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野良猫がガリガリに痩せている理由と病気の可能性|保護前に知っておくべきこと

野良猫 ガリガリ 病気

 

 

街中で骨が浮き出るほどガリガリに痩せた野良猫を見かけたことはありませんか。痛々しい姿に心を痛め、「この子を助けてあげたい」と思う方も多いでしょう。しかし、保護する前に知っておくべき重要なことがあります。

この記事では、野良猫がガリガリに痩せてしまう原因、考えられる病気、そして保護を考える際に準備しておくべきことについて詳しく解説します。

 

 

野良猫がガリガリに痩せている主な原因

 

野良猫が極端に痩せている場合、大きく分けて二つの原因が考えられます。

 

1. 餌が十分に得られない環境

都市部でも地方でも、野良猫にとって安定した食料を確保することは容易ではありません。

 

餌不足になる主な理由:

  • 縄張り争いに負けている:猫社会には厳しい上下関係があり、弱い個体は良い餌場から追い出されてしまいます
  • 餌やりの減少:以前は餌をくれていた人がいなくなった、餌やり禁止の地域になったなど
  • 生息環境の変化:開発や再開発により、餌場となっていた場所がなくなることも
  • 高齢や障害:狩りの能力が低下し、自力で食料を確保できない
  • 母猫から早期に離された子猫:狩りの技術を学ぶ前に独り立ちを余儀なくされた場合

特に冬場は餌となる小動物も減少し、野良猫にとって最も過酷な季節となります。寒さでカロリー消費も増えるため、餌不足はさらに深刻化します。

 

2. 病気による衰弱

餌を食べていても痩せ続ける場合は、何らかの病気を抱えている可能性が高いです。外見だけでは判断が難しいこともありますが、以下のような病気が考えられます。

 

 

野良猫に多い病気とその症状

 

ガリガリに痩せた野良猫が抱えている可能性がある病気について、具体的に見ていきましょう。

 

猫エイズ(FIV:猫免疫不全ウイルス感染症)

野良猫の間で最も蔓延している病気の一つです。喧嘩による咬傷で感染することが多く、オス猫に多く見られます。

 

主な症状:

  • 初期は無症状だが、徐々に免疫力が低下
  • 口内炎がひどくなり、食事ができなくなる
  • 慢性的な下痢や食欲不振
  • 被毛の艶がなくなり、痩せていく
  • 発症すると治療法はなく、対症療法のみ

 

猫白血病ウイルス感染症(FeLV)

猫エイズと並んで野良猫に多い感染症です。唾液や血液を介して感染します。

 

主な症状:

  • 貧血による衰弱
  • リンパ腫などの腫瘍ができる
  • 免疫力低下により様々な感染症を併発
  • 食欲不振と体重減少
  • 予後は非常に厳しい病気

 

猫風邪(猫ウイルス性鼻気管炎・猫カリシウイルス感染症)

人間の風邪とは異なり、適切な治療をしないと命に関わることもあります。

 

主な症状:

  • くしゃみ、鼻水、目ヤニ
  • 口内炎や舌の潰瘍(特にカリシウイルス)
  • 発熱と食欲不振
  • 脱水症状
  • 慢性化すると体重が減少し続ける

 

寄生虫感染

野良猫の多くが何らかの寄生虫を持っています。

 

主な寄生虫:

  • 回虫・鉤虫:下痢や嘔吐、栄養不良を引き起こす
  • 条虫(サナダムシ):栄養を奪われ痩せていく
  • コクシジウム:特に子猫に多く、激しい下痢で衰弱
  • トキソプラズマ:免疫力が低下すると発症しやすい

 

慢性腎臓病

特に高齢の猫に多い病気です。野良猫は適切なケアを受けられないため、進行が早い傾向があります。

 

主な症状:

  • 多飲多尿
  • 食欲不振と体重減少
  • 嘔吐
  • 被毛の状態悪化
  • 進行すると尿毒症で命を落とす

 

糖尿病

肥満の猫に多いイメージがありますが、野良猫でも発症します。

 

主な症状:

  • 食べても痩せていく
  • 多飲多尿
  • 後ろ足の筋力低下
  • 治療しないと命に関わる

 

甲状腺機能亢進症

高齢猫に多く見られる病気です。

 

