猫の耳掃除は必要?適切な頻度とやり方を獣医師監修で徹底解説
愛猫の耳を見て「掃除したほうがいいのかな?」と疑問に思ったことはありませんか。人間は定期的に耳掃除をしますが、猫にも同じように耳掃除は必要なのでしょうか。
この記事では、猫の耳掃除の必要性から適切な頻度、正しいやり方、そして耳ダニへの対処法まで、猫の耳のケアについて徹底的に解説します。
1. 猫に耳掃除は必要なのか
基本的に頻繁な耳掃除は不要です
結論から言うと、健康な猫には頻繁な耳掃除は必要ありません。
猫の耳には優れた自浄作用が備わっており、耳の中の古い角質や分泌物を自然に外へ押し出す仕組みがあります。そのため、汚れていないのに無理に耳掃除をすると、かえってデリケートな耳の皮膚を傷つけてしまう恐れがあるのです。
耳掃除よりも定期的なチェックが大切
耳掃除そのものよりも重要なのは、定期的に耳の状態をチェックすることです。
猫の耳は外耳道がL字型に折れ曲がっている独特な構造をしており、通気性があまり良くありません。そのため、耳のトラブルが起こりやすい器官でもあります。
日頃から耳の観察を習慣にすることで、以下のような異常を早期に発見できます。
- 耳垢の量や色の変化
- 悪臭の有無
- 赤みや腫れ
- かゆがる様子
ブラッシングやマッサージのタイミングで、愛猫の耳を軽くチェックする習慣をつけると良いでしょう。
耳垢にも役割がある
猫の耳垢は、皮脂腺とアポクリン汗腺からの分泌物に皮膚の残骸が混ざったものです。
人間の耳垢について研究が行われており、耳垢に含まれる「リゾチーム」という物質が細菌の繁殖を抑える抗菌作用を持つことが分かっています。猫の耳垢も同様に、耳道の表面を保護したり、過度な乾燥を防いだり、細菌感染から守る役割を果たしている可能性があります。
つまり、耳垢を完全に取り除くことが必ずしも良いとは限らないのです。
2. 猫の耳掃除の適切な頻度
週1回のチェック、月1〜2回の掃除が目安
適切な耳掃除の頻度は以下の通りです。
【チェックの頻度】
- 週に1回、耳の状態を確認する
【掃除の頻度】
- 月に1〜2回程度、汚れが気になったときだけ
- 立ち耳の猫は通気性が良いため、さらに頻度は低くて問題ない
汚れが目立たない場合は、無理に掃除をする必要はありません。「掃除しなければ」と義務感を持つのではなく、「異常がないか確認する」という意識で耳をチェックしましょう。
頻繁な耳掃除がNGな理由
耳掃除を頻繁にしすぎると、以下のようなトラブルを引き起こす可能性があります。
- 耳の皮膚を傷つける
- 必要な皮脂まで取り除いてしまう
- 炎症を引き起こす
- 猫が耳掃除を嫌がるようになる
過度な耳掃除は、きれいにしようとする善意が裏目に出てしまうのです。
3. 耳掃除が必要な猫・必要でない猫の違い
耳掃除が必要になりやすい猫種
ほとんどの猫は自浄作用で耳の健康を保てますが、以下のような猫は定期的な耳のケアが必要になる場合があります。
【折れ耳の猫種】
- スコティッシュフォールド
- アメリカンカール
折れ耳の猫は耳の中の通気性が悪く、湿気がこもりやすいため、耳垢が溜まりやすく細菌や真菌が繁殖しやすい環境になります。
【その他、ケアが必要な猫】
- 長毛種(ペルシャ、メインクーンなど)
- アレルギー体質の猫
- 高齢でセルフグルーミングが十分にできない猫
- 外に出る機会がある猫
これらの猫は、より注意深く耳の状態をチェックし、必要に応じて掃除を行いましょう。
健康な耳の状態とは
健康な猫の耳の特徴:
- 耳垢の量が少ない
- やや茶色で少し湿っている程度
- ほぼ無臭
- 赤みや腫れがない
- 猫が耳を気にする様子がない
春から夏、梅雨の時期は気温や湿度が上がるため、普段は耳掃除を必要としない猫でも耳垢が出やすくなることがあります。季節の変化にも注意を払いましょう。
4. 正しい耳掃除のやり方
準備するもの
