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犬の出血が止まらないとき|体重で変わる危険度と、家庭でやってはいけない止血

家庭でできるのは、清潔な布やタオルを出血している場所に直接あて、手のひらか指でしっかり押さえ続けることだけです。米国獣医師会(AVMA)の飼い主向け資料は、少なくとも3分は押さえたままにして、止まったかどうかを確かめるために途中で外さないこと、そして血が染みてきても当てた布は剥がさず、その上に重ねることを示しています。

犬でとくに気をつけたいのは、同じ大きさの血だまりでも、体重によって意味がまったく違うことです。犬の全血液量は体重1kgあたり80〜90mLとされ、体重3kgの小型犬と体重30kgの大型犬では10倍の開きがあります。この記事では、押さえ方、体重から見た出血量の読み方、他の犬に咬まれたとき、爪切りの出血、そして痛がっている犬に人用の鎮痛薬を与えてはいけない理由を順に説明します。

鮮やかな赤い血が拍動して噴き出している、歯ぐきや舌が白い・灰色っぽい、体が冷たい、呼吸が速い、ぐったりして反応が鈍い。このどれかがあれば、押さえながらすぐ動物病院へ電話してください。Merck獣医マニュアルのトリアージの項では、出血は獣医師による即時評価を要する状態として挙げられています。

紐・ゴム・輪ゴム・ヘアゴム・針金などで傷の心臓側をきつく縛らないでください。獣医学の標準は直接圧迫と圧迫包帯です。重度の動脈性出血であっても、細い止血帯ではなく空気カフや圧迫ラップを使うべきだとされています。縛る道具を探している時間が、そのまま受診の遅れになります。

痛がっていても、人用の鎮痛薬を与えないでください。アスピリンは血小板の働きに不利な影響を与えるため、出血している犬では逆の方向に働きうるとされています。イブプロフェンは消化管出血と腎障害の報告があります。

他の犬に咬まれた場合、何かが刺さっている場合、殺鼠剤に触れた可能性がある場合は、出血が少なくても・出血がなくても受診の対象です。胸を咬まれた犬猫65例の研究では、呼吸の様子が正常だった個体の22%にレントゲンで胸部の病変が見つかっています。

30秒で判断|どの速さで動くか

動き方当てはまるもの
今すぐ受診
電話しながら向かう
  • 鮮やかな赤い血が拍動して噴き出している
  • 押さえても出血が止まらない、または一度止まってもすぐ繰り返す
  • 歯ぐきや舌が白い・灰色っぽい、体が冷たい、ぐったりして反応が鈍い
  • 呼吸が速い・浅い・苦しそう(胸の中での出血や胸部の損傷の可能性)
  • 他の犬に咬まれた、咬まれた可能性がある(穴が小さくても、出血が少なくても。とくに胸・首・お腹)
  • 何かが刺さっている、貫通したように見える(抜かずにそのまま向かう)
  • 車との接触・高所からの落下など、強い力が加わったあとの出血
  • 小型犬・子犬で、出血が多いように見える
  • 体のあちこちにあざがある、歯ぐきに小さな赤紫の点がある、鼻血が出る、黒いタール状の便が出る
  • 殺鼠剤を置いてある場所に入った、殺鼠剤や死んだネズミを口にした可能性がある(出血がなくても対象)
  • すでに人用の鎮痛薬を与えてしまった(与えてはいけない薬です。隠さずそのまま伝えてください)
早めに相談
その日のうちに電話する
  • 爪が根元から折れている、ぶら下がっている、爪からの出血が続く
  • 手術や処置のあと、日数が経ってから腫れ・あざ・にじむ出血が出てきた
  • 小さな傷の出血が、押さえたら止まったものの普段より長引いた
  • 以前から「小さな傷なのに血が止まりにくい」「爪切りの出血が長引く」と感じている
  • 口の中からの出血で、量は多くないが繰り返している

これは受診の優先度を決めるための目安で、病名を判断するためのものではありません。どれにも当てはまらなくても、いつもと違うと感じたら電話して構いません。迷っている時間そのものが、動物にとっては待ち時間になります。

