里山のメリット・デメリットを徹底解説!野生動物との共存に向けて
はじめに:里山とは何か
「里山」という言葉を耳にすることはあっても、その本当の意味や重要性を理解している人は意外と少ないかもしれません。里山とは、原生的な自然と都市部や農村の集落との中間に位置し、人の手が適度に加えられた環境のことを指します。
具体的には、集落を取り囲む二次林(伐採後に再生した森林)、農地、ため池、草原、雑木林などで構成される地域全体を示します。驚くことに、日本の国土の約4割が里山といわれており、私たちの暮らしと深く結びついた環境なのです。
本記事では、里山が持つメリットとデメリットを詳しく解説し、野生動物との共存という観点から、これからの里山のあり方について考えていきます。
里山の7つの大きなメリット
1. 生物多様性の宝庫
里山の最大のメリットは、多種多様な生物の生息地となっていることです。人が適度に手を加えることで、さまざまな環境が混在し、それぞれの環境に適応した生物が共存できる空間が生まれます。
実は、日本で絶滅の危機にある種の半分以上が里山に生息しているといわれています。クヌギやコナラなどの落葉樹林、湿地、草原など、多様な環境が狭い範囲に存在することで、昆虫、鳥類、哺乳類、両生類など、実に豊かな生態系が維持されているのです。
2. 野生動物と人間社会の緩衝地帯
里山は、深い山の奥に生息する野生動物と、人が暮らす集落との間の「緩衝地帯」として重要な役割を果たしています。
かつて里山には日常的に人が立ち入り、植林や伐採、山菜採取などを行っていました。また、薪などを盗まれないよう見回りも行われていました。このような活発な人間活動があったために、野生動物は里山より人里にめったに降りてこなかったのです。
つまり、里山があることで野生動物が住む世界と人が住む世界が分離され、お互いの生活圏を守ることができていたのです。
3. 水源の涵養と災害の防止
里山や森林には、台風や集中豪雨などの自然災害から私たちを守る効果があります。豊かな土壌は、コンクリートの地面とは比較にならないほど多くの水を吸収します。
雨水が土壌にゆっくりと浸透し、地下水として蓄えられることで、以下のような効果が得られます。
- 洪水の緩和
- 水源の確保
- 土砂崩れの防止
- 河川への急激な流入の防止
人里の周辺に里山や森林の環境が整っていれば、市街地での水害被害を大幅に抑えることができるのです。
4. 食料や木材などの資源供給
里山は、昔から人々に豊かな恵みをもたらしてきました。
- 米や野菜などの農作物
- 山菜やきのこ類
- 薪や木炭などの燃料
- 建材としての木材
- 肥料となる落ち葉
これらの自然資源を持続可能な形で利用することで、地域の人々の暮らしを支えてきたのです。
5. 美しい景観と文化の継承
里山の風景は、日本人の心のふるさととも言える美しい景観を作り出しています。四季折々に変化する雑木林、水を張った田んぼに映る空、集落を囲む山並み。こうした景観は、長い年月をかけて人と自然が共同で作り上げてきたものです。
また、里山での暮らしは、地域固有の文化や伝統を育んできました。祭りや年中行事、伝統工芸、郷土料理など、里山の恵みと結びついた文化が各地に残されています。
6. 心身の健康への効果
近年、里山での活動が心身の健康に良い影響を与えることが注目されています。森林浴や農作業を通じて、ストレスの軽減、免疫力の向上、適度な運動効果などが期待できます。
都市部では味わえない、季節の移ろいを肌で感じる暮らし、新鮮な空気、野生動物との出会いなど、里山は現代人が失いつつある自然とのつながりを取り戻す場所となっています。
7. 新しい価値の創造と観光資源
現代社会において、里山は新たな価値を持ち始めています。グリーンツーリズムやエコツーリズム、農業体験、移住先としての人気など、里山の持つ魅力が再評価されているのです。
都市と農村の交流、地域活性化、食育、環境教育など、里山は多様な可能性を秘めた場所として注目を集めています。
里山が抱える5つのデメリットと課題
1. 維持管理の負担
里山の最大のデメリットは、適切な維持管理に多大な労力と時間、費用がかかることです。
雑木林の間伐や下草刈り、農地の維持、水路の管理など、里山を健全に保つためには継続的な人の手入れが必要です。しかし、これらの作業は重労働であり、特に高齢化が進む地域では大きな負担となっています。
2. 少子高齢化と過疎化の深刻化
現代の里山が直面している最も深刻な問題が、少子高齢化と過疎化です。
高度経済成長期以降、若者が都市部へ流出し、里山地域の人口は減少の一途をたどっています。農林業に従事する人も減少し、かつて当たり前に行われていた里山の管理が困難になっています。
後継者不足により、伝統的な資源管理技術や地域の知恵が途絶えてしまう危機に直面しているのです。
3. 経済的な採算性の低さ
燃料革命により薪炭の需要が激減し、外国産木材の輸入増加により国産材の価値が低下するなど、里山から得られる資源の経済的価値が大きく減少しました。
維持管理にかかるコストに対して、得られる経済的リターンが少ないことが、里山の荒廃を加速させる要因となっています。農業だけでは生活が成り立たず、兼業や離農を余儀なくされるケースも増えています。
