霜降り肉のつくりかたがかわいそう?本当の裏側と、私たちができる選択
はじめに:ボディメイクをする私が感じた違和感
霜降り肉は「高級」「美味しい」というイメージが定着している一方で、その裏側にある生産方法はあまり知られていません。
特に近年はSNSで牛の飼育環境が可視化され、“霜降り肉のつくりかたはかわいそうでは?” という声も増えています。
私自身、現在ボディメイクをしていて体脂肪率は10%ほど。
自分がもし牛なら「筋肉ばかりで脂の少ない、硬めの赤身肉」になるだろうなと思います。
では逆に、脂身が多く、美しいサシが入った霜降り肉の牛はどんな体なのか?
気になって調べていくうちに、いろいろな事実が見えてきました。
霜降り肉とは何か?
霜降り肉とは、赤身の筋肉の間に脂肪が細かく網目状に入り込んだ状態の肉のことです。この脂肪は「サシ」と呼ばれ、日本では高級肉の象徴とされてきました。
主に黒毛和牛に見られる特徴で、肩ロースやサーロインなどの背肉の部位に多く現れます。焼くと脂が溶けて柔らかく、口の中でとろけるような食感が特徴です。
A5ランクは美味しさのランクではない
多くの人が誤解していますが、A5ランクは美味しさを評価したものではありません。
牛肉のランクは以下の2つの基準で決まります
- 歩留等級(A〜C):一頭からどれだけ食肉が取れるかの効率性
- 肉質等級(1〜5):脂肪交雑(サシの入り具合)、肉の色沢、締まりとキメ、脂肪の色沢と質
つまり、A5ランクとは「効率よく肉が取れて、脂肪がたくさん入っている」という意味であり、味の評価は含まれていないのです。
実際、近年では「霜降り肉=美味しい」という神話が崩れつつあり、赤身肉を好む人や、適度なサシの入った「適サシ肉」を提供する老舗すき焼き店も増えています。
霜降り肉はどうやって作られるのか
ビタミンA制限という方法
日本特有の霜降り肉を作るために、多くの生産者が採用しているのがビタミンAの給与制限という方法です。
ビタミンAには脂肪細胞の増殖を抑える働きがあります。そのため、肥育期間中にビタミンを多く含む牧草などの餌を制限し、穀物中心の飼料を与えることで、意図的に脂肪を筋肉の間に蓄積させるのです。
生後約1年半から数ヶ月間、この栄養制限が行われます。農家は症状が出ないギリギリのラインを探りながら給餌しているのが実情です。
牛の健康への影響
しかし、このビタミンA欠乏には深刻な弊害があります
- 失明または夜盲症:ビタミンAは視力維持に必要な栄養素です。欠乏が慢性化すると、光の情報を視神経に伝える物質が機能しなくなり、重度になると瞳孔が開いて失明に至ることがあります
- 関節炎:足の関節が腫れて歩行に障害が出る場合があります
- 食欲の喪失
- 被毛のツヤがなくなる
- 免疫力の低下
ある農家の証言によれば、飼育している約130頭のうち、1頭が完全に目が見えず、10頭弱は視力低下が進んでいるとのことです。こうした牛も人体への影響はないとされ、普通に出荷されています。
霜降り肉は、牛が不健康であることの証であり、牛の苦しみの象徴なのです。
私の体験:霜降り肉を食べられなくなった理由
歳を重ねるごとに私の体は霜降り肉を受け付けなくなりました。
脂で気持ち悪くなる
A5ランクの霜降り肉を少量食べただけで、胃がもたれて気持ち悪くなります。普段から低脂肪高タンパクの食事をしている体にとって、あの過剰な脂は明らかに異常です。
人間の体が拒否反応を示すということは、それが本来の自然な状態ではないことの証明ではないでしょうか。
高確率で下痢になる
霜降り肉を食べると、高確率で下痢をします。これは私の消化器官が、過剰な脂肪を処理しきれないからです。
健康的な食生活を送っている体は正直です。不自然な脂肪の塊を「これは異常だ」と判断し、体外に排出しようとするのです。
牛肉を食べなくなった決断
こうした経験から、私は牛肉、特に霜降り肉を食べることをやめました。
それは単に体調の問題だけではありません。無理な栄養制限で苦しめられた牛の肉を、わざわざ食べる必要があるのかという疑問が生まれたからです。
人間に置き換えて考えてみる
動物の体は適度な運動とバランスの取れた食事によって作られています。これは健康的な生活の結果です。
一方、霜降り肉の牛はどうでしょうか?