この表は出血の原因を当てるためのものではなく、動く速さを決めるためのものです。電話では犬の体重を先に伝えてください。同じ出血量でも、体重によって意味が変わります。

まず確認すること

押さえながらで構いません。次の6つを頭に入れて、そのまま動物病院に電話してください。分からないことは「分からない」と伝えて構いません。

  1. 犬の体重(電話口でいちばん役に立つ情報のひとつです)と年齢、犬種、持病、飲んでいる薬
  2. どこから、いくつ出血しているか(傷が複数あることは重要な情報です)
  3. 血の色と出方(鮮やかな赤で心拍に合わせて噴き出すか、暗い色でじわじわ広がるか)
  4. 何が起きたか(爪切り・散歩中・ドッグラン・他の犬とのケンカ・落下・車・ガラス・拾い食い・不明 など)
  5. いつ始まったか(分からなければ「最後に普段どおりだった時刻」と「気づいた時刻」)
  6. 今の様子(歯ぐきの色、呼吸の速さ、立てるかどうか、体が冷たくないか)

「拍動して噴き出す」と「暗い色でにじむ」

Merck獣医マニュアルは、動脈からの出血を「拍動する(pulsating)」、静脈からの出血を「暗い色でにじむ(dark, oozing)」と対比して記載しています。家庭での手がかりは、鮮やかな赤い血が心拍に合わせてビュッと出るか、暗い色の血がじわじわ広がるかという違いです。

同書は、拍動する動脈性の出血は指による直接圧迫または圧迫包帯で制御すべきとしています。四肢からの静脈性の出血については、押さえたままその足を心臓より高い位置にすることが挙げられています。

ただし、見分けること自体が目的ではありません。動脈性が疑われる時点で、押さえながらすぐ電話する対象です。判断に時間を使わないでください。

毛に覆われていると、出血している場所が分かりにくい

被毛の下では、どこから出ているのかがすぐに分からないことがあります。探し当てられなくても構いません。血がにじんでいるあたりを広めに押さえ、電話では「どこからか分からない」とそのまま伝えてください。毛をハサミで切って傷を出そうとすると皮膚まで切ってしまうことがあるので、毛の処理は動物病院に任せてください。

見た目で軽く見えても受診の対象になるとき

上の表に挙げた所見のほかに、「出血が少ないから軽い」と読み違えられやすい場面があります。次のどれかに当てはまれば、出血の量にかかわらず電話してください。

  • 他の犬に咬まれた、または咬まれた可能性がある(穴が小さくても、出血が少なくても対象です。とくに胸・首・お腹)
  • 何かが刺さっている、貫通したように見える(抜かずに受診してください)
  • 胸やお腹の傷、あるいは車との接触・高所からの落下など、強い力が加わったあとの出血(外に出ている血の量では判断できません)
  • 小型犬・子犬で、出血量が多いように見える(体が小さいほど、同じ量でも失血の割合が大きくなります)
  • 殺鼠剤を置いてある場所に入った、殺鼠剤や死んだネズミを口にした可能性がある(出血がなくても対象です)
  • 複数の場所から同時に出血する、体のあちこちにあざができる、鼻血が出る、黒いタール状の便が出る、歯ぐきに小さな赤紫の点がある
  • 爪が根元から折れている、ぶら下がっている、爪からの出血が続く
  • 手術や処置のあと、日数が経ってから腫れ・あざ・出血が出てきた
  • 口の中からの出血で、量が多い・繰り返す・呼吸が苦しそう

出血を押さえる|直接圧迫のしかたと、押さえる人の安全

ここに書くのは治療ではありません。動物病院に着くまでに、これ以上失血させないための一時的な処置です。AVMAは「応急処置は獣医療の代わりにはならない」と明記しています。

使う材料は特別なものでなくて構いません。Merck獣医マニュアルは、長い布やガーゼでよく、ハンドタオルやウォッシュクロスでも足りることが多いとしています。

いちばん多い失敗は、3分たっていないのに「止まったかな」とガーゼを外して覗いてしまうことです。できかけた血の塊が壊れて、振り出しに戻ります。染みてきたときも同じで、取り替えずに上から重ねてください。

