猫が急に大量のよだれを垂らしている|同時に出ている症状で原因を切り分ける
猫の大量のよだれ(流涎)は、Merck Veterinary ManualやMSD Veterinary Manualが原因を探すべき症状として扱っている所見です。挙げられている原因は、薬物や毒物、口や舌の炎症・口の中の異物・腫瘍・外傷、感染症、乗り物酔いや恐怖・興奮、食道の刺激、投薬(特に猫)、肝性脳症や腎不全などの代謝性の病気、唾液腺の障害まで広がります。コーネル大学猫健康センターは、よだれを中毒の徴候の一つとして挙げ、認めたら救急受診すべきだとしています。
よだれが泡状か透明かといった見た目から原因を切り分けることはできません。判断材料になるのは、よだれと同時に出ている症状の組み合わせです。特に、震え・筋肉のぴくつき・ふらつきを伴っているときは中毒を強く疑います。そして、原因を確かめようとして猫の口を無理に開けないでください。理由はこの記事で説明します。
よだれと一緒に、震え・筋肉のぴくつき・ふらつき・けいれん発作・瞳孔が開いているといった症状があれば、中毒を疑ってすぐ動物病院に電話してください。猫では、犬用のノミ・ダニ薬(ペルメトリン配合品)の誤用や、薬をつけた犬との接触が原因になります。使った製品のパッケージを手元に用意してください。
猫の口を無理にこじ開けない、口やのどの奥に手や指を入れないでください。口に痛みのある猫は診察のあらゆる試みに抵抗し、獣医師が口の中を診るために鎮静が必要になることがあります。専門家でも鎮静を要する場面がある処置を、家庭で行う理由はありません。
口から糸・ひも・リボンが出ていても、引っ張らないでください。口の中の線状の異物は「決して引いて取り出してはいけない」とされています。肛門から出ている場合も同じです。そのままの状態で受診してください。
まず確認すること
動物病院へ電話する前に、次の7つを手元にそろえてください。猫の口の中を開けて調べる必要はありません。集めるのは、猫の周囲で何があったかという情報です。
- よだれが始まった時刻と、その後の変化(増えているか、変わらないか)
- 直前の1〜2時間、猫がどこで何をしていたか
- 直近で使った動物用医薬品(ノミ・ダニ予防薬の商品名と使用日。同居している犬に使ったかどうかも含めて)
- 猫が口にした可能性のある物(殺虫剤・除草剤・洗剤・漂白剤・柔軟剤・精油・不凍液・観葉植物・薬・おもちゃ・糸)。現物とパッケージはそのまま確保する
- よだれ以外に出ている症状(震え、ぴくつき、発作、嘔吐、下痢、食欲、飲水、呼吸、歩き方、瞳孔)
- 口を気にする仕草の有無(前肢で口を掻く、頭を振る、空えずき、片側だけで噛む、口を閉じられない)
- 猫の体重・年齢・持病と、飲んでいる薬
よだれの「見た目」では原因を決められない
「泡状なら中毒、透明なら口の病気」といった説明を見かけることがありますが、よだれの性状から原因を切り分けられるとする一次資料は、今回の調査では確認できませんでした。この記事では性状による鑑別を行いません。
代わりに使うのが、同時に出ている症状の組み合わせです。震えがあるのか、口を気にしているのか、吐いているのか、呼吸が苦しそうなのか。この組み合わせのほうが、はるかに確かな手がかりになります。
よだれには「出すぎ」と「飲み込めない」の2通りがある
MSD Veterinary Manualは、過剰な流涎を唾液が作られすぎている状態と、作られる量は正常だが飲み込めていない状態の2つに分けています。飼い主向けのMerck Veterinary Manualの猫の章でも、同じ2分法で説明されています。
この分け方が役に立つのは、「何かを口に入れた」だけでなく「飲み込めなくなっている」という方向も同時に考えられるからです。口・のど・食道に異物や痛みがあると、唾液を飲み込めずに口からあふれます。
すぐ動物病院へ相談すべきサイン
次のどれか一つでも当てはまれば、動物病院へ電話してください。
- よだれと同時に、震え・筋肉のぴくつき・ふらつき・けいれん発作がある(中毒、特に殺虫剤への曝露を疑います)
