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猫の毛づくろいしすぎは病気のサイン?原因と対策を実体験から解説

猫 毛づくろい しすぎ 病気

 

 

はじめに:愛猫の異常な毛づくろいに気づいたら

 

猫は本来、きれい好きな動物として知られています。1日に何時間も毛づくろい(グルーミング)をする姿は、猫を飼っている方なら日常的に目にする光景でしょう。しかし、その毛づくろいが「しすぎ」の状態になったとき、それは単なる清潔好きではなく、何らかの病気やストレスのサインかもしれません。

 

この記事では、私が今年保護した親子猫の体験を通じて学んだ、猫の過度な毛づくろいの原因と対策について詳しく解説します。愛猫の健康を守るために、ぜひ最後までお読みください。

 

私たちが経験した衝撃的な出来事

 

今年、私は母猫のレミちゃんと娘猫のリリちゃんという親子を保護しました。二匹は仲が良く、いつも寄り添って過ごす姿が微笑ましい日々でした。

 

ある日、リリちゃんが下痢気味になり、ぐったりとした様子を見せ始めました。すぐに動物病院に連れて行ったところ、獣医師から1泊入院が必要だと告げられました。リリちゃんの体調が心配でしたが、適切な治療を受けられると安心して病院に預けました。

 

しかし、問題はその夜から始まったのです。

家に残ったレミちゃんは、娘が突然いなくなったことに強いストレスを感じたようでした。その日の夜から、レミちゃんは自分の骨盤付近をしきりに舐め始めたのです。最初は通常の毛づくろいだと思っていましたが、その行動は夜通し続きました。

 

翌朝、レミちゃんの様子を確認すると、衝撃的な光景が目に飛び込んできました。昨晩まで毛で覆われていた骨盤付近の皮膚が剥がれ、赤い肉が露出していたのです。一晩でここまでになるとは想像もしていませんでした。

 

慌てて動物病院に連絡し、リリちゃんの退院と同時にレミちゃんも診察してもらうことになりました。獣医師の診断によると、レミちゃんの過度な毛づくろいは、娘との突然の離別によるストレスが原因である可能性が高いとのことでした。

 

猫が毛づくろいをしすぎる原因とは?

 

猫が異常なほど毛づくろいをする行動には、さまざまな原因が考えられます。レミちゃんのケースを含め、主な原因を詳しく見ていきましょう。

 

1. 心因性の問題(ストレス・不安)

レミちゃんのように、ストレスや不安が原因で過度な毛づくろいをする猫は少なくありません。これは「心因性脱毛症」や「強迫性障害」とも呼ばれる状態です。

 

主なストレス要因:

  • 環境の変化(引っ越し、模様替えなど)
  • 家族構成の変化(新しいペットや人の追加、離別)
  • 飼い主の不在や生活リズムの変化
  • 大きな音や工事などの騒音
  • 他の猫との関係性の問題

猫は縄張り意識が強く、変化に敏感な動物です。私たちが些細だと思うことでも、猫にとっては大きなストレスになることがあります。レミちゃんの場合、生後間もない頃から一緒だった娘との突然の離別が、想像以上のストレスとなったのでしょう。

 

2. 皮膚疾患

過度な毛づくろいは、皮膚に何らかの問題がある場合にも見られます。

 

考えられる皮膚疾患:

  • アレルギー性皮膚炎(食物アレルギー、ノミアレルギーなど)
  • 真菌感染症(皮膚糸状菌症)
  • 細菌感染
  • ノミやダニの寄生
  • 接触性皮膚炎

皮膚に痒みや不快感があると、猫はその部分を執拗に舐めたり噛んだりします。これが悪循環を生み、さらに皮膚の状態を悪化させてしまうのです。

 

3. 痛みや不快感

皮膚以外の部位に痛みがある場合も、その周辺を過度に舐めることがあります。

 

考えられる原因:

  • 関節炎や筋肉痛
  • 膀胱炎や尿路結石
  • 内臓疾患による関連痛
  • 外傷や手術後の痛み

特に高齢猫では関節炎が原因で、痛みのある部位を舐め続けることがあります。

 

4. 退屈や刺激不足

十分な運動や遊びの時間がない猫は、退屈しのぎとして過度な毛づくろいをすることがあります。これは一種の自己刺激行動で、特に室内飼いの猫に見られやすい傾向があります。

