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犬が交通事故に遭った|外見が無事でも受診が必要な理由と、安全な運び方

交通事故のような鈍的外傷では、初診で「正常・安定している」ように見える犬でも、相当な内部損傷を抱えていることがあります。しかも多くの内部損傷は、受傷から数時間、ときに数日後まで表に出てきません。獣医学の標準的な教科書がそう明記しています。

車と接触した事実があるなら、歩けていても、外傷が見当たらなくても、その日のうちに動物病院へ電話してください。この記事では、現場での安全確保、咬まれずに運ぶ方法、遅れて出てくる損傷の中身、そして事故後に何日どこを見ておけばよいかを順にまとめます。

まず人間の安全を確保してください。ハザードを出し、後続車に気づかせ、暗い時間帯は特に自分が轢かれないようにしてから犬に近づきます。道路上で動けないなら、必要に応じて110番してください。

犬に触れる前に、痛みと恐怖がある犬は飼い主に対してすら咬みつく可能性がずっと高いことを前提にしてください。顔の正面や口の近くに手を出さず、頭に布やタオルをかけて刺激を減らします。

「おしっこが出ているから膀胱は無事」は誤りです。自力で排尿できていることも、膀胱が触れることも、膀胱破裂を否定しません。

心臓が動いている犬に胸部圧迫(心臓マッサージ)をしないでください。特に胸を打った犬では有害です。やるべきことは、安全確保 → 病院へ電話 → 動かし方に注意して最短で搬送です。

まず確認すること

順番が大切です。人の安全 → 犬に近づく前の準備 → 病院へ電話 → 動かすの順で進めてください。犬を先に抱き上げてしまうと、咬傷事故と、脊椎の損傷の悪化という二つの危険が同時に発生します。

  1. 自分と後続車の安全を確保する。ハザード、発炎筒や三角表示板、暗いときは自分の被視認性。道路上の状況によっては110番
  2. 犬に近づく前に、痛みと恐怖がある犬は飼い主でも咬むと前提を置く。顔の正面・口の近くに手を出さない
  3. 遠くから見て分かることを確認する。意識(呼びかけへの反応)/呼吸の様子/出血の場所/どこを打ったか
  4. 動かす前に動物病院へ電話する。今から向かうこと、事故の状況、犬種・体重・年齢、意識と呼吸の状態を伝える
  5. 運ぶための道具を用意する(板、厚めの段ボール、折りたたんだバスタオルや毛布)
  6. 事故の時刻、車と接触した部位、犬が走り去った方向、意識や呼吸が変わった時刻をメモする
  7. 可能なら1分間の呼吸数を数えておく(胸が上下する回数)

犬が走り去ってしまった場合

事故の直後にパニックで走り去る犬は珍しくありません。走れた=無傷、ではありません。内部損傷は遅れて出てきます。

事故現場を中心に探しながら、警察(遺失物)、自治体の動物愛護センター・保健所、周辺の動物病院に連絡してください。見つかったら、その時点で元気そうに見えても受診してください。

すぐ動物病院へ相談すべきサイン

次のどれか一つでも当てはまれば、時間帯にかかわらず動物病院へ電話してください。そして、どれにも当てはまらない場合も、車と接触した事実があれば当日中の受診が必要です。外見と重症度は一致しません。

  • 呼吸が速い・浅い、お腹まで使った努力性の呼吸、口を開けて呼吸している、呼吸のたびに胸とお腹の動きがちぐはぐ
  • 歯ぐきや舌の色が白い・灰色・紫(チアノーゼ)、歯ぐきを押して色が戻るまで2秒以上かかる
  • 意識がぼんやりしている、呼んでも反応が鈍い、けいれん、立てない・起き上がれない
  • 脈が異常に速い/不規則、体が冷たい、ふるえ、虚脱
  • 事故後に一度も排尿していない、尿に血が混じる、排尿しようとして出ない、お腹を触ると強く痛がる
  • お腹が時間とともに膨らんでくる
  • 止まらない出血、骨が見えている(開放骨折)、体表に大きな傷や皮膚が剥がれている
  • 繰り返す嘔吐、よだれ、震え、体を丸めて動かない
  • 皮膚の下に空気が入ったようなプチプチした感触(皮下気腫)
  • 事故当日は元気だったのに、翌日から数日で呼吸が荒くなる/食欲がなくなる/元気がなくなる

