 

日本においても、ペットの長寿化にともない同様の傾向が確認されており、環境省の「ペットの適正飼養啓発事業」に関連する調査でも、老齢期の猫における行動異常の増加が指摘されています。

つまり、シニア猫を飼っているご家庭では、認知症は「他人事」ではないのです。


老猫の認知症で見られる主な症状

 

夜間の異常行動が最初のサインになりやすい

猫の認知症(認知機能不全)で見られる症状は、英語の頭文字をとって「DISHA」と表現されることがあります。

  • D(Disorientation):方向感覚の喪失。家具の隙間に入り込んで出られなくなるなど
  • I(Interaction changes):社会的相互作用の変化。急に甘えん坊になる、または逆に避けるようになる
  • S(Sleep-wake cycle changes):睡眠・覚醒リズムの乱れ。夜中に起き出してうろうろする
  • H(House soiling):トイレの失敗。場所を忘れてしまう
  • A(Activity changes):活動量の変化。ぼーっとしていたり、逆に落ち着かなくなる

 

老猫が夜中にぐるぐる回る行動は、特にSとDが重なった状態として現れることが多く、「どこにいるのかわからない」「昼夜が逆転している」という状態が引き起こす行動と考えられます。


ぐるぐる回る以外にも注意したい行動

老猫の認知症では、旋回行動だけでなく以下のような症状も見られます。

  • 以前好きだったおもちゃに興味を示さない
  • ごはんを食べたことを忘れて何度もねだる
  • 名前を呼んでも振り向かなくなった(難聴との鑑別が必要)
  • 夜中に大きな声で鳴き続ける(夜鳴き)
  • 家の中で迷子になったように立ち尽くす
  • トイレの場所がわからなくなる

これらの症状が複数重なって現れる場合、かかりつけの獣医師への相談を強くおすすめします。


ぐるぐる回る原因は認知症だけではない

 

鑑別が必要な疾患を知っておく

老猫がぐるぐる回る原因として、認知症以外にも以下の疾患が考えられます。

 

神経系の問題

  • 前庭疾患(内耳や脳への問題によるバランス障害)
  • 脳腫瘍・脳梗塞
  • 頭部外傷の後遺症

代謝・内分泌系の問題

  • 甲状腺機能亢進症(老猫に多い)
  • 高血圧症(腎臓病との合併が多い)
  • 肝性脳症

感覚器の問題

  • 重度の難聴
  • 視力の著しい低下

 

特に甲状腺機能亢進症は日本の老猫に非常に多く、夜鳴きや落ち着きのなさ・体重減少などを引き起こします。認知症と症状が似ているため、血液検査による鑑別が不可欠です。

「うちの猫は認知症に違いない」と自己判断せず、まず獣医師に診てもらうことが最初の一歩です。


前庭疾患と認知症の見分け方

前庭疾患は突発的に発症し、眼振(目が左右に揺れる)や頭の傾き(斜頸)を伴うことが多いです。

一方、認知症は数ヶ月〜数年かけてじわじわと進行する点が特徴的です。

症状の始まり方や進行のスピードを観察することが、鑑別の大きなヒントになります。


老猫の認知症ケア:自宅でできる具体的な対処法

 

環境整備で認知症猫の混乱を減らす

認知症の猫にとって、環境の変化は大きなストレスになります。

逆に言えば、環境を整えることで不安や混乱を軽減できます。

 

レイアウトを変えない

家具の配置を急に変えると、認知症の猫は「ここはどこ?」という状態に陥ります。できる限り生活空間のレイアウトを維持しましょう。

 

段差を減らす・足場を安定させる

認知症が進むと平衡感覚も低下します。ソファへのステップや滑り止めマットを活用し、転倒リスクを下げることが重要です。

 

夜間の照明を適度に残す

完全な暗闇は方向感覚の喪失を悪化させます。センサーライトや常夜灯を置いて、夜中でも猫が自分の位置を把握しやすくしましょう。

 

トイレを複数箇所に設置する

認知症猫はトイレの場所を忘れやすいため、いくつかの場所に浅めのトイレを置いておくと失敗が減ります。入り口の低いトイレも有効です。


睡眠リズムの乱れへのアプローチ

老猫がぐるぐる回る夜間行動の多くは、昼夜逆転した睡眠リズムに起因しています。

この問題にアプローチするためには、昼間の活動量を意識的に増やすことが有効です。

  • 日中に遊びの時間を設ける(短時間でよい)
  • 日光が当たる場所を作る(日光は体内時計の調整に役立つ)
  • 昼寝をさせすぎない工夫をする

また、メラトニン(睡眠ホルモン)に関する研究も進んでおり、一部の国では猫への低用量メラトニン投与が検討されていますが、日本では獣医師の指示のもとで行う必要があります。自己判断での使用は避けてください。


認知機能をサポートするフードと栄養素

近年、老猫の脳機能サポートを目的としたフードや栄養素の研究が進んでいます。

 

注目されている成分

  • DHA・EPA(オメガ3脂肪酸):神経細胞の保護・炎症の抑制
  • 抗酸化物質(ビタミンE・C、βカロテン):酸化ストレスの軽減
  • S-アデノシルメチオニン(SAMe):認知機能のサポートに用いられる
  • L-カルニチン:エネルギー代謝の改善

