猫がネギ・玉ねぎを食べた|症状が出るまでの時間と、量では安全を判断できない理由
玉ねぎ、長ねぎ、にんにく、にら、あさつき、らっきょうなどのネギ属(Allium)は、猫の赤血球を壊す中毒を起こします。MSD獣医マニュアルは、猫をネギ属に対して最も感受性の高い動物種としています。加熱しても、乾燥させても、粉末にしても毒性はなくなりません。料理の具だけでなく、汁や粉末の調味料も対象になります。
この中毒でいちばん危険なのは、食べた直後は元気に見えることです。赤血球の変化は24時間以内に始まって約72時間でピークになり、赤血球が壊れる溶血は通常3〜5日後に起こると報告されています。つまり「食べた直後に元気だから大丈夫」という判断が、この中毒では最も危険な誤りになります。
症状がなくても、食べた量が少なくても、今すぐ動物病院に電話してください。この記事では、電話の前に手元へそろえること、時間の経ち方、伝えるべき情報、そして自宅でやってはいけないことを順にまとめます。
今、元気なことは安全の根拠になりません。ネギ属中毒では、赤血球の酸化障害が24時間以内に始まり、約72時間でピークになります。貧血としての症状が見えてくるのは、多くの場合その後(通常3〜5日後)です。
家で吐かせようとしないでください。猫ではオキシドール(過酸化水素水)で吐かせる効果が乏しく、飼い主が飲ませて胃粘膜の広い範囲に潰瘍ができ、安楽死に至った症例報告があります。吐かせる処置は動物病院が薬を使って行うものです。
「これだけの量なら平気」という線は引けません。報告されている数値はありますが、それを下回れば安全という意味ではありません。量が分からないこと自体が、受診する理由になります。
30秒で判断|どの速さで動くか
| 動き方 | 当てはまるもの |
|---|---|
| 今すぐ受診 電話しながら向かう |
|
| 早めに相談 その日のうちに電話する |
|
これは受診の優先度を決めるための目安で、病名を判断するためのものではありません。どれにも当てはまらなくても、いつもと違うと感じたら電話して構いません。迷っている時間そのものが、動物にとっては待ち時間になります。
この中毒は症状が遅れて出るため、受診の優先度は「今どれだけ元気に見えるか」では決まりません。何を、どんな形で、いつ口にした可能性があるかで決まります。
まず確認すること
動物病院に電話する前に、次の6つを手元にそろえてください。すべて分からなくても構いません。分からないこと自体が重要な情報なので、そのまま伝えてください。
- 何を口にしたか(食材名・料理名・商品名。判断できなければ現物とパッケージ、原材料表示)
- どんな形だったか(生・加熱済み・乾燥・粉末・汁やスープ。濃縮された形かどうかで扱いが変わります)
- どのくらいの量か(皿の何分の一、なめた回数、減っている量。分からなければ「不明」で構いません)
- いつか(分からなければ「最後に猫が普段どおりだった時刻」と「異変に気づいた時刻」)
- 猫の体重と年齢、持病、飲んでいる薬・サプリメント、普段のフード
- 今の症状(嘔吐・下痢の回数、食欲、元気、呼吸の様子、歯茎の色、尿の色と最後の排尿時刻)
「ネギ属」に入るもの、隠れているもの
危険なのは玉ねぎと長ねぎだけではありません。ネギ属(Allium)全体が対象で、MSD獣医マニュアルはにんにく、玉ねぎ、あさつき類、リーキを挙げ、にんにくは玉ねぎの3〜5倍毒性が強いとしています。
見落としが多いのは、ネギ属が形として見えないものです。次の表は、確認しておきたい食品の例です。
| 形 | 例 | 注意すること |
|---|---|---|
| 生の食材 | 玉ねぎ、長ねぎ、青ねぎ、にんにく、にら、あさつき、わけぎ、らっきょう、リーキ | 皮や切れ端、生ゴミの中のものも対象になります |
| 加熱したもの | 炒めた玉ねぎ、焼いたにんにく、煮込んだねぎ | 加熱しても毒性は消えません |
