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メガソーラーと熊の出没問題:自然破壊の代償を考える

メガソーラー 熊

 

 

はじめに:再生可能エネルギーと自然保護のジレンマ

 

近年、日本各地で熊の出没が相次ぎ、人里への出没件数は過去最多を更新しています。同時期に全国で急速に増加したのが、大規模太陽光発電施設、いわゆる「メガソーラー」です。この二つの現象に因果関係はあるのでしょうか。

私は再生可能エネルギーとしてのメガソーラーの必要性を理解しています。脱炭素社会の実現に向けて、太陽光発電は重要な役割を果たすでしょう。しかし、豊かな森林を伐採し、自然環境を破壊してまで設置することには強い疑問を感じざるを得ません。

本記事では、メガソーラー建設と熊の出没の関係、そして私たちが次世代に残すべき社会のあり方について考えていきます。

 

 

メガソーラーと熊の出没:因果関係は証明されているのか

 

専門家の間でも意見が分かれる問題

メガソーラー建設と熊の出没増加の因果関係については、専門家の間でも意見が分かれています。

 

因果関係を指摘する声では、森林伐採によって熊の生息地が縮小し、餌場が失われたことで人里に降りてくるようになったという見解があります。特に山間部でのメガソーラー建設が進んだ地域では、熊の目撃情報が増加している事例が報告されています。

一方、慎重な立場をとる研究者は、熊の出没増加には複合的な要因があると指摘します。ドングリなどの餌となる堅果類の不作、個体数の増加、里山の管理放棄による緩衝地帯の消失など、さまざまな要素が絡み合っているというのです。

 

 

森林伐採がもたらす生態系への影響

因果関係の証明は難しくとも、メガソーラー建設のための森林伐採が野生動物の生態系に影響を与えることは否定できません。

熊は広大な行動圏を持つ動物です。オスのツキノワグマで約50〜100平方キロメートル、メスでも約10〜30平方キロメートルの範囲を移動します。森林の一部が突如として太陽光パネルで覆われれば、移動経路の分断や餌場の喪失につながります。

また、森林は熊だけでなく、シカ、イノシシ、小型哺乳類、鳥類など多様な生物の生息空間です。生態系のバランスが崩れることで、予期せぬ連鎖反応が起きる可能性があります。

 

 

メガソーラーが自然界に及ぼす影響:熊以外の問題

 

土砂災害リスクの増加

森林は「緑のダム」とも呼ばれ、樹木の根が土壌を保持し、降雨時の水の流出を緩やかにする役割を果たしています。広大な森林を伐採してメガソーラーを設置すると、この保水機能が失われます。

実際に、メガソーラー建設後に周辺地域で土砂災害が発生した事例も報告されています。豪雨時には太陽光パネルの設置された斜面から大量の雨水が一気に流れ出し、土砂崩れや洪水のリスクが高まるのです。

 

 

水質汚濁と生態系への影響

森林伐採に伴う土壌流出は、河川や湖沼の水質汚濁を引き起こします。濁った水は魚類や水生昆虫の生息環境を悪化させ、水辺の生態系全体に悪影響を及ぼします。

また、太陽光パネルから流出する可能性のある化学物質や、除草剤の使用なども懸念されています。メガソーラー施設の多くは雑草管理のために除草剤を散布しており、これが周辺環境に与える長期的影響は十分に検証されていません。

 

 

景観と地域コミュニティへの影響

山間部の美しい自然景観が、一面の太陽光パネルに変わる光景は、地域住民にとって心理的な喪失感をもたらします。観光資源としての価値が損なわれ、地域経済にマイナスの影響を与えるケースもあります。

さらに、大規模開発に伴う住民との合意形成の不足、反射光による生活への影響、パネルからの輻射熱による局所的な気温上昇なども問題視されています。

 

 

国内の森林はどれくらいメガソーラーになったのか

 

太陽光発電の急速な拡大

2012年の固定価格買取制度(FIT)導入以降、日本国内の太陽光発電設備は急激に増加しました。経済産業省のデータによれば、太陽光発電の導入量は2012年から2023年までの間に約10倍以上に増加しています。

 

 

森林転用の実態

正確な統計を把握することは困難ですが、林野庁の資料によると、太陽光発電施設のための林地開発許可面積は累計で数千ヘクタール規模に達しています。特に2012年以降、山林を転用した太陽光発電施設の申請が急増しました。

日本の国土面積約3,780万ヘクタールのうち、森林面積は約2,500万ヘクタール(約66%)を占めます。メガソーラーによって失われた森林の割合は数値上はわずかに見えるかもしれませんが、問題は「どこの」森林が失われたかです。

生物多様性が豊かな天然林や、水源涵養機能の高い森林が開発されている事例も少なくありません。数字の大小ではなく、失われた森林の「質」こそが重要なのです。

 

 

便利さの追求と電力消費の増加

 

私たちのライフスタイルと電力需要

現代社会を支える電力。スマートフォン、エアコン、電気自動車、データセンター――私たちの生活はますます電力に依存しています。デジタル化の進展により、電力需要は今後も増加し続けると予測されています。

総務省の統計によれば、日本の電力消費量は長期的には増加傾向にあり、特に産業部門と業務部門での需要が高まっています。私たちが求める便利さや快適さは、確実に電力消費の増加につながっているのです。

 

 