これらを含む老猫用のプレミアムフードや、獣医師から処方されるサプリメントを活用することが選択肢のひとつとなっています。

ただし、サプリメントはあくまでサポートであり、治療の代替ではありません。導入前には必ず獣医師に相談しましょう。


飼い主のメンタルケアも忘れずに

老猫の認知症ケアは、飼い主にとっても非常に負荷の高い経験です。

夜中の鳴き声や徘徊で睡眠が妨げられ、「いつまでこれが続くのか」という消耗感を抱えている方も少なくありません。

 

大切なのは、完璧なケアを目指しすぎないことです。

  • かかりつけ医に「困っていること」を素直に伝える
  • 同じ経験を持つ飼い主のコミュニティを探す
  • 夜間の問題行動には耳栓やホワイトノイズで対応する

動物福祉の観点からも、ケアする側(飼い主)の健康と精神的な安定は、ケアされる側(猫)のウェルフェアに直結します。自分を責めず、できる範囲で関わることが最善のケアにつながります。


獣医師に相談する際に伝えるべきこと

 

診察前に「行動日誌」をつけておく

老猫の認知症を疑うとき、獣医師への受診前に行動の記録をつけておくと診断の大きな助けになります。

 

メモしておきたい内容は以下の通りです。

  • 夜中のぐるぐる回る行動はいつ頃から始まったか
  • 1晩に何回・何時間ほど続くか
  • 食欲・水の飲み量の変化
  • 排泄の状態(場所を外すようになったかどうか)
  • 最近の体重変化
  • ワクチン・フィラリア予防の履歴

可能であれば、行動をスマートフォンで動画撮影しておくと非常に役立ちます。夜中のぐるぐる回る様子や夜鳴きを記録しておけば、診察室で説明する手間が省け、獣医師も正確に状況を把握できます。


認知症の診断はどのように行われるか

現時点では、猫の認知症を確定診断できる特定の検査法はなく、除外診断が基本となります。

獣医師は以下の検査を組み合わせて、認知症以外の原因を排除していきます。

  • 血液検査(甲状腺ホルモン・腎機能・肝機能など)
  • 尿検査
  • 血圧測定
  • 眼底検査
  • 必要に応じてMRI・CT検査

これらの検査で他の疾患が除外され、かつDISHAの症状が確認された場合に認知症(認知機能不全症候群)の診断に至ります。


薬物療法の現状

日本では現時点で、猫の認知症に対して承認された薬はありません

一部では、犬の認知症治療薬として承認されている「セレギリン」を猫に適用外使用するケースもありますが、猫への安全性・有効性については十分なエビデンスが確立されていないのが現状です。

 

一方で、興奮・不安・夜鳴きに対する対症療法的な薬物療法(抗不安薬・鎮静薬など)は選択肢となり得ます。薬物療法の検討は必ず獣医師と相談の上で行ってください。


認知症予防のために今からできること

 

シニア猫になる前から始める脳のケア

認知症は「発症してから対処する」ものではなく、予防的なアプローチが効果的とされています。

7歳以上のシニア期に入った猫から、以下のことを意識することで認知機能の低下を遅らせられる可能性があります。

 

知的刺激を与える

パズルフィーダー(食事を出すために猫が操作する必要のある容器)や、新しいおもちゃを定期的に導入することで、脳への刺激を維持できます。

 

適切な運動を継続する

運動は血流を改善し、脳への酸素供給を保つうえで重要です。老猫でも、無理のない範囲での遊びを日課にしましょう。

 

定期健診を欠かさない

シニア猫は半年に1回の定期健診が推奨されています。甲状腺・腎臓・高血圧などの早期発見が、認知機能への悪影響を抑えることにつながります。

 

歯科ケアにも目を向ける

近年の研究では、歯周病と認知機能低下の関連が動物でも報告されています。口腔内の健康は、全身の炎症レベルにも影響します。


動物福祉の観点から考える「老猫との暮らし方」

環境省が推進する「動物の愛護及び管理に関する法律」の精神には、動物が「命ある存在」として尊重され、五つの自由(飢えと渇きからの自由・不快からの自由・痛み・傷病・疾病からの自由・正常行動発現の自由・恐怖と苦悩からの自由)を保障されるべきという考え方があります。

 

老猫の認知症ケアにおいても、この「五つの自由」の観点は非常に重要です。

夜中にぐるぐる回る猫が「うるさい」と感じられるとき、その行動の背後にある不安・混乱・苦痛に目を向けることが、動物福祉の第一歩です。

責任ある飼い主として猫と向き合うことは、愛情だけでなく知識と準備が伴ってこそ成立します。


まとめ

 

老猫が夜中に同じ場所をぐるぐる回る行動は、猫の認知症(認知機能不全症候群)の代表的なサインのひとつです。

この記事で紹介した内容を振り返ると、以下のポイントが重要です。

  • 老猫のぐるぐる回る行動は、認知症・前庭疾患・甲状腺機能亢進症など複数の疾患が原因になり得る
  • 認知症は11歳以上の猫の3割近くに見られる、決して珍しくない疾患
  • 環境整備・睡眠リズムの調整・栄養サポートは今日から始められる
  • 診断には除外検査が必要であり、自己判断はしないことが大切
  • ケアする飼い主自身の健康と精神的な安定も、猫のウェルフェアに直結する
  • 認知症は予防的アプローチが有効であり、シニア期に入った段階から意識する

老猫との時間は、かけがえのないものです。

たとえ認知症が進んでいたとしても、猫はあなたの存在を感じ取っています。焦らず、責めず、一日一日を丁寧に積み重ねてください。


まず今日、かかりつけの獣医師に連絡を取り、老猫の夜間行動について相談することから始めてみましょう。

早めの一歩が、愛猫の残りの時間をより豊かにします。


 

 

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この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

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