殺処分が少ない国ランキング|動物福祉先進国に学ぶ、命を守る仕組みとは

「殺処分が少ない国って、どこなんだろう?」
そう気になって、この記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。
日本では、2023年度(令和5年度)に犬猫合わせて9,017頭が殺処分されました(環境省統計)。過去最少を更新したとはいえ、1日に換算すると約25頭。今この瞬間にも、命が失われているのが現実です。
一方、世界には殺処分をほぼゼロに抑えている国があります。ドイツ、オランダ、スウェーデン……。彼らはどんな仕組みで命を守っているのか