- 直近に犬用のノミ・ダニ薬を使った、または薬をつけた犬と接触した・舐めた
- 殺虫剤・除草剤・洗剤・漂白剤・柔軟剤・精油・不凍液・観葉植物など、口にした可能性のある物がある
- 口の中や口元に糸・毛糸・リボン・ビニールひもが見えている(引っ張らずに、そのまま受診してください)
- 口を前肢で掻く、空えずきをする、頭を振る、口を開けたまま閉じられない
- よだれに血が混じる、口臭が急に強くなった
- 食べたそうにするのに食べられない、水も飲めない
- 呼吸が速い・苦しそう、ぐったりしている、体が熱い(熱中症を疑います)
- 瞳孔が開いている、左右で大きさが違う、意識がもうろうとしている、ふらつく
- 嘔吐を繰り返す、下痢をする、便が出ない
- 高齢猫で、よだれに加えて体重減少・多飲多尿・食欲低下がある
- 電気コードを噛んだ形跡がある(見た目が軽くても受診してください)
- 子猫・高齢猫・持病のある猫で、急によだれが始まった
同時に出ている症状で切り分ける
Merck Veterinary Manualは、猫の過剰な流涎の原因を表として整理しています。薬物や毒物、口や舌の炎症・口の中の異物・腫瘍・外傷などの刺激、感染症やけいれんを起こす病気、乗り物酔いや恐怖・緊張・興奮、食道の刺激、扁桃炎、投薬、口の形態的な異常、肝性脳症や腎不全などの代謝性の病気、唾液腺の膿瘍や閉塞。この幅の広さが、よだれという症状の扱いにくさです。
そこで、よだれと一緒に何が出ているかで入口を絞ります。次の表は、電話で伝える内容を整理するための目安です。
| よだれと一緒に出ている症状 | 考えること |
|---|---|
| 震え、筋肉のぴくつき、ふらつき、けいれん、瞳孔が開く、体が熱い | 中毒。特に殺虫剤(犬用ノミ・ダニ薬のペルメトリンを含む)への曝露 |
| 前肢で口を掻く、頭を振る、空えずき、片側だけで噛む、口を閉じられない | 口の中の異物、口や舌の痛み |
| よだれに血が混じる、口臭が急に強い、食べたそうにするのに食べられない | 口や舌の炎症(歯周病・歯肉口内炎など) |
| 嘔吐を繰り返す、下痢、便が出ない | 消化管の刺激や閉塞。吐き気そのものも流涎の原因になる |
| 呼吸が速い・苦しそう、ぐったりする、体が熱い、歯茎が乾いて色がおかしい | 熱中症 |
| 高齢猫で体重減少・多飲多尿・食欲低下 | 代謝性の病気。腎不全(尿毒症)では口内炎や口の潰瘍が起こるとされる |
| 意識がもうろうとする、ふらつく、瞳孔の左右差 | 神経に関わる問題。中毒でも起こる |
| 薬を飲ませた直後に始まった | 投薬。MSDは「投薬(特に猫)」を流涎の原因として明示している |
熱中症を疑うときだけは、向かいながら冷やす
AVMA(米国獣医師会)の飼い主向け資料は、熱中症の徴候として速い呼吸や強いパンティング、大量のよだれ、脱力や眠そうな様子、混乱、嘔吐や下痢、歯茎の色の異常・乾き・べたつきを挙げています。
対応としては、最寄りの動物病院へ向かいながら冷却を始めること、日陰や涼しい室内へ移すこと、室温の水で濡らしたタオルを首・脇の下・鼠径部に当てて数分ごとに取り替えること、扇風機で風を当てることが示されています。
同時に、冷たい水や氷水に浸けることは状態を悪化させうるため避けるよう明記されています。急激に冷やせばよいというものではありません。
口の中の炎症と、全身の病気はつながっている
Merck Veterinary Manualは、口の奥の口内炎や舌の炎症では口臭とよだれが一般的な症状で、唾液に血が混じることがあるとしています。食べたがらない、食べたそうにするのに食べられない、といった所見も挙げられています。
同じページには「尿毒症は口内炎と口の潰瘍を起こす」と明記されています。高齢猫でよだれと強い口臭があるとき、口の中の問題であると同時に腎臓の問題であることがあります。「年のせい」で片づけないでください。
腐食性の物質を口にしたこと、電気コードを噛んだことによる電撃傷、熱傷も、口の炎症の原因として挙げられています。電撃傷については「損傷の全体像は受傷から少なくとも3〜4日たたないと分からない」とされています。噛んだ直後に口の中が少し赤いだけに見えても、それが最終的な状態とは限りません。
