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さくら猫は殺処分されない理由と、地域で安全に暮らすために私たちができること

さくら猫は殺処分されない

 

 

はじめに

 

野良猫が増え続けていた日本の社会において、「さくら猫」という存在をご存知でしょうか。さくら猫とは、避妊・去勢手術を受けた印として耳の先端をさくらの花びらのように桜色でカットされた野良猫のことです。このさくら猫について、「捕まったら殺処分されるのではないか」という心配を持つ人も少なくありません。しかし、実は現在の日本では、さくら猫は殺処分される心配がほぼないのです。本記事では、その理由と、さくら猫が地域で安全に暮らすための方法についてご説明します。

 

 

現在の日本の猫に関する法律が大きく変わった

 

愛護動物としての猫の位置づけ

 

猫は「動物愛護管理法」により、愛護動物として法律で保護されています。これは犬や猫などの動物が、人間の生活に欠かせない存在であり、その生命と身体に対する尊重が必要であるという考え方に基づいています。愛護動物として指定されているということは、単なる物ではなく、一定の権利が認められているということを意味します。

この法律に基づいて、各自治体には動物愛護センターが設置されており、迷子動物の保護や動物虐待の対応などを行っています。しかし、これまでの動物愛護センターの在り方は、社会全体で大きな変化を遂げてきたのです。

 

 

動物愛護管理法の改正と引取拒否制度の導入

 

動物愛護管理法は何度も改正されてきましたが、特に重要な改正の一つが「引取拒否」が可能になったという点です。かつての動物愛護センターは、飼い主が持ち込んだ動物や、捕獲された動物をすべて受け入れる義務がありました。しかし、この制度では動物愛護センターが常に満杯の状態になり、多くの動物が殺処分される悪循環に陥っていました。

改正された動物愛護管理法により、動物愛護センターは特定の条件下での引取を拒否することができるようになりました。例えば、飼い主が飼育可能にもかかわらず安易に手放そうとする場合や、外で暮らしている猫(野良猫)を持ち込む場合などです。この改正は、無責任な飼い主を減らし、また地域で暮らす猫を無闇に殺処分しないという方針へのシフトを象徴しています。

 

 

さくら猫が殺処分されない理由

 

さくら猫とは何か

 

さくら猫についてもっと詳しく説明すると、これは動物愛護団体やボランティアが中心となって進めている「TNR活動」(トラップ・ニューター・リターンの頭文字)の結果として存在しています。TNR活動とは、野良猫を一時的に捕獲(トラップ)し、避妊・去勢手術(ニューター)を行った後、もとの生活地域に戻す(リターン)というものです。

手術を行った猫の目印として、耳の先端を桜の花びらのような形にカットすることから、これが「さくら猫」と呼ばれるようになりました。このマーク(耳カット)があることで、すでに手術済みであることが一目瞭然となり、何度も手術を受けるという無駄を避けることができます。

 

 

さくら猫は避妊去勢済みであることが周知されている

 

さくら猫が殺処分されない最大の理由は、その耳のカットが「すでに避妊・去勢手術を受けている」ことの証だからです。一般的に、野良猫の数が増え続けることが社会問題となっている日本では、動物愛護センターや自治体も、避妊・去勢手術を受けた猫に対して積極的な保護や殺処分は行いません。

むしろ、さくら猫のような避妊・去勢済みの野良猫は、今後新たに生まれてくる猫の数を減らすための「社会的な資産」とも言えます。そのため、わざわざ捕まえて殺処分するような行為は、動物愛護の観点からも、合理的な観点からも行われないのです。

 

 

外で暮らす猫に対する法律の考え方の変化

 

かつては、野良猫は「街の害獣」として扱われることもありました。しかし、現在では愛護動物としての位置づけが強化され、単に「捕獲して処分する」という対応は取られなくなってきました。外で暮らす猫であっても、一定の生命の尊厳が認められ、その猫が具体的に危害を加えるなどの特別な理由がない限り、動物愛護センターでは保護や一時預かりを行う方針へとシフトしています。

さらに、TNR活動によるさくら猫の増加により、多くの地域で「地域猫」という概念が浸透するようになりました。これは、特定の地域で暮らす猫を、その地域の住民全体で見守るというものです。この概念の浸透に伴い、さくら猫に対する社会的な理解や受容も進んできたのです。

 

 

さくら猫が安楽死の対象になる可能性がある場合

 

瀕死状態で動物愛護センターに連れ込まれた場合

 

しかし、ここで重要な例外があります。さくら猫であっても、重病や深刻な怪我によって瀕死の状態で動物愛護センターに連れ込まれた場合、苦痛を取り除くために「安楽死」の処置が取られる可能性があります。これは殺処分とは異なる概念で、動物の苦痛を軽減するための医学的判断に基づいた処置です。

例えば、交通事故で大怪我を負った猫や、末期の病気で苦しんでいる猫など、回復の見込みがほぼなく、かつその苦痛が著しい場合、獣医師の判断により安楽死が選択されることがあります。これは猫の福祉を第一に考えた人道的な判断であり、無責任な殺処分とは根本的に異なるものです。

 

 

通常の引取は拒否されることもある

 

一方、さくら猫が外で元気に暮らしている場合、動物愛護センターに持ち込まれたとしても、引取が拒否される可能性が高いです。これは先述の改正動物愛護管理法に基づくもので、自治体によっては「外で暮らす健康な猫については、もとの生活地に返すことが原則」としているところもあります。

つまり、さくら猫が捕まったからといって、必ずしも動物愛護センターに保護されるわけではなく、また保護されたとしても、健康な状態であれば殺処分されることはないということなのです。

