老犬が突然倒れた|すぐ起き上がっても受診が必要な理由と、病院へ伝えること
高齢の犬が突然倒れたら、すぐ起き上がって普通に歩いていても受診の対象です。脾臓や心臓の腫瘍による腹腔内出血は「出血しては一時的に止まる」ことがあり、犬がいったん回復したように見えたあとで急激に悪化することがあります。不整脈による失神も、発作の合間はまったく正常に見えます。「元に戻ったから」ではなく「倒れた」という事実で判断してください。
「年だから」も理由になりません。高齢であること自体が原因なのではなく、高齢だから腫瘍・不整脈・脳血管障害・前庭疾患といった病気の発生率が上がるのです。その中には治療で改善するものが含まれています。この記事では、倒れた直後に記録すること、病院に伝えること、そしてやってはいけないことを順にまとめます。
歯ぐき(または舌・まぶたの裏)が白い・灰色っぽい・青白いときは、その場で電話してください。出血やショックで全身に血がまわっていない可能性があります。
一度倒れてすぐ起き上がった場合も受診の対象です。腹腔内出血も不整脈も断続的に起こるため、症状が消えている時間帯があります。回復したことは、受診を先送りする理由になりません。
動画は診断をつけるためではなく、何が起きたかを正確に伝えるためのものです。撮ることに気を取られて受診が遅れては本末転倒です。数十秒で十分なので、撮れたら撮り、撮れなければそのまま向かってください。
まず確認すること
病院に電話する前に、次のことを確かめてメモしてください。分からない項目は「分からない」で構いません。倒れた瞬間を見ていないこと自体も、伝える価値のある情報です。
- 時計を見る。倒れた時刻と、意識がない/起き上がれない状態が何秒〜何分続いたかを計る
- 意識があるか。呼びかけに反応するか、目が合うか
- 歯ぐきの色(白い/薄いピンク/紫っぽい)
- 呼吸(速いか、浅いか、口を開けていないか)。1分間の回数を数えられれば数える
- 体の様子(ぐったり弛緩していたか、突っ張っていたか、ガクガクしていたか)
- 倒れる直前に何をしていたか(運動中/興奮中/咳のあと/排便中/食事後/睡眠中/安静時)
- 排尿・排便・よだれ・嘔吐があったか
- お腹が張ってきていないか、触ると痛がらないか(強く押さない)
- 回復までにかかった時間と、回復後の様子(すぐ普通に戻ったか、しばらくふらついていたか)
歯ぐきの色は、家庭で見られる数少ない循環のサイン
上唇をそっとめくり、犬歯の上あたりの歯ぐきを見ます。舌やまぶたの裏でも構いません。健康な犬は薄いピンク色です。白っぽい、灰色っぽい、青白いときは、出血やショックで全身に血がまわっていない可能性が高くなります。
もともと歯ぐきに黒い色素がある犬では、色素のない部分か、舌・まぶたの裏で見てください。普段の色を知っておくと比較しやすくなります。元気なうちに一度見ておくことをおすすめします。
口の中を強く触ったり、無理にこじ開けたりはしないでください。犬が嫌がるならやめて、受診を優先します。見られたなら、写真を撮っておくと病院で役立ちます。
動画は「診断のため」ではなく「正確に伝えるため」
スマートフォンで数十秒撮れれば十分です。体の硬さ、四肢の動き、目の動き、呼吸の様子が写るようにしてください。倒れる場面が終わっていれば、そのあとの歩き方や意識の戻り方でも役に立ちます。
ただし動画があれば家庭で見分けられる、という意味ではありません。後述のとおり、動画を見た獣医師どうしでも判断が一致しにくいことが報告されています。動画は、口頭では伝えきれない動きを、そのまま診察に持ち込むための手段です。
撮影を優先して受診を遅らせないでください。1回撮れたらそれで十分です。何度も倒れるのを待って撮る必要はありません。
すぐ動物病院へ相談すべきサイン
次のどれか一つでも当てはまれば、診療時間外でも電話してください。いずれも時間単位で悪化しうる状態です。
- 歯ぐき(舌・まぶたの裏)が白い・灰色っぽい・青白い
- 倒れたあと意識が戻らない、呼びかけに反応しない
- 呼吸が速い・浅い・苦しそう、口を開けて呼吸している
- お腹が張ってきた、お腹を触ると嫌がる・痛がる