| 粉末・乾燥品 | オニオンパウダー、ガーリックパウダー、乾燥フレーク、乾燥スープの素、ブイヨン、ふりかけ、調味料 | 濃縮されていて、少量でも実質的な摂取量が大きくなります |
| ネギ属が入った料理 | ハンバーグ、餃子、カレー、シチュー、肉じゃが、すき焼き、ミートソース、惣菜、加工肉、スナック菓子 | 原材料表示を見ないと入っているかどうか分からないものがあります |
| 汁・スープ | 味噌汁、鍋の汁、煮汁、スープ | 毒性のもとになる硫黄化合物は水に溶け出します。「具は食べていない」は安全の根拠になりません |
かつおだしそのものはネギ属ではありません。問題になるのは、そこに入れたねぎ・玉ねぎ・にんにくの成分です。「だしだから安全」「和食だから安全」という切り分けはできません。
食べられた物やパッケージは捨てないでください。何がどれだけ入っていたかを、あとから確かめられなくなります。
刻む・煮る・乾かす、どれをしても毒性は残る
毒性のもとは、ネギ属に含まれる有機硫黄化合物です。刻む・切る・噛む・加熱するといった組織の破壊そのものが、この化合物を反応性の高い酸化性物質に変えます。さらに消化管内の細菌の働きも加わります。つまり「火を通したから壊れる」という性質のものではありません。
MSD獣医マニュアルは、犬と猫が生・加熱済み・乾燥・顆粒状のいずれの玉ねぎ・にんにくでも中毒を起こしていると記載し、猫と犬の中毒は乾燥フレーク、粉末、乾燥オニオンスープの素といった濃縮された形で最も多いとしています。査読論文のレビューも「加熱、乾燥、加工はネギ属の毒性作用を消さない」と明記しています。
実際の症例報告には、オニオンスフレ、バターで炒めた玉ねぎ、焼いたにんにく、にらとにんにく入りの中華まんじゅうによるものがあります。調理済みの人の食べ物は、どれもネギ属が入っている可能性のあるものとして扱ってください。
すぐ動物病院へ相談すべきサイン
次のどれか一つでも当てはまれば、症状の有無にかかわらず動物病院へ電話してください。
- ネギ属や、それを含む料理・汁・粉末を口にした可能性がある(これ自体が最大の受診理由です)
- 残っていた料理が減っている、鍋やお椀の中身をなめた跡がある
- 生ゴミの玉ねぎの皮や切れ端がかじられている
- オニオンパウダー・ガーリックパウダー・乾燥スープの素・ブイヨンの袋が破られている
- 吐く息が玉ねぎやにんにくの匂いがする
- 嘔吐、下痢、腹痛のそぶり、食欲がない、ぐったりしている
- 歯茎・舌・耳の内側・鼻先が白っぽい、または黄色い(貧血・黄疸のサイン)
- 呼吸が速い・浅い、少し動いただけで息が上がる、じっとして動かない
- 尿が赤い・赤褐色・コーラのような色をしている
- 尿がまったく出ていない(尿道閉塞という別の緊急事態の可能性があります)
- ふらつく、倒れる、立てない
- いつ食べたか分からない、留守中に荒らされていた(経過時間が不明であること自体が受診の理由になります)
- 多頭飼育で、どの猫が食べたか分からない(全頭が対象になります)
- 糖尿病・甲状腺機能亢進症・肝疾患・リンパ腫などの持病がある
症状はこう進む|食べた直後に元気なのが、この中毒では普通
ネギ属中毒は、食べた瞬間に何かが起きる中毒ではありません。MSD獣医マニュアルは、酸化障害・ハインツ小体形成・メトヘモグロビン血症が24時間以内に始まり、約72時間でピークに達するとし、溶血は通常、曝露から3〜5日後に起こるとしています。そして「臨床症状は、相当量の溶血が起きるまで通常は現れない。多くは曝露から数日後である」と述べています。
赤血球の中では、酸化されて変性したヘモグロビンが析出・凝集し、細胞膜に結合します。これがハインツ小体です。ハインツ小体を持った赤血球はもろくなり、脾臓などで壊されて貧血になります。同時にヘムの鉄が酸化されてメトヘモグロビンとなり、酸素を運ぶ能力そのものも落ちていきます。この過程は、外から見ても分かりません。
| 食べてからの時間 | 体の中で起きていること/見えること |
|---|---|