 

5. 常同行動(習慣化した行動)

最初はストレスや痛みが原因だったとしても、その行動が習慣化してしまうことがあります。原因が解消された後も、癖として毛づくろいを続けてしまうのです。

 

毛づくろいしすぎによる具体的な症状

 

過度な毛づくろいは、見た目にも健康面でも様々な問題を引き起こします。

 

脱毛

最も分かりやすい症状が脱毛です。特定の部位の毛が薄くなったり、完全に抜けてしまったりします。よく見られる部位は:

  • お腹
  • 内股
  • 前足や後ろ足
  • 尾の付け根
  • 背中(特に腰から尾にかけて)

 

皮膚の損傷

レミちゃんのように、舐め続けることで皮膚が赤く炎症を起こし、さらには皮膚が剥がれて肉が露出してしまうこともあります。これは「舐性皮膚炎」と呼ばれる状態で、非常に痛々しく、感染のリスクも高まります。

 

毛球症のリスク増加

過度な毛づくろいにより、通常よりも多くの毛を飲み込むことになります。これにより、消化器内に毛玉が蓄積し、毛球症を引き起こすリスクが高まります。毛球症は嘔吐、食欲不振、便秘などの症状を引き起こし、重症の場合は外科手術が必要になることもあります。

 

二次感染

皮膚のバリア機能が失われると、細菌や真菌による二次感染を起こしやすくなります。これにより、さらに皮膚の状態が悪化する悪循環に陥ります。

 

動物病院での診断と治療

 

愛猫の毛づくろいが異常だと感じたら、できるだけ早く動物病院を受診することが重要です。

 

診断プロセス

獣医師は以下のような方法で原因を特定します:

  1. 問診: 飼育環境、生活の変化、行動の様子などを詳しく聞かれます
  2. 身体検査: 皮膚の状態、毛の状態、痛みの有無などを確認します
  3. 皮膚検査: 皮膚掻爬検査、真菌培養、細菌培養などを行います
  4. 血液検査: 内臓疾患やホルモン異常がないかを調べます
  5. 画像検査: 必要に応じてレントゲンや超音波検査を行います

 

レミちゃんの場合、皮膚検査では明らかな寄生虫や感染症は見つからず、血液検査でも異常は認められませんでした。そのため、娘との離別というストレスが主な原因であると診断されました。

 

治療方法

原因によって治療法は異なりますが、一般的には以下のような方法が用いられます:

 

原因疾患の治療

皮膚疾患や内臓疾患が原因の場合は、まずその治療を行います。アレルギーであれば抗アレルギー薬やステロイド、感染症であれば抗生物質や抗真菌薬などが処方されます。

 

皮膚の保護と治療

損傷した皮膚には、消毒や抗生物質の塗布が必要です。レミちゃんの場合は、露出した肉の部分を丁寧に消毒し、抗生物質の軟膏を塗布してもらいました。

 

行動修正

心因性の場合は、ストレス要因の除去と行動修正が重要です。場合によっては、抗不安薬や抗うつ薬が処方されることもあります。

 

物理的な保護

エリザベスカラーやボディスーツなどで、患部を舐められないようにします。これについては後ほど詳しく説明します。

 

エリザベスカラーとその代替品

 

過度な毛づくろいを物理的に防ぐために、エリザベスカラー(通称:エリカラ)が使用されることがあります。

 

エリザベスカラーとは?

エリザベスカラーは、猫の首に装着する円錐形の保護具です。これにより、猫が自分の体を舐めたり噛んだりすることを防ぎます。手術後や皮膚疾患の治療中によく使用されます。

 

レミちゃんに使用した経験

獣医師の指示により、レミちゃんにもエリザベスカラーを装着することになりました。最初は戸惑いと不快感から、歩き方がぎこちなく、物にぶつかったりしていました。また、食事や水を飲むことも難しそうにしていました。

 

しかし、数日経つと徐々に慣れてきて、エリカラを着けたまま普通に動けるようになりました。そして何より、骨盤付近の皮膚を舐めることができなくなったため、傷が確実に回復に向かいました。

 

エリザベスカラーの種類

現在では、従来の硬いプラスチック製以外にも様々なタイプがあります:

