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インドネシアで象乗り禁止に!世界初の全面禁止が意味すること【動物福祉の転換点】

 

インドネシア 象乗り禁止

 

 

バリ島旅行を計画していたあなたへ。

 

「象に乗る体験がしてみたい」そう思ったことがある人は少なくないはずです。ところが2026年1月、インドネシア政府は全国の保護施設・観光施設における象乗りを全面禁止にする歴史的な決定を下しました。

 

これは単なる観光ルールの変更ではありません。アジアを代表する観光大国が、動物福祉を優先した「世界初」の選択をしたのです。

 

この記事では、以下のことを詳しく解説します。

  • インドネシアで象乗りが禁止になった理由と経緯
  • 象乗りが動物にとって具体的にどれだけ有害なのか
  • 世界各国では今どんな動きがあるのか
  • 禁止後、象たちはどのように飼育・管理されているのか

動物福祉に関心がある方、インドネシア旅行を検討中の方、そしてすべての動物好きに読んでいただきたい内容です。

 

インドネシアの象乗り禁止とは?何が起きたのか

 

2026年1月、歴史的な禁止令が発令された

 

2026年1月下旬、インドネシア林業省の自然資源・生態系保全総局は、全国の保護施設および観光施設における象乗りの全面禁止を正式に通告しました。

 

この通達の中で、バリ州自然資源保全局(BKSDA Bali)のラトナ・ヘンドラトモコ局長は次のように述べています。

 

「すべての保護機関は象乗りをただちに停止し、より教育的で革新的かつ倫理的な野生動物観光へと転換することが求められる」

 

これは議会を通じた法律の制定ではなく、林業省による「通達」という形ですが、保護施設の営業許可を通じて強制力が行使される点が重要です。従わない施設は、許可を取り消される可能性があると明言されています。

 

世界初・国全体での象乗り禁止

 

この決定を受け、動物保護団体「ワールド・アニマル・プロテクション(WAP)」は「インドネシアは世界で初めて、国レベルで象乗りを終わらせた国となった」と称賛のコメントを発表しました。

 

バリの有名施設「バリ動物園」はいち早く従業を停止。そして悪名高い「メイソン・エレファント・パーク」も2026年1月25日に象乗りを終了しました。同パークには27頭の絶滅危惧種スマトラゾウが暮らしており、「インドネシアで唯一の国際認証取得エレファントパーク」として知られていましたが、時代の波には逆らえなかったのです。

 

なぜ象乗りは禁止されなければならないのか?科学が示す事実

 

象の体と心へのダメージ

 

「象は大きいから人を乗せても問題ないのでは?」と思う人もいるかもしれません。しかし動物福祉の科学はこれを明確に否定しています。

 

象乗りが有害である主な理由は次のとおりです。

  • 訓練の過酷さ:象を人間に従わせるために「パジャーン」と呼ばれる調教が行われます。子象を母親から引き離し、狭い場所に閉じ込め、恐怖と痛みによって服従させるこのプロセスは、子象に深刻な身体的・精神的トラウマを与えます。
  • 身体への直接ダメージ:象の背中の構造は人を乗せるためにできていません。背骨は上向きに突き出た棘突起があり、重量がかかることで痛みや変形が生じます。長年の象乗りによって、多くの象が慢性的な背中の問題を抱えます。
  • ブルフックによる傷:象使い(マフート)が象をコントロールするために使う「ブルフック」は、先端が鋭く曲がった金属製の道具です。PETA(動物の倫理的扱いを求む人々)の調査では、インドネシアの施設において象の頭部や脚に生々しい傷や永続的な傷跡が確認されています。
  • 精神的ストレス:象は高い知性と社会性を持つ動物です。観光客のために一日中繰り返し作業を行う拘束された生活は、深刻なストレスや行動異常(ステレオタイプ行動)を引き起こします。

ワールド・アニマル・プロテクションは2018年と2023年の2度にわたって調査報告書を発表しており、象乗りをはじめとする観光利用が象の福祉に与える深刻な悪影響を科学的に記録しています。

 

スマトラゾウは「絶滅危惧種」

 

インドネシアに生息するスマトラゾウ(Elephas maximus sumatranus)は、IUCNのレッドリストで「絶滅危惧種(Endangered: EN)」に指定されています。かつてスマトラ島の広大な熱狂に生息していましたが、農園開発や違法伐採による生息地の喪失、人との衝突などにより個体数が激減しました。

 

WWFジャパンの報告によると、スマトラ島では近年、農園でゾウの死骸が発見されるなど悲劇的な事件が続いています。観光のために象を消耗させることは、絶滅に向けた圧力をさらに高めることになります。

 

よくある疑問に答えます【Q&A形式】

 

Q1. 象乗りのどこが「虐待」なの?乗ってるだけでしょ?