この記事の軸|危ないのは「あとから出てくる損傷」

交通事故の犬で怖いのは、その場で見えている傷ではありません。受傷したときには分からず、時間が経ってから形になる損傷です。獣医学の資料で個別に時間が示されているものを並べます。

起きうることいつ表に出てくるか見ておくところ
肺挫傷レントゲンの所見が受傷後12〜24時間まで現れないことがある呼吸の速さ・深さ、努力性の呼吸、歯ぐきの色
外傷後の不整脈受傷時にはなくても、事故から48時間後までに新たに発生しうる脈の速さと規則性、急な虚脱、ふらつき
尿腹(膀胱破裂などによる腹腔内への尿漏出)高カリウム血症が24〜48時間かけて進行する。当初は目立った症状が出ないことがある排尿の有無と量、尿の色、腹囲、元気・食欲
腹腔内出血触診や見た目で分かるには体重1kgあたり約40mLの貯留が必要(循環血液量の半分弱)腹囲より先に、歯ぐきの色・脈の速さ・虚脱に出る
外傷性横隔膜ヘルニア受傷直後の画像で指摘されず、数か月後に咳などの呼吸器症状として現れた報告がある続く咳、運動を嫌がる、呼吸の変化

「病院でレントゲンを撮って異常なしと言われたから、もう安心」とは言えません。初回の画像が正常でも、そのあとの呼吸・元気・食欲・排尿の観察が必要です。

動物病院から入院しての経過観察をすすめられたら、それは上の表のような理由があってのことです。ただしこの記事では、必要な観察時間を一般化した数字は示しません。「24〜72時間は入院観察が必要」といった丸めた目安を見かけることがありますが、その裏づけとなる資料は確認できませんでした。どこをどう打ったかによって必要な観察は変わります。担当の獣医師の判断に従ってください。

今、自宅・現場でできること

ここに書くのは治療ではありません。病院に着くまでに、これ以上悪くしないことと、診察に必要な情報をそろえることが目的です。

  1. 人の安全を確保する。ハザード、後続車への合図、暗い時間帯は自分の被視認性。道路上で動けないなら必要に応じて110番
  2. 犬に近づく前に、顔の正面と口の近くに手を出さないと決める。頭に布やタオルをかけて視覚刺激を減らす
  3. 動かす前に動物病院へ電話する。今から向かうこと、事故の状況、犬種・体重・年齢、意識と呼吸の状態を伝える
  4. 移動が必要なら、板・厚めの段ボール・折りたたんだバスタオルや毛布に体全体を載せ、頭・首・背骨を動かさないようにして水平に運ぶ
  5. 頭は水平かやや高めに保ち、急な揺れを避け、首を圧迫しない
  6. 出血しているところは、ガーゼや清潔なタオルを当てて、手のひらや指でしっかり圧迫する。血が染みても最初に当てたものは外さず、上から重ねて圧迫を続ける
  7. 事故の時刻、接触した部位、意識や呼吸が変わった時刻をメモする。可能なら1分間の呼吸数を数える
  8. 安全に撮れる範囲で、現場と犬の状態を写真に残す
  9. 犬が走り去ってしまった場合は、警察(遺失物)、自治体の動物愛護センター・保健所、周辺の動物病院に連絡する
  10. 夜間・休日なら、かかりつけが閉まっている前提で、近くの夜間・救急動物病院を先に調べて電話する