  1. ソフトタイプ: 柔らかい素材で作られており、猫の負担が少ない
  2. ドーナツ型: 首の周りにクッションを巻くタイプで、視界を遮らない
  3. 透明タイプ: 視界が確保されるため、ストレスが少ない
  4. 布製カラー: 軽くて柔らかいが、噛んで壊される可能性がある

レミちゃんには最初は標準的なプラスチック製を使用しましたが、後にソフトタイプに変更したところ、さらにストレスが軽減されたようでした。

 

エリザベスカラーの代替品

エリザベスカラーをどうしても嫌がる猫には、以下のような代替品もあります:

 

ボディスーツ(術後服)

体全体を覆う服で、特定の部位を保護できます。レミちゃんの骨盤付近のような場所には特に効果的です。

 

猫用靴下

足先を舐める場合に使用します。

 

苦味スプレー

患部に塗布することで、舐めるのを防ぎます。ただし、皮膚が損傷している場合は使用できません。

 

エリザベスカラー使用時の注意点

  • 食事と水: カラーのサイズを調整し、食事や水が摂取できることを確認します
  • トイレ: トイレに入れるか、使用できるかを確認します
  • 睡眠: 快適に眠れるよう、カラーを外して見守ることも検討します(獣医師と相談)
  • 定期的な確認: カラーの下に汚れが溜まっていないか、擦れて傷ができていないか確認します
  • ストレス軽減: 可能な限り早期に外せるよう、患部の回復を促進します

 

自宅でできる対策とケア

 

動物病院での治療と並行して、自宅でもできる対策があります。

 

ストレス要因の除去

レミちゃんのケースで最も重要だったのは、ストレス要因への対応でした。リリちゃんが退院した後、二匹を再会させると、レミちゃんは娘の匂いを確認し、安心したように寄り添いました。その後、過度な毛づくろいは徐々に減少していきました。

 

ストレス軽減のための工夫:

  • 環境の変化を最小限にする
  • 静かで安心できる場所を提供する
  • 飼い主が十分な時間を一緒に過ごす
  • 急激な変化を避け、徐々に慣らす
  • 複数の猫を飼っている場合、それぞれのパーソナルスペースを確保する

 

環境エンリッチメント(環境の充実化)

退屈やストレスを軽減するために、猫の生活環境を豊かにすることが重要です。

 

具体的な方法:

  • キャットタワーや登れる場所を設置する
  • 窓際に外を眺められるスペースを作る
  • 様々なタイプのおもちゃを用意する
  • 定期的に遊びの時間を設ける(1日15〜30分程度)
  • 隠れ家やトンネルなど、探索できる場所を作る
  • フードパズルなどで食事に刺激を加える

 

スキンシップと観察

毎日、愛猫の体を優しく撫でながら、皮膚や毛の状態をチェックする習慣をつけましょう。これにより、異常を早期に発見できます。

 

チェックポイント:

  • 脱毛している部分はないか
  • 皮膚が赤くなっていないか
  • かさぶたや傷はないか
  • 異常に舐めている場所はないか
  • 毛玉や汚れは蓄積していないか

 

食事の見直し

アレルギーが疑われる場合は、食事の見直しも必要です。獣医師と相談の上、アレルギー対応フードや除去食試験を試してみることも検討しましょう。

また、オメガ3脂肪酸を含むサプリメントは、皮膚の健康維持に役立つとされています。

 

フェロモン製品の活用

猫用のフェロモン製品(ディフューザーやスプレー)は、不安やストレスを軽減する効果が期待できます。レミちゃんの部屋にもフェロモンディフューザーを設置し、リラックスできる環境作りを心がけました。

 

サプリメントやハーブ

獣医師の指導のもと、以下のようなサプリメントが役立つことがあります:

  • L-テアニン: リラックス効果
  • トリプトファン: 不安軽減
  • バレリアン: 穏やかな鎮静効果

ただし、サプリメントの使用は必ず獣医師に相談してから始めましょう。

 

回復までの経過と注意点

 

レミちゃんの回復過程から学んだことをシェアします。

 

治療開始から1週間

エリザベスカラーの装着と抗生物質の投与により、露出していた肉の部分は徐々に新しい皮膚で覆われ始めました。感染を起こすこともなく、順調に回復していきました。

この時期は、レミちゃんがエリカラに慣れることと、リリちゃんとの再会がストレス軽減に大きく貢献しました。

 