  1. 清潔なガーゼ・ハンドタオル・ウォッシュクロスなどを、出血している場所に直接あてる
  2. 手のひらか指で、しっかりと押さえる
  3. 少なくとも3分は押さえたままにする。止まったかどうかを確かめるために途中で外さない
  4. 血が染みてきても、当てた布は剥がさず、その上に新しい布を重ねる
  5. 四肢からの暗い色のにじむような出血なら、押さえたままその足を心臓より高い位置にする
  6. 押さえながら動物病院へ電話し、犬の体重・出血している部位・出血の勢い・いつからかを伝える

押さえることと、咬まれないことを同時に成立させる

けがをした犬は、痛みと恐怖で普段とは違う反応をします。AVMAは、けがをした動物を抱きしめようとしないこと、顔を口に近づけないこと、可能なら他の人に手伝ってもらうことを挙げています。押さえる人と運転する人を分けられるなら、そのほうが安全です。Merck獣医マニュアルの飼い主向けページは、動物の頭と目に布をかけて視覚的な刺激を減らすと落ち着くことがあるとしています。

押さえ続けることより、飼い主が咬まれずに病院へ着くことのほうが優先されます。手が出せないと感じたら、無理をせず電話でそのまま伝えてください。

口輪を使ってよい場合と、使ってはいけない場合

「咬まれないように、とりあえず口輪を」と考えがちですが、口輪には明確な禁忌があります。Merck獣医マニュアルの飼い主向けページは、胸部に外傷のある犬と短頭種(パグ、ブルドッグなど)には決して口輪を使わないこと、そして口輪をした犬をひとりにしないことを挙げています。AVMAも、吐いている犬には口輪をしないとしています。

犬同士のケンカでは胸を咬まれていることがあり、この禁忌は現実に起こりうる問題です。呼吸が苦しそうな犬も同じです。迷う場面なら、口輪をつけるより「顔の正面に手を出さない」「人手を頼む」ほうが安全なことがあります。

歩かせない|大型犬をどう運ぶか

犬は自分で歩けてしまうため、そのまま歩かせて病院へ向かうという選択肢が生まれます。AVMAは、搬送中はできるだけ狭い範囲に閉じ込めて、これ以上のけがを避けることを示しています。走らせない、階段を上り下りさせない、車内で動き回らせないでください。

大型犬では、AVMAは板・そり・毛布などを担架代わりに使うことを挙げています。Merck獣医マニュアルは、頭・首・背骨の外傷が疑われる場合には、これらの動きを最小限にするとしています。人手を集めてから動かしてください。

「何分押さえても止まらなければ受診」という数値の目安は、今回の調査では一次資料で確認できませんでした。この記事では時間の線引きを示しません。押さえても止まらない、あるいは止まってもすぐ繰り返す時点で受診の対象と考えてください。拍動して噴き出しているなら、時間を測る前に電話してください。

体重で意味が変わる|床の血の量だけで判断しない

犬の全血液量は体重1kgあたり80〜90mLとされています(猫は40〜60mL/kg)。犬は同じ種の中で体重が10倍以上ちがうため、床に同じ大きさの血だまりがあっても、意味がまったく違います。

Merck獣医マニュアルのトリアージの項は、出血を4つのクラスに分けています。犬では血液量の15〜30%(13〜26mL/kg)を失うと頻脈や脈の性状の変化が現れ、通常は蘇生を要するとされます。30〜40%(26〜35mL/kg)では低血圧と頻脈など重い徴候が出て、輸血を含む蘇生が必要になるとされ、40%以上(35mL/kg以上)では死に瀕した状態になり、生存には直ちの輸血と多くの場合手術を要するとされています。

体重全血液量のおよそ(80〜90mL/kg)血液量の15〜30%(13〜26mL/kg)=通常は蘇生を要するとされる領域
3kg(小型犬・子犬)240〜270mLおよそ39〜78mL
5kg400〜450mLおよそ65〜130mL
10kg800〜900mLおよそ130〜260mL
30kg(大型犬)2,400〜2,700mLおよそ390〜780mL

