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老猫が食べない、でも水は飲む|原因と飼い主ができること

老猫 食べない 水は飲む

 

 

愛猫が高齢になり、ごはんを食べなくなった。でも水は飲んでいる――。そんな状況に直面している飼い主さんは少なくありません。老猫が食事を拒否する姿を見るのは、とても辛いものです。この記事では、老猫が食べない原因と、飼い主として何ができるのか、そして最期に向けてどう向き合うべきかについて、私自身の経験も交えながらお伝えします。

 

 

老猫が食べないのに水は飲む理由

 

老猫が食べ物を拒否する一方で水分は摂取している場合、いくつかの理由が考えられます。

 

1. 口腔内のトラブル

高齢猫に非常に多いのが、歯周病や口内炎などの口腔内トラブルです。痛みがあるため固形のフードを食べることができないけれど、水なら飲める状態です。よだれが多い、口臭がきつい、口元を気にする仕草が見られる場合は、口腔内の問題を疑いましょう。

 

2. 消化器系の疾患

慢性腎不全、肝臓病、胃腸炎、腫瘍など、消化器系の病気によって食欲が低下することがあります。特に腎臓病は老猫に多く見られる疾患で、吐き気や倦怠感から食事を拒否するようになります。水を飲むのは、腎機能が低下することで脱水症状を補おうとする体の反応かもしれません。

 

3. 嗅覚や味覚の低下

猫は年齢とともに嗅覚が衰えます。猫にとって食事は匂いが重要な要素なので、匂いを感じにくくなると食欲が減退します。フードの温度を少し温めて匂いを立たせると食べることもあります。

 

4. 認知症

猫も高齢になると認知機能が低下し、食事の場所がわからなくなったり、食べ方を忘れてしまったりすることがあります。夜鳴きをする、トイレの場所がわからなくなる、といった症状が伴う場合は認知症の可能性があります。

 

5. ストレスや環境の変化

引っ越し、同居猫の死、飼い主の生活パターンの変化など、環境の変化が食欲不振の原因になることもあります。高齢猫は特に変化に敏感です。

 

6. 単純な老化

体の機能が全体的に低下し、食欲そのものが減退している可能性もあります。内臓機能の衰え、代謝の低下、活動量の減少などが複合的に影響しています。

 

 

まずは原因を特定することが最優先

 

老猫が食べない場合、まずは動物病院で原因を特定することが何よりも大切です。血液検査、レントゲン、エコー検査などを通じて、体の中で何が起きているのかを正確に把握しましょう。

原因がはっきりすれば、対処法も見えてきます。歯周病なら抜歯処置、腎臓病なら皮下輸液や投薬、口内炎ならステロイド治療など、症状に応じた治療法があります。

 

治療できる症状なら積極的に治療を

もし検査の結果、治療によって改善が見込める症状であれば、積極的に治療を受けることをおすすめします。適切な治療によって食欲が戻り、再び元気に過ごせる期間を延ばすことができるからです。

例えば、歯周病による痛みで食べられなかった猫が、抜歯後にまた食欲を取り戻すケースは少なくありません。慢性腎不全でも、初期段階で適切な食事療法や皮下輸液を始めれば、数年間QOL(生活の質)を維持できることがあります。

治療費の問題もあるかもしれませんが、愛猫の苦痛を取り除き、残された時間を少しでも快適に過ごさせてあげられるなら、できる範囲で治療を試みる価値はあります。

 

 

治る見込みがない場合の選択

 

一方で、検査の結果、治療しても治る見込みがない、あるいは回復の可能性が極めて低いと診断されることもあります。末期の癌、進行した腎不全、多臓器不全など、老衰に近い状態です。

このような状況で、延命治療を行うかどうかは、飼い主にとって非常に重い決断です。

 

延命治療について深く考える

現代の獣医療は進歩しており、点滴や胃ろう、強制給餌などによって、猫の命を延ばすことは技術的に可能です。人間の医療と同じように、一秒でも長く生きることはできるのです。

しかし、それが本当に猫にとって幸せなことなのか――。私たち飼い主は、この問いと真剣に向き合う必要があります。

 

私自身の経験から

私は祖父の延命治療を経験しました。祖父は3年間、植物人間状態でベッドの上に寝たきりでした。胃ろうと点滴だけで生かされ、意識もなく、やせ細った体で最期を迎えました。

その3年間、祖父が何を感じていたのかは誰にもわかりません。もしかしたら何も感じていなかったかもしれません。でも、その姿を見続けた家族は、「これで良かったのか」という疑問をずっと抱え続けることになりました。