この表はあくまで入口です。複数に当てはまることもありますし、当てはまらないこともあります。絞り込めなかったこと自体を、そのまま動物病院に伝えてください。
猫に特有の原因|犬用ノミ・ダニ薬(ペルメトリン)
よだれと震えが同時に出ている猫では、直近にノミ・ダニ薬を使っていないかを必ず確認してください。これは犬にはない、猫だけの事故経路です。
査読誌Toxicsに掲載された2022年の症例研究は、猫の曝露経路として飼い主が犬用のスポットオン製剤を猫に誤って使用する例が最も多いとし、ほかに薬をつけた直後の犬との接触やグルーミング、汚染された物を口にすることを挙げています。猫で感受性が高い理由として、猫はグルクロン酸抱合という代謝の働きが弱く、代謝物が蓄積して解毒の効率が下がりうると説明されています。
同論文が示す臨床像は、振戦、筋線維束の攣縮、ぴくつき、大量のよだれ、瞳孔が開くこと、発熱で、重症では発作や昏睡に至るとされています。報告された症例では、薬をつけてから来院までがおおむね6〜13時間で、早い例では投与の約4時間後に症状が出ています。
この時間差が重要です。薬を使ったのが昨日でも、症状が出るのは今日ということがあります。「薬を使ったのは前だから関係ない」と切り離さず、使用日と商品名を必ず伝えてください。
- 犬用のノミ・ダニ薬を猫に使ってしまった場合は、すぐ動物病院に電話する
- 薬をつけたばかりの犬と猫を同じ空間に置かない。猫が犬を舐めるままにしない
- 「体重が近いから」「少量なら」と犬用製品を猫に分けて使わない
- 洗い流す処置(除染)が必要になることがあるが、方法とタイミングは獣医師の指示に従う
- 製品のパッケージを持参する(成分名の確認が治療の判断につながります)
多頭飼育では、猫本人に薬を使っていなくても起こりえます。「犬に使った」ことを、猫の情報として病院に伝えてください。
口の中を無理に見ない・手を入れない理由
よだれの原因を知りたくて、口を開けて中を確認したくなります。これは行わないでください。理由は2つあります。
1つ目は、痛みのある猫にとって口を触られることが強い負担になるからです。Merck Veterinary Manualの飼い主向けの解説は、口に痛みのある猫は前肢で口を掻き、患部を診ようとするあらゆる試みに抵抗するとし、獣医師が口の中を診察するために鎮静が必要になることがあると記載しています。専門家でも鎮静を要することがある処置を、家庭で無理に行う意味はありません。
2つ目は、飼い主の安全です。AVMAは、けがは痛みだけでなく恐れや混乱を引き起こし、それがどんなにおとなしい動物でも予測不能に、時には危険にしうるとしたうえで、けがをした動物を抱きしめようとしないこと、顔を口に近づけないことを挙げています。よだれを垂らしている猫の口に手を入れる行為は、この注意に正面から反します。
口から糸が出ていても、引っ張らない
Merck Veterinary Manualは、猫は糸・毛糸・デンタルフロスなどの線状の異物を飲み込むことが多く、舌の付け根に一端が固定されることがあるとしています。そのうえで、「口の中の線状異物は、取り出すために決して引いてはならない」と明記しています。組織に埋まっている場合、引くことで穿孔を招きうるためです。
一端が固定されたまま残りが腸の動きで先へ進むと、腸が手繰り寄せられ、糸が腸の壁を切ってしまう危険があります。獣医師は固定されている点で切ってから摘出します。口から出ていても、肛門から出ていても、触らずそのまま受診してください。
線状異物はよだれの原因のひとつとして重要ですが、飲み込んだあとの経過や治療については別の記事で扱います。ここでは「見えても引っ張らない」という一点を覚えてください。
家庭で見てよい範囲
- 猫が嫌がらず、自然に口を開けたときに外から見える範囲だけを確認する
- 口元・体・床のようすを写真や動画で記録する(震えの有無は動画が確実に伝わります)
- 口の周りや被毛に薬剤らしきものが付いていないか、外から見て確認する
