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「クジラ増えすぎ」は嘘?科学的データから見る真実と野生動物管理の本質的問題

クジラ 増えすぎ 嘘

 

 

はじめに:「クジラ増えすぎ」をめぐる議論

 

インターネット上で「クジラ 増えすぎ 嘘」と検索すると、様々な情報が飛び交っています。「クジラが増えすぎて海洋生態系を脅かしている」という主張がある一方で、「それは捕鯨推進派のプロパガンダだ」という反論も存在します。本記事では、科学的なデータを基に、この論争の真相に迫ります。

 

 

クジラは本当に「増えすぎて」いるのか?

 

商業捕鯨による激減の歴史

クジラが「増えすぎている」という主張を検証する前に、まず歴史的事実を確認する必要があります。19世紀末から20世紀にかけて、人類は大規模な商業捕鯨を行いました。特にシロナガスクジラは、1930年の捕鯨シーズンだけで3万頭が捕殺され、元々30万頭いたとされる個体数が激減しました。

 

1966年に国際捕鯨委員会(IWC)が商業捕鯨を禁止した時点で、多くの大型クジラ種は絶滅の危機に瀕していました。北太平洋のザトウクジラは1900年代初頭に1万〜1万5千頭いたとされますが、1965年頃には1,000頭にまで減少していたのです。

 

 

現在の個体数と回復状況

では、商業捕鯨禁止から約60年が経過した現在、クジラの個体数はどうなっているのでしょうか。

 

シロナガスクジラについては、20世紀初頭に14万頭いたとされる個体数が、現在では5,000〜15,000頭と推定されています。つまり、商業捕鯨前の水準からすれば、わずか3.5%〜10%程度にしか回復していないのです。一部の研究では「シロナガスクジラの個体数は捕鯨前の約1%」という指摘もあります。

 

ザトウクジラに関しては、一部の個体群で回復の兆しが見られます。しかし、専門家は「捕鯨前の数にはまだまだおよばない」と指摘しています。沖縄・奄美周辺海域では近年、ザトウクジラの個体数が減少している可能性も報告されています。

 

セミクジラコククジラなどは、過去70年の保護活動にもかかわらず数百頭にまで減少しており、依然として絶滅の危機に瀕しています。

 

 

「増えている」種もあるが…

確かに、ミンククジラなど一部の種は個体数が増加していることが確認されています。年間3〜8%程度増加している種もあると報告されています。しかし、これらの種でさえ、科学者は「危機を脱しているわけではなく、本来の個体数に戻すには数十年が必要」と指摘しています。

 

つまり、「クジラが増えすぎている」という主張は、全体像を見れば明らかに誇張であり、科学的根拠に乏しいと言わざるを得ません。

 

 

「人類の漁獲高の数倍を消費」は本当か?

 

よく引用される主張の検証

捕鯨推進側からは「生息数を回復し、増えすぎた鯨は、人類全体の漁獲高の数倍の水産資源を消費する海洋生態系への懸念事項と国際的に認定されるまで達している」という主張がなされています。

しかし、この主張には重大な問題があります。

 

 

WWFジャパンの見解

WWFジャパンは2005年の公式見解で、水産庁が「クジラ類が大量の魚を食べるために、水産資源が減っている」「クジラが増えすぎて海洋生態系が破壊されるおそれがある」といった広報を行っていることについて、次のように批判しています。

 

「野生生物の個体数の変動や、生態系への影響を、単純な食物連鎖モデルや2種間の捕食-被食関係だけで説明することは難しい。漁業資源に対するクジラの捕食圧や、クジラ種同士の競合関係を重大なものと見なして取り上げることは、かえって日本政府に対する信頼が損なわれるばかりでなく、捕鯨の再開と拡大だけを念頭に置いた政策的主張をしているとの印象を与えかねない。」

 

 

クジラが海洋生態系に果たす役割

興味深いことに、近年の研究では、クジラが海洋生態系において重要な役割を果たしていることが明らかになってきています。

 

ナショナルジオグラフィックの報道によれば、シロナガスクジラやマッコウクジラなど大型のクジラの個体数回復が、世界中で海洋環境の健全化と漁業資源の増加につながっている可能性があることが研究で明らかになりました。

 

つまり、「クジラが魚を食べるから漁業資源が減る」という単純な図式は、科学的に支持されていないのです。むしろ、クジラは海洋生態系の健全性を保つ上で重要な役割を果たしている可能性が高いのです。

 

 

これはポジショントークなのか?