- 運動不足:牛舎に閉じ込められて十分な運動ができない
- 偏った栄養:ビタミンを制限され、穀物中心の飼料のみ
- 過剰な脂肪蓄積:不自然な方法で脂肪を体に溜め込む
もし人間がこんな生活をしたら、肥満、糖尿病、視力障害、関節痛など、あらゆる健康問題を抱えるでしょう。
牛も同じ哺乳類です。私たちが不健康だと感じる状態を、牛に強いることが本当に正しいのでしょうか?
畜産業界の実態
微妙なバランスの上に成り立つ生産
信濃毎日新聞の取材によると、多くの農家が「微妙なバランスの上に和牛生産は成り立っている」と表現しています。
症状が出ないギリギリのラインを模索しながら給餌する。しかし、一部の牛が失明したり関節炎になったりする危険性は常に残る。それが現実なのです。
変わりつつある潮流
幸いなことに、最近では霜降り肉の人気が下降しているという報告もあります。
「あんな脂だらけの肉を食べたくない」という消費者が増えているのです。また、健康的な飼育方法を選択し、適度なサシの入った肉を生産する農家も現れています。
老舗のすき焼き店の中には、「脂肪の割合が30%程度の適サシ肉が最も美味しい」として、極端な霜降り肉の取り扱いをやめたところもあります。
世界では「健康な牛の肉」や「肉を減らす選択」が主流になってきている
日本では霜降り肉が人気ですが、世界のトレンドは違います。
海外では「赤身・牧草牛」が主流
欧州・北米・オーストラリアでは、脂肪が少なくヘルシーな赤身肉が一般的です。
理由は、
-
健康志向
-
運動量を確保した牛のほうがアニマルウェルフェアに適している
-
牧草による自然な飼育
-
環境負荷が小さい
など。
「ミートフリーデー」など、肉の消費を減らす動きも
欧州では学校や企業、自治体単位で
-
週1回は肉を食べない
-
環境と健康のために肉を減らす
こういう取り組みがどんどん広がっています。
私たちにできること
1. 健康的な牛を選ぶ
無理な生産方法ではなく、健康的に育てられた牛の肉を選ぶことが大切です。
- 放牧飼育の牛
- グラスフェッド(牧草飼育)の牛
- アニマルウェルフェア(動物福祉)に配慮した農場の牛
これらの肉は、極端な霜降りではありませんが、牛本来の健康的な味わいを楽しめます。
2. 肉を食べる量を減らす
肉を食べる頻度や量を減らすことも有効な選択です。
週に1〜2回、質の良い肉を適量食べる。その方が、毎日安価な霜降り肉を食べるよりも、動物にも環境にも、そして自分の健康にも良い影響を与えます。
3. A5ランク神話を捨てる
「A5ランク=最高」という思い込みを捨てましょう。
A5は脂肪の量を示すだけで、味の評価ではありません。A3やA4、あるいはランク外でも、健康的に育てられた牛の赤身肉の方が、本来の牛肉の味を楽しめることも多いのです。
4. 情報を共有する
この記事のような情報を、家族や友人と共有しましょう。
多くの人が霜降り肉の生産実態を知らないまま消費しています。知ることが、変化への第一歩です。
価値観の転換が必要
「美味しさ」の再定義
本当に美味しい肉とは何でしょうか?
- 動物を苦しめずに生産された肉
- 自然な方法で育った動物の肉
- 食べた後に体が喜ぶ肉
私にとって、これが真の美味しさです。いくら舌で美味しいと感じても、それが動物の苦痛の上に成り立っているなら、心から楽しむことはできません。
「高級」の再定義
A5ランクの霜降り肉は確かに高価です。しかし、それは本当に「高級」なのでしょうか?