耳掃除に必要な道具は以下の通りです。
- コットンまたはガーゼ(柔らかい素材)
- 猫用イヤークリーナー(耳洗浄液)またはぬるま湯
- ご褒美のおやつ
注意:綿棒は使用しないでください
綿棒を使うと、以下のリスクがあります。
- 耳の奥の粘膜を傷つける
- 耳垢を奥に押し込んでしまう
- 猫が突然動いた際に、綿棒が深く刺さる危険性
耳掃除の手順(4ステップ)
ステップ1:リラックスさせる
猫が落ち着いている時を選びましょう。撫でられて気持ちよさそうにしている時や、うとうとしている時がベストタイミングです。
優しく声をかけながら、まずは頭や体を撫でて、猫をリラックスさせます。
ステップ2:耳の状態をチェック
耳を軽くめくって、以下の点を確認します。
- 耳垢の量と色
- 赤みや腫れの有無
- 臭いの有無
- 傷や出血がないか
黒い耳垢が大量にある場合や、悪臭がする場合は、耳ダニや外耳炎の可能性があるため、動物病院を受診しましょう。
ステップ3:コットンを湿らせる
コットンやガーゼにイヤークリーナーまたはぬるま湯をたっぷりと染み込ませます。液が垂れないように軽く絞ってください。
イヤークリーナーを使用する場合は、人肌程度に温めると猫が驚きにくくなります。
ステップ4:見える範囲だけを優しく拭き取る
指にコットンを巻きつけて、耳の入り口や見える範囲だけを優しく拭きます。
重要なポイント
- 力を入れず、「なでる」感覚で
- 耳の奥は絶対に拭かない
- 見えない部分には触らない
猫の耳の皮膚は非常に薄くデリケートです。ゴシゴシこすると傷つけてしまうので、優しく丁寧に行いましょう。
ステップ5:ご褒美をあげる
耳掃除が終わったら、すぐに大好きなおやつをあげたり、たくさん褒めてあげましょう。
「耳掃除=良いことがある」と学習させることで、次回からの耳掃除がスムーズになります。
イヤークリーナーを直接注ぐ方法について
耳掃除専用の洗浄液を耳に直接注ぎ込んで掃除する方法もありますが、以下の点に注意が必要です。
メリット:
- 頑固な耳垢も簡単に取れる
デメリット・リスク:
- 洗浄液が中耳に影響して「傾頸(首が傾いたままの状態)」を起こすことがある
- 耳に傷がある場合、症状を悪化させる可能性
- 多くの猫が嫌がる
この方法を試す場合は、事前に動物病院で相談し、問題ないか確認してもらうことをおすすめします。
猫が耳掃除を嫌がる場合の対処法
1. 普段から耳を触る機会を増やす
日常的なスキンシップの中で、少しずつ耳を触る練習をしましょう。耳を触られることに慣れると、耳掃除への抵抗感が減ります。
2. 一度に全部やろうとしない
嫌がる場合は無理をせず、片耳だけ、あるいは軽く拭くだけにして、徐々に慣れさせていきましょう。
3. タイミングを変える
猫の機嫌が良い時や、眠そうな時を狙ってみてください。
4. プロに任せる
どうしても嫌がる場合は、動物病院やトリミングサロンでお願いすることも選択肢です。無理に自宅で行って猫との信頼関係を損なうより、専門家に任せるほうが良い場合もあります。
5. 耳ダニ症について
耳ダニ(ミミヒゼンダニ)とは
耳ダニとは、正式には「ミミヒゼンダニ」と呼ばれる寄生虫のことです。大きさは0.3〜0.5mm程度で、肉眼では確認しにくいほど小さいですが、よく見ると動いているのが見えることもあります。
このダニが猫の外耳道に寄生すると、激しいかゆみを引き起こし、「耳ダニ症(耳疥癬症)」という病気を発症します。
耳ダニ症の症状
耳ダニに感染すると、以下のような症状が現れます。
【主な症状】
- 激しい耳のかゆみ
- 頻繁に耳を掻く
- 頭を激しく振る
- 黒い耳垢が大量に出る(乾いた砂のような状態)
- 耳を床や壁にこすりつける
- 耳から悪臭がする
- 耳の周りが傷だらけになる、出血する
- 耳を触られるのを極端に嫌がる
特に特徴的なのは、黒い耳垢が大量に出ることです。健康な猫の耳垢は少量で茶色ですが、耳ダニに感染すると、ダニの分泌物やフン、死骸などが混ざって、黒くて乾燥した大量の耳垢が出ます。
耳ダニの感染経路
耳ダニは主に以下の経路で感染します。
-
接触感染
- 野良猫との接触
- 感染している猫同士の接触
-
親子感染
- 母猫から子猫へ
-
環境からの感染
- 感染猫が使ったタオルやブラシ
- カーペット、ベッド、畳などに落ちた耳垢
耳ダニは感染力が非常に強く、猫から猫へ渡り歩いて寄生します。多頭飼いの場合、一匹が感染すると他の猫にもうつりやすいため注意が必要です。
放置すると危険な理由
耳ダニ症を放置すると、以下のような深刻な問題に発展します。
- 外耳炎の悪化:炎症がひどくなり、耳道が腫れる
- 二次感染:細菌感染を併発する
- 中耳炎・内耳炎:さらに奥まで炎症が進む
- 耳血腫:激しく頭を振ることで、耳に血液が溜まる
- 運動障害:重症化すると平衡感覚に影響が出ることも
強いかゆみは猫にとって大きなストレスとなり、元気や食欲が低下することもあります。
耳ダニ症の対処法・治療法
耳ダニ症が疑われる場合は、必ず動物病院を受診してください。自己判断で耳掃除をすると、症状を悪化させる恐れがあります。
【動物病院での診断】
- 耳垢を顕微鏡で観察してダニの有無を確認
- 外耳炎の程度をチェック
- 細菌や真菌の二次感染の有無を調べる
【治療方法】
- 駆虫薬の投与
- 背中に滴下するスポットオンタイプ(レボリューション、アドボケートなど)
- 飲み薬タイプ
- 点耳薬タイプ
駆虫薬はダニの幼虫・成虫を駆除できますが、卵には効きません。卵は2〜4日で孵化し、約30日で成虫になるため、複数回の投与が必要です。通常、1ヶ月おきに数回投与します。
- 耳の洗浄
駆虫薬だけではダニの死骸やフンは耳に残ってしまうため、定期的な耳の洗浄も重要です。駆虫から1ヶ月ほどは、こまめに耳掃除が必要になるでしょう。
ただし、耳の洗浄は正しい方法で行わないと、炎症を悪化させたり、耳垢を奥に押し込んでしまう危険があります。自己判断で実施せず、獣医師の指導のもとで行ってください。
- 症状に対する治療
炎症や痛み、かゆみがひどい場合は、以下の薬を併用します。
- 抗生物質(細菌感染がある場合)
- 消炎剤(炎症を抑える)
- かゆみ止め(生活の質を改善するため)
- エリザベスカラーの装着
激しく耳を掻いて傷つけてしまう場合は、カラーで保護する必要があります。
【治療期間】
- 早期発見の場合:2回程度の通院で改善
- 重症化している場合:数週間〜数ヶ月
耳ダニ症の予防方法
1. 完全室内飼いにする
野良猫との接触を防ぐため、できるだけ室内で飼育しましょう。
2. 新しい猫を迎える時は隔離期間を設ける
保護猫や新しい子猫を迎える場合、耳ダニに感染していないことを確認するまで、先住猫と接触させないようにします。動物病院で健康診断を受け、耳のチェックを必ずしてもらいましょう。
3. 環境を清潔に保つ
感染猫が使った寝床やタオル、ブラシなどにはダニや卵がついている可能性があります。以下のものをこまめに掃除・洗濯しましょう。
- 猫のベッド
- カーペット
- ソファ
- 畳
4. 予防薬を定期的に投与する
外に出る機会がある猫や、多頭飼いで一匹に感染が見られた場合は、月に1回の予防薬投与が効果的です。ノミやフィラリアの予防と同時に、耳ダニの予防・駆除ができるスポットタイプの薬があります。
獣医師と相談しながら、猫に合った予防法を選びましょう。
5. 定期的な耳のチェック
週1回の耳チェックを習慣にすることで、早期発見・早期治療が可能になります。
人への感染について
ミミヒゼンダニは通常、人に寄生することはありませんが、一時的に皮膚炎やかゆみを引き起こすことがあります。
感染猫を触った後は、しっかりと手を洗いましょう。
6. よくある質問(Q&A)
Q1. 綿棒を使ってはいけないのはなぜですか?
綿棒は細くて硬いため、猫が突然動いた際に耳の奥まで刺さる危険があります。また、耳垢を奥に押し込んでしまったり、繊細な耳道の粘膜を傷つけるリスクもあります。コットンやガーゼを使って、指で拭き取る方法が安全です。
Q2. 耳掃除をしても次の日にはまた汚れています。どうすればいいですか?
毎日耳掃除をしても汚れがすぐに溜まる場合は、外耳炎や耳ダニ症などの病気が隠れている可能性があります。通常、健康な猫の耳はそこまで汚れません。動物病院を受診して、原因を調べてもらいましょう。
Q3. 猫の耳から臭いがします。これは正常ですか?
健康な猫の耳はほぼ無臭です。悪臭がする場合は、外耳炎や耳ダニ症、細菌・真菌感染などが疑われます。早めに動物病院を受診してください。
Q4. 耳の奥まで掃除したいのですが、どうすればいいですか?
猫の耳は外耳道がL字型に曲がっており、奥は見えない構造になっています。無理に奥まで掃除しようとすると、耳を傷つける危険があります。奥の汚れが気になる場合は、自宅では行わず、動物病院で処置してもらいましょう。
Q5. 子猫の耳掃除はいつから始めればいいですか?
子猫のうちから耳を触られることに慣れさせておくと、成猫になってからの耳掃除が楽になります。生後2〜3ヶ月頃から、優しく耳を触る練習を始めましょう。実際の耳掃除は、汚れが気になった時だけで十分です。
ただし、拾ってきたばかりの子猫や、ペットショップから来たばかりの子猫は、耳ダニに感染している可能性が高いため、早めに動物病院で健康診断を受けることをおすすめします。
Q6. 多頭飼いで一匹だけ耳が汚れます。他の猫にうつりますか?
耳ダニ症の場合は、他の猫にうつる可能性が高いです。一匹の耳だけが異常に汚れている場合は、すぐに動物病院で診てもらい、感染症でないか確認しましょう。
耳ダニと診断された場合は、他の猫にもうつっている可能性があるため、全頭を診察してもらうことをおすすめします。
Q7. 耳掃除の後、猫が頭を振るのは問題ありですか?
耳掃除の直後に軽く頭を振る程度なら問題ありません。耳に残った液体を出そうとする自然な反応です。
ただし、耳掃除後も長時間にわたって頭を振り続ける場合や、耳を気にする様子が続く場合は、耳の中を傷つけてしまった可能性があります。動物病院で診てもらいましょう。
まとめ
猫の耳掃除について、重要なポイントをまとめます。
【覚えておきたいこと】
- 健康な猫には頻繁な耳掃除は不要
- 週1回のチェック、月1〜2回の掃除で十分
- 汚れが気になった時だけ、見える範囲を優しく拭く
- 綿棒は使わず、コットンやガーゼを使う
- 耳の奥は触らない
【異常のサイン】
- 黒い耳垢が大量に出る
- 悪臭がする
- 頻繁に耳を掻く、頭を振る
- 耳が赤く腫れている
- 耳を触られるのを極端に嫌がる
これらの症状が見られたら、自己判断せず、必ず動物病院を受診しましょう。
耳掃除は「やりすぎ」が問題になることが多いケアです。愛猫の耳を守るためには、過度な掃除を避け、日常的な観察を心がけることが何よりも大切です。
正しい知識を持って、愛猫の耳の健康を守りましょう。
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