電力需要と自然破壊の連鎖

電力需要が増えれば、それを賄うための発電施設が必要になります。火力発電は気候変動を加速させ、原子力発電には安全性の問題があります。だからこそ再生可能エネルギーへの期待が高まるわけですが、そのために自然を破壊するのでは本末転倒ではないでしょうか。

太陽光発電の推進は重要です。しかし、それは既存の建物の屋根や、すでに開発された土地、遊休地などを優先的に活用すべきです。わざわざ森林を伐採してまで設置する必要性には疑問が残ります。

 

 

省エネルギーの視点の重要性

再生可能エネルギーの拡大と同時に、私たち一人ひとりが電力消費を見直すことも不可欠です。必要以上の照明、過度な冷暖房、待機電力の無駄遣い――日常生活の中で削減できる電力は数多くあります。

企業レベルでも、エネルギー効率の高い設備への更新や、業務プロセスの見直しによる省エネルギーが求められています。「作る」ことだけでなく、「使わない」「減らす」という視点が、持続可能な社会には欠かせません。

 

 

次世代に残したい社会とは:私たちが問われていること

 

世代間の責任と倫理

私たちは今、どんな社会を次の世代に残したいのか、という根本的な問いに直面しています。経済成長と便利さを追求した結果、子どもたちが受け継ぐのは緑豊かな森林でしょうか、それとも太陽光パネルと土砂災害リスクでしょうか。

自然環境は一度失われると、回復に数十年、数百年という時間を要します。今日の意思決定が、未来の世代の選択肢を奪ってしまう可能性があることを、私たちは真剣に考えなければなりません。

 

 

バランスの取れたエネルギー政策

再生可能エネルギーの推進と自然保護は、対立するものではありません。適切な場所に、適切な規模で、環境への影響を最小限に抑えながら太陽光発電を導入することは可能です。

例えば、屋根置き型太陽光発電の普及促進、遊休地や工業用地の活用、農業と太陽光発電を両立させる「ソーラーシェアリング」など、森林を伐採せずに太陽光発電を拡大する方法は存在します。

また、太陽光だけでなく、風力、地熱、小水力など、地域の特性に応じた多様な再生可能エネルギーのミックスも重要です。一つのエネルギー源に過度に依存することは、新たなリスクを生み出します。

 

 

地域主導の合意形成

エネルギー政策は、地域住民の声を十分に反映したものでなければなりません。外部資本による大規模開発が地域の反対を押し切って進められる事例は、持続可能な社会のあり方とは相容れません。

地域の自然環境、文化、生活を最もよく知るのは、そこに暮らす人々です。彼らの合意と参加なくして、真に持続可能なエネルギーシステムは構築できないでしょう。

 

 

メガソーラーとの向き合い方:賢明な選択のために

 

環境アセスメントの強化

メガソーラー建設にあたっては、より厳格な環境影響評価が必要です。生態系への影響、土砂災害リスク、水質への影響、景観への配慮など、多角的な視点からの事前評価が欠かせません。

特に森林を伐採する場合は、その森林の生態学的価値、水源涵養機能、野生動物の生息状況などを詳細に調査し、代替地の検討を義務付けるべきです。

 

 

ゾーニングの導入

自治体レベルで、太陽光発電施設の設置に適した地域と保全すべき地域を明確に区分する「ゾーニング」の導入が広がっています。

生物多様性の保全上重要な地域、土砂災害リスクの高い急傾斜地、景観上重要な地域などは保全地域とし、一方で既開発地や遊休地は促進地域として明示することで、適切な立地誘導が可能になります。

 

 

市民の声を政策に反映させる

私たち市民一人ひとりができることは何でしょうか。まずは、自分の住む地域でどのようなエネルギー開発が計画されているかに関心を持つことです。

地域の説明会や公聴会に参加する、自治体のパブリックコメントに意見を述べる、環境保全に取り組む団体を支援するなど、市民として声を上げる方法は様々あります。無関心こそが、望まない開発を許してしまう最大の要因なのです。

 

 

まとめ:持続可能な未来のために

 

熊の出没とメガソーラー建設の因果関係は、科学的に完全には証明されていません。しかし、森林伐採が野生動物の生息環境に影響を与えることは明らかです。

メガソーラーがもたらす影響は熊だけではありません。土砂災害リスク、水質汚濁、生態系の破壊、景観の喪失など、多岐にわたる問題が存在します。日本の森林のうち数千ヘクタールがすでに太陽光発電施設に転用されており、その質的損失は見過ごせません。

私たちの便利で快適な生活は、増大する電力消費に支えられています。その電力を賄うために自然を破壊するという矛盾に、私たちは向き合わなければなりません。

再生可能エネルギーの推進は必要です。しかし、それは自然を犠牲にしてではなく、既存のインフラや遊休地を活用し、地域の合意のもとで進められるべきです。同時に、省エネルギーによって電力需要そのものを減らす努力も不可欠です。

どんな社会を次の世代に残したいのか。この問いに対する答えは、私たち一人ひとりの選択と行動の中にあります。経済性や便利さだけでなく、自然との共生、生物多様性の保全、地域コミュニティの尊重といった価値を大切にする社会。それこそが、真の意味で持続可能な社会ではないでしょうか。

メガソーラーのすべてに反対するわけではありません。しかし、豊かな森林を犠牲にしてまで進めることには、立ち止まって考える必要があります。今この瞬間の選択が、未来を決めるのですから。

 

 

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この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

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