咬まれないための安全確保|この記事が口輪をすすめない理由

痛みと恐怖のある犬は、飼い主に対してすら咬みつく可能性がずっと高くなります。だからこそ「とりあえず口輪を」と考えたくなりますが、交通事故の犬にはあてはめられません。

獣医学の資料は、胸に外傷のある犬や、パグ・ブルドッグなどの短頭種に口輪をしてはいけないと明記しています。呼吸が苦しそうな犬、顔面に外傷のある犬も同様です。交通事故に遭った犬は胸部外傷や呼吸困難を伴うことが多く、この禁忌にあたる可能性が高いのです。

代わりに次のようにしてください。

  • 顔の正面と口の近くに手を出さない。体に触れるときは、犬の視界に入ってから、横または後ろ寄りから
  • 頭に布やタオルをふわりとかけて視覚刺激を減らす(呼吸を妨げないよう、鼻先は覆わない)
  • 可能なら二人で扱う。一人が声をかけ、一人が体を支える
  • 犬を持ち上げるのではなく、板・段ボール・毛布ごと水平に移動させる
  • 厚手の上着や毛布を手にかぶせて、素手を犬の口の近くに置かないようにする

口輪を使う場面がまったくないわけではありませんが、それは顔面の外傷がなく、呼吸困難もないことが確認できた場合に限られます。事故直後の現場でその判断をするのは難しく、この記事では飼い主向けの手順としてはすすめません。口輪をした犬をひとりにしないことも明記されています。

運び方|首輪とリードで引っ張らない

頭部・頸部・脊椎の外傷が分かっている、または疑われる場合は、これらの部位の動きを最小限にするとされています。支持面として挙げられているのは、平らで硬いもの(板・段ボール・厚手の布)です。

つまり、動けない犬を首輪やリードで引っ張って道路の外へ出すのは、してはいけない動かし方です。抱き上げて体を折り曲げるのも同じです。体全体を平らな面に載せて、水平のまま動かしてください。

大型犬でひとりでは動かせない場合は、無理に動かさず、通報して助けを求めながら病院に電話してください。安全な場所であれば、その場で待つほうがよい場合もあります。

やってはいけないこと

以下は犬を危険にさらすか、受診を遅らせる行為です。ひとつも行わないでください。

  • 「見た目が無事だから」と受診せずに時間を置く。多くの内部損傷は受傷から数時間〜数日後まで表に出ません
  • 首輪・リード・前足を引っ張って道路上を引きずる/抱きかかえて体を折り曲げる。頸部と脊椎の損傷を悪化させる危険があります
  • 呼吸が苦しそうな犬、胸を打った犬、短頭種に口輪をする。してはいけないと明記されています。口輪をした犬をひとりにするのも避けてください
  • 人用の鎮痛薬(ロキソプロフェン、イブプロフェン、アセトアミノフェンなど)や家にある薬を与える。動物病院に着く前に鎮痛薬を与えてはいけないと明記されており、人用の薬は犬に重い中毒を起こす危険があります
  • 飛び出した内臓や刺さった異物を、自分で押し戻す・引き抜く(さらに出血と汚染を広げる危険があります)
  • ひもやゴム、包帯で四肢をきつく縛る(緊縛止血)。血流が止まって組織が壊死する危険があります。出血は、当てたものの上から手で圧迫を続けてください
  • 口の中に手や指を入れて舌を引っ張る、異物を探る(咬傷と、気道のさらなる悪化を招きます)
  • 意識がはっきりしない犬に、水や食べ物を与える
  • 骨折した足を自分でまっすぐに直す、添え木を強く巻く
  • 心臓が動いている犬に胸部圧迫(心臓マッサージ)をする。特に胸を打った犬では有害です
  • 現場でCPRを続けて、動物病院への搬送を遅らせる
  • 「おしっこが出ているから膀胱は大丈夫」と自己判断する(次の節で説明します)
  • 運転していた場合に、その場を離れる

