猫スペースきぶん屋 猫スペースきぶん屋

オランダで2016年に誕生した「動物党(Partij voor de Dieren)」とは?世界初の動物権利政党が国政に議席を持つ意味

オランダ 動物党

 

 

あなたは「動物権利政党」という言葉を聞いたことがありますか?

畜産動物の扱い方、ペットの福祉、野生動物の保護——こうしたテーマに「政治」がどれほど関わっているか、日本ではまだあまり知られていません。

 

しかし世界に目を向けると、2006年にオランダで誕生した「動物党(Partij voor de Dieren、略称:PvdD)」は、動物権利を政策の中心に据えた世界初の政党として、国政議会に継続的に議席を持ち続けています。

 

「動物のための政治なんて現実的なの?」と思う方もいるかもしれません。でも実際には、動物福祉は環境問題・食糧問題・公衆衛生・気候変動と深く絡み合っており、政治の力なくしては解決できない課題だということが、少しずつ世界に認識され始めています。

 

この記事では、世界初の動物権利政党「動物党」の誕生背景・政策内容・社会的影響を徹底解説します。そして、日本における動物福祉の現状と今後の可能性についても考えていきます。動物福祉に関心のある方、政治と社会変革に興味のある方、ぜひ最後までお読みください。

 

 

動物福祉をめぐる世界と日本の現状:データで見る深刻な実態

 

世界で毎年数百億頭の動物が苦しむ現実

まず、私たちが向き合うべき現実のデータを見てみましょう。

  • FAO(国連食糧農業機関)の報告によると、世界では年間約800億頭以上の陸上動物が食用に屠殺されています(2020年データ)。
  • 水産物を含めると、その数は数兆匹にのぼるとも言われています。
  • 工場畜産(集約農業)では、多くの動物が生涯にわたり身動きのとれないケージや狭小スペースで過ごします。
  • 動物実験については、年間約1億9,200万匹の動物が世界中で使われているとの推計(Humane Society International)があります。

 

日本の動物福祉の現状と課題

 

日本では、動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)が動物福祉の主な法的根拠となっています。

環境省の調査によれば、2022年度に全国の動物愛護センター等で引き取られた犬・猫は合計約9万2,000頭。そのうち殺処分されたのは約1万4,000頭(犬:約3,700頭、猫:約1万300頭)です。かつては年間数十万頭が殺処分されていたことを考えると大きな改善ですが、依然として深刻な問題です。

 

また、日本の畜産業における動物福祉の取り組みは欧米と比べて遅れているとされています。EUではすでにバタリーケージの禁止が進んでいますが、日本ではいまだに多くの採卵鶏がバタリーケージで飼育されています。

こうした課題に政治がどう向き合うべきか——その一つの答えを示したのが、オランダの「動物党」です。

 

よくある疑問:動物党・動物権利政党についてのQ&A

 

Q1. 「動物党」は本当に議席を持っているの?

  1. はい。オランダの「動物党(Partij voor de Dieren)」は2006年に初めて国会(下院)に2議席を獲得し、2023年の総選挙でも7議席を維持しています(150議席中)。比例代表制のオランダだからこそ実現した形ですが、単一イシュー政党が継続的に存在感を示している点は世界的にも稀有な例です。
  2.  

Q2. 動物党は「動物だけ」のための政党なの?

  1. 名前だけ聞くとそう思われがちですが、動物党の政策は非常に広範囲にわたります。気候変動対策、環境保全、食の安全、持続可能な農業、公衆衛生——これらすべてが動物福祉と連動しているという考え方のもと、包括的な政策を展開しています。「動物を守ることは、地球を守ること」が基本思想です。

Q3. 動物の権利を政治で守ることは現実的なの?

  1. 動物党の存在が示すように、十分に現実的です。スイスやドイツでも動物福祉は憲法に明記されており、EUでは動物を「感受性を持つ存在(sentient beings)」として法的に認めています(リスボン条約・第13条)。政治の力によって、動物が受ける扱いを具体的なルールで変えることは、すでに世界各国で進んでいます。

Q4. 日本でも同様の政党は生まれないの?