 

 

さくら猫が地域で安全に暮らすためにできること

 

地域全体での理解と受容の推進

 

さくら猫が安全に地域で暮らすためには、まずその地域の住民全体が「地域猫」という概念を理解し、受け入れることが重要です。さくら猫の存在を知らない住民が、それを虐待や遺棄と勘違いすることもあります。自治会やコミュニティを通じて、さくら猫についての情報発信を行い、理解を深めることが大切です。

また、動物愛護団体やボランティアが、定期的に地域住民に対して「地域猫」の重要性や、TNR活動の意義について説明する機会を設けることも効果的です。教育と啓発を通じて、さくら猫に対する偏見や誤解を払拭することができます。

 

 

適切な給餌と環境管理

 

さくら猫が地域で健康に暮らすためには、適切な給餌と環境管理が不可欠です。ただし、無責任な給餌は、猫の数の増加や、近所の住民との問題につながる可能性があります。そのため、給餌を行う場合は、以下の点に注意する必要があります。

まず、給餌の時間と場所を決めて、その地域の住民に周知することが重要です。これにより、猫が特定の時間と場所に集まるようになり、その後の後片付けが容易になります。また、給餌後の食べ残しは必ず片付け、不衛生な状態を作らないことが大切です。さらに、給餌を行う際には、その地域の住民から了解を得ることが望ましいです。

 

 

定期的な健康管理と医療サポート

 

さくら猫が健康に暮らすためには、定期的な健康管理も重要です。感染症や怪我など、野外で暮らす猫は様々なリスクにさらされています。動物愛護団体やボランティア、また公共の動物愛護センターと連携して、予防接種や医学的なケアを提供することが理想的です。

自治体によっては、さくら猫を含む地域猫の医療費を助成する制度を設けているところもあります。こうした制度を活用することで、さくら猫が必要な医療を受けられるようになり、その結果として地域全体の動物福祉が向上します。

 

 

猫が安全に過ごせる居場所の提供

 

さくら猫が安全に地域で暮らすためには、休息や避難ができる「居場所」が必要です。例えば、段ボール箱を利用した簡易的なシェルターや、物置の一角など、猫が身を隠せるスペースを提供することが有効です。特に冬場は、こうした居場所が猫の生命線となるため、地域全体で複数の避難場所を確保することが望ましいです。

また、猫の行動を観察し、猫がよく集まる場所や好む環境を理解することも大切です。その情報を基に、より快適で安全な居場所を工夫することで、さくら猫がその地域で長く安定して暮らすことができるようになります。

 

 

虐待や危害からの保護

 

残念ながら、動物愛護の意識が低い地域では、野良猫が虐待される事例もあります。さくら猫を含む地域猫を守るためには、こうした危害から猫を保護することも重要です。地域内に防犯カメラを設置したり、猫が被害を受けている形跡を見つけたら、すぐに動物愛護センターや警察に相談したりすることが大切です。

また、地域の住民が相互に見守り、虐待の疑いがある行為を目撃した場合は、迷わず関係機関に通報することも、さくら猫を守るための重要な行動です。

 

 

TNR活動の推進

 

さくら猫自体の存在が、地域における野良猫問題の長期的な解決につながります。そのため、自分たちの地域でまだTNR活動が十分に行われていない場合は、動物愛護団体と協力してこの活動を推進することが有効です。

TNR活動により、野良猫の数を適切に管理しながら、その猫たちの苦痛を最小限にすることができます。結果として、地域住民との軋轢も減り、さくら猫を含むすべての猫が、より安全で安定した環境で暮らすことができるようになります。

 

 

さくら猫と私たちの社会責任

 

法律と倫理の両面からの考察

 

さくら猫が殺処分されないようになったことは、単なる法律の変更ではなく、社会全体の動物に対する倫理観の進歩を示しています。愛護動物としての猫の地位が強化され、その生命が尊重されるようになったことは、人間社会の成熟を表しているとも言えます。

しかし同時に、これは私たち一人ひとりが、さくら猫を含む地域猫に対して、一定の社会的責任を有することを意味します。法律が保護してくれるだけでなく、私たちが積極的に行動することで、初めてさくら猫が本当に安全に暮らせる環境が実現するのです。

 

 

地域全体での取り組みの重要性

 

さくら猫が安全に地域で暮らすためには、動物愛護センターの法律的な対応だけでは不十分です。その地域に暮らす住民一人ひとりが、さくら猫の存在を理解し、受け入れ、サポートすることが不可欠です。

このような地域全体での取り組みを通じて、初めて「猫が安全に暮らせる社会」が実現します。さくら猫という存在が、その地域にとって単なる「厄介者」ではなく、「共に暮らす仲間」として認識されることが大切なのです。

 

 

まとめ

 

さくら猫は、動物愛護管理法の改正により、基本的に殺処分されない存在となっています。特に、避妊・去勢手術を受けているというその特徴から、むしろ社会的に価値のある存在として認識されるようになってきました。

外で暮らす猫も愛護動物として保護される一方で、動物愛護センターは引取拒否が可能になり、無責任な制度の悪用が防がれています。ただし、瀕死の状態で連れ込まれた猫については、苦痛を取り除くための安楽死処置が取られる可能性があることも、理解しておくべき点です。

さくら猫が地域で安全に暮らすためには、地域全体での理解と協力、適切な給餌と環境管理、定期的な健康管理、安全な居場所の提供、虐待からの保護、そしてTNR活動の推進が必要です。これらの取り組みを通じて、さくら猫を含むすべての動物が、尊厳を持って地域で暮らせる社会を目指すことが、私たちの社会的責任なのです。

 

 

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この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

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