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犬の舌・歯ぐきの色がおかしい|白・紫・黄色が意味することと、色では分からないこと

歯ぐきや舌の色は、血のめぐりと酸素の状態が崩れたときに、結果として遅れて現れる指標です。だから色が変わっているなら、それは待ってよいという合図ではありません。白・灰色・青紫・茶色・黄色のどれかに見えたら、その時点で動物病院に電話してください。

同時にもうひとつ、この記事でいちばん伝えたいことがあります。色が正常に見えることは、安全の証明にはなりません。この記事では、色ごとに何を意味しうるか、押した色の戻り方の見かた、そして家庭で色を見るときの限界を順にまとめます。

歯ぐき・舌が白い、蒼白、灰色に見えるときは、待たずに電話してください。救急の資料では「蒼白・脱力(貧血)」は、その場で急いで評価すべき状態として名前が挙がっています。

色を確認するために時間を使わないでください。犬が嫌がるなら、そこでやめて構いません。「口を触らせてくれなくて色が見られなかった」と伝えれば、それで十分です。無理にこじ開けることは、悪化と咬まれる事故の両方につながります。

色が正常でも、呼吸が苦しい・倒れた・立てない・出血しているなら、色にかかわらず受診の対象です。粘膜の色の変化は、呼吸の障害では呼吸停止に先行しうる遅い所見だとされています。

30秒で判断|どの速さで動くか

動き方当てはまるもの
今すぐ受診
電話しながら向かう
  • 歯ぐき・舌が白い、蒼白、灰色・灰白色
  • 歯ぐき・舌が青紫(チアノーゼ)
  • 歯ぐき・舌が茶色っぽい、泥のような濁った色
  • 白目・歯ぐき・耳の内側の皮膚が黄色い
  • 歯ぐきに押しても消えない小さな赤紫の点が散っている、体にあざがある、黒いタール状の便、鼻血
  • 歯ぐきの一部が非常に濃い色・黒く変色している
  • 押した色が戻るのが明らかに遅い、または明らかに速すぎる
  • 赤い粘膜に、荒い呼吸・ぐったり・体の熱さ・ふらつきが伴っている
  • 色の異常に、呼吸が速い・浅い・苦しそう、開口呼吸、横になれない、が伴っている
  • 色の異常に、倒れた・立てない・呼びかけへの反応が鈍い、が伴っている
  • 色が正常に見えても、呼吸が苦しい・ぐったりしている・倒れた・出血している
早めに相談
その日のうちに電話する
  • 色ははっきりしないが「いつもと違う」と感じる、以前の写真と比べると違って見える
  • 口を触らせてくれず色を確認できない(確認できないことをそのまま伝えて相談してください)
条件つきで経過観察
下の条件を全部満たすときだけ
  • もともと歯ぐきに黒い色素やまだらな部分があり、その部分が以前から同じ場所・同じ見え方である
  • かつ、色素のない部分の歯ぐきや舌はピンクで、軽く押すと1〜2秒で色が戻る
  • かつ、呼吸・元気・食欲・排泄にいつもと違うところがない

これは受診の優先度を決めるための目安で、病名を判断するためのものではありません。どれにも当てはまらなくても、いつもと違うと感じたら電話して構いません。迷っている時間そのものが、動物にとっては待ち時間になります。

この表は受診の速さを決めるためのもので、色から病名を当てるためのものではありません。粘膜の色は、血のめぐりと酸素の状態が崩れた結果として遅れて出てくる指標です。

まず確認すること

見る場所と見かたは、次のとおりです。時間をかける必要はありません。数十秒で終わります。

  1. 明るい場所へ行く(自然光か、白っぽい照明の下)
  2. 上唇をそっとめくって歯ぐきを出す。舌、まぶたの裏、白目でも構いません
  3. 指で軽く押して離し、白くなった色が戻る速さを見る(健康な犬では、一瞬白くなって1〜2秒でピンクに戻ります)
  4. もともと色素が濃い犬は、色素のない部分か舌で見る
  5. 犬が嫌がったら、そこでやめる。無理にこじ開けない
  6. 可能なら写真を撮る(フラッシュや加工は使わない。同じ場所・同じ照明で撮ると比べやすくなります)
  7. いつからその色か、気づいた時刻を書き留める(分からなければ「最後に普段どおりだった時刻」)
  8. 落ち着いているときの1分間の呼吸数(胸が上下する回数)を数える
  9. 動物病院へ電話し、色・気づいた時刻・今の呼吸と意識を先に伝える