「おしっこが出ているから膀胱は無事」は誤りです

尿腹(膀胱破裂などによって腹腔内へ尿が漏れる状態)は、犬猫ともに鈍的外傷・交通事故が最も多い原因とされています。そして、獣医学の専門誌のレビューには次のように明記されています。自力で排尿できていることも、身体検査で膀胱が触知できることも、尿腹を否定しない。

破れた膀胱でも尿が出ることはありますし、漏れた尿が腹腔に溜まっていても膀胱そのものは触れます。「出ているから平気」という判断だけは、してはいけません。

怖いのは進み方です。尿腹に伴う高カリウム血症は24〜48時間かけて進行し、外傷の程度と尿漏出の続いた時間によっては、当初は目立った症状が出ないことがあります。そのため、事故のあとは排尿したかどうか、尿の色、量を記録して、病院に伝えてください。

手術を行った場合の予後は良好とされ、犬の79%が退院まで生存したという報告が引用されています。早く見つけて対処することに意味があるということです。

心肺蘇生(CPR)をすべきかどうか

「ぐったりしているから、とりあえず心臓マッサージ」は、この場面で最も避けたい判断のひとつです。

CPRの対象は、心肺停止した動物だけです。心肺停止の認識は「揺すって呼びかけ、反応を見る」で行い、反応がなければ直ちに胸部圧迫を始める、というのが獣医療の手順です。逆に言えば、反応がある犬、心臓が動いている犬に胸部圧迫を行うことは適切ではなく、胸部外傷のある犬では有害です。

そのうえで、予後の数字も知っておいてください。CPRを行った小動物のうち退院まで生存できるのは犬で5〜7%とされています。搬送を遅らせてまで現場で続けるべきものではありません。

獣医療のCPRガイドラインは米国獣医救急集中治療専門医協会(ACVECC)のRECOVERが作成しており、2012年の初版から2024年に更新されています。飼い主やペット関連職向けの受講コースも用意されていますが、訓練を受けていない飼い主がその場でCPRを試みることが推奨されているわけではありません。

現場でやるべきことは変わりません。安全確保 → 動物病院へ電話 → 動かし方に注意して最短で搬送です。

動物病院へ伝える情報

  • 事故が起きた時刻と場所、そこから経過した時間
  • 何にどのくらいの速度でぶつかったか(車・バイク・自転車、走行中か停車中か)、体のどこを打ったか、轢かれたのか弾かれたのか
  • 事故後に犬が自分で動いたか、走り去ったか、どのくらいの距離を移動したか
  • 犬種・年齢・体重・避妊去勢の有無
  • 意識の状態(呼びかけへの反応)、呼吸の様子と1分間の呼吸数、歯ぐきの色
  • けいれん・嘔吐・失禁の有無と、その時刻
  • 事故後に排尿したかどうか、尿の色
  • 出血の場所と量、外から見える傷の場所
  • 持病、常用薬、サプリメント、直近のワクチン歴
  • 最後に食べた時刻(麻酔や手術の判断に必要になります)
  • 安全に撮れた範囲での、現場や犬の状態の写真
  • 警察に届け出たか、相手方の連絡先を控えたか

事故のあとの手続きについて

e-Gov法令検索で公開されている道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第七十二条第一項は、交通事故があったときは、運転者等は直ちに運転を停止して負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならないと定めています。

さらに同項は、当該交通事故が発生した日時および場所、死傷者の数と負傷者の負傷の程度、損壊した物とその損壊の程度、事故に係る車両等の積載物、事故について講じた措置を警察官に報告しなければならないとしています。同項後段の報告義務については、罰則として第百十九条第一項第十七号が引かれています。

この記事で書けるのは、ここまでです。個別の事案がどう評価されるかは条文だけでは決まりません。「動物は法律上こう扱われるからこの事故はこの区分になる」といった当てはめや、治療費の請求可否・過失割合については、条文の直接の記載ではないため、この記事では断定しません。警察の指示に従い、保険会社や専門家に相談してください。