- 体が冷たい、震えている、立ち上がれない、ぐったりしたまま
- 倒れた・けいれんしたエピソードが1日のうちに2回以上ある
- けいれんが5分を超えて続いている
- 運動中・興奮時・咳のあとに倒れた(心臓の異常を疑う状況です)
- 首が傾いている・目が揺れている・まっすぐ歩けないことに加えて、意識がぼんやりしている、ふらつき方が左右で違う
- 血便・血尿・鼻血・皮下の内出血(あざ)をともなう
- 糖尿病でインスリンを使っている犬が倒れた
- 一度倒れてすぐ起き上がった場合も、上のサインがなくても受診の対象です
「すぐ起き上がったから大丈夫」が成り立たない理由
高齢の大型犬で突然倒れる原因として代表的なのが、脾臓にできた血管肉腫(ヘマンギオサルコーマ)が破裂して腹腔内に出血するパターンです。米国獣医外科専門医学会(ACVS)は、脾臓の腫瘤が破裂して腹腔内出血を起こすと犬は虚脱し、そのまま突然死することがあると説明しています。このとき歯ぐきは蒼白になり、心拍数と呼吸数が上がります。出血が続いている場合、脾臓の摘出手術は「できる限り早く」行う必要があるとされています。
問題は、この出血が断続的に起こりうることです。コーネル大学獣医学部リニー犬健康センターは、血管肉腫の出血は断続的に起こるため、一時的に回復したように見えたあとで急激に悪化する犬がいると明記しています。つまり「倒れたがすぐ起き上がった」は、危険が去った証拠にはなりません。
血管肉腫は8〜10歳前後の高齢犬に多く、ジャーマン・シェパード、ゴールデン・レトリバー、ラブラドール、プードルなど大型犬でリスクが高いとされます。ただし該当しない犬種・体格なら安心という意味ではありません。倒れる原因はほかにもあります。
不整脈などの心臓の異常による失神も同じ構造です。失神は、脳への血流が短時間途絶えることで起こる、突然始まり短時間で自然に回復する意識と姿勢の消失と定義されています。発作の合間、犬はまったく正常に見えます。「戻ったから大丈夫」ではなく「倒れた」という事実で判断してください。
腹腔内出血のうち血管肉腫が占める割合については、資料によって数字に大きな幅があり、原著を確認できませんでした。この記事では割合の数字は書きません。「高齢犬の突然の腹腔内出血では、脾臓の悪性腫瘍、特に血管肉腫が代表的な原因のひとつ」という事実だけを扱います。
高齢犬が突然倒れるとき、何が疑われるのか
原因を家庭で絞り込む必要はありません。それでも「何を疑って病院へ行くのか」を知っておくと、伝えるべき情報が分かります。下の表はいずれも、病院での検査を経て初めて区別がつくものです。
| 疑われるもの | 特徴として挙げられていること | 病院で行われること |
|---|---|---|
| 腹腔内出血(脾臓などの腫瘍の破裂) | 虚脱、歯ぐきの蒼白、心拍数と呼吸数の上昇。出血が断続的で、いったん回復したように見えることがある | 身体検査、血液検査、腹部の超音波検査。出血が続いていれば早期の手術 |
| 不整脈などの心臓の異常 | 運動時・興奮時・咳のあとの失神。前触れがほとんどなく、ぐったりして倒れ、数秒で終わり、すぐ普段どおりに戻る | 心電図、ホルター心電図などで発作時の心臓の動きを調べる |
| 前庭疾患 | 首が傾く、目が揺れる、まっすぐ歩けない。高齢犬で急増する | 神経学的検査、耳の検査。中枢性が疑われればMRIなど |
| 脳血管障害(脳梗塞) | 前庭疾患とよく似た症状が急に出て、その後は進行しない | 神経学的検査とMRI |
| 低血糖(インスリノーマなど) | 脱力、運動後の疲労、筋のぴくつき、混乱。発作性で、はじめは間隔が空いている | 血糖の測定。中高齢犬の反復する脱力・虚脱・けいれんでは推奨されている |
| アジソン病(副腎皮質機能低下症)のクリーゼ | 循環血液量が減ってショックに至る。診断前に症状が良くなったり悪くなったりする時期がある | 血液検査(電解質など)、ホルモンの検査 |
前庭疾患は「様子を見ていい病気」ではない
英国の一次診療データベース(VetCompass/ロイヤル・ベタリナリー・カレッジ)を使った研究では、前庭疾患と診断された犬の診断時年齢の中央値は約12.7歳でした。年間の有病率は全体で1万頭あたり8頭ですが、9歳以上に限ると1万頭あたり36頭と、およそ4.5倍になります。症状は斜頸69.8%、眼振68.1%、運動失調64.5%でした。