いちばん役に立つのは、元気なうちに一度見ておくこと

色の判断でもっとも確実なのはその犬自身の普段の色との比較です。ところが多くの飼い主は、具合が悪くなってから初めて歯ぐきを見ます。それでは「いつもと同じなのか違うのか」が分かりません。

元気なときに一度、明るい場所で歯ぐきと舌を見て、写真を撮っておいてください。この記事でいちばん実用的な部分です。もともと黒い色素がある犬なら、どこに色素があるかも分かります。

すぐ動物病院へ相談すべきサイン

次のどれか一つでも当てはまれば、時間帯にかかわらず動物病院へ電話してください。

  • 歯ぐき・舌が白い、蒼白、灰色・灰白色
  • 歯ぐき・舌が青紫(チアノーゼ)
  • 歯ぐき・舌が茶色っぽい、泥のような濁った色
  • 白目・歯ぐき・耳の内側の皮膚が黄色い
  • 歯ぐきに押しても消えない小さな赤紫の点が散っている
  • 歯ぐきの一部が非常に濃い色・黒く変色している
  • 押した色が戻るのが明らかに遅い、または明らかに速すぎる
  • 赤い粘膜に、荒い呼吸・ぐったり・体の熱さ・ふらつきが伴っている
  • 色の異常に、呼吸が速い・浅い・苦しそう、開口呼吸、横になれない、が伴っている
  • 色の異常に、倒れた・立てない・反応が鈍い、が伴っている
  • 色の異常に、出血・黒いタール状の便・鼻血・体のあざが伴っている
  • 普段の色を知っている自分が「いつもと違う」と感じた
  • 色が正常に見えても、呼吸が苦しい・ぐったりしている・倒れた・出血している

色が意味しうること|対応の一覧

救急の現場で使われるトリアージの資料には、粘膜の色と、その色が何を示しうるかの対応が整理されています。これは受診の優先度を決めるための整理であって、家庭で病名を決めるための表ではありません。同じ色でも背景はいくつもあり、区別には検査が必要です。

見えている色その色が示しうること家庭での扱い
ピンク赤血球の量が保たれ、血のめぐりも足りている状態ただし、色が正常でも異常がないという意味にはなりません
蒼白・白貧血、またはショック「蒼白・脱力」は、その場で急いで評価すべき状態として挙げられています。すぐ電話
青紫(チアノーゼ)・泥のような濁った色重度の低酸素、または血のめぐりが破綻した段階のショックすぐ電話。呼吸のようすと姿勢も一緒に伝える
黄色肝臓の病気や赤血球が壊れることによる、ビリルビンの上昇見えている時点で相当上がっています。その日のうちに受診
茶色っぽい・濁った色メトヘモグロビン血症(血液が酸素を運べなくなる変化)。中毒で起こることがありますすぐ電話。人用の薬を与えていたら、そのまま伝える
赤い血のめぐりが空回りしている状態(発熱・熱中症・全身の感染・ショックの初期など)のことがあります「血色がいい」とは限りません。呼吸・体の熱さ・元気と合わせて判断
小さな赤紫の点(点状出血)血小板の数や働きの異常押しても消えない点なら、元気に見えてもすぐ電話
赤み・腫れ・表面がめくれているその場所の化学的・熱・電気による損傷何に触れたか・かじったかを思い出して伝える
一部が非常に濃い色・黒いその部分の血流が途絶えている可能性すぐ電話(もともとある色素とは区別してください)