この経験から、私は自分自身についても、ペットについても、延命治療はしないと決めています。もちろん、これは個人の価値観であり、人それぞれ考え方は違います。延命治療を選択することを否定するつもりは全くありません。

ただ、延命治療を始める前に、一度立ち止まって考えてほしいのです。

 

延命治療を考える際のポイント

延命治療を検討する際は、以下の点について獣医師とよく話し合い、自分自身の心と向き合ってください。

 

1. 猫自身に苦痛はないか

治療そのものが猫にストレスや痛みを与えていないか。毎日の注射や強制給餌が、猫を苦しめていないか。

 

2. 猫らしい生活ができているか

ただ生きているだけでなく、猫として最低限の快適さや尊厳を保てているか。好きな場所で眠り、少しでも自分の意思で動けているか。

 

3. 回復の見込みは本当にあるのか

一時的に延命できても、それは「回復」ではなく「死を先延ばしにしているだけ」ではないか。

 

4. 飼い主自身の気持ち

「猫のため」と思っている治療が、実は「自分が別れを受け入れられないため」の治療になっていないか。

これらを冷静に見つめることは、とても辛く難しいことです。でも、愛する猫のために、避けては通れない問いでもあります。

 

 

老猫が楽に逝ける準備をする

 

治る見込みがなく、延命治療をしないと決めた場合、または自然に看取ると決めた場合、飼い主ができることは「老猫が苦痛なく、穏やかに最期を迎えられる環境を整えること」です。

 

1. 痛みを和らげる緩和ケア

治療をしないことと、何もしないことは違います。痛みや不快感を和らげる緩和ケアは積極的に行いましょう。痛み止めの投薬や、必要最低限の皮下輸液などは、猫の苦痛を軽減します。

 

2. 食べられるものを少しでも

食べないからといって無理に食べさせる必要はありませんが、もし食べられるものがあれば、それを与えてあげてください。好物のおやつや、ウェットフードを温めたもの、鶏のゆで汁など、少しでも口にしてくれるものを探しましょう。

栄養バランスは二の次です。この時期は、「猫が喜んで食べられるもの」が最優先です。

 

3. 静かで快適な環境

猫が安心できる静かな場所を用意しましょう。柔らかい毛布、適度な温度、薄暗い環境。猫が好きな場所で、穏やかに過ごせるように配慮します。

 

4. そばにいる時間

最期の時間、できるだけそばにいてあげてください。声をかけたり、優しく撫でたり。猫は飼い主の存在を感じることで安心します。

一人ぼっちで逝かせないように、仕事の調整や家族との連携を考えておくことも大切です。

 

5. 在宅での看取りか、病院での安楽死か

自然に看取るか、苦しみが大きい場合は安楽死を選ぶか。これも非常に難しい選択です。

安楽死は「殺す」ことではなく、「苦しみから解放してあげる」選択肢の一つです。呼吸困難や激しい痛みで苦しんでいる場合、それを長引かせることが必ずしも優しさとは限りません。

獣医師とよく相談し、猫の状態を見ながら、最善の選択を考えましょう。

 

 

看取った後の気持ちと向き合う

 

どのような最期を迎えたとしても、多くの飼い主は「もっとこうすればよかった」「あのとき別の選択をしていれば」と後悔します。これは自然な感情です。

でも、大切なのは、あなたが愛猫のために悩み、考え、選択したということです。完璧な看取りなどありません。その時々で、あなたができる最善を尽くしたのなら、それでいいのです。

 

ペットロスと向き合う

愛猫を失った悲しみは、時間をかけてゆっくり癒えていきます。無理に忘れようとせず、悲しみを感じることを自分に許してあげてください。

写真を見返したり、思い出を誰かに話したり、手紙を書いたり。自分なりの方法で、グリーフケアをしていきましょう。

 

 

まとめ:猫の幸せを第一に考える

 

老猫が食べなくなったとき、水だけは飲んでいる状態は、体が最期に向かっているサインかもしれません。

まずは原因を特定するために動物病院を受診すること。治療で改善が見込めるなら積極的に治療を。そして、治る見込みがない場合は、延命治療をするかどうかを深く考えること。

延命治療は決して悪いことではありません。しかし、「猫にとっての幸せは何か」「苦痛を長引かせていないか」という視点を忘れずに判断してほしいのです。

私たち飼い主にできることは、最期まで猫が猫らしく、苦痛なく、愛されていると感じながら過ごせる環境を整えることです。

どのような選択をしても、あなたが愛猫のことを想い、悩み、考えたその時間こそが、何よりも大切な愛情の証です。

老猫との最期の時間が、あなたにとっても猫にとっても、穏やかで愛に満ちたものになることを願っています。

 

 

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この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

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