同じ研究で、改善したのは41.8%(改善までの中央値4日)、研究期間中の死亡は30.6%、初診の時点で安楽死となったのが11.6%でした。著者らは「前庭疾患は高齢犬、特に好発犬種ではハイリスクな疾患として扱うべき」と結論しています。原因が記録されていたのは全体の4.3%にすぎず、診断がついていない例が多いことも読み取れます。
自力で立てない、水が飲めないという状態は、それ自体が脱水と誤嚥の危険を生みます。数日で治ることを期待して家で待つ状況ではありません。
同じ症状が脳梗塞でも起こる
小脳の虚血性脳梗塞が疑われた犬23頭の多施設研究では、年齢の中央値は8歳8か月(3〜12歳)で、発症は超急性から急性、その後は進行しないのが特徴でした。主な症状は運動失調21頭、斜頸13頭、眼振8頭で、6頭は歩けませんでした。前庭疾患と外見で区別がつく症状ではありません。
この研究では、5頭(22%)に一過性脳虚血発作を思わせる先行エピソードがありました。「前にも一度ふらついたが治った」という経過は、安心材料ではなく情報です。必ず伝えてください。なお、この23頭は全頭が入院を生存して退院しています(入院期間の中央値は1日、広範な梗塞では6.5日)。
末梢性(内耳などが原因)か中枢性(脳が原因)かは、獣医師が意識の状態、足を正しい位置に戻せるか(固有位置感覚)、顔の神経以外の脳神経に異常がないかを調べて分けます。必要ならMRIを行います。外見からは分けられません。
低血糖とアジソン病|「良くなったり悪くなったり」する病気
インスリノーマ(膵臓のβ細胞の腫瘍)は5〜12歳の犬に多く、脱力、運動後の疲労、筋のぴくつき、協調運動の障害、混乱、性格の変化として始まり、周期的なけいれんや「失神のように見える虚脱」も報告されています。症状は発作性で、はじめは間隔が空いていますが、進行すると頻回になり長引きます。運動、絶食、そして逆に食事(インスリンの分泌が刺激されるため)が引き金になります。MSD獣医マニュアルは「周期的な脱力・虚脱・けいれんの既往がある高齢犬すべてに血糖測定を行うべき」としています。
アジソン病(副腎皮質機能低下症)では、一部の犬が循環血液量の減少と低血圧を特徴とする生命に関わる状態(アジソンクリーゼ)を起こします。重度の高カリウム血症のため、ショック状態にもかかわらず脈が遅くなることがあります。診断がつくまでの数日から数か月にわたって症状が曖昧で、増悪と軽快を繰り返し、ストレスで悪化することが多いため「great imitator(偽装の名人)」と呼ばれます。ただし発症は若齢から中年齢の成犬に多いとされ、高齢犬の突然の虚脱の原因として頻度が高いわけではありません。
共通しているのは、症状が消えている時間帯があることです。だからこそ「今は元気だから」で受診をやめると、診断そのものが先送りになります。
四肢の麻痺や強い痛みが前面に出るタイプ(急に立てない、後ろ足を引きずる、背中を触ると痛がる)は、椎間板疾患など別の枠組みで考えます。この記事では扱っていないので、記事末の関連記事を見てください。
失神とてんかん発作は、家庭では見分けられない
この2つには、教科書的な違いがあります。査読誌のレビューは、失神は前触れがほとんどなく、運動・興奮・咳・ストレスをきっかけに起こり、数秒で終わり、体がぐったり弛緩して倒れ、そのあとすぐ普段どおりに戻る、と整理しています。一方てんかん発作は、数分から数日前に前兆期があることがあり、睡眠中や安静時に多く、数秒から数分続き、突っ張ったりガクガクしたりする動きをともない、排尿・排便・よだれが失神より多く、発作のあとに数分から数時間の見当識障害・一時的な失明・ふらつきが残ります。
ただし、これを家庭での判断に使うことはできません。同じレビューは、この区別の基準について「この分野の原著研究が乏しくエビデンスが弱いため、確定的な結論は下せない」と明記しています。さらに、動画を見て判定させた場合でも獣医師の間で一致度は低く、録画だけで両者を確実に区別することはできなかったと述べています。