 

利害関係者の主張を検証する

「クジラが増えすぎている」と主張しているのは主に捕鯨関連企業や団体です。共同船舶株式会社などの捕鯨企業は、自社のウェブサイトで「増えすぎた鯨」について発信しています。

 

一方、保護団体や多くの海洋生物学者は、クジラの個体数が依然として危機的水準にあると指摘しています。

どちらの主張にもバイアスがある可能性はありますが、重要なのは科学的データです。そして、客観的なデータを見る限り、クジラが「増えすぎて」商業利用できるレベルに達しているという証拠はほとんど見当たりません。

 

 

「商業利用可能な水準」とは程遠い現実

シロナガスクジラは現在も絶滅危惧種に指定されており、IUCNレッドリストで絶滅危惧ⅠB類となっています。商業捕鯨前の3.5%〜10%程度の個体数で「増えすぎている」と主張することは、科学的にも倫理的にも問題があります。

 

ザトウクジラについても、一部の個体群で回復が見られるものの、専門家は引き続き保護の必要性を強調しています。

つまり、「クジラが増えすぎて商業利用すべきだ」という主張は、現実のデータとは大きくかけ離れており、まさに「ポジショントーク」と言わざるを得ないのです。

 

 

人間が野生動物の個体数を管理するという傲慢さ

 

野生動物管理の本質的問題

ここで、より根本的な問題について考える必要があります。それは、「人間が野生動物の個体数を管理する」という考え方そのものの妥当性です。

私たちは本当に、クジラの適正個体数を決定できるほど、海洋生態系を理解しているのでしょうか?

 

 

人間の知識の限界

海洋生態系は極めて複雑なシステムです。クジラと他の海洋生物の相互作用、気候変動の影響、海流の変化、プランクトンの増減など、無数の要因が絡み合っています。

 

WWFが指摘するように、「人間が自然界について把握できる情報は限られている」のです。にもかかわらず、「クジラが○○頭いれば適正で、それ以上は多すぎる」と決めつけることは、科学的根拠に乏しいだけでなく、極めて傲慢な態度と言えます。

 

 

予防原則の重要性

WWFジャパンは、クジラの保護・管理施策において「予防原則」を尊重することの重要性を強調しています。予防原則とは、「種や個体群の絶滅など、取り返しのつかない事態を引き起こす」または「広範にわたる生態系の撹乱など深刻な影響をもたらす」と予想される行為は行わない、あるいは中止することを指します。

 

クジラの個体数が商業捕鯨前の水準に回復していない現状で、再び大規模な捕鯨を行うことは、この予防原則に明らかに反しています。

 

 

自然の自己調整機能

何千万年もの進化の歴史の中で、クジラは海洋生態系の一部として存在してきました。クジラが「増えすぎる」ことで海洋生態系が崩壊するというのであれば、商業捕鯨が始まる前の数千年、数万年の間に、とっくにその問題は顕在化していたはずです。

 

しかし、そのような記録はありません。むしろ、大規模な商業捕鯨によってクジラが激減したことで、海洋生態系にどのような影響があったのか、私たちはまだ十分に理解できていないのです。

 

 

人間の介入が招いた問題

歴史を振り返れば、人間が「野生動物の管理」と称して介入した結果、多くの生態系が破壊されてきました。オオカミの絶滅、鹿の異常増殖、外来種の導入による在来種の絶滅など、枚挙にいとまがありません。

 

クジラについても同様です。商業捕鯨によって個体数を激減させたのは人間です。そして今、「増えすぎたから捕獲しよう」と主張しているのも人間です。しかし、本当に増えすぎているのかどうか、私たちには確実に判断する能力がないのです。

 

 

「管理」ではなく「共存」という視点

 

新たなパラダイムの必要性

私たちに必要なのは、「野生動物を管理する」という発想から脱却し、「自然と共存する」という視点への転換です。

クジラは海洋生態系の重要な一員であり、その存在自体に価値があります。人間の都合だけで個体数を増減させることは、生態系全体に予測不可能な影響を与える可能性があります。

 

 