主な症状:

  • 食欲はあるのに痩せる
  • 落ち着きがなく攻撃的になる
  • 嘔吐や下痢
  • 被毛の状態が悪くなる

 

口内炎・歯周病

野良猫の多くが口腔内トラブルを抱えています。

 

主な症状:

  • 口臭がひどい
  • よだれが多い
  • 食べたくても痛くて食べられない
  • 痩せていく
  • 顔を触られることを嫌がる

 

腫瘍(がん)

高齢の野良猫に見られることがあります。

 

主な症状:

  • 急激な体重減少
  • しこりや腫れ
  • 食欲不振
  • 元気がなくなる

 

ガリガリの野良猫を見つけたら:保護する前に考えるべきこと

 

痩せた野良猫を見て「すぐに保護しなければ」と思う気持ちは自然なことです。しかし、その前に冷静に考えておくべき重要なポイントがあります。

 

自分自身に問いかけるべき質問

保護してから「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、まず自分に正直に答えを出しましょう。

 

1. この猫をどうしたいのか?

  • 自分で飼育する覚悟はあるか
  • 一時的に保護して里親を探すのか
  • 治療だけして元の場所に戻すのか(TNR活動)
  • 動物愛護団体に引き渡すつもりなのか

曖昧なまま保護すると、猫にとっても自分にとっても不幸な結果になりかねません。

 

2. 医療費を負担できるか?

これが最も重要な問題の一つです。

  • 初診と基本検査:15,000〜30,000円程度
  • 血液検査(ウイルス検査含む):10,000〜20,000円
  • 寄生虫駆除:3,000〜10,000円
  • 猫エイズ・白血病の場合の治療費:月数万円〜(対症療法)
  • 慢性腎臓病の治療:月10,000〜50,000円以上
  • 手術が必要な場合:数万円〜数十万円

病気が見つかった場合、治療費は数十万円に及ぶこともあります。「とりあえず病院に連れて行けばなんとかなる」という考えは危険です。

 

3. 飼育環境は整っているか?

  • すでに飼っているペットとの相性
  • 家族の理解と協力
  • 賃貸の場合、ペット飼育可能か
  • 隔離できる部屋があるか(感染症の可能性があるため)

4. 時間的・精神的余裕はあるか?

  • 通院に付き添える時間
  • 看病する体力と精神力
  • 長期的な介護が必要になる可能性

動物愛護団体への依存は現実的ではない

「困ったら動物愛護団体に引き取ってもらえばいい」と考えている方もいるかもしれませんが、これは大きな誤解です。

 

現実の状況:

  • どの団体もキャパシティオーバー:保護依頼は殺到しており、新たに受け入れる余裕がないのが現状
  • 病気の猫は特に難しい:医療費がかかる病気の猫は、団体の財政を圧迫するため受け入れが困難
  • 一時預かりボランティアの不足:保護できても預かる場所がない
  • 里親が見つからない:特に病気持ちや高齢の猫は里親探しが非常に困難

多くの愛護団体は個人のボランティアが運営しており、寄付金と自己負担で活動しています。すでに限界を超えて活動している団体がほとんどです。

 

動物病院での現実

保護した猫を病院に連れて行くと、獣医師から以下のような質問をされます。

  • 「この猫は飼われるのですか、それとも野良猫ですか?」
  • 「治療費はどこまで出せますか?」
  • 「重い病気が見つかった場合、どうされますか?」

答えを用意していないと、その場で困ることになります。病院も慈善事業ではないため、治療費の支払い能力がなければ、できる治療も限られてしまいます。

 

 

保護を決意したら:具体的なステップ

 

それでも保護すると決めた場合の手順を紹介します。

 

ステップ1:捕獲の準備

  • 捕獲器のレンタル:動物病院や愛護団体で借りられることも
  • 防護手袋:噛まれたり引っかかれたりする危険性
  • キャリーケース:通院に必須
  • タオルや毛布:猫を落ち着かせるため

ステップ2:隔離部屋の用意

他のペットや人への感染を防ぐため、最低2週間は隔離が必要です。

  • トイレ
  • 水と餌
  • 隠れられる場所(段ボールなど)
  • 暖かく静かな環境

ステップ3:動物病院での検査

初診時に伝えるべき情報:

  • 野良猫であること
  • どのくらいの期間観察していたか
  • 目に見える症状
  • 今後の飼育予定(飼うのか、里親を探すのか)

最低限必要な検査:

  • 身体検査
  • ウイルス検査(猫エイズ・白血病)
  • 糞便検査(寄生虫)
  • 血液検査(状態により)

 

ステップ4:治療とケア

獣医師の指示に従い、投薬や通院を続けます。栄養状態が悪い場合は、いきなり大量の餌を与えず、少しずつ胃腸を慣らしていきます。

 

ステップ5:今後の方針決定

  • 自分で飼う:去勢・避妊手術、ワクチン接種
  • 里親を探す:SNSや譲渡会の活用
  • TNR後にリターン:地域猫として見守る

 

保護できない場合にできること

 

「保護したいけれど現実的に難しい」という方も、できることはあります。

 

餌やりと見守り

  • 定期的に餌を与える(地域の理解を得て)
  • 水も忘れずに
  • 猫の様子を観察し、記録する
  • 急変があれば対応を考える

 

地域猫活動への参加

過酷な環境で苦しむ野良猫を減らすためには、地域猫活動が最も効果的な方法です。

 

地域猫活動とは:

  • TNR(Trap-Neuter-Return):捕獲・不妊手術・元の場所に戻す
  • 手術済みの猫には耳カットで目印
  • 地域住民の理解を得て、適切な餌やりと管理
  • 新たな不幸な命を増やさない

地域猫活動のメリット:

  • 繁殖を防ぎ、野良猫の数を徐々に減らせる
  • 発情期の鳴き声やスプレー行為が減り、地域トラブルも減少
  • 去勢・避妊後の猫は穏やかになり、縄張り争いも減る
  • 管理された猫は健康状態も把握しやすい

地域猫活動への参加方法

  1. 地域の活動団体を探す:自治体や動物愛護センターに問い合わせ
  2. 説明会や勉強会に参加:活動の理解を深める
  3. できることから始める:餌やり、見守り、募金など
  4. TNRの手伝い:捕獲や病院への搬送などのサポート

自治体によっては、TNRの手術費用を助成している場合もあります。

 

情報発信と啓発

  • SNSで地域猫活動について発信
  • 周囲の人に不妊手術の重要性を伝える
  • 無責任な餌やりと管理された餌やりの違いを説明

 

野良猫問題は社会全体で取り組むべき課題

 

ガリガリに痩せた野良猫を見て心を痛めるのは、優しさの証です。しかし、その優しさだけで保護に踏み切ると、思わぬ困難に直面することになります。

大切なのは、現実を直視し、自分にできることとできないことを見極めることです。

  • 保護するなら覚悟と準備が必要
  • 動物愛護団体は万能ではない
  • 医療費は想像以上にかかる可能性
  • 保護できなくても、できることはある

そして何より重要なのは、根本的な解決に向けた地域猫活動です。

一匹の猫を保護することも素晴らしいことですが、新たな不幸な命が生まれ続ける限り、問題は終わりません。TNR活動を通じて繁殖をコントロールし、徐々に野良猫の数を減らしていくことが、長期的には最も多くの猫を救う方法なのです。

 

 

まとめ

 

野良猫がガリガリに痩せている原因は、餌不足か病気、あるいはその両方です。病気の可能性がある場合は、猫エイズ、猫白血病、寄生虫、腎臓病など深刻な疾患が隠れていることもあります。

保護を考える際は、以下の点を冷静に検討してください。

  • 自分がこの猫をどうしたいのか、明確な答えを持つ
  • 医療費を負担できるかどうか現実的に考える
  • 動物愛護団体への依存は期待できない
  • 時間的・精神的・経済的余裕があるか確認

保護できない場合でも、地域猫活動に参加することで、多くの猫を救うことができます。TNRによる繁殖制限は、過酷な環境で生まれ、短い命を終える猫を減らす最も効果的な方法です。

一人ひとりができることは小さくても、多くの人が協力すれば大きな変化を生み出せます。野良猫問題は、私たち人間社会が作り出した問題です。だからこそ、私たちが責任を持って解決に取り組む必要があるのです。

まずは自分の住む地域で何ができるか、考えることから始めてみませんか。

 

 

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この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

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