つまり「これは失神だから軽い」「発作だからいつものこと」という自己判断は成立しません。区別は、心電図・ホルター心電図・血液検査・画像検査といった病院での検査を経て初めて可能になります。どちらであっても受診の対象です。
| 失神として整理されていること | てんかん発作として整理されていること | |
|---|---|---|
| きっかけ | 運動、興奮、咳、ストレス | 睡眠中や安静時に多い |
| 前触れ | ほとんどない | 数分〜数日前に前兆期があることがある |
| 続く時間 | 数秒 | 数秒〜数分 |
| 体の状態 | ぐったり弛緩して倒れる | 突っ張る・ガクガクする |
| 排尿・排便・よだれ | 少ない | 失神より多い |
| そのあと | すぐ普段どおりに戻る | 数分〜数時間、ふらつき・見当識障害・一時的な失明が残ることがある |
この表は病院で伝えるべき観察項目のリストとして使ってください。診断のためのチェックリストではありません。あなたが見たことをそのまま伝えれば、それで役目は果たせます。
今、自宅でできること
ここに書くのは治療ではありません。これ以上悪くしないことと、診察に必要な情報をそろえることが目的です。
- 時計を見て、倒れた時刻と続いた時間を記録する
- 犬の周りから家具・階段・水場を遠ざけ、平らで安全な場所に寝かせる。できれば横向きにし、首を無理に曲げない
- スマートフォンで動画を撮る(数十秒でよい。近づきすぎず、体の硬さ・四肢の動き・目の動き・呼吸が写るように)
- 歯ぐきの色を見る(できれば写真も撮る。強く触らない)
- 呼吸の回数を1分間数える
- 毛布などをかけて体温が逃げないようにする(電気毛布や熱いもので急に温めない)
- 直前に何をしていたかをメモする(運動、興奮、咳、排便、食事、睡眠中など)
- かかりつけ動物病院に電話する。時間外なら夜間・救急動物病院に電話してから向かう
- キャリー、または板・厚手の毛布など、体を水平に支えたまま運べるものを用意する
- 現在使っている薬・サプリメントの現物か写真をまとめる
- 移動中は、揺れと落下の少ない場所(助手席の足元や後部座席の床など)に犬を安定させる
運ぶときはできるだけ揺らさず、板やキャリー、毛布ごと水平に運びます。お腹を圧迫する運び方や、腹部を縛って支える方法は、この記事では扱いません。腹腔内出血が疑われる犬でそうした手技を家庭で行う根拠は確認できませんでした。
やってはいけないこと
以下は犬を危険にさらすか、受診を遅らせる行為です。ひとつも行わないでください。
- 「すぐ起き上がったから」「高齢だから」と家で見守る、翌朝まで待つ
- 意識がはっきりしない犬の口に、水・食べ物・砂糖水・ハチミツなどを入れる。気管に入って誤嚥性肺炎や窒息につながります。低血糖が原因だとしても、それを安全に治療できるのは病院だけです
- けいれんしている犬の口に手・指・タオル・棒などを入れる(噛まれる危険があり、犬にとっても利益がありません)
- 立たせようと引っ張る、無理に歩かせる、走らせて様子をみる
- お腹を強く押す、抱き上げて腹部を圧迫する。腹腔内出血がある場合、出血を悪化させうる操作です
- 獣医師の指示なしに人用の薬(解熱鎮痛薬、強心薬、降圧薬、抗てんかん薬など)や、以前ほかの犬に処方された薬を与える
- 原因が分からないうちに、自己判断で冷やす、または急に温める
- 動画や写真を撮ることに気を取られて、受診を遅らせる
- 電話をせずに、いきなり夜間病院へ向かう(受け入れの可否と準備の確認が必要です)
「もう年だから、連れて行っても仕方がない」という判断も、ここに含めておきます。原因の中には、前庭疾患・低血糖・アジソン病・一部の不整脈のように治療で改善するものがあります。治療が難しい病態だった場合でも、痛みや呼吸の苦しさをやわらげる処置と、これからどうするかの相談ができます。
動物病院へ伝える情報
電話の最初に「高齢の犬が倒れた」と伝えてください。そのうえで、分かる範囲で次を伝えます。
- 倒れた正確な時刻と、続いた時間(秒・分)
- 倒れる直前に何をしていたか(運動中/興奮中/咳のあと/排便中/食事後/睡眠中/安静時)