持続可能性の本当の意味

「持続可能な捕鯨」という言葉がよく使われますが、本当の持続可能性とは何でしょうか。それは、人間が永続的に資源を利用できることだけを意味するのではありません。生態系全体が健全に機能し続けることこそが、真の持続可能性です。

 

クジラの個体数が商業捕鯨前の水準に回復していない現状で、「持続可能な捕鯨」を語ることは時期尚早と言わざるを得ません。

 

 

謙虚さの必要性

私たちは、自然の複雑さと神秘性に対してもっと謙虚であるべきです。「これだけの科学技術があれば、自然をコントロールできる」という傲慢さこそが、これまで多くの環境破壊を招いてきました。

 

クジラが何頭いるのが「適正」なのか、本当のところ私たちにはわかりません。わかっているのは、商業捕鯨によって多くの種が絶滅の危機に瀕したという歴史的事実だけです。

 

 

データが示す明確な結論

 

科学的証拠の総括

客観的なデータを総合すると、次のことが明らかです:

  1. シロナガスクジラは商業捕鯨前の3.5%〜10%程度の個体数しか回復していない
  2. 多くの大型クジラ種は依然として絶滅危惧種に指定されている
  3. 一部の種で個体数増加が見られるが、本来の水準には程遠い
  4. クジラが海洋生態系を破壊しているという科学的証拠はない
  5. むしろクジラは海洋生態系の健全性に貢献している可能性がある

 

これらのデータから導かれる結論は明確です。「クジラが増えすぎている」という主張は、科学的根拠に乏しい誇張である、ということです。

 

 

利害関係者の主張を批判的に見る

「クジラが増えすぎている」と主張する捕鯨関連企業や団体の意見は、明らかに自己の利益を正当化するためのポジショントークです。客観的なデータと照らし合わせれば、その主張の根拠の薄さは明白です。

 

一方で、保護団体の主張もすべて正しいとは限りません。しかし、少なくとも「クジラが依然として危機的状況にある」という指摘は、科学的データによって裏付けられています。

 

 

結論:人間の思い上がりを捨てる時

 

野生動物管理の限界を認める

「クジラ 増えすぎ 嘘」という検索キーワードが示すように、多くの人々がこの問題の真相を知りたいと思っています。そして、データを冷静に分析すれば、答えは明らかです。

 

クジラは増えすぎていません。商業利用できるレベルには全く達していません。そして何より重要なのは、人間が野生動物の個体数を管理するという考え方自体が浅はかであるということです。

 

 

自然を超える力を持っていないという自覚

私たちは自然を超える力を持っているわけではありません。海洋生態系の複雑さを完全に理解しているわけでもありません。それにもかかわらず、「クジラが多すぎるから捕獲しよう」と決めつけることは、科学的にも倫理的にも正当化できません。

 

 

未来への責任

クジラを絶滅の危機から救い、個体数を回復させることは、現世代の人類の責任です。商業捕鯨によって激減させたのが私たちの先祖であるならば、それを回復させるのは私たちの世代の義務でもあります。

「増えすぎたから捕獲しよう」という短絡的な発想ではなく、長期的な視点で海洋生態系全体の健全性を考える必要があります。

 

 

最後に

クジラは地球の海に何千万年も前から存在してきました。人間が大規模な商業捕鯨を始めたのは、わずか100年ほど前のことです。そして、その100年でクジラを絶滅の危機に追いやりました。

 

今、私たちに求められているのは、「管理」という名の介入ではなく、謙虚さと自制心です。自然の回復力を信じ、必要最小限の関与にとどめることこそが、真の知恵ではないでしょうか。

 

「クジラが増えすぎている」という主張は嘘です。そして、人間が自然を完全にコントロールできるという考え方も幻想です。私たちは、自然の一部として、より謙虚に、より慎重に行動すべき時代に生きているのです。

 


参考文献・情報源

  • 国際捕鯨委員会(IWC)の公式データ
  • WWFジャパンの見解(2005年)
  • ナショナルジオグラフィックの海洋生態系研究報告
  • 各種海洋生物学研究機関の個体数推定データ
  • 小笠原海洋センターの調査報告
  • IUCNレッドリスト

※本記事は科学的データと複数の信頼できる情報源に基づいて作成されていますが、クジラの個体数推定には困難が伴うため、数値には幅があることをご了承ください。

 

 

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この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

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