この記事は「色」というひとつの所見の読み方に絞っています。それぞれの背景にある病気の対応の手順までは扱いません。色は、受診の引き金として使ってください。

押した色の戻り方|「2秒以内なら安心」ではありません

歯ぐきを指で押して離すと、一瞬白くなってから色が戻ります。この戻る速さは毛細血管再充満時間(CRT)と呼ばれます。救急の資料では、1〜2秒が正常2秒を超えると血のめぐりが悪いか末梢の血管が縮んでいる状態を示しうるとされています。

見落とされがちなのが、その先です。1秒未満に速すぎるのも異常です。資料は、発熱・熱中症・血液が全身に分散してしまうタイプのショック・循環血液量が減ったショックの早期といった、心臓が空回り気味に働いている状態を示しうるとしています。

つまり「押したら2秒以内に戻ったから大丈夫」という使い方はできません。遅いのも速いのも異常です。

家庭で秒数を厳密に測ろうとしないでください。研究で使われる標準的な測り方は、決められた秒数だけ圧迫して計時装置で記録するもので、入院中の犬111頭で測った中央値は1.1秒でした。訓練を受けた獣医療者どうしでも、区別できる差はコンマ数秒の単位です。

飼い主が自宅で測ったCRTの正確さを評価した研究は、確認できませんでした。「明らかに遅い」「明らかに速い」と感じたら、その言葉のまま伝えれば十分です。

「チアノーゼが出ていない=酸素は足りている」ではありません

この記事でもっとも重要な部分です。舌や歯ぐきが紫になっていないことは、酸素が足りている証拠にはなりません。

チアノーゼは、血液中の還元ヘモグロビン(酸素と結びついていないヘモグロビン)が一定量を超えたときに、皮膚や粘膜が青みがかって見える現象です。獣医救急の標準的な教科書は、この閾値を血液1dLあたり5gを超えたときと説明しています。

ここに落とし穴があります。チアノーゼを起こすのは還元ヘモグロビンの「割合」ではなく「絶対量」です。そのため、ヘモグロビンそのものが減っている重度の貧血の犬では、たとえ酸素の状態が深刻でも、チアノーゼは現れません。危険な犬ほど、色が変わらないことがあるということです。

しかも、色の変化は遅れて出ます。呼吸器の資料は、開口呼吸と粘膜の色の変化(灰色・濃いピンク・青)について、これらは肺の働きの重大な障害を反映し、呼吸停止に先行しうると書いています。色が変わってから動くのでは、判断が遅れます。

家庭で先に変わるのは、色ではなく呼吸のほうです。呼吸が速い、浅い、お腹まで使っている、口を開けている、横になれずに座ったまま、首を伸ばした姿勢をとる。こうした変化があれば、色が何色であっても受診の対象です。

家庭で色を見るときの限界

粘膜の色は便利な手がかりですが、家庭で見るときには限界があります。限界を知らずに使うほうが危険です。

もともと歯ぐきが黒い・まだらな犬がいる

歯ぐきに黒い色素がある犬、まだらな犬は珍しくありません。残りの歯ぐきがピンクで健康なら、それ自体は正常です。色素の多い犬では、色素のない部分や舌など、色の分かるところで見てください。

この記事では、色素が濃い犬種の名前は挙げません。犬種と色素の関係を獣医学の資料で確認できなかったからです。大事なのは犬種ではなく、その犬の普段の色を知っていることです。

照明で見え方が変わる

電球色の照明の下、夕方の室内、スマートフォンの画面越しでは、同じ色が違って見えます。自然光か白っぽい照明の下で見てください。写真を撮るときは、フラッシュや加工を使わないでください。