- 意識があったか、呼びかけに反応したか
- 体はぐったりしていたか、突っ張っていたか、ガクガクしていたか
- 排尿・排便・よだれ・嘔吐があったか
- 目の位置や動き(白目をむいた、目が左右または上下に揺れていた など)
- 歯ぐきの色
- 回復までにかかった時間と、回復後の様子
- 撮影した動画・写真
- 過去に同じようなエピソードがあったか。あれば回数と時期(「前にも一度ふらついたが治った」は重要な情報です)
- 既往歴(心臓病、糖尿病、腫瘍、内分泌疾患、てんかん など)
- 現在の薬・サプリメント(インスリン、心臓の薬、ステロイド、鎮痛薬は特に重要)
- 犬種・年齢・体重
- 最近の食欲・元気・体重の変化、お腹の張り、疲れやすさ
- 終末期の方針について考えていることがあれば、その内容(電話の段階で伝えておくと、病院側も対応を組み立てやすくなります)
夜間・休日でかかりつけの動物病院が閉まっている場合
夜間や休診日にかかりつけの病院が閉まっているときは、近くの夜間・救急動物病院を確認してください。向かう前に必ず電話をしてください。夜間は予約制のところや、受け入れられる状態かどうかがその時々で変わるところがあります。
電話では、「何が起きたか」「いつからか」「犬の年齢と体重」「今の様子」を伝えてください。その場でできることを教えてもらえたり、より適した病院を案内してもらえることがあります。
- 全国の夜間・救急動物病院まとめ(都道府県・市区別)
- 東京23区 都心3区(千代田・中央・港)の夜間・救急動物病院
- 横浜市の夜間・救急動物病院
- 大阪市の夜間・救急動物病院
- 名古屋市の夜間・救急動物病院
- 札幌市の夜間・救急動物病院
- 福岡市の夜間・救急動物病院
- 夜間救急動物病院に連れて行くべき症状の判断基準(犬猫共通)
電話では「高齢の犬が倒れた」「歯ぐきの色」「今の意識と呼吸」を先に伝えてください。腹腔内出血や不整脈が疑われる場合、到着後すぐに動けるかどうかで流れが変わります。
移動はできるだけ揺らさず、板や毛布ごと水平を保って運びます。抱き上げるときにお腹を圧迫しないよう気をつけてください。
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よくある質問
一度倒れましたが、すぐに起き上がって今は普通です。それでも病院に行くべきですか?
行ってください。すぐ回復したこと自体は、安全の証拠になりません。
脾臓や心臓の血管肉腫による腹腔内出血は断続的に起こり、いったん止まって犬が回復したように見えたあとに再び出血して急激に悪化することがあると、コーネル大学が明記しています。不整脈による失神も、発作の合間はまったく正常に見えます。
受診までの間に、動画・時刻・歯ぐきの色を記録しておいてください。診断に直結します。
失神とてんかん発作は、家で見分けられますか?
見分けられません。目安はありますが、確定には病院の検査が必要です。
査読誌のレビューは「この分野の研究は乏しくエビデンスが弱いため、確定的な結論は出せない」とし、動画を見た獣医師どうしでも判断が一致しにくかったと報告しています。
そのため「これは失神だから軽い」という自己判断は成立しません。どちらであっても受診の対象です。あなたの役割は見分けることではなく、見たことを正確に伝えることです。
ぐるぐる回る・首が傾いている・目が揺れています。前庭疾患なら治るのを待てばいいですか?
待たないでください。同じ症状が脳梗塞・脳腫瘍・中耳炎/内耳炎でも起こります。小脳梗塞の犬23頭の研究では、運動失調21頭・斜頸13頭・眼振8頭と、前庭疾患と区別がつかない症状でした。
末梢性か中枢性かは、意識の状態、固有位置感覚、顔の神経以外の脳神経の評価という神経学的検査(必要ならMRI)で分けるもので、外見では判断できません。
英国の一次診療データでは前庭疾患の診断時年齢の中央値は約12.7歳で、初診の時点で11.6%が安楽死となっています。著者らは高リスクな疾患として扱うべきだとしています。自力で立てない・水が飲めない状態は、それ自体が脱水と誤嚥の危険を生みます。
歯ぐきの色は、どう見ればいいですか?