- 口を気にする仕草の頻度と、片側に偏っていないかを観察する
撮った写真と動画は、そのまま診察の材料になります。口をこじ開けて撮る必要はありません。
今、自宅でできること
ここに書くのは治療ではありません。病院に着くまでに、これ以上悪くしないことと、診察に必要な情報をそろえることが目的です。
- 猫を静かで涼しい安全な場所へ移し、興奮させない
- よだれが始まった時刻と、直前1〜2時間に何をしていたかを書き出す
- 直近で使った薬・ノミダニ予防薬・スプレー・洗剤・掃除用品・置いた植物を確認し、パッケージと現物をそのまま確保する
- 猫の口元・体・床の写真や動画を撮る(震えの有無は動画が有用です)
- 皮膚や被毛に薬剤が付いている可能性があるなら、猫がその部位を舐めないようにして、まず動物病院に電話して指示を仰ぐ
- 口の中を見るのは、猫が自然に口を開けたときに外から見える範囲だけにする
- 糸やひもが口や肛門から出ていても、そのままにして触らない
- 呼吸の速さ、震えの有無、意識、歩き方を、時刻とともにメモする
- 動物病院へ電話し、よだれ以外の症状と、曝露の可能性を伝えて到着に備えてもらう
- キャリーを準備し、移動中も静かにしておく
- 熱中症が疑われるなら、涼しい場所へ移し、室温の水で濡らしたタオルを首・脇の下・鼠径部に当てて数分ごとに替えながら病院へ向かう
やってはいけないこと
以下は、猫を危険にさらすか、受診を遅らせる行為です。ひとつも行わないでください。
- 口を無理にこじ開けて中を見る。口に痛みのある猫は獣医師でも鎮静が必要になることがあり、飼い主が噛まれる危険もあります
- 口やのどの奥に手や指を入れる
- 口の中に見えている糸・ひも・リボンを引っ張る(肛門から出ているものも同じです)
- ピンセットや箸で異物を取ろうとする
- 獣医師の指示なしに吐かせる。コーネル大学猫健康センターは、獣医師から特に指示されない限り吐かせようとしないよう明記しています。腐食性の物質では、かえって食道の損傷を広げます
- 牛乳や油を飲ませて中和・希釈しようとする
- 獣医師の指示なしに人用の薬(鎮痛薬・胃薬・うがい薬など)を使う
- 猫に犬用のノミ・ダニ薬(ペルメトリン配合品)を使う。犬用製品を分けて使うことも行わないでください
- 薬をつけたばかりの犬と猫を同じ空間に置く、猫が犬を舐めるままにする
- 意識がもうろうとしている猫に水や食事を与える
- けいれんしている猫の口に物を入れる、舌を引き出そうとする
- 熱中症が疑われるときに、冷水や氷水に浸けて冷やす(状態を悪化させうるとされています)
- 「よだれだけだから朝まで見よう」と自分で決めてしまう
最後の項目について補足します。「よだれだけで元気そう」は、安全の根拠になりません。ペルメトリン中毒のように、よだれから始まって数時間のうちに震えや発作へ進むものがあります。判断を自分で完結させず、まず電話してください。
動物病院へ伝える情報
電話の段階で分かる範囲を伝えてください。全部そろっていなくて構いません。
- よだれが始まった正確な時刻と、その後の変化
- 直前に猫がいた場所と、口にした可能性のある物(薬・殺虫剤・洗剤・植物・食品・おもちゃ・糸)
- 直近に使った動物用医薬品(ノミ・ダニ予防薬の商品名と使用日、犬にも使ったかどうか)
- 同居している動物の有無と、その動物に薬を使った日
- よだれ以外の症状(震え、ぴくつき、発作、嘔吐、下痢、食欲、飲水、呼吸、歩き方、瞳孔)
- 口を気にする仕草(前肢で掻く、頭を振る、空えずき、片側だけで噛む)の有無
- よだれの量、血が混じるか、口臭の変化
- 食べられているか、水を飲めているか、最後に食べた時刻
- 猫の体重、年齢、避妊去勢の有無
- 持病(腎臓病・肝臓病・歯周病・口内炎)と、現在飲んでいる薬
- 室内の気温と環境(熱中症を疑う状況だったか)
- 現物・パッケージ・撮影した写真や動画(可能なら持参してください)
夜間・休日でかかりつけの動物病院が閉まっている場合