| 直後〜数時間 | 嘔吐、下痢、腹痛、食欲低下、元気消失が出ることがある。何も出ないことも多い。摂取して間もない時期は、吐く息が玉ねぎ・にんにくの匂いがすることがある |
| 24時間以内 | ハインツ小体とメトヘモグロビンが増え始める。見た目には分からず、血液検査で分かる段階 |
| 約72時間 | ハインツ小体とメトヘモグロビンがピークに達する |
| 通常3〜5日後 | 溶血が起こる。粘膜が白い・黄色い、呼吸が速い、脱力、運動を嫌がる、赤褐色の尿、虚脱といった貧血の症状として初めて見えてくる |
赤褐色の尿は「血尿」ではなく、ヘモグロビン尿のことが多い
ネギ属中毒で出る赤色〜褐色の尿は、多くの場合ヘモグロビン尿です。壊れた赤血球から漏れ出たヘモグロビンが尿に出た色で、膀胱から血が出ている血尿とは意味が違います。全身の赤血球が壊れている徴候だと考えてください。
MSD獣医マニュアルは、溶血のあとにヘモグロビン尿から二次的な腎障害(ヘモグロビン尿性ネフローシス)が起こり得るとし、治療で腎臓を守るために静脈輸液を行うとしています。色がついた尿は、腎臓への負担が始まっているかもしれない徴候です。
見た目は同じ「赤い尿」でも、意味が違います。ネギ属を口にした心当たりがあるなら、そのことを最初に伝えてください。なお、尿が「出ていない」場合は尿道閉塞という別の緊急事態で、これも待てるものではありません。
この時間の幅には個体差があります。大量に食べた場合は1日以内に症状が出ることもあり、逆に数日遅れて出るほうが一般的だと査読論文のレビューは述べています。「何日経てば安心」という区切りを自分で決めないでください。いつまで何を見ればよいかは、受診したうえで獣医師に確認してください。
早く受診する意味は、この時間差にあります。症状が出ていない時間帯は、消化管に残ったものを減らし、点滴で腎臓を守り、血液の変化を先回りして監視できる時間帯でもあります。
「どれくらい食べたら危険か」に、安全なラインはない
この質問には数値の報告があります。ただし、その数値は「これ以下なら安全」という意味ではありません。先に結論を書きます。量の少なさは、受診しない理由になりません。
MSD獣医マニュアルは「猫では、加熱した玉ねぎを小さじ1杯未満、あるいは生の玉ねぎ5g/kgを食べて中毒が報告されている。犬では生の玉ねぎ15〜30g/kgの摂取で臨床症状が出ている」と記載しています。
| 報告されている中毒量 | 内容 |
|---|---|
| 猫 | 生の玉ねぎ 5g/kg、または加熱した玉ねぎ小さじ1杯未満 |
| 犬 | 生の玉ねぎ 15〜30g/kg |
ここで見落としてはいけないのは、同じ段落に並んでいる猫の2つの数値が、大きく食い違っていることです。体重4kgの猫なら5g/kgは生の玉ねぎ20g程度(中くらいの玉ねぎの1/8〜1/10)ですが、「加熱した玉ねぎ小さじ1杯未満」はおよそ5g前後にあたり、1桁近い開きがあります。
さらに、5g/kgという数値の原典は査読誌ではなく獣医向けの商業誌で、原著を確認できていません。この記事では、これを安全の線引きには使いません。
量が同じでも、形が違えば実際の摂取量は変わります。粉末や乾燥品は濃縮されているため、少量でも中身は多くなります。にんにくは玉ねぎの3〜5倍毒性が強いとされています。
実際、低い濃度でも変化は起きています。1998年に発表された猫42頭の研究では、オニオンパウダー入りのベビーフードを与えられた猫でハインツ小体の割合がピーク時に33〜53%に達し、用量反応試験ではオニオンパウダー0.3%を含む食事でもハインツ小体の形成に差が出ました。2.5%では赤血球容積の有意な低下も見られています。
したがって、電話で伝えるべきは「危険な量を超えたかどうか」ではなく、何を、どんな形で、どのくらい、いつという事実です。判断はそこから獣医師が行います。
なぜ猫はネギ属にここまで弱いのか
MSD獣医マニュアルは「猫が最も感受性の高い動物種で、次いで犬」としています。理由は、猫の赤血球そのものの性質にあります。