この表は「何mLまでなら平気か」を知るためのものではありません。危険側に読んでください。体重5kgの犬なら、130mL——小さなペットボトル1本にも満たない量——で、通常は蘇生を要するとされる領域に入ります。子犬や超小型犬ではさらに少ない量になります。

そして、床に落ちている血がすべてではありません。Merck獣医マニュアルの飼い主向け解説は、急速に血液量の3分の1を超えて失い補充されなければ、犬はショックと死に至りうるとしています。外に出血が見当たらないのに歯ぐきが白い・脱力する・心拍が速い場合、体の中で出血していることがあり、脾臓の腫瘤の破裂、胃潰瘍、凝固の異常、寄生虫などが原因として挙げられています。

また、痛みや不安の強い犬は、代償性ショックと同じように見えることがあるともされています。脈が速い・呼吸が荒いのが痛みのせいなのかショックなのかは、家庭では区別できません。区別しようとせず、そのまま電話してください。

「縛って止める」は標準の逆|家庭で止血帯を使わない理由

出血が止まらないときに、紐・ゴム・輪ゴム・ヘアゴム・針金などで傷の心臓側をきつく縛る方法が語られることがあります。これは行わないでください。現在の獣医学の標準は、あくまで直接圧迫と圧迫包帯です。

Merck獣医マニュアルの創傷初期管理の項は、重度の動脈性出血の場合であっても、止血帯ではなく空気カフや圧迫ラップを使うべきだとしています。理由も併記されていて、細い止血帯に伴いうる神経や血管の合併症を避けるためだと説明されています。つまり「細いもので強く縛る」は、推奨されている方向とちょうど逆です。家庭にある紐・ゴム・針金は、まさにこの「細い止血帯」にあたります。

止血帯そのものが完全に否定されているわけではありませんが、位置づけは限定的です。同書は、使うのは四肢や尾に限られること圧迫ラップで出血を制御できなかったときの手段であること、そして5〜10分ごとに緩めて先の部分に血を通し、2分後に締め直すという管理が必要だとしています。移動中の車内で飼い主が安全に行える種類の処置ではありません。

「昔は縛ると教わった」という方は少なくありません。現在は勧められていません。押さえても止まらないなら、押さえたまま病院へ向かうことが正しい行動です。

他の犬に咬まれたとき|穴の大きさで判断しない

散歩中やドッグランでの事故は、飼い主がその場に居合わせることが多く、「小さな穴が2つあるだけ」「血もすぐ止まった」と見えることがあります。それが、この事故のいちばん危ないところです。

Merck獣医マニュアルは、犬の咬傷は「切り裂く」性質のため、主な組織損傷はふつう傷の表面より下にあると記載しています。表面には小さな刺し傷や打撲しか見えなくても、肋骨が折れていたり、内臓が重度に損傷していることがあるとされています。損傷の範囲を確定するには、傷を外科的に必要なだけ延長して中を十分に調べる必要があるとも書かれています。

数字でも同じことが示されています。胸を咬まれた犬猫65例の研究では、呼吸の様子が正常だった個体の22%にレントゲンで胸部の病変が見つかりました。レントゲンの所見は犬の77%で認められ、呼吸困難があるかどうかは死亡率と相関しなかったと報告されています。死亡率は15.4%でした。

胸を咬まれた犬123例の研究では、25頭が試験開胸を受け、そのうち12頭で肺葉の切除が行われています。著者らは「すべての胸部咬傷について、レントゲン撮影・外科的探索・デブリードマンを強く検討すべき」と結論しています。「小さな穴」と「開胸手術」は、同じ出来事の両端にありうるということです。

咬まれたら、穴の大きさや出血の量で判断しないでください。「普通に呼吸しているから胸は大丈夫」も成り立ちません。相手の犬の大きさ、咬まれた部位、振り回されたかどうかを覚えておいて、そのまま電話してください。

咬傷は汚染された傷とみなされるため、通常は傷を完全に閉じて縫うことは勧められないとされています。家庭で絆創膏やテープでふさぐことは、汚れと細菌を中に閉じ込める方向に働きます。