なお、照明が判定にどれだけ影響するかを数値で示した研究は確認できませんでした。ここは医学的な根拠のある基準ではなく、実務上の注意として読んでください。

口を触らせてくれない犬、触ってはいけない犬がいる

痛みや不安のある動物は、飼い主に対しても予測がつかなくなります。獣医師会の飼い主向け資料は、けがをした動物を抱きしめようとしないこと、自分の顔を動物の口から遠ざけることを勧めています。

呼吸が苦しそうな犬に口を開けさせるのは、悪化させます。横になれない、開口呼吸をしている、首を伸ばしている犬の口には触らないでください。色が見られないことは、受診を遅らせる理由になりません。「見られなかった」と伝えれば十分です。

興奮している犬・痛がっている犬では、所見が本当の状態を映さないことがある

救急の資料は、強い痛みや不安のある犬は、代償性のショックと同じように見えることがあると明記しています。押さえつけられて興奮している状態で見た色や戻り方は、その犬の本当の循環の状態とは限りません。

逆に「興奮しているだけだろう」と自宅で決めつけることもできません。だから色は、受診するかどうかの引き金として使い、判定は病院に任せてください。

黄色は、見える前の段階がある

黄疸は、ビリルビンという色素が血液中にたまり、血漿や色素のない組織(皮膚・白目・口や粘膜)と尿を黄色く染めた状態です。目に見えてくるのは、総ビリルビンが2.5〜3mg/dLを超えてからだとされています。つまり、黄色く見えていないことはビリルビンが正常であることを意味しません。

反対のことも起こります。抱合型のビリルビンはアルブミンと結びついた形になり、肝臓でも腎臓でも排泄されずにゆっくり代謝されるため、もとの病気の治療がうまくいったあとも7〜14日ほど黄色さが残ることがあります。色だけで良し悪しを判断できないのは、このためです。

ただしこれは受診したあとの話です。自宅で黄色に気づいた段階では、いつでも受診の対象です。

今、自宅でできること

ここに書くのは治療ではありません。病院に着くまでに、これ以上悪くしないことと、診察に必要な情報をそろえることが目的です。

  1. 動物病院へ電話する。見えている色、気づいた時刻、今の呼吸と意識を先に伝える
  2. 明るい場所で、上唇をそっとめくって歯ぐきを見る(舌、まぶたの裏、白目でも構いません)
  3. 指で軽く押して離し、色の戻り方を見る(秒数を厳密に測らなくて構いません
  4. もともと色素が濃い犬は、色素のない部分か舌で見る
  5. 犬が嫌がったら中止する。呼吸が苦しそうな犬の口は開けさせない
  6. 可能なら写真を撮る(フラッシュや加工を使わない。同じ場所・同じ照明で複数枚あると比べられます)
  7. 落ち着いているときの1分間の呼吸数を数える
  8. 犬を涼しく静かな場所に移し、興奮させない。移動は最小限にする
  9. 誤食の心当たりを確認する(人用の薬、玉ねぎ類、殺鼠剤、拾い食い)。心当たりがあれば、その物と時刻をメモする
  10. 直前の出来事を思い出しておく(散歩、運動、暑い場所、事故、ケンカ、爪切りなど)

やってはいけないこと

以下は犬を危険にさらすか、受診を遅らせる行為です。ひとつも行わないでください。

  • 口を無理にこじ開ける、嫌がる犬を押さえつけて口の中を触る(悪化と、咬まれる事故につながります)
  • 呼吸が苦しそうな犬の口を開けさせる、顔を押さえる、仰向けにする
  • 呼吸が苦しそうな犬・胸を打った犬・短頭種に口輪をする(してはいけないと明記されています)
  • 「チアノーゼが出ていないから低酸素ではない」と判断する(貧血のある犬では、重度の低酸素でもチアノーゼは出ません)
  • 「押して2秒以内に戻ったから大丈夫」と受診を見送る(速すぎるのも異常です)
  • 色が正常だからという理由だけで、呼吸困難・虚脱・出血をそのままにする
  • 獣医師の指示なしに人用の解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン、イブプロフェン、アスピリンなど)を与える
  • 意識が落ちている犬に、水や食べ物を与える
  • 色を確かめることに時間をかけて、電話や受診を後回しにする
  • 自宅で色から病名を決めて、それに合わせた処置をする