カンザス州立大学獣医診断検査室の解説によれば、猫のヘモグロビンは酸化されやすいスルフヒドリル基を8〜10個持ち、他の多くの動物種は2個しか持ちません。さらに猫のヘモグロビンは通常の四量体から二量体へ解離しやすく、二量体は自動酸化を起こしやすい性質があります。加えて猫の脾臓は非洞様(non-sinusoidal)で、ハインツ小体を取り除く効率が他の種より低いとされています。
この3つが重なるため、健康な猫の血液にも、ごく小さなハインツ小体が赤血球の5〜10%程度まで日常的に見られます。もともと酸化ストレスに対する余力が小さいところへ、ネギ属の酸化性物質が加わることになります。
1976年の比較実験でも、ヒト・ウマ・ネコ・イヌのヘモグロビンを酸化させた結果、肉食獣のヘモグロビンはウマやヒトより酸化されやすく、なかでもネコのヘモグロビンが最も酸化的変性を受けやすかったと報告されています。査読論文のレビューは、この結果を踏まえて「猫の正常なヘモグロビンは他種のヘモグロビンよりおよそ2〜3倍酸化障害を受けやすい」とまとめています。
同じ量でも、猫によって重症度が変わる
査読論文のレビューは、猫でハインツ小体形成と関連する病態として糖尿病(特にケトアシドーシスがある場合)、肝リピドーシス、甲状腺機能亢進症、リンパ腫などの腫瘍を挙げています。すでに赤血球が酸化ストレスにさらされている猫では、障害が上乗せされ得るということです。
同じレビューは、プロピレングリコールを含む半生タイプのフードは猫では避けるべきだとし、赤血球の酸化障害を起こす、あるいは酸化への防御を弱める薬剤・成分と重なると感受性が上がるとしています。普段与えているフードの種類も、電話のときに伝える価値があります。
1998年の研究も、酸化ストレスを伴う病気のある猫では障害が上乗せされ得ると述べています。持病のある猫、高齢の猫、子猫では、同じ量でもより慎重に扱う理由があります。
「うちの犬は平気だった」は、猫には当てはまらない
報告されている中毒量は、猫が生の玉ねぎ5g/kg、犬が15〜30g/kgと大きく違います。同じ家の犬が同じものを食べて何ともなかったという経験は、猫の安全の根拠になりません。
英国の獣医毒物情報サービスが1994〜2008年に記録したネギ属中毒は、犬69例に対して猫4例でした。ただし件数が少ないことは「猫では軽い」という意味ではありません。猫は犬ほど拾い食いをしないという習性の差が反映されていると考えられます。この猫4例の内訳は、消化器症状と元気消失・多飲が出た例、貧血と黄疸が出た例、無治療で無症状のまま経過した例、そして胸腔・腹腔内の出血で死亡した例で、幅がありました。
今、自宅でできること
ここに書くのは治療ではありません。これ以上悪くしないことと、診察に必要な情報をそろえることが目的です。
- 動物病院へ電話する。最初に「ネギ属(玉ねぎ・ねぎ・にんにくなど)を食べたかもしれない」と伝えてください。夜間・休診日なら、このあとの案内を見てください
- 残っている料理・食材・粉末をすべて猫の届かない場所へ片づける(追加の摂取を止めます)
- 食べられた物の現物、パッケージ、原材料表示を確保する。捨てないでください
- 食べ散らかされた現場と、減った量が分かるものを写真に撮る
- 食べたと思われる時刻、最後に猫が普段どおりだった時刻をメモする
- 食べた量を、分かる範囲で言葉にする(「玉ねぎ入りハンバーグの3分の1」「味噌汁を数口」など。分からなければ「不明」で構いません)
- 猫の体重、年齢、持病、飲んでいる薬・サプリメント、普段のフードを書き出す
- 上唇をそっとめくって歯茎の色を見る。嫌がったらすぐやめてください。押さえつけないこと。可能なら写真に撮って病院で見せると確実です
- トイレの砂を新しくしておき、色のついた尿が出たらそのまま写真に撮る(システムトイレならシートを保存してください)
- 嘔吐した場合は、吐いた物の写真を撮る(可能なら袋に入れて持参してください)
- キャリーを準備し、移動中の安全を確保する