2〜3週間後

新しい皮膚がほぼ形成され、毛も少しずつ生え始めました。獣医師の許可のもと、日中の一部の時間だけエリザベスカラーを外すようにしました。その間、レミちゃんを注意深く観察し、患部を舐めようとする行動がないか確認しました。

幸いなことに、リリちゃんが側にいることで、レミちゃんは以前のような執拗な毛づくろいをすることはありませんでした。

 

1ヶ月後

皮膚は完全に回復し、毛も徐々に生え揃ってきました。エリザベスカラーは完全に外すことができました。ただし、ストレスを感じやすい性格であることが分かったため、環境の変化には十分注意するようにしています。

 

長期的な観察の重要性

一度回復しても、再発する可能性はあります。特にストレスが原因の場合、新たなストレス要因が発生すれば、同じ行動が再び現れる可能性があります。

そのため、以下の点に注意しながら、長期的に観察を続けています:

  • 定期的な皮膚と毛のチェック
  • 行動の変化に敏感になる
  • ストレス要因を可能な限り排除する
  • 必要に応じて動物病院でフォローアップ

 

予防のためにできること

 

過度な毛づくろいを予防するために、日常的にできることがあります。

 

ストレスの少ない生活環境

  • 規則正しい生活リズムを保つ
  • 猫が安心できる場所を確保する
  • 急激な環境変化を避ける
  • 十分な運動と遊びの機会を提供する

定期的な健康チェック

  • 年に1〜2回の定期健診
  • 皮膚や毛の状態の日常的な観察
  • 行動の変化に注意を払う
  • 適切な寄生虫予防

適切な栄養管理

  • 質の高いキャットフードを選ぶ
  • 皮膚の健康に良い栄養素を含む食事
  • 必要に応じてサプリメントの検討

複数猫の飼育環境の最適化

複数の猫を飼っている場合は、特に注意が必要です:

  • 十分な数のトイレ、食器、水飲み場を用意する(猫の数+1が目安)
  • それぞれの猫が逃げ込める場所を確保する
  • 相性が悪い猫同士は無理に仲良くさせようとしない
  • 新しい猫を迎える際は、徐々に慣らす

 

獣医師に相談すべきタイミング

 

以下のような症状が見られたら、すぐに動物病院を受診しましょう。

  • 明らかな脱毛が見られる
  • 皮膚が赤くなっている、腫れている
  • かさぶたや傷がある
  • 出血している
  • 皮膚が露出している
  • 同じ場所を執拗に舐めたり噛んだりしている
  • 行動に明らかな変化がある
  • 食欲不振や元気がない

 

レミちゃんのケースでは、一晩で皮膚が剥がれるほどの状態になってしまいました。早期発見・早期治療が重要です。少しでも異常を感じたら、躊躇せずに獣医師に相談してください。

 

まとめ:愛猫の健康を守るために

 

猫の毛づくろいは正常な行動ですが、「しすぎ」の状態は何らかの問題のサインです。その原因は、ストレスや不安などの心因性のものから、皮膚疾患、痛み、退屈など多岐にわたります。

レミちゃんとリリちゃんの体験を通じて、私は以下のことを学びました。

  1. 猫の行動の変化に敏感になること: 些細な変化も見逃さないことが重要です
  2. ストレスへの配慮: 猫は変化に敏感な動物であり、私たちが思う以上にストレスを感じています
  3. 早期発見・早期治療: 異常を感じたらすぐに動物病院へ
  4. 適切な治療とケア: 獣医師の指示に従い、根気強く治療を続けることが大切
  5. 予防の重要性: 日々の観察と快適な環境作りが予防につながります

 

親子猫の絆の強さを改めて実感すると同時に、その絆が引き起こしたストレスの大きさにも驚かされました。幸い、レミちゃんは完全に回復し、今ではリリちゃんと一緒に元気に過ごしています。

 

愛猫の毛づくろいが気になったら、それは体や心からのサインかもしれません。この記事が、同じような悩みを持つ飼い主さんの助けになれば幸いです。

 

猫との生活は喜びに満ちていますが、同時に健康管理の責任も伴います。日々の観察とケア、そして何より愛情を持って接することで、愛猫の健康を守っていきましょう。

 

※この記事は実体験に基づいていますが、個々の猫の状態によって適切な対応は異なります。愛猫に異常が見られた場合は、必ず獣医師に相談してください。

 

 

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この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

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