夜間や休診日にかかりつけの病院が閉まっているときは、近くの夜間・救急動物病院を確認してください。向かう前に必ず電話をしてください。夜間は予約制のところや、受け入れられる状態かどうかがその時々で変わるところがあります。
電話では、「何が起きたか」「いつからか」「猫の年齢と体重」「今の様子」を伝えてください。その場でできることを教えてもらえたり、より適した病院を案内してもらえることがあります。
- 全国の夜間・救急動物病院まとめ(都道府県・市区別)
- 東京23区 都心3区(千代田・中央・港)の夜間・救急動物病院
- 横浜市の夜間・救急動物病院
- 大阪市の夜間・救急動物病院
- 名古屋市の夜間・救急動物病院
- 札幌市の夜間・救急動物病院
- 福岡市の夜間・救急動物病院
- 猫の夜間救急に行くべきか迷った時の判断チェックリスト
- 夜間救急動物病院に連れて行くべき症状の判断基準(犬猫共通)
よだれと震えが同時に出ている場合は、電話の最初に「中毒の疑い」と伝えてください。そのひと言で、受け入れの可否と準備の判断が早くなります。犬用のノミ・ダニ薬を使ったかどうかも、聞かれる前に伝えてください。
使った製品のパッケージ、口にした可能性のある物の現物、撮影した動画は、そのまま持って行ってください。成分名が分かることで、治療の判断が早くなります。
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よくある質問
よだれだけで、ほかは元気に見えます。様子を見てもよいですか?
自分だけで判断せず、動物病院に電話してください。Merck・MSDの獣医学リファレンスは、猫の過剰な流涎を、薬物や毒物、口の中の異物や腫瘍・外傷、感染症、食道の刺激、肝性脳症や腎不全といった代謝性の病気、唾液腺の障害などの入口となる症状として扱っています。
コーネル大学猫健康センターは、よだれを中毒の徴候の一つとして挙げ、認めたら救急受診すべきだとしています。ペルメトリン中毒のように、よだれから始まって数時間のうちに震えや発作へ進むものもあります。
泡状のよだれと透明なよだれで、原因は違うのですか?
よだれの性状から原因を切り分けられるとする一次資料は、今回の調査では確認できませんでした。そのため、この記事では見た目による鑑別を行いません。
見るべきなのは、よだれと同時に出ている症状です。震えがあるか、口を気にしているか、吐いているか、呼吸が苦しそうか。この組み合わせを電話で伝えてください。
口の中を見て原因を確かめたほうがよいですか?
無理に開けないでください。口に痛みのある猫は、患部を診ようとするあらゆる試みに抵抗するとされ、獣医師が口の中を診察するために鎮静が必要になることがあります。
痛みや恐れのある動物は、普段どんなにおとなしくても予測不能になりうると獣医師会も注意しています。猫が自然に口を開けたときに外から見える範囲にとどめ、写真や動画を撮って病院で見せてください。
口から糸が出ています。引っ張って抜いてよいですか?
引っ張らないでください。Merck Veterinary Manualは、口の中の線状の異物は取り出すために決して引いてはならないと明記しています。組織に埋まっている場合、引くことで穿孔を招きうるためです。
一端が固定されたまま残りが腸へ進むと、腸が手繰り寄せられて糸が腸の壁を切る危険があります。獣医師は固定点で切ってから摘出します。肛門から出ている場合も同じで、そのままの状態で受診してください。
犬用のノミ・ダニ薬を猫に使ってしまいました
すぐ動物病院に連絡してください。猫はグルクロン酸抱合という代謝の働きが弱く、ペルメトリンに強い感受性を示すとされています。症状は振戦、筋肉のぴくつき、大量のよだれ、瞳孔が開くこと、発熱で、重症では発作や昏睡に至ります。
報告された症例では、薬をつけてから来院までがおおむね6〜13時間、早い例では投与の約4時間後に症状が出ており、時間が経ってから出ることがあります。薬をつけた直後の犬に猫が接触したり舐めたりしただけでも起こりえます。洗い流す処置が必要になりますが、方法とタイミングは獣医師の指示に従ってください。製品のパッケージを持参してください。
変な物を舐めたようです。吐かせたほうがよいですか?