- 受診後は、指示された期間、毎日元気・食欲・呼吸・歯茎の色・尿の色を記録する(症状は数日遅れて出るためです)
やってはいけないこと
以下は猫を危険にさらすか、受診を遅らせる行為です。ひとつも行わないでください。
- オキシドール(過酸化水素水)や食塩水を飲ませて吐かせる。猫では吐かせる効果が乏しいうえ、出血性の胃炎を起こしやすく、飼い主が飲ませて胃粘膜の広い範囲に潰瘍ができ、安楽死に至った症例報告があります
- 指や棒を口や喉に入れて吐かせようとする(猫にも人にも危険で、効果はありません)
- 牛乳・水・油を大量に飲ませる(希釈や中和にはならず、誤嚥の危険があります)
- 活性炭やサプリメント(ビタミンC、ビタミンEなど)を自己判断で与える。抗酸化剤は猫のオニオンパウダー中毒に対して最小限の効果しかなかったと報告されています
- 人用の薬(胃薬・吐き気止め・解熱鎮痛薬など)を与える
- 症状が出ていないことを理由に、受診を翌日まで先延ばしにする
- 「少しなめただけ」「火が通っていた」「具は入っていなかった」と自分で判断して受診をやめる
- 食べた物やパッケージを捨ててしまう(何がどれだけ入っていたか確認できなくなります)
- 数日経って元気だからと、受診や再診をやめる(溶血が起こるのは通常3〜5日後です)
- 多頭飼育で「食べたのはこの子だけだろう」と決めつけて、他の猫を受診させない
- 猫に人の料理を取り分ける習慣を続ける。調理台やテーブルに猫が上がれる状態のままにする
かつては「家庭でオキシドールを使って吐かせる」という方法が紹介されることがありました。現在は推奨されません。猫では効きにくく、胃を傷つける危険のほうが上回るためです。MSD獣医マニュアルのネギ属中毒の項でも、猫に挙げられている催吐薬は獣医師が注射で使う薬剤だけです。
動物病院へ伝える情報
電話でも診察でも、聞かれるのはほぼ次の内容です。書き出しておくと、パニックのなかでも落ち着いて話せます。
- 何を食べたか(食材名・料理名・商品名。ネギ属が入っているか判断できない場合は現物とパッケージ・原材料表示)
- 生か加熱済みか、粉末・乾燥品か、汁やスープか
- 食べたおおよその量(重さ、個数、皿の何分の一、なめた回数など。分からなければ「不明」)
- 食べたと考えられる時刻。分からない場合は「最後に猫が普段どおりだった時刻」と「異変に気づいた時刻」
- 猫の体重(治療の計算に必要です)、年齢、避妊去勢の有無
- 現在の症状と、出始めた時刻(嘔吐・下痢の回数、食欲、元気、呼吸の様子、歯茎の色、尿の色と最後の排尿)
- 吐いた物の写真または現物
- 持病(特に糖尿病、甲状腺機能亢進症、肝疾患、リンパ腫など)と、飲んでいる薬・サプリメント
- 普段のフードの種類(半生タイプかどうか)
- すでに家庭で何かを飲ませてしまった場合は、正直に伝える(治療の判断が変わります)
- 多頭飼育かどうか、他の猫も食べた可能性があるか
- 過去にも同じような誤食があったか
動物病院ではどんな治療をするのか|「解毒剤」はありません
国内の一部のサイトには「たまねぎ中毒には解毒剤の投与が不可欠」といった記述がありますが、これは正確ではありません。MSD獣医マニュアルと査読論文のレビューはいずれも、ネギ属中毒に特異的な解毒薬は存在しないとしています。
では病院で何をするのか。摂取から間もなければ、まず消化管に残ったものを減らす処置(動物病院で薬を使って行う催吐や活性炭の投与)が検討されます。そのうえで、静脈からの点滴でヘモグロビン尿による腎臓の障害を防ぎ、貧血や酸素を運ぶ力の低下が進めば酸素の投与や輸血で支えます。
そして、数日にわたって血液の変化(ハインツ小体の割合、赤血球容積、メトヘモグロビン)を追いかけます。1回の血液検査が正常でも、それは「今の時点では変化が出ていない」という意味にしかなりません。指示された再診には行ってください。
抗酸化剤(アスコルビン酸ナトリウム、ビタミンE、アセチルシステイン)については、猫のオニオンパウダー中毒に対して最小限の防御効果しかなかったと報告されています。自己判断でサプリメントを与える意味はありません。
