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バリ動物園の象乗りが廃止された理由とは?動物福祉・観光業への影響を徹底解説

 

バリ動物園 象乗り 廃止

 

 

バリ動物園の象乗りが廃止された理由とは?動物福祉・観光業への影響を徹底解説

 
 
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バリ島を代表する観光スポット「バリ動物園(Bali Zoo)」が、長年にわたって提供してきた象乗り体験(エレファントライド)の廃止を決断したことは、動物福祉や観光業のあり方を問い直す大きな出来事として注目されました。「象に乗ることがなぜ問題なのか?」と疑問を持つ方も多いかもしれません。本記事では、科学的根拠・現地の実情・観光業への影響まで、あらゆる角度から丁寧に解説します。

 

 バリ動物園と象乗り体験の歴史

 

バリ島ウブド近郊に位置する「バリ動物園(Bali Zoo)」は、インドネシアを代表する動物園の一つとして、国内外の観光客から長年にわたって高い人気を誇ってきました。開園以来、スマトラゾウを中心とした象との触れ合い体験は、同園の看板プログラムであり続けました。

 

「エレファントライド(象乗り体験)」は、観光客が象の背中に設置された「ハウダ」と呼ばれる座席に乗り、ガイドとともに園内やジャングルを巡るというアクティビティです。その非日常的な体験は、バリ島旅行の「定番コンテンツ」として旅行ブログやSNSに数え切れないほど登場し、多くの旅行者がこのアクティビティを目的にバリ動物園を訪れました。

 
ピーク時の年間来園者数(推定) 数十万人
 
象乗り体験の提供期間(概算)30年以上
 
スマトラゾウの保全ステータス(IUCN) 絶滅危惧種
 

しかし、2010年代後半から動物福祉への社会的意識が急速に高まり、SNSの普及によって「象乗りの裏側」が可視化されるようになります。旅行者の価値観が変容するにつれ、バリ動物園もその変化と真剣に向き合うことを迫られることになりました。

 

 象乗りは本当に象へのストレスになるのか?

 

「象は大きな動物だから、人間を乗せても平気なのでは?」という声は少なくありません。しかし科学的な研究は、この認識が大きな誤解であることを示しています。

 

脊椎への物理的負荷

 

象の背骨の構造は、馬などとは根本的に異なります。牛や馬が体重を背中で支えられるよう進化しているのに対し、象の脊椎は下向きではなく上向きに突出しており、背中に外部からの荷重を受けることに適応していません。ウェールズ大学などの研究によれば、象の背骨周辺の筋肉・靱帯に不自然な圧力がかかることが確認されており、長期にわたる象乗りは脊柱変形や慢性的な背部痛を引き起こすリスクがあるとされています。

 

象の脊椎構造について

 

象の脊椎突起は背中上部に向かって突き出ており、上からの荷重(乗客+ハウダの重量)を支えるように進化していません。観光用のハウダは平均15〜50kgあり、乗客の体重と合わせると1頭の象に100kg超の負荷がかかることも珍しくありません。

 

心理的ストレスと「クラッシュ」訓練

 

象が人間を乗せるためには、まず「人に従う」ように調教される必要があります。インドネシアをはじめとした多くの地域では、「パジャン(Phajaan)」と呼ばれる伝統的な調教手法が使われてきました。これは、幼い象を母親から引き離し、狭い空間に閉じ込め、棒や鈎(アンクス)で痛みを与えながら服従させる手法です。英語圏では「クラッシュ(crushing)」とも呼ばれ、象の精神を打ち砕くことを目的としています。

 

現代の動物行動学研究では、このプロセスがトラウマを引き起こすことが示されています。象は高度な感情・社会性・記憶力を持つ動物であり、このような調教はPTSD(心的外傷後ストレス障害)に類似した状態を引き起こすとする研究者も存在します。

 

象は複雑な感情を持ち、恐怖・悲しみ・喜びを経験できる動物です。強制的な調教は長期にわたる心理的ダメージを残す可能性があります。 — World Animal Protection(世界動物保護協会)報告書より要約

 

過酷な労働環境

 

バリ島の観光ピーク時、象は1日に複数回の乗客を担い、炎天下の中で働き続けることがあります。象は体温調節が苦手な動物であり、高温多湿の熱帯気候における長時間労働は熱中症リスクを高めます。また、自然の象の生態では1日に数十km歩き、水浴びをし、複雑な社会関係の中で過ごしますが、観光施設での象は行動範囲が著しく制限された環境に置かれています。

 

動物福祉の観点から見た問題点

 

動物福祉(Animal Welfare)とは、動物が身体的・精神的に健全な状態で生きられるよう配慮する考え方です。国際的に広く参照される「5つの自由(Five Freedoms)」に照らし合わせると、観光象乗りが抱える問題は非常に明確になります。

 