上唇をそっとめくり、犬歯の上あたりの歯ぐきを見ます。舌やまぶたの裏でも構いません。健康な犬は薄いピンク色です。
白っぽい・灰色っぽい・青白いときは、その場で救急に電話してください。写真を撮っておくと病院で役立ちます。
もともと歯ぐきに黒い色素がある犬は、色素のない部分か舌・まぶたの裏で見てください。口の中を強く触ったり、無理にこじ開けたりはせず、犬が嫌がるならやめて受診を優先します。
「年のせいですね」と言われることが不安です。高齢だから仕方ないのでしょうか。
高齢であること自体が原因になるのではありません。高齢だから、腫瘍・不整脈・脳血管障害・前庭疾患の発生率が上がるのです。前庭疾患の発生率は、英国の一次診療データで9歳以上では全体のおよそ4.5倍でした。
「年のせい」と考えて受診しないと、治療で改善する原因(前庭疾患、低血糖、アジソン病、一部の不整脈など)まで見逃すことになります。
年齢は、受診をやめる理由ではなく、疑うべき病気のリストを変える情報です。
高齢で、もう積極的な治療は難しいかもしれません。それでも連れて行く意味はありますか?
あります。原因の中には治療で改善するものが含まれています。
治療できない病態だった場合でも、痛みや呼吸の苦しさをやわらげる処置と、これからどうするかの相談ができます。腹腔内出血のように、放置すると短時間で苦痛が強くなる状態もあります。
「積極的な検査や手術はどこまで行うか」という方針は、電話の段階で伝えておくと病院側も対応を組み立てやすくなります。何もしないという選択をするにしても、診断がついてからのほうが判断の質は上がります。
夜中に倒れました。朝までかかりつけを待つべきですか?
待たないでください。腹腔内出血・不整脈・脳血管障害・内分泌のクリーゼは、いずれも時間単位で悪化しうる状態です。
まず夜間・救急動物病院に電話し、倒れた時刻、意識、歯ぐきの色、呼吸、既往を伝えて受け入れを確認してください。電話をせずに向かうと、準備ができておらず結果的に遅れることがあります。
移動は揺らさず、水平を保って運びます。板や毛布ごと持ち上げると安全です。
まとめ
- 一度倒れてすぐ起き上がっても受診の対象。血管肉腫による腹腔内出血は断続的に起こり、回復したように見えたあとで悪化することがある
- 歯ぐきが白い・灰色っぽいときは、その場で電話する。出血やショックのサインになる
- 失神とてんかん発作を家庭で見分けることはできない。動画を見た獣医師どうしでも判断が一致しにくいと報告されている
- 動画は診断のためではなく、何が起きたかを正確に伝えるため。数十秒で十分で、撮影を優先して受診を遅らせない
- 前庭疾患は高齢犬で急増し、診断時年齢の中央値は約12.7歳。脳梗塞と外見では区別がつかない
- 低血糖やアジソン病のように、症状が良くなったり悪くなったりする病気がある。「今は元気」は診断の先送りになる
- 「高齢だから」は様子を見る理由にならない。高齢だからこそ、治療で改善する原因まで見逃してしまう
参考資料
この記事は次の資料を参照して作成しました(2026年9月9日確認)。記載内容は一般的な情報であり、個々の症例の診断・治療に代わるものではありません。判断に迷うときは、自己判断せず動物病院に相談してください。
- Splenic Masses in Dogs|犬の脾臓の腫瘤(American College of Veterinary Surgeons(米国獣医外科専門医学会))
- Hemangiosarcoma in dogs|犬の血管肉腫(コーネル大学獣医学部 リチャード・P・リニー犬健康センター)
- Epileptic Seizures Versus Syncope: Pathophysiology and Clinical Approach|てんかん発作と失神の病態生理と臨床的アプローチ(Veterinary Evidence(RCVS Knowledge))
- 英国の一次診療における犬の前庭疾患:疫学と臨床管理(J Vet Intern Med. 2020, PMID 32776616)(Europe PMC(VetCompass / ロイヤル・ベタリナリー・カレッジ))
- 小脳吻側の虚血性脳梗塞が疑われた犬23頭の神経症状(Acta Vet Scand. 2016, PMID 27267355)(Europe PMC(Acta Veterinaria Scandinavica))
- Islet Cell Tumors in Dogs and Cats|犬と猫の膵島細胞腫瘍(インスリノーマ)(MSD獣医マニュアル(Merck Veterinary Manual))
- Addison Disease (Hypoadrenocorticism) in Animals|アジソン病(副腎皮質機能低下症)(MSD獣医マニュアル(Merck Veterinary Manual))