飼い主が分からない犬を轢いてしまった場合も、動物病院へ運ぶかどうかを含めて警察に相談してください。なお、道路の穴や落下物といった道路そのものの異状は、国土交通省の道路緊急ダイヤル「#9910」(24時間・通話無料)が窓口です。事故そのものの通報先は110番です。

退院後・帰宅後に見ておくこと

受診したあとが終わりではありません。前に挙げた個別の時間をそのまま観察の目安にしてください。

呼吸の速さと様子(肺挫傷のレントゲン所見は12〜24時間遅れることがあります)、脈の速さと規則性、急なふらつきや虚脱(不整脈は48時間後までに新たに出ることがあります)、排尿の有無と尿の色、腹囲(尿腹に伴う高カリウム血症は24〜48時間かけて進行します)、そして元気と食欲。この4つを、数日は毎日確認してください。

1分間の呼吸数を、落ち着いているときに毎日数えて記録しておくと、変化に気づきやすくなります。少しでも変化があれば、その日のうちに再受診してください。

外傷性横隔膜ヘルニアのように、数か月後に咳や呼吸器症状として現れた報告もあります。事故に遭ったことを、その後の診察でも必ず伝えてください。

夜間・休日でかかりつけの動物病院が閉まっている場合

夜間や休診日にかかりつけの病院が閉まっているときは、近くの夜間・救急動物病院を確認してください。向かう前に必ず電話をしてください。夜間は予約制のところや、受け入れられる状態かどうかがその時々で変わるところがあります。

電話では、「何が起きたか」「いつからか」「犬の年齢と体重」「今の様子」を伝えてください。その場でできることを教えてもらえたり、より適した病院を案内してもらえることがあります。

夜間の事故では、まず自分が二次事故に遭わないことを優先してください。ハザードと被視認性を確保してから犬に近づきます。

電話の最初に「車と接触した」と伝えてください。意識と呼吸の状態を続けて伝えると、受け入れの判断が早くなります。

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よくある質問

見た目に傷がなく、普通に歩いています。それでも病院に行くべきですか?

行ってください。獣医学の教科書は、初期評価で正常・安定して見える患者でも相当な内部損傷を抱えていることがあり、多くの内部損傷は受傷から数時間、ときに数日後まで明らかにならないと明記しています。

具体的には、肺挫傷のレントゲン所見が12〜24時間遅れることがあり、不整脈は事故から48時間後までに新たに出ることがあります。「歩けている」は安全の根拠になりません。

その日のうちに受診し、事故に遭った状況を詳しく伝えてください。

痛がって咬もうとします。どうやって運べばいいですか?

出発点は「痛みと恐怖のある犬は、飼い主に対してすら咬みつく可能性がずっと高い」です。顔の正面や口の近くに手を出さず、頭に布やタオルをかけて刺激を減らしてください。

この記事は口輪をすすめません。胸に外傷のある犬や短頭種、呼吸が苦しそうな犬には口輪をしてはいけないと明記されており、交通事故の犬はこれにあたる可能性が高いためです。

運ぶときは、板・厚紙・折りたたんだバスタオルや毛布を担架にして体全体を載せ、頭・首・背骨を動かさないように水平に運びます。首輪やリードで引っ張らないでください。可能なら二人で行い、動かす前に病院へ電話してください。

その場で心臓マッサージをしたほうがいいですか?

心肺停止(呼びかけや刺激にまったく反応せず、呼吸がない)を確認した場合以外は、行わないでください。心臓が動いている犬、特に胸を打った犬への胸部圧迫は有害です。

CPRを行っても退院まで生存できるのは犬で5〜7%とされており、搬送を遅らせてまで現場で続けるべきものではありません。

やるべきことは、安全確保 → 動物病院へ電話 → 動かし方に注意して最短で搬送、の順です。

事故のあと、何日くらい注意して見ておけばいいですか?