咬まれた場合は、相手の犬のワクチン歴が分かるかどうかも聞かれます。飼い主どうしで連絡先を交換できる状況なら、その場で確認しておいてください。

犬で多い場面|爪切りの出血と、けががないのに出血する場合

犬では、外傷以外に「家庭の爪切り」と「血が固まりにくくなっている状態」という2つの入口があります。どちらも猫より相談の多い場面です。

爪切りで深爪してしまった

Merck獣医マニュアルの飼い主向けページは、折れた爪から出血しているときの対応として、爪を押さえること、または止血用パウダー(薬局で購入できるもの)・コーンスターチ・小麦粉を使って止血と凝固を促すことを挙げています。あわせて、爪が折れることは痛みを伴い、犬は咬みつくことがあるとも書かれています。無理に押さえつけないでください。

ぶら下がっている爪や、根元から折れている爪を、自分で引き抜かないでください。このシリーズでは、体に食い込んだり残ったりしているものを家庭で取り除くことは勧めていません。痛みが強く、出血が増えることがあります。

止まらない、何度も繰り返す、腫れてきた、その足をつかない、という場合は受診してください。爪切りのたびに出血が長引くと感じているなら、それ自体を獣医師に伝える価値があります。

けががないのに出血する|血が固まりにくくなっている場合

Merck獣医マニュアルの飼い主向け解説は、飼い主が気づけるサインとして歯ぐきや皮膚の小さな紫赤色の点(点状出血)、あざ、黒いタール状の便、鼻血、注射や手術の部位からの出血が長引くことを挙げています。こうしたサインが複数そろうのが特徴です。

犬でもっとも多い遺伝性の出血性疾患はフォン・ヴィレブランド病で、ほぼすべての犬種と雑種に起こりますが、ドーベルマン、ジャーマン・シェパード、ゴールデン・レトリーバー、ミニチュア・シュナウザー、ペンブローク・ウェルシュ・コーギー、シェットランド・シープドッグ、バセット・ハウンド、スコティッシュ・テリア、スタンダード・プードルなどで多いとされています。後天的なものでは、免疫が関わって血小板が減る病気(免疫介在性血小板減少症)があり、犬と馬に多く猫では稀で、中年の雌犬、とくにコッカースパニエルで多いとされています。

犬種のリストは「この犬種なら出血しやすい」と読むためのものではありません。「小さな傷なのに血が止まりにくい」「爪切りの出血が長引く」と感じたことがあるなら、それを獣医師に伝えてほしい、という意味で挙げています。同腹の兄弟や親に出血しやすい子がいたかどうかも手がかりになります。

殺鼠剤は「元気に見える期間」がある

抗凝血性の殺鼠剤でいちばん見落とされやすいのは、症状が出るまでに時間差があることです。MSD獣医マニュアルは、凝固の検査値が悪くなるのは摂取から2〜5日遅れ、出血が臨床的に明らかになるのは通常3〜7日後だと記載しています。それまでは見た目が正常なことがあります。

犬では、散歩中の拾い食いや、倉庫・畑・物置に置かれた毒餌そのものを直接口にする場面が問題になります。同マニュアルは、毒餌を食べたネズミやその死骸を食べることによる二次的な中毒(relay toxicosis)も曝露の経路として挙げています。

「食べたかもしれないけれど元気だから」は、受診しない理由になりません。飼い主向けの資料にも、殺鼠剤を食べた疑いがあれば緊急であり、直ちに受診すべきだと明記されています。製品のパッケージがあれば持参してください。薬剤の種類が分かると、治療の判断が早くなります。

手術のあと、日数が経ってから出てくる出血

手術の出血は当日だけの問題ではありません。犬100頭を対象にした二重盲検の無作為化試験では、プラセボ群の30%(15/50)に術後36〜48時間から始まる遅発性の出血が起きたと報告されています。