人用の解熱鎮痛薬をすでに与えてしまった場合は、隠さずに、製品名・量・与えた時刻を伝えてください。粘膜が茶色っぽく濁って見える背景には、こうした薬による中毒が含まれます。

動物病院へ伝える情報

  • 気づいた時刻と、最後に普段どおりだった時刻
  • 見えている色(白い/灰色/青紫/茶色っぽい/黄色/赤い)と、見た場所(歯ぐき・舌・まぶたの裏・白目)
  • 普段の色との違い(もともと色素が濃いかどうか)
  • 押したときの色の戻り方(遅い/速い/分からない)
  • 落ち着いているときの1分間の呼吸数と、呼吸の様子(開口呼吸、姿勢、音)
  • 意識と反応、立てるかどうか、ふらつき
  • 出血・鼻血・黒い便・体のあざ・小さな点状の出血の有無
  • 犬種・年齢・体重、避妊去勢の有無
  • 持病、飲んでいる薬・サプリメント、直近の手術や処置
  • 誤食の可能性(人用の薬、玉ねぎ類、殺鼠剤、拾い食い)と、その時刻
  • 直前の出来事(散歩、運動、暑い場所、事故、ケンカ、爪切り)
  • 撮った写真(できれば同じ照明で複数枚)

この記事が扱っていないこと

ここまで書いてきたのは、「色」というひとつの所見の読み方と、その限界です。

色の背景にある個々の病気について、何が起きているのか、どう治療するのかは扱っていません。色は病名を当てる道具ではなく、受診の引き金として使うものだからです。関連する病気の解説は、このあとの関連記事にまとめています。

最後にもう一度だけ繰り返します。粘膜の色は、状態が崩れた結果として遅れて現れる指標です。色が正常に見えても、呼吸が苦しい・ぐったりしている・倒れた・出血しているなら、色にかかわらず受診してください。

夜間・休日でかかりつけの動物病院が閉まっている場合

夜間や休診日にかかりつけの病院が閉まっているときは、近くの夜間・救急動物病院を確認してください。向かう前に必ず電話をしてください。夜間は予約制のところや、受け入れられる状態かどうかがその時々で変わるところがあります。

電話では、「何が起きたか」「いつからか」「犬の年齢と体重」「今の様子」を伝えてください。その場でできることを教えてもらえたり、より適した病院を案内してもらえることがあります。

電話では、見えている色と、押したときの色の戻り方を最初に伝えてください。色が確認できなかった場合は「口を触らせてくれなかった」とそのまま伝えて構いません。あわせて、落ち着いているときの1分間の呼吸数を伝えると、緊急度の判断が早くなります。

あわせて読みたい

よくある質問

歯ぐきの色は、どこをどう見ればいいですか?

明るい場所で上唇をそっとめくり、歯ぐきを見てください。舌やまぶたの裏、白目でも構いません。健康な犬は薄いピンクで、指で軽く押すと一瞬白くなり、1〜2秒でピンクに戻ります。

もともと色素が濃い犬は、色素のない部分か舌で見てください。犬が嫌がったら中止してください。色が見られなくても受診はできます。

舌が紫になっていないので、酸素は足りていますか?

そうとは言えません。チアノーゼは、還元ヘモグロビンが血液1dLあたり5gを超えて初めて見えるとされています。しかもそれを決めるのは割合ではなく絶対量なので、貧血のある犬では、重度の低酸素でもチアノーゼは現れません。

さらに、粘膜の色の変化は「呼吸停止に先行しうる」遅い所見だとされています。判断材料にするのは色ではなく、呼吸数・呼吸の努力・姿勢(横になれるかどうか)です。

歯ぐきが真っ赤です。血色がいいということですか?