解毒薬がないからこそ、早く受診することの価値が大きくなります。症状が出る前であれば、消化管の除染ができ、腎臓を守る点滴を先に始められ、貧血が進む前から監視ができます。時間が経っていても、受診する意味がなくなるわけではありません。「もう遅いかもしれない」と自分で結論を出さず、まず電話してください。
夜間・休日でかかりつけの動物病院が閉まっている場合
夜間や休診日にかかりつけの病院が閉まっているときは、近くの夜間・救急動物病院を確認してください。向かう前に必ず電話をしてください。夜間は予約制のところや、受け入れられる状態かどうかがその時々で変わるところがあります。
電話では、「何が起きたか」「いつからか」「猫の年齢と体重」「今の様子」を伝えてください。その場でできることを教えてもらえたり、より適した病院を案内してもらえることがあります。
- 全国の夜間・救急動物病院まとめ(都道府県・市区別)
- 東京23区 都心3区(千代田・中央・港)の夜間・救急動物病院
- 横浜市の夜間・救急動物病院
- 大阪市の夜間・救急動物病院
- 名古屋市の夜間・救急動物病院
- 札幌市の夜間・救急動物病院
- 福岡市の夜間・救急動物病院
- 猫の夜間救急に行くべきか迷った時の判断チェックリスト
- 夜間救急動物病院に連れて行くべき症状の判断基準(犬猫共通)
ネギ属を食べたかもしれない場合は、電話の最初に「ねぎ・玉ねぎの中毒の疑い」と伝えてください。そのひと言で、受け入れの可否や必要な準備の判断が早くなります。食べた物とパッケージを持って行くことも、あわせて伝えてください。
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よくある質問
玉ねぎ入りのハンバーグを一口食べただけです。受診は必要ですか?
電話してください。猫では「加熱した玉ねぎを小さじ1杯未満」で中毒が報告されています。一口の量が中毒量を超えているかどうかを、家庭で判断する手立てはありません。
そのうえで、この中毒は症状が遅れて出ます。赤血球の変化は24時間以内に始まり、貧血の症状が見えるのは通常3〜5日後です。今日元気であることは、判断材料になりません。
食べた量が分からなくても構いません。残りの料理とパッケージを手元に置いて、電話するところから始めてください。
火を通してあれば毒性は消えませんか?
消えません。MSD獣医マニュアルは、生・加熱済み・乾燥・顆粒状のいずれでも犬猫が中毒を起こしていると記載しています。
むしろ乾燥フレーク、オニオンパウダー、乾燥スープの素のような濃縮された形が最も危険とされています。刻む・切る・噛む・加熱するといった組織の破壊そのものが、毒性のもとになる硫黄化合物を放出させます。
具は食べていなくて、味噌汁やスープの汁をなめただけです。
曝露として扱い、動物病院に相談してください。毒性のもとになる有機硫黄化合物は水に溶け出します。査読論文のレビューは、絞り汁やネギ属を含む調理済み食品も中毒源になり得るとしています。
ただし「汁を一口なめたら中毒になる」と決まっているわけでもありません。汁だけの曝露量と発症の関係を調べた研究は確認できませんでした。だからこそ、量と時刻をメモして電話し、判断は獣医師に任せてください。
なお、かつおだしそのものはネギ属ではありません。問題になるのは、そこに入っているねぎ・玉ねぎ・にんにくの成分です。
いつ症状が出ますか?何日見ていればよいですか?
ハインツ小体とメトヘモグロビンは24時間以内に増え始め、約72時間でピークになります。溶血は通常、曝露から3〜5日後に起こり、症状が見えるのはその頃です。
大量に食べた場合は1日以内に症状が出ることもあります。幅があるため、「何日で安心」という区切りは自己判断しないでください。いつまで何を見るかは、受診したうえで獣医師に確認してください。
自宅で毎日見るのは、元気・食欲・呼吸の速さ・歯茎の色・尿の色です。
尿が赤褐色になりました。血尿ですか?