去勢・避妊などの手術のあと、いったん落ち着いてから腫れ・あざ・にじむ出血が出てくることがあります。日数が経っていても、手術を受けた動物病院に連絡してください。

今、自宅でできること

押さえ方は前の節のとおりです。ここでは、それ以外に病院へ着くまでにできることをまとめます。治療を行う場所ではありません。

  1. 押さえたまま動物病院へ電話する。犬の体重、出血している部位、出血の勢い、いつからかを伝える
  2. 犬を静かな場所に移し、興奮させない。走らせない、階段を上り下りさせない
  3. 犬の正面や口の近くに手を出さない、抱きしめない、顔を近づけない。可能なら人手を頼む
  4. 頭に布やタオルをかけて視覚的な刺激を減らす(胸を咬まれた犬・呼吸が苦しそうな犬・短頭種・吐いている犬に口輪は使わないでください
  5. 刺さっている物がある場合は、動かないように支えるだけにする
  6. 出血の様子(部位・色・広がり方)を写真に撮っておく
  7. 出血が始まった時刻と、何が起きたかを分かる範囲でメモする
  8. 血が染みたタオルの枚数を覚えておく(出血量を伝える手がかりになります)
  9. 殺鼠剤や拾い食いが疑われるなら、製品のパッケージ・現物・食べた可能性のある場所を確保する
  10. 搬送の準備をする。狭い範囲に閉じ込め、大型犬は板・毛布などを担架代わりに使う。強い力が加わったあとは、頭・首・背骨の動きを最小限にする

やってはいけないこと

以下は、犬を危険にさらすか、受診を遅らせる行為です。ひとつも行わないでください。

  • 紐・ゴム・輪ゴム・ヘアゴム・針金などで傷の心臓側をきつく縛る(緊縛止血)。獣医学の標準的な推奨とは逆方向で、細い止血帯には神経・血管の合併症が伴いうるとされています
  • 止血帯を自己判断で装着したまま病院へ向かう(5〜10分ごとに緩めて締め直す管理が必要とされており、家庭では安全に行えません)
  • 止まったかどうかを確かめるために、ガーゼを何度も剥がして覗く
  • 血が染みた布を取り替える(剥がさず上から重ねてください)
  • オキシドール(過酸化水素)や消毒用アルコールを傷にかける。過酸化水素は健常な組織に毒性があるとされ、創の洗浄に使うべきでないとされています
  • 刺さっている物を抜く。無理に引っ張らないでください
  • ぶら下がっている爪や、根元から折れた爪を自分で引き抜く
  • 傷口をこする、傷の中に指を入れる、毛をハサミで切ろうとして皮膚まで切る
  • 獣医師の指示なしに人用の鎮痛薬(アスピリン、イブプロフェン、ロキソプロフェン、アセトアミノフェンなど)や止血薬を与える
  • 意識が落ちている犬に水や食べ物を与える
  • 咬まれた傷や貫通した傷を「小さいから」と自宅で経過観察する
  • 呼吸が苦しそうな犬・胸を咬まれた犬・短頭種・吐いている犬に口輪をする。口輪をした犬をひとりにする
  • 殺鼠剤に触れた可能性があるのに、「元気だから」と待つ
  • 自宅で吐かせようとする(拾い食いが疑われる場合も、獣医師の指示なしに行わないでください)
  • 出血している犬を、自分で歩かせて病院まで連れて行く

とくに犬で起きやすいのが、「痛がっているから」と家にある鎮痛薬を飲ませてしまう事故です。Merck獣医マニュアルは、人用のNSAIDの誤投与が動物の中毒相談で最も多いものの一つであり、「善意だが知識のない飼い主が人用のNSAIDでペットを治療してしまい、症状が出るまで誤りに気づかない」と明記しています。

アスピリンは、血小板が新しい酵素を作れないことから血小板の凝集に不利な影響を与えるとされています。つまり、出血している犬に与えると事態を悪くする方向に働きうるということです。イブプロフェンでは消化管の刺激・潰瘍・消化管出血・腎障害が最も多い毒性作用とされ、アセトアミノフェンは犬で200mg/kgを超える量でメトヘモグロビン血症が報告され、黄疸や肝毒性はむしろ犬で多いとされています。