4. 放置による環境の悪化
人の手が入らなくなった里山では、さまざまな問題が発生します。
生育しきった常緑樹が放置されると、伸び放題の葉が空気の流れを遮り、地面に日光が届かなくなります。その結果、新しい草木が生えにくくなり、土壌がもろくなって、以下のような問題が起こります。
- 土砂崩れのリスク増大
- 生物多様性の減少
- 植生の単純化
- 不法投棄の温床化
適度な間伐や伐採は、自然を破壊するのではなく、むしろ自然の再生を促す重要な行為なのです。
5. 野生動物の人里への侵入増加(獣害問題)
里山の管理不足は、野生動物の行動にも大きな影響を与えています。
かつては里山が野生動物と人間社会の境界線として機能していましたが、人が山に入ることが減った結果、野生動物が人里へ接近する機会が増加しています。
放置された里山では植生が貧弱になり、野生動物にとっても十分な食料が得られません。その結果、イノシシやシカ、サルなどが食料を求めて人里に降りてくるようになり、農作物被害(獣害)が深刻化しているのです。
さらに、クマやイノシシによる人身事故のリスクも高まっており、地域住民の安全を脅かす問題となっています。
野生動物との共存:これからの里山のあり方
里山は「人と野生動物の境界線」
野生動物との共存を考える上で、里山の役割は極めて重要です。里山は単なる自然保護区ではなく、人が適度に利用し管理することで初めて機能する「人と野生動物の境界線」なのです。
人の気配がある里山では、野生動物は警戒心を持ち、むやみに人里に近づきません。逆に、人の気配が消えた里山は、野生動物にとって人里への通り道となってしまいます。
適切な管理が共存の鍵
野生動物との共存を実現するためには、以下のような取り組みが必要です。
1. 定期的な見回りと管理 人が定期的に山に入り、植林や伐採、下草刈りなどを行うことで、野生動物に人の存在を意識させることができます。
2. 緩衝地帯の維持 集落と森林の間に、適切に管理された農地や雑木林を維持することで、野生動物が人里に近づきにくい環境を作ります。
3. 食料源の確保 里山の植生を豊かに保つことで、野生動物が里山内で十分な食料を得られるようにし、わざわざ人里に降りてくる必要をなくします。
4. 地域全体での取り組み 個別の対策だけでなく、地域全体で協力して里山を管理する体制を整えることが重要です。
新しい里山管理の形
人口減少が避けられない現代において、従来のような地域住民だけでの里山管理は困難になっています。そこで注目されているのが、「新たな共同利用」という考え方です。
- 都市住民との協働(ボランティア活動、体験ツアー)
- 企業のCSR活動としての里山保全
- NPOや環境団体との連携
- 移住者の受け入れと新しい担い手の育成
- ICT技術を活用した効率的な管理
多様な主体が連携・協働することで、持続可能な里山管理の新しい形が生まれつつあります。
野生動物を「害」ではなく「隣人」として
野生動物による被害を「獣害」と呼びますが、これは人間側の視点です。野生動物にとっては、生きるために必要な食料を探しているだけです。
野生動物を単に駆除の対象として見るのではなく、同じ地域に暮らす「隣人」として尊重し、適切な距離を保って共存する方法を考えることが大切です。
里山という境界線を適切に維持することで、人も野生動物も安心して暮らせる環境を作ることができるのです。
里山の未来:私たちができること
里山保全への関心を持つ
まずは、里山の重要性について知り、関心を持つことから始めましょう。里山は日本の生物多様性を支える重要な環境であり、野生動物との共存の鍵を握っています。
実際に足を運ぶ
里山を訪れ、実際に体験することで、その魅力や課題を肌で感じることができます。グリーンツーリズムや農業体験、森林ボランティアなど、都市部に住んでいても関わる方法はたくさんあります。
地域の取り組みを応援する
里山保全に取り組む地域や団体を、寄付や商品購入などで応援することもできます。里山で生産された農産物や林産物を選ぶことも、間接的な支援になります。
次世代への継承
里山の価値と重要性を、子どもたちや若い世代に伝えていくことも大切です。環境教育や自然体験を通じて、人と自然の関わり方を学ぶ機会を増やしていきましょう。
まとめ:持続可能な共存に向けて
里山には、生物多様性の保全、水源涵養、災害防止、野生動物との境界維持など、多くのメリットがあります。一方で、維持管理の負担、少子高齢化、経済的採算性の低さ、管理不足による環境悪化と獣害の増加など、深刻なデメリットと課題も抱えています。
しかし、これらの課題は決して克服できないものではありません。多様な主体の連携、新しい技術の活用、価値観の転換により、持続可能な里山管理の道は開けています。
野生動物との共存は、里山という境界線を適切に維持することから始まります。人が適度に関わり続けることで、人も野生動物も、そして多様な生物たちも安心して暮らせる環境を作ることができるのです。
里山の未来は、私たち一人ひとりの選択と行動にかかっています。今こそ、里山の価値を見直し、次世代に豊かな自然環境を引き継いでいく時なのです。
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