ネギ属中毒で出る赤色〜褐色の尿は、多くの場合ヘモグロビン尿です。壊れた赤血球から出たヘモグロビンが尿に漏れた色で、膀胱炎の血尿とは意味が違います。
全身の赤血球が壊れている徴候であり、腎臓の障害にもつながり得ます。すぐに受診してください。可能なら尿の色が分かる写真を撮っておいてください。
尿が「出ていない」場合は尿道閉塞という別の緊急事態です。いずれにしても待たないでください。
病院ではどんな治療をしますか?解毒剤はありますか?
特異的な解毒薬はありません。摂取から間もなければ消化管の除染(動物病院での催吐、活性炭)が検討され、その後は静脈輸液で腎臓を守り、貧血が進めば酸素投与や輸血で支えます。
数日にわたって血液検査(ハインツ小体、赤血球容積、メトヘモグロビン)を追う必要があります。1回の検査が正常でも、それは今の時点の話です。
解毒薬がないことは、受診しなくてよい理由にはなりません。むしろ、症状が出る前に始められる処置があることが、早く電話する理由になります。
予防のためにできることはありますか?
人の食べ物を猫に取り分けないこと、食べ残しをテーブルや流しに置いたままにしないことが基本です。玉ねぎ・にんにく・ねぎ類は、皮や切れ端も含めて猫の届かない場所と蓋つきのゴミ箱で管理してください。
オニオンパウダー・ガーリックパウダー・乾燥スープの素は密閉して収納してください。濃縮された形がとくに危険です。
食欲がないときにベビーフードなど人用の食品を使うのも避けてください。オニオンパウダー入りのベビーフードを与えられた猫にハインツ小体が生じた研究があり、著者らは猫への使用を避けるよう述べています。
まとめ
- 危険なのはネギ属(Allium)全体。玉ねぎ・長ねぎ・にんにく・にら・あさつき・らっきょうなどが含まれ、にんにくは玉ねぎの3〜5倍毒性が強いとされる
- 加熱・乾燥・粉末にしても毒性は消えない。汁やスープも曝露として扱う。粉末や乾燥スープの素は濃縮されていて、少量でも中身が多い
- 食べた直後に元気なのが、この中毒では普通。赤血球の変化は24時間以内に始まり約72時間でピーク、溶血は通常3〜5日後
- 報告されている量(猫は生の玉ねぎ5g/kg、または加熱した玉ねぎ小さじ1杯未満)は、これ以下なら安全という意味ではない。同じ資料内でも数値の開きが大きい
- 赤褐色の尿は血尿ではなくヘモグロビン尿のことが多く、赤血球が壊れている徴候。尿が出ない場合は尿道閉塞という別の緊急事態
- 家で吐かせない。猫ではオキシドールで重い胃の潰瘍を起こした症例報告がある
- 解毒剤はない。治療は消化管除染と点滴・酸素・輸血による支持療法と、数日の血液監視。早いほど打てる手が多いが、時間が経っていても受診の意味はある
参考資料
この記事は次の資料を参照して作成しました(2026年9月9日確認)。記載内容は一般的な情報であり、個々の症例の診断・治療に代わるものではありません。判断に迷うときは、自己判断せず動物病院に相談してください。
- Garlic and Onion (Allium spp) Toxicosis in Animals(2024年9月改訂。中毒量、時間経過、治療)(MSD獣医マニュアル(Merck Veterinary Manual))
- Heinz Bodies and Eccentrocytes: Evidence of Oxidative Injury to the Erythrocytes(猫のヘモグロビンと脾臓の特徴)(Kansas State Veterinary Diagnostic Laboratory(カンザス州立大学獣医診断検査室))
- Salgado BS, Monteiro LN, Rocha NS. 犬と猫のネギ属中毒(J Venom Anim Toxins Incl Trop Dis. 2011;17(1):4-11, doi:10.1590/S1678-91992011000100002)(SciELO(全文))
- Robertson JE, Christopher MM, Rogers QR. オニオンパウダー入りベビーフードを与えられた猫のハインツ小体形成(J Am Vet Med Assoc. 1998;212(8):1260-1266, PMID 9569166)(Europe PMC(抄録))
- Cortinovis C, Caloni F. 犬と猫に有毒な家庭の食品(Front Vet Sci. 2016;3:26, PMID 27047944)(Europe PMC(抄録))
- Proper Use of Emetics in Dogs and Cats(家庭での催吐を推奨しない根拠)(ASPCA Pro(ASPCA動物中毒管理センター))