不自然な方法で生産され、動物を苦しめ、食べる人の健康も害する可能性がある肉。私には、これが高級品とは思えません。
本当の高級品とは
- 健康的に育てられた動物の肉
- 持続可能な方法で生産された肉
- 食べる人も動物も幸せになれる肉
こうした価値観の転換が、今、必要とされているのではないでしょうか。
畜産業界への提言
透明性の向上
消費者は、自分が食べる肉がどのように生産されたかを知る権利があります。
ビタミンA制限を行っているかどうか、動物福祉にどの程度配慮しているかなど、生産方法の透明性を高めることが重要です。
アニマルウェルフェアの推進
日本は動物福祉の面で、欧米諸国に大きく遅れています。
牛が自然な行動をとれる環境、十分な運動スペース、バランスの取れた栄養。こうした基本的な動物の権利を尊重する畜産へのシフトが必要です。
新しい評価基準の確立
脂肪の量だけを評価する現在のA5ランクシステムではなく、以下のような要素を含む新しい評価基準が必要です
- 動物福祉への配慮度
- 持続可能性
- 飼育環境の質
- 栄養バランス
- 味の実際の評価
健康的な代替案
赤身肉の魅力
霜降り肉の代わりに、健康的に育った牛の赤身肉を楽しみましょう。
赤身肉の利点
- 高タンパク・低脂肪
- 鉄分が豊富
- ビタミンB群が多い
- 消化に良い
- 体が重くならない
グラスフェッドビーフ
牧草で育てられたグラスフェッドビーフは、穀物飼育の牛と比べて
- オメガ3脂肪酸が多い
- 共役リノール酸(CLA)が多い
- ビタミンEが豊富
- 環境への負荷が少ない
他のタンパク質源
牛肉にこだわらず、様々なタンパク質源を取り入れることも大切です
- 鶏肉(放し飼い)
- 魚介類
- 豆類
- 卵(平飼い)
- 乳製品
多様なタンパク質源を適度に摂取することで、栄養バランスが整い、特定の産業への依存も減らせます。
まとめ:一人ひとりの選択が未来を変える
体脂肪率10%を維持している私にとって、霜降り肉は体が受け付けない食べ物になりました。それは私の体が、不自然な脂肪の塊を拒否しているからです。
調べて分かったのは、霜降り肉の生産過程で多くの牛が苦しんでいるという事実でした。
- ビタミンA制限による失明のリスク
- 運動不足と偏った栄養
- 関節炎や食欲不振
- 不自然な脂肪の蓄積
私たちが「美味しい」と思って食べている霜降り肉は、牛の健康を犠牲にして作られているのです。
しかし、希望もあります。消費者の意識が変わり始めています。健康的な飼育方法を選ぶ生産者も現れています。
一人ひとりの選択が、畜産業界の未来を変える力になります。
- 無理な生産方法ではなく、健康的な牛を食べる
- 肉を食べる量を減らし、質を重視する
- A5ランク神話にとらわれず、本当に良い肉を選ぶ
- 生産方法に関心を持ち、情報を共有する
私は牛肉をあまり食べなくなりましたが、それがすべての人の答えではないでしょう。大切なのは、知った上で、意識的に選択することです。
霜降り肉を食べるのか、健康的な赤身肉を選ぶのか、それとも肉を減らすのか。あなたはどんな選択をしますか?
その選択が、動物たちの未来を、そして私たち自身の健康を決めていくのです。
参考情報
- 日本食肉格付協会
- 動物の未来 Hope For Animals
- 各種畜産業界の報道資料
※この記事は個人の経験と調査に基づいています。すべての生産者が同じ方法を採用しているわけではありません。健康的な飼育に取り組む生産者も多く存在します。
古着買取、ヴィーガン食品やペットフードの買い物で支援など皆様にしてもらいたいことをまとめています。
参加しやすいものにぜひ協力してください!
関連情報