  1. 現時点で日本に動物権利を専門とする国政政党はありませんが、動物愛護を重視する政策提言団体や、動物福祉に積極的な議員は増えつつあります。日本は小選挙区制が中心のため単一イシュー政党が議席を得るハードルは高いですが、市民運動や政策提言という形での影響力は高まっています。関連記事「日本の動物福祉政策の現状と課題」もぜひご参照ください。

 

動物党の政策:具体的に何を変えてきたのか

 

主要政策①:畜産業の抜本改革

 

動物党が最も力を入れてきた分野の一つが、畜産動物の福祉向上です。

  • 工場畜産の段階的廃止に向けた法整備を推進。
  • オランダ国内の畜産頭数削減(環境負荷軽減と動物福祉の両立)を国会で主張。
  • 畜産農場への福祉基準(アニマルウェルフェア基準)の義務付けを提言。

オランダは欧州最大級の農業輸出国であり、畜産業は経済の根幹でもあります。そのような国で「畜産の縮小」を訴えることは容易ではありませんが、動物党は一貫してその立場を維持してきました。

 

主要政策②:動物実験の廃止へ向けた法整備

 

動物党は、動物実験の代替法(3R原則:Replacement・Reduction・Refinement)の普及を強力に後押ししています。

オランダは実は世界有数の動物実験大国ですが、動物党の継続的な活動により、代替研究への投資が着実に増えています。政府機関「NCad(動物実験代替法センター)」の設立にも動物党の圧力が影響したとされています。

 

主要政策③:野生動物保護と自然環境の保全

  • ハンティング(狩猟)の制限・禁止を推進。
  • 生物多様性の保全に向けた農地利用規制を提案。
  • プラスチック汚染など海洋・陸上生態系への影響を政策課題として取り上げ。

 

主要政策④:植物性食品への移行促進

 

動物党は、植物性(プラントベース)食への移行を政策的に支援することを提案しています。これは単なる動物愛護の観点だけでなく、温室効果ガス削減・水資源節約・土地利用効率化という環境的観点からも正当化されています。

 

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)も、畜産業が全温室効果ガスの約14.5%を排出していると報告しており、食の転換が気候変動対策に直結することは科学的コンセンサスになっています。

 

動物権利政党が社会にもたらすメリットとデメリット

 

メリット:動物と社会の両方に恩恵が

  • 声を持たない動物の利益を政治の場で代弁できる。
  • 環境問題・気候変動・公衆衛生など横断的課題への包括的アプローチが可能。
  • 動物福祉が政治的テーマとして認知されることで、企業や消費者の意識改革が促進される。
  • 欧州における「アニマルウェルフェア」基準の向上に対して、比較・競争圧力となる。
  • 次世代の市民(特に若い世代)が政治参加するきっかけになる。

デメリット・批判:課題も存在する

  • 農家・畜産業者・漁業関係者などの経済的利益との対立が生じる。
  • 「動物だけを優先する急進的な政党」として政治的孤立を招くリスクがある。
  • 法的・倫理的に「動物の権利」をどこまで認めるかについて社会的合意が難しい。
  • 日本のような小選挙区制では議席獲得が極めて困難。

 

ただし、動物党自身はこれらの批判に対して「経済と福祉は対立しない」「持続可能な農業への移行支援が必要」として、農業者との対話を重視する姿勢を示しています。

 

実際にオランダを訪ねて感じたこと:動物福祉が「普通」の国

 

動物福祉を専門に取材・研究するライターとして、私の知人はオランダを訪問したことがあります。

 

以下、知人の話

アムステルダムのスーパーマーケットでは「アニマルウェルフェア認証」のロゴが当たり前のように並んでいました。

 

特に印象的だったのは、「動物のことを話題にすることを恥ずかしいと思っていない」雰囲気です。カフェで「最近の畜産政策どう思う?」という会話が自然に起こっていて、日本との違いを強く感じました。

 

動物党の選挙ポスターが街中に普通に貼られていて、「動物のための政党」が奇妙に見られていないことが伝わってきます。オランダでは動物福祉が社会的な普通の議題として根付いているのです。

 

「動物福祉は感情論ではなく、科学と政策と市民の意識が交差する場所にある」——これが、オランダで学んだ最大のことでした。

 

この視点は、日本の動物福祉の現状を変えるためにも不可欠なものだと強く感じています。

 

動物権利・動物福祉を語る上での注意点

 

「動物権利」と「動物福祉」は異なる概念

 

この2つは混同されがちですが、明確な違いがあります。

  • 動物権利(Animal Rights):動物には人間と同様の固有の権利があるという考え方。動物の利用そのものを否定する場合も。
  • 動物福祉(Animal Welfare):動物を利用する場合でも、その苦痛を最小化すべきという考え方。5つの自由(Five Freedoms)が国際的指標。

動物党は「動物権利」を名称に冠しつつも、政策的には「動物福祉の向上」を現実的なゴールとして設定しています。感情的議論に偏らず、科学的根拠と法的枠組みに基づいた活動が信頼性の源となっています。