そうとは限りません。犬では、循環血液量が減ったショックの早い段階に、脈が速く、粘膜がピンクから赤く、押した色の戻りが速く、脈が強く跳ねるという状態が現れ、しかも意識ははっきりしていることが多いとされています。

押した色が1秒未満で戻るのは、発熱・熱中症・血液が全身に分散してしまうタイプのショック・ショックの早期といった状態を示しうる異常所見です。赤い粘膜に荒い呼吸・体の熱さ・ぐったりが伴うなら、すぐ連絡してください。

色が戻る秒数を測ったほうがいいですか?

家庭で厳密に測る必要はありません。正常は1〜2秒です。研究で使われる標準的な測り方は、決められた秒数だけ圧迫して計時装置で記録するもので、訓練を受けた獣医療者どうしでも区別できる差はコンマ数秒の単位でした。

飼い主が自宅で測ったCRTの正確さを評価した研究は確認できませんでした。「明らかに遅い」「明らかに速い」と感じたら、その言葉のまま伝えてください。

うちの犬は歯ぐきがもともと黒いので、色は見られませんか?

もともと色素が濃い犬、まだらな犬は珍しくなく、残りの歯ぐきがピンクで健康ならそれ自体は正常です。色素のない部分や舌など、色が分かるところで見てください。

元気なうちに一度見ておくと、その犬の普段の色が分かり、変化に気づけるようになります。

白目が黄色い気がします。急ぎますか?

急いでください。黄疸が目に見えてくるのは、総ビリルビンが2.5〜3mg/dLを超えてからだとされています。見えている時点で、すでに相当上がっているということです。

背景には、赤血球が壊れること、肝臓の病気、胆道が詰まることなどがあります。自宅で待つ理由がないので、その日のうちに受診してください。

歯ぐきに小さな赤紫の点があります

点状出血と呼ばれる所見で、血小板の数や働きの異常を示しうるとされています。押しても消えないことが手がかりです。

あざ、鼻血、黒いタール状の便、小さな傷からの出血が長引くといった変化を伴うことがあります。元気に見えても、受診の対象です。殺鼠剤に触れた可能性があるなら、そのことも伝えてください。

色は正常に見えますが、なんとなくおかしいです

色は遅れて出る指標です。ショックでは、脈が速いことが最初で唯一の所見であることが多いとされ、呼吸の障害では色の変化は呼吸停止に先行する遅い所見だとされています。

呼吸が苦しい・ぐったりしている・倒れた・出血しているなら、色にかかわらず受診の対象です。「普段と違う」という感覚は、色よりも早いことがあります。

まとめ

  • 粘膜の色は血のめぐりと酸素の状態が崩れた結果として遅れて出る指標。色が正常でも安全の証明にはならない
  • 白・蒼白・灰色は貧血やショックを、青紫や泥のような色は重度の低酸素や破綻したショックを、黄色はビリルビンの上昇を示しうる。いずれも待たない
  • 茶色っぽく濁った色は血液が酸素を運べなくなる変化で、中毒でも起こる。人用の薬を与えていたら必ず伝える
  • 押した色の戻りは1〜2秒が正常。遅いのも、1秒未満に速すぎるのも異常。家庭で秒数を測る必要はない
  • 「チアノーゼが出ていない=低酸素ではない」は成り立たない。チアノーゼは還元ヘモグロビンの絶対量で決まるため、貧血のある犬では現れない
  • 家庭で見るときの限界は三つ。もともと色素が濃い犬がいること、照明で見え方が変わること、口を触らせない・触ってはいけない犬がいること
  • 元気なうちに一度、明るい場所で歯ぐきと舌を見て写真を撮っておく。色の判断でいちばん確実なのは、その犬自身の普段の色との比較

参考資料

この記事は次の資料を参照して作成しました(2026年9月9日確認)。記載内容は一般的な情報であり、個々の症例の診断・治療に代わるものではありません。判断に迷うときは、自己判断せず動物病院に相談してください。

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