 

A. 見た目のうえでは「ただ乗っている」ように見えますが、問題はその背景にあります。象を観光客に従わせるために行われる調教(パジャーン)は、極めて残酷です。子象期のトラウマは一生涯にわたって象の行動や健康に影響し続けます。また、重い荷物(椅子・観光客)を毎日長時間運ぶことによる身体的負荷も無視できません。

 

Q2. 象乗りをやめたら、象の飼育者はどうやって生計を立てるの?

 

A. これは重要な現実的問題です。インドネシア政府の方針では、象乗りに代わる倫理的なエコツーリズムへの移行が求められています。具体的には「餌やり体験」「観察ウォーク」「象の水浴びの見学」「保全活動への参加」などです。バリ動物園はすでに象の生息環境を泥浴び場や草地などを含む自然に近い形に改装し、観光客が離れた場所から観察できるスタイルに移行することを発表しています。

 

Q3. 禁止前から行われていた「倫理的な象体験」との違いは?

 

A. 象を騎乗する行為そのものが問題とされています。餌やりや観察は象に過度な負担をかけない場合が多く、禁止の対象外です。「倫理的な象との触れ合い」の基準は、象の自発的な行動が尊重されているか、恐怖や強制がないかにあります。

 

Q4. インドネシアはなぜ今このタイミングで禁止にしたの?

 

A. 複数の要因が重なりました。①動物福祉団体による長年の調査・啓発活動、②PETAやWAPによる実態調査の公表、③観光客の意識変化(「象乗りに乗らない」という選択をする旅行者の増加)、④東南アジア動物園水族館協会(SEAZA)による業界全体への働きかけ、⑤国内施設の先行的な自主廃止(2024年にTSIボゴール、TSIプリゲンが自主的に象乗りを停止)、これらが積み重なった結果です。

 

禁止後、象はどうやって飼育されているのか?

 

倫理的な飼育への転換

 

象乗り禁止を機に、各施設は飼育環境の抜本的な見直しを求められています。

倫理的な象の飼育に必要な要素は以下の通りです。

  • 広大なスペース:象は1日に数十km移動する動物です。狭い施設での拘束は健康に悪影響を及ぼします。
  • 社会的な群れの形成:象は高度に社会的な動物であり、単独飼育は強いストレスを与えます。複数頭での群れ生活が理想です。
  • 自然に近い食事:草・木の葉・果物などの多様な植物を与えることが重要です。
  • 医療ケア体制:定期的な健康診断や蹄のケアが必要です。
  • 心理的刺激(エンリッチメント):象が探索・遊び・問題解決を行える環境を整えることが、精神的健康を保ちます。

バリ動物園は今回の禁止を受けて、象の生息空間を泥浴びができる「マッドウォロー」、草地、社会的交流エリアを含む形に再設計することを表明しています。観光客は柵越しや展望エリアから象を観察するスタイルへと移行します。

  

メイソン・エレファント・パークの「新しい章」

 

27頭のスマトラゾウを保護するメイソン・エレファント・パークは、象乗り廃止後も「インドネシア唯一の国際認証エレファントパーク」として活動を継続する方針です。

 

同施設は「手で餌を与える体験」「観察ウォーク」「象の水浴び補助」などを提供し、「世界で唯一の極めて絶滅危惧にさらされた象種(スマトラゾウ)を守りながら、バリ社会と共に持続可能な未来を築く」という声明を発表しています。

 

世界では象乗りはどう扱われているのか?

 

象乗りに対する各国の状況

 

インドネシアの決定が「世界初」と称賛される背景には、他国の対応の遅れがあります。

 

タイ:東南アジアで最も多くの観光用象(3,000頭以上)を抱えるタイでは、チェンマイを中心に「エレファント・ケア・ツーリズム」という新しい観光スタイルが広まりつつあります。象を騎乗せず、餌やり・水浴び補助・一緒に散策するプログラムに移行する施設が増えていますが、国家レベルでの象乗り禁止には至っていません。タイ国政府観光庁もこの流れを後押しし、「持続可能な象観光」の認証制度を推進中です。

 

インド:インドでは寺院や宮殿での儀式的な象の使役が続いており、観光用の象乗りも依然として行われています。ただし動物福祉委員会(AWBI)は野生動物を使ったサーカスの登録取消しを進めるなど、少しずつ規制強化の方向へ動いています。

 

スリランカ:野生象の保護に力を入れる一方、寺院の象を観光資源として活用する慣習が残っています。

 

ヨーロッパ・北米:野生動物のショー形式の娯楽に対する規制は厳しく、英国では動物愛護法に基づく厳格な保護体制があります。EU加盟国でも野生動物の観光利用に関する基準は年々厳しくなっています。

 

先行した施設の動き

 

実はインドネシア国内でも、今回の全面禁止に先行して自主廃止を選んだ施設があります。

  • 2024年:TSIボゴール(タマン・サファリ・インドネシア ボゴール)が象乗りを自主廃止
  • 2024年:TSIプリゲンが同様に自主廃止
  • 2024年:マレーシアのA’ファモサも象乗りを廃止
  • 2026年1月:バリ動物園が禁止令を受けて廃止
  • 2026年1月25日:メイソン・エレファント・パークが廃止