個別の根拠がある時間を並べると、肺挫傷のレントゲン所見は12〜24時間後に現れることがあり、不整脈は48時間後までに新たに出ることがあり、尿腹に伴う高カリウム血症は24〜48時間かけて進行します。米国の獣医師会系財団の飼い主向け解説は、車に轢かれたペットの最低24時間の入院観察をすすめています。

退院後も、呼吸数・脈・排尿と尿の色・元気と食欲を数日は毎日確認し、変化があればその日のうちに再受診してください。

外傷性横隔膜ヘルニアのように数か月後に咳として現れた報告もあるため、その後の診察でも事故のことを伝えてください。

おしっこは出ています。膀胱は無事ということですか?

そうは言えません。獣医学の専門誌のレビューは、自力排尿ができていることも、膀胱が触知できることも、尿腹を否定しないと明記しています。

尿腹の最も多い原因は鈍的外傷・交通事故です。高カリウム血症は24〜48時間かけて進行するため、当初は目立った症状が出ないこともあります。

事故後の排尿の有無、尿の色と量を記録して、病院に伝えてください。

驚いて走り去ってしまいました。どうすればいいですか?

事故の直後に走り去る犬は珍しくありません。走れた=無傷ではありません。

事故現場を中心に探しながら、警察(遺失物)、自治体の動物愛護センター・保健所、周辺の動物病院に連絡してください。

見つかったら、その時点で元気そうでも受診してください。内部損傷は遅れて出てきます。

車を運転していて犬を轢いてしまいました。何をすればいいですか?

道路交通法第七十二条第一項は、交通事故があったときは直ちに運転を停止し、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じることを求めています。

さらに、事故の日時と場所、死傷者の数と負傷の程度、損壊した物とその損壊の程度などを警察官に報告しなければならないと定めており、同項後段の報告義務については罰則として第百十九条第一項第十七号が引かれています。

個別の事案がどう評価されるかは条文だけでは決まりません。警察の指示に従い、保険会社に連絡してください。飼い主が分からない犬でも、動物病院へ運ぶかどうかを含めて警察に相談してください。

夜中に事故に遭いました。朝まで待てますか?

待てる材料がありません。呼吸・意識・出血・排尿に異常があれば、夜間・救急動物病院へ向かってください。

異常が見当たらない場合も、内部損傷は数時間から数日後に表に出てきます。まず電話で相談してください。

かかりつけが閉まっている前提で、近くの夜間・救急動物病院を先に調べて電話するのが早道です。

まとめ

  • 初診で正常・安定に見えても、相当な内部損傷を抱えていることがある。多くは受傷から数時間〜数日後まで表に出ない
  • 肺挫傷はレントゲン所見が12〜24時間遅れることがあり、外傷後の不整脈は48時間後までに新たに出ることがある
  • 尿腹に伴う高カリウム血症は24〜48時間かけて進行する。「おしっこが出ているから膀胱は無事」は誤り
  • 腹腔内出血は、外から分かるには体重1kgあたり約40mLの貯留が必要。腹囲より歯ぐきの色・脈・虚脱のほうが先に出る
  • 痛みと恐怖のある犬は飼い主でも咬む。口輪ではなく、顔の正面に手を出さない・頭に布をかける・板や毛布ごと水平に運ぶ、で安全を確保する
  • 心臓が動いている犬への胸部圧迫は有害。CPRは心肺停止を確認した場合だけで、搬送を遅らせてまで現場で続けるものではない
  • 道路交通法第七十二条は、運転の停止・救護・危険防止措置と、警察官への報告を定めている。個別の法的評価は警察と専門家に相談する

参考資料

この記事は次の資料を参照して作成しました(2026年9月9日確認)。記載内容は一般的な情報であり、個々の症例の診断・治療に代わるものではありません。判断に迷うときは、自己判断せず動物病院に相談してください。

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