 

国による文化的・法的背景の違いを踏まえる

 

オランダでうまくいった政策や仕組みが、そのまま日本や他の国に適用できるとは限りません。食文化・農業形態・選挙制度・宗教観・市民社会の成熟度など、多くの要因が異なります。

大切なのは「オランダを模倣する」ことではなく、「動物福祉を政策の優先課題として捉え直す」という発想の転換です。

 

動物福祉が変える未来:社会・政治・経済の新しい潮流

 

欧州における「ファーム・トゥ・フォーク戦略」の台頭

 

EU(欧州連合)は2020年に「ファーム・トゥ・フォーク(農場から食卓まで)戦略」を発表。この中で、2027年までにバタリーケージを全廃する方針が示されました。EUの農業政策が動物福祉を明確にKPIに組み込んだのは画期的なことです。

この方向性に動物党のような政党が影響を与えてきたことは、見逃せない事実です。

 

消費者行動の変化が政治を動かす

 

近年、世界中でプラントベースフードの市場が急拡大しています。グッドフードインスティテュートによれば、2023年のグローバルプラントベース食品市場規模は約200億ドルに達しています。

 

消費者が「動物福祉に配慮した商品を選ぶ」行動が増えれば、企業は対応せざるを得ません。そして企業が変われば、政治も変わります。動物福祉は「個人の選択」と「政治的意志」の両輪で前進するのです。

 

日本における可能性:市民から政治を変える

 

日本でも、動物福祉への関心は確実に高まっています。

  • 2019年の動物愛護管理法改正では、虐待行為への罰則が強化されました。
  • 「アニマルウェルフェア認証」を取得する農場や食品メーカーが増加しています。
  • SNSを通じた動物福祉啓発活動が若い世代に広がっています。

まだ「動物権利政党」の誕生には遠くても、日本でも市民が政治家に働きかけ、企業の選択肢を変え、社会の価値観を形成することは今この瞬間からできます。

 

「動物党」の誕生は、その一つの形が国家レベルで結晶化したものに過ぎません。重要なのは、動物の苦しみを「見えない問題」にしない意志を持ち続けることです。

 

日本における動物福祉政策の詳細については、「日本の動物愛護管理法:最新改正のポイントと今後の課題」もあわせてご覧ください。

 

まとめ:動物党が示す「もう一つの政治の可能性」

 

この記事では、世界初の動物権利政党「動物党(Partij voor de Dieren)」について、その誕生背景・政策内容・社会的影響・日本への示唆を詳しく解説してきました。

 

最後に、重要なポイントを整理します。

  • 動物党は2006年にオランダで誕生し、2023年現在も国会(下院150議席中7議席)に議席を持つ世界初の動物権利政党。
  • 畜産改革・動物実験廃止・野生動物保護・植物性食品推進など、幅広い政策を展開。
  • 動物福祉は環境・気候・公衆衛生と深く連携した「横断的政策課題」である。
  • 日本でも法改正・消費者意識・企業行動の変化を通じて動物福祉は前進している。
  • 政治だけでなく、消費者の選択・企業の行動・市民の声が社会を変える力を持っている。

 

声を持たない動物たちの代わりに、私たちが何を選択するかが問われています。

スーパーの棚の前に立ったとき、選挙の投票用紙を手にしたとき、あるいはSNSで何かを発信するとき——それぞれの場面で「動物福祉」という視点を持ち込むことが、社会を少しずつ変えていきます。

 

今日から一つだけ行動してみましょう。アニマルウェルフェア認証の商品を選ぶ、動物福祉に関心のある議員に声を届ける、あるいはこの記事を誰かにシェアする——小さな一歩が、大きな変化の始まりです。

 

【参考資料・出典】

・Partij voor de Dieren 公式サイト(https://www.partijvoordedieren.nl/

・FAO(国連食糧農業機関)「Livestock and the Environment」

・環境省「動物愛護管理行政事務提要」(令和5年度版)

・欧州委員会「Farm to Fork Strategy(2020)」

・IPCC「Climate Change and Land(2019)」

・Good Food Institute「State of the Industry Report 2023」

 

 

古着買取、ヴィーガン食品やペットフードの買い物で支援など皆様にしてもらいたいことをまとめています。
参加しやすいものにぜひ協力してください!

 

 

猫スペースきぶん屋が皆様に協力していただきたいこと一覧

この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

SNS LINK

この著者の記事一覧

関連情報

コメントは受け付けていません。

特集

Instagram でフォロー