吐かせないでください。コーネル大学猫健康センターは、獣医師から特に指示されない限り吐かせようとしないよう明記しています。腐食性の物質では、吐かせることでかえって食道を傷めます。
何を・どれくらい・いつ舐めたかを控え、パッケージと現物を確保して受診してください。
薬を飲ませた直後によだれが出ました
MSD Veterinary Manualは「投薬(特に猫)」を流涎の原因として明示しています。苦味による一時的な反応であることが多いのですが、どのくらいで治まるかという時間の目安を示した一次資料は確認できていません。そのため、この記事では「◯分で治まれば大丈夫」という基準を示しません。
震え・ふらつき・嘔吐・呼吸の変化を伴う場合、よだれが長く続く場合、繰り返す場合は、処方元の動物病院に連絡してください。投薬後のよだれや泡そのものについては、別の既存記事で詳しく扱っています。
高齢の猫で、よだれと強い口臭があります
口の奥の口内炎や舌の炎症では、口臭とよだれが一般的な症状で、唾液に血が混じることがあるとされています。歯周病や歯肉口内炎は猫のよだれの大きな原因群です。
同時に、腎不全(尿毒症)でも口内炎や口の潰瘍が起こるとされています。体重減少・多飲多尿・食欲低下を伴うなら、口の中だけでなく全身の検査も必要になります。「年のせい」で片づけないでください。
まとめ
- 猫の大量のよだれは、Merck・MSDが原因を探すべき症状として扱っている所見。コーネル大学は中毒の徴候の一つとして救急受診の対象に挙げている
- 泡状か透明かという見た目では原因を切り分けられない。手がかりは同時に出ている症状の組み合わせ
- よだれ+震え・ぴくつき・ふらつきは中毒を強く疑う。犬用ノミ・ダニ薬(ペルメトリン)の誤用や、薬をつけた犬との接触が猫特有の経路。症状は投与の数時間後から出ることがあり、報告例では来院までがおおむね6〜13時間
- 口を無理にこじ開けない。手や指を入れない。口に痛みのある猫は獣医師でも鎮静が必要になることがある
- 口や肛門から糸が出ていても引っ張らない。引くことで穿孔を招きうるとされている
- 電気コードを噛んだ跡があれば、見た目が軽くても受診する。損傷の全体像は3〜4日たたないと分からないとされている
- 現物・パッケージ・写真と動画を確保し、使った薬の商品名と使用日(犬に使った分も含めて)を伝えて動物病院に電話する
参考資料
この記事は次の資料を参照して作成しました(2026年9月9日確認)。記載内容は一般的な情報であり、個々の症例の診断・治療に代わるものではありません。判断に迷うときは、自己判断せず動物病院に相談してください。
- Salivary Disorders in Small Animals(流涎の定義と原因)(MSD Veterinary Manual)
- Table: Causes of Excessive Salivation in Cats(猫の過剰流涎の原因一覧)(Merck Veterinary Manual)
- Disorders of the Mouth in Cats(口の病気と、診察に鎮静が必要になること)(Merck Veterinary Manual(飼い主向け版))
- Oral Inflammatory and Ulcerative Disease in Small Animals(口内炎・尿毒症・電撃傷)(Merck Veterinary Manual)
- Gastrointestinal Obstruction in Small Animals(線状異物を引いてはならない理由)(Merck Veterinary Manual)
- Poisons(猫の中毒の徴候と、自宅で吐かせないこと)(Cornell Feline Health Center, Cornell University College of Veterinary Medicine)
- 静脈内脂肪乳剤による猫のペルメトリン中毒の治療(Toxics. 2022, PMID 35448426)(Europe PMC(抄録))
- PET FIRST AID(飼い主向けリーフレット 2025年版・PDF/熱中症と安全確保)(American Veterinary Medical Association(米国獣医師会))