すでに与えてしまった場合は、製品名・量・時刻を必ず正直に伝えてください。叱られることはありません。伝えるかどうかで治療の判断が変わります。

動物病院へ伝える情報

電話の段階で分かる範囲を伝えてください。全部そろっていなくて構いません。

  • 犬種・年齢・体重・避妊去勢の有無(体重は出血量の意味づけに直結します)
  • 出血が始まった時刻(分からなければ、最後に普段どおりだった時刻)
  • 何が起きたか(爪切り・散歩中・ドッグラン・他の犬とのケンカ・落下・車・ガラス・拾い食い・不明 など)
  • 出血している部位と、その数
  • 血の色と出方(鮮やかで拍動する/暗くてにじむ/どこからか分からない)
  • おおよその出血量(血が染みたタオルの枚数、床の広がり。写真があると確実です)
  • 自宅で何をしたか(押さえた時間、使った物、消毒薬を使ったか、薬を与えたか)
  • 現在の様子(歯ぐきの色、呼吸の速さ、意識、立てるか、測れていれば体温)
  • 咬まれた場合は、相手の犬の大きさ、咬まれた部位、振り回されたかどうか、相手のワクチン歴
  • 殺鼠剤・毒餌・死んだネズミへの接触の可能性と、いつ・どこでか
  • 持病、飲んでいる薬・サプリメント、直近の手術や処置(何日前か)
  • 過去に「小さな傷なのに血が止まりにくい」「爪切りの出血が長引く」と感じたことがあるか
  • 同腹の兄弟や親に、出血しやすい子がいたか

動物病院ではどうするのか

まず行われるのは、出血の制御と全身状態の安定です。Merck獣医マニュアルのトリアージの項では、出血・外傷や開いた傷・蒼白や脱力は、獣医師による即時評価を要する状態として列挙されています。失った血液の量は、病院では使ったガーゼの重さから推定することもあります。

咬傷では、見えている傷の大きさにかかわらず深い部分の評価が行われます。胸部の咬傷ではレントゲン撮影と外科的な探索、壊死組織の除去を強く検討すべきだとされており、実際に開胸や肺葉の切除に至った例が報告されています。汚染された傷とみなされるため、通常は完全に閉じることは勧められず、ドレーンの併用や段階的な閉創が選ばれます。

けががないのに出血傾向がある場合は、血液を固める働きの検査が行われます。抗凝血性の殺鼠剤が疑われる場合はビタミンK1による治療があり、数週間続ける必要があるとされています。失血が大きい場合には輸血が検討され、その量は体重と全血液量(80〜90mL/kg)から計算されます。体重を正確に伝えることが、ここでも効いてきます。

夜間・休日でかかりつけの動物病院が閉まっている場合

夜間や休診日にかかりつけの病院が閉まっているときは、近くの夜間・救急動物病院を確認してください。向かう前に必ず電話をしてください。夜間は予約制のところや、受け入れられる状態かどうかがその時々で変わるところがあります。

電話では、「何が起きたか」「いつからか」「犬の年齢と体重」「今の様子」を伝えてください。その場でできることを教えてもらえたり、より適した病院を案内してもらえることがあります。

出血しているときは、電話の最初に「出血が止まらない」「他の犬に咬まれた」「殺鼠剤に触れたかもしれない」と一言で伝え、続けて犬の体重を言ってください。受け入れの可否と、到着までの準備の判断が早くなります。

一人で向かう場合は、布を当てて押さえた状態で固定し、車内で動き回らないようにしてから出発してください。大型犬では、無理に抱え上げようとせず、人手を集めてから動かしてください。

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よくある質問

何分押さえれば止まりますか?

AVMAの飼い主向け資料が示しているのは、少なくとも3分は押さえたままにして、確認のために外さないということだけです。「何分で止まらなければ受診」という数値の基準は、今回の調査では一次資料で確認できませんでした。

押さえても止まらない、止まってもすぐ繰り返す時点で受診の対象と考えてください。

うちは小型犬です。この程度の出血なら大丈夫でしょうか?