動物福祉の「5つの自由」と象乗りの問題

 
1飢えと渇きからの自由:観光ルーティンのため、適切な水分・食事が確保されない場合がある。
2不快からの自由:ハウダや金属製の拘束具が皮膚を傷つけることがある。
3苦痛・負傷・疾病からの自由:背中への物理的負荷、鈎による傷など直接的な痛みが生じる。
4本来の行動を表現する自由:群れで行動する、広い範囲を移動するなど自然な行動が制限される。
5恐怖・苦悩からの自由:強制調教によるトラウマ・強制された服従状態が持続する。
 
 

スマトラゾウの保全問題

 

バリ動物園で利用されているスマトラゾウ(Elephas maximus sumatranus)は、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで「絶滅危惧種(Critically Endangered)」に指定されています。野生個体数は推定2,400〜2,800頭とも言われ、急速な森林破壊と密猟によって生息地を失い続けています。

 

観光産業で利用される象の多くは、野生から捕獲されたか、捕獲個体を親に持つ飼育下生まれです。観光目的の象の需要が存在し続ける限り、野生からの捕獲圧力が続くという悪循環が生じます。「保護のために飼育している」という施設側の主張は、観光収益を度外視した真の保護活動と切り分けて評価する必要があります。

 

象使い(マホート)の問題

 

象乗りを語るうえで忘れてはならないのが「マホート(象使い)」たちの問題です。インドネシアの農村部では、代々象使いとして生計を立ててきた家族が多く存在します。廃止の際に経済的セーフティネットなく彼らの仕事を取り上げることは、新たな社会問題を生みかねません。真に持続可能な改革には、マホートたちの生活移行支援も含む包括的なアプローチが不可欠です。

 

廃止の背景とバリ動物園の決断

 

バリ動物園が象乗りプログラムを廃止・見直しに踏み切った背景には、複数の要因が複雑に絡み合っています。

 

SNSとグローバルな意識変容

 

2010年代、象乗り施設の裏側を撮影した動画がSNSで拡散し、世界中で大きな反響を呼びました。World Animal ProtectionやPETAなどの動物保護団体がキャンペーンを展開し、「象乗り施設には行かない」という旅行者のボイコット運動がじわじわと広がりました。トリップアドバイザーは2016年に象乗りを含む動物虐待リスクのある体験の販売を停止。大手旅行予約サイトの姿勢変化は、施設側に大きな経営的プレッシャーを与えました。

 

インドネシア政府の方針

 

インドネシア政府も動物福祉に関する規制強化に向けた議論を進めており、CITES(ワシントン条約)の締約国として希少動物の保護義務を担っています。国際的な批判が高まる中、国家観光イメージの観点からも、動物虐待と批判される観光コンテンツの見直しは政府にとっても重要な課題となっています。

 

バリ動物園の姿勢変化

 

バリ動物園は象乗りの段階的廃止・見直しと並行して、「象の保護プログラム」「自然観察型のエレファント・エクスペリエンス」など、象を直接的に道具として扱わない新しい体験プログラムの開発・提供に注力するようになりました。これは施設側の倫理的転換を示す重要なシグナルです。

 

観光業への影響:廃止は本当にマイナスか?

 

象乗りを廃止すると「集客力が下がる」「収益が落ちる」と懸念する声は、施設内外から上がります。しかし、実際のデータや事例を見ると、必ずしもそうとは言い切れません。

 

エシカル観光市場の成長

 

近年、旅行者の間では「エシカル観光(Ethical Tourism)」「サステナブル・ツーリズム」への関心が急上昇しています。特にZ世代・ミレニアル世代を中心に、旅行先での環境・動物への影響を重視する消費行動が定着しつつあります。Booking.comの調査では、旅行者の約7割がサステナブルな旅行オプションを選びたいと回答しており、エシカルな施設としてのポジショニングは中長期的な競争優位になり得ます。

 
サステナブルな旅行を希望する旅行者の割合(Booking.com調査) 約70%
 
エシカル動物体験の検索数増加(2019→2023年比較・推定) 2倍以上

 

代替コンテンツの可能性

 

象乗りを廃止したタイのエレファント・ネイチャー・パークは、象乗りなしの自然観察型ツアーに転換した後、むしろ来場者数・収益ともに増加したという実績があります。「象と歩く」「水浴びを見学する」「食事を与える」といった参加型だが搾取的でない体験が、高い評価と口コミを生んでいます。バリ動物園も、象の自然な行動を観察するプログラムを拡充することで、新たな顧客層を獲得できる可能性があります。

 

短期的な収益低下リスク

 

もちろん、廃止直後に象乗りを目的としていた来場者が離れる短期的な影響は無視できません。特に、「象乗り体験」をパッケージに組み込んでいた地元旅行代理店や大手OTA(オンライン旅行代理店)との関係性見直しには、相応のコストと交渉期間が必要です。施設側には、移行期の収益補填と新コンテンツへのマーケティング投資を同時に進める経営的な体力が求められます。

 

世界の類似事例:象乗り廃止の潮流

 

バリ動物園の決断は、孤立した出来事ではありません。アジア全体でエレファントライドの見直しが加速しており、バリの動きはより大きなグローバルトレンドの一部と位置づけられます。

 

タイ:転換の最前線

 

象乗りと観光の関係で世界的に最も注目されてきたのがタイです。チェンマイをはじめとする北部の観光地では、象乗り施設が乱立した時代から、倫理的なエレファント・サンクチュアリへの転換が進んでいます。エレファント・ネイチャー・パーク(ENP)はその先駆けとして国際的に高く評価されており、多くの施設がそのモデルを参考にするようになりました。

 

インド:宗教的背景と変化

 

ヒンドゥー教・仏教の祭礼に深く結びついたインドの象文化は、単純な「廃止」で語れない複雑さを持っています。しかし、ケーララ州などでは過酷な条件で働かされる象の問題がメディアで取り上げられ、規制強化と管理基準の見直しが進んでいます。

 

国際的なボイコット運動

 

Tripadvisor・Airbnb・Viatorなどの大手プラットフォームが、動物虐待につながる体験の掲載を段階的に制限・削除しており、象乗り施設が主要な集客経路を失いつつある状況は世界共通のトレンドとなっています。

 

私たちはどう行動すべきか

 

バリ動物園や世界の動物施設をめぐる問題を知ったとき、「では私たちに何ができるのか」を考えることが次のステップです。批判するだけでなく、建設的な選択と行動が変化を生みます。

  • 象乗りを含む観光体験を避ける:旅行先で「ゾウに乗る」「ゾウにペイントさせる」などのアクティビティは選ばない。代わりに、象の自然な行動を観察できる認定サンクチュアリを選ぶ。
  • エシカルな施設を事前に調べる:World Animal ProtectionやAsia for Animals(アジア・フォー・アニマルズ)が発行するガイドラインや認定リストを旅行前に確認する。
  • SNSでの拡散を意識する:象乗り写真や動画のシェアは、間接的にその需要を支持するメッセージになり得る。自分の発信が持つ影響力を意識する。
  • 旅行代理店に質問する:「この施設は動物福祉基準を満たしていますか?」と代理店や宿泊施設に質問するだけで、業界に問題意識を伝えるシグナルになる。
  • 寄付や支援団体へのアクセス:スマトラゾウの保護活動を行うNGOへの寄付は、間接的に野生象の保全に貢献する。WWFインドネシアやWCSなどが活動している。
  • 現地経済を別の方法で支援する:象乗りを避けることで生まれる収益減を補うために、地元のエシカルな工芸品購入・レストラン利用・ホームステイ選択など、地域経済に直接貢献する別の手段を選ぶ。

 

「廃止すれば象が救われる」の単純化に注意

 

象乗りの廃止は重要なステップですが、それだけで問題が解決するわけではありません。観光需要が消えれば、今度は象の「経済的価値」が失われ、管理費用を賄えなくなった施設が象を放棄・売却するリスクも生じます。真の解決には、施設への継続的な監視・支援、マホートへの職業訓練、そして野生生息地の保全という多層的な取り組みが必要です。問題を単純化せず、複雑さを受け止めながら行動することが重要です。

 

「エシカル観光」のチェックリスト

 

旅行先で動物施設を訪れる際は、以下の点を確認しましょう。

 

①象(動物)が自由に動ける広いスペースがあるか

②鎖・棒・鈎による拘束・管理をしていないか

③乗客を背中に乗せていないか

④「自然な行動」を引き出す展示をしているか

⑤施設収益が保全活動に還元されているか

 

まとめ:バリ動物園の決断が示す未来

 

バリ動物園の象乗り廃止は、単なるアクティビティの撤廃ではありません。それは「観光と動物の関わり方」を根本から問い直す、時代の変化の象徴です。科学的知見は、象乗りが象の身体的・精神的健康に深刻なダメージを与えることを示しています。動物福祉の国際基準に照らしても、人間の娯楽のために象を酷使するビジネスモデルは持続可能ではありません。

一方で、観光業への影響・マホートの生計・短期的収益の問題など、廃止に伴う複雑な現実も直視する必要があります。しかし、タイのエレファント・サンクチュアリの成功例が示すように、エシカルな転換は長期的には新たな経済的機会を生み出す可能性を持っています。

 

私たち旅行者にできる最も強力なアクションは、「消費の選択」です。象乗りを含む搾取的な観光体験を避け、エシカルな施設を積極的に選ぶことで、私たちは市場に強力なシグナルを送ることができます。バリ島を愛するからこそ、バリ島の自然・動物・文化が持続可能な形で守られる未来を選びましょう。

 

 

 

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この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

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