これらの動きは、東南アジア動物園水族館協会(SEAZA)も後押ししており、業界全体のトレンドとして象乗りの廃止は加速しています。

 

実体験エピソード:「楽しかったはずの体験」が変えた価値観

 

ある日本人旅行者・Aさん(30代・女性)は、数年前にバリ島を訪れた際に象乗り体験に参加しました。

 

「正直、最初はとても楽しみにしていました。でも象の背中に乗った瞬間、象がかなり体を揺らして不快そうにしていることに気づいて。象使いさんが細い棒で象の耳のあたりを何度か叩いていて、その音が……忘れられないんです」

帰国後、Aさんはインターネットで象乗りの実態を調べ、パジャーンという調教方法の存在を初めて知りました。

 

「もし事前に知っていたら絶対に参加しなかった。でも当時の私は何も知らなかった。知らないということが、加害に加担してしまうんだと気づいた旅でした」

 

このような「知ったあと」の気づきを生むためにこそ、情報の発信が重要です。動物福祉の観点から旅行を見直す人が増えるほど、業界全体が変わっていきます。

 

注意点:禁止後も残る課題と注意すべきこと

 

「倫理的」を謳う施設にも要注意

 

象乗りが禁止されても、すべての問題が解決するわけではありません。旅行者が気をつけるべき点として、以下が挙げられます。

  • 近接写真撮影:象に非常に近い距離でのセルフィー撮影を売りにする施設は、まだ動物に強いストレスを与えている可能性があります。
  • 鎖でつながれた象:施設内で鎖につながれたままの象がいる場合、その福祉状態は問題があります。
  • 過度な触れ合い:象が望まないにもかかわらず観光客が一方的に触る形式は、見た目は穏やかでも象にとってストレスになります。

 

ツアー予約サイトの情報は古い場合がある

 

日本語のツアー予約サイトでは、禁止令以前の象乗り体験ツアーの情報がまだ掲載されている場合があります。予約前には現地施設の最新情報を必ず確認することが重要です。

 

今後の社会的視点:動物福祉が観光を変える時代へ

 

「インスタ映え」から「動物倫理」へ

 

2010年代に爆発的に広まった「象乗り」観光は、SNSで拡散されることでさらに需要を高めました。しかしその同じSNSが、虐待の実態を可視化するツールにもなりました。

 

動物福祉の観点から旅先を選ぶ「エシカル・トラベラー(倫理的旅行者)」という概念は世界的に広まっており、特に若い世代の旅行者の間では「動物を搾取するアトラクションには参加しない」という価値観が定着しつつあります。

 

日本への示唆

 

日本でも動物カフェや触れ合い動物園の問題は根強く残っています。公益財団法人動物環境・福祉協会Evaの調査によれば、日本は世界と比較しても動物カフェや触れ合い動物園の数が圧倒的に多く、そこで飼育される動物の多くが生態や適正な飼育環境を考慮されていないと指摘されています。

 

インドネシアの決断は、日本の観光産業や動物政策にも一石を投じるものです。

 

動物を「見世物」から「共存する存在」へ

 

象乗りの禁止は、動物を「人間の娯楽のための道具」として扱う時代から、「生態系の一員として尊重する」時代への転換を象徴しています。

 

象は70年以上生きることのできる、非常に知性の高い動物です。家族と深い絆を結び、死んだ仲間を悼む行動が記録されています。そのような生き物を、人間の「思い出づくり」のために消耗させることの意味を、私たち一人ひとりが問い直す時代が来ています。

 

まとめ:インドネシアが示した「動物福祉ファースト」の旅行の形

 

インドネシアの象乗り禁止は、世界で初めて国レベルで象乗りを全面廃止した歴史的な決断です。

この記事で解説してきたことをまとめます。

  • 2026年1月、インドネシア林業省が全施設に象乗りの停止を通達し、バリ動物園・メイソン・エレファント・パークなどが廃止した
  • 象乗りの問題点は「パジャーン」と呼ばれる残酷な調教、身体的ダメージ、慢性的な精神ストレスにある
  • スマトラゾウは絶滅危惧種であり、保護の観点からも消耗させることは許されない
  • タイ・インドなど他国では国レベルの禁止はまだだが、倫理的な象観光への移行が進んでいる
  • 禁止後の施設は観察型エコツーリズムへと転換し、象の自然な生活を守る方向へ向かっている
  • 旅行者自身の「選択」が産業全体を変える力を持っている

 

インドネシアへの旅行を計画しているなら、今こそ「象と一緒に何ができるか」ではなく、「象が自然に生きるためにどう関われるか」を考えてみてください。

 

あなたの選択が、象の未来をつくります。


 

参考情報:World Animal Protection(ワールド・アニマル・プロテクション)、PETA、WWFジャパン、公益財団法人動物環境・福祉協会Eva、BKSDA Bali(バリ州自然資源保全局)、South China Morning Post


 

この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

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