犬の全血液量は体重1kgあたり80〜90mLとされています。体重4kgなら全部で320〜360mL程度しかありません。血液量の15〜30%(13〜26mL/kg)を失うと通常は蘇生が必要とされるので、体重4kgならおよそ52〜104mLがその領域にあたります。

同じ大きさの血だまりでも、30kgの犬と4kgの犬ではまったく意味が違います。電話では体重を先に伝えてください。それが、電話口で最も役に立つ情報のひとつです。

ドッグランで他の犬に咬まれました。穴は小さく、血もほとんど出ていません

受診してください。犬の咬傷は「切り裂く」性質のため、主な組織損傷は表面より下にあるとされ、表面に小さな刺し傷や打撲しか見えなくても、肋骨が折れていたり内臓が重度に損傷していることがあります。

胸を咬まれた犬猫65例の研究では、呼吸が正常に見えた個体の22%にレントゲンで胸部の病変が見つかりました。胸を咬まれた犬123例の研究では25頭が試験開胸を受け、12頭で肺葉の切除が行われています。相手の犬の大きさ、咬まれた部位、振り回されたかどうかを伝えてください。

爪切りで深爪して血が出ました

Merck獣医マニュアルの飼い主向けページでは、爪を押さえること、または止血用パウダー・コーンスターチ・小麦粉で止血と凝固を促すことが挙げられています。爪の出血は痛みを伴い、犬は咬みつくことがあるので、無理に押さえつけないでください。

ぶら下がっている爪や根元から折れた爪は、自分で引き抜かないでください。止まらない、繰り返す、腫れてきた、足をつかないという場合は受診してください。

痛がっているので、家にある痛み止めを飲ませてもいいですか?

与えないでください。アスピリンは血小板の凝集に不利な影響を与えるため、出血している犬では逆の方向に働きうるとされています。イブプロフェンは消化管出血と腎障害を起こします。すでに与えてしまった場合は、製品名・量・時刻を必ず正直に伝えてください。

咬まれないように口輪をしたほうがいいですか?

使ってよい場面と、使ってはいけない場面があります。胸部に外傷のある犬、呼吸が苦しそうな犬、短頭種(パグ・ブルドッグなど)、吐いている犬には使わないでください。口輪をした犬をひとりにしないこととも記載されています。

犬同士のケンカでは胸を咬まれていることがあるため、この禁忌は現実に起こりえます。頭に布をかけて視覚的な刺激を減らす、顔の正面に手を出さない、人手を頼む、といった方法のほうが安全なことがあります。

手術から2日たってから、腫れて血がにじんできました

犬では術後36〜48時間から始まる遅発性の出血が報告されています。犬100頭の無作為化試験では、プラセボ群の30%に起きています。

日数が経っていても、手術を受けた動物病院に連絡してください。押さえながら、電話で指示を受けてください。

まとめ

  • 家庭でできるのは直接圧迫だけ。清潔な布を出血部位に直接あて、手のひらか指でしっかり押さえる
  • 少なくとも3分は外さない。血が染みても剥がさず上に重ねる。剥がすとできかけた血の塊が壊れる
  • 犬の全血液量は80〜90mL/kg。体重5kgなら130mL程度で、通常は蘇生を要するとされる領域に入る。床の血の量だけで判断せず、体重を先に伝える
  • 紐やゴムで縛らない。標準は直接圧迫と圧迫包帯で、重度の動脈性出血でも細い止血帯ではなく空気カフや圧迫ラップが勧められている
  • 他の犬に咬まれたら、穴の大きさで判断しない。呼吸が正常に見えた個体の22%に胸部の病変が見つかった研究がある
  • 人用の鎮痛薬を与えない。アスピリンは血小板の凝集に不利に働き、出血している犬では逆効果になりうる
  • 押さえながら安全も確保する。口輪には禁忌があり、胸を咬まれた犬・短頭種・呼吸が苦しい犬・吐いている犬には使わない。殺鼠剤は元気に見える期間があり、疑われた時点で受診の対象

参考資料

この記事は次の資料を参照して作成しました(2026年9月9日確認)。記載内容は一般的な情報であり、個々の症例の診断・治療に代わるものではありません。判断に迷うときは、自己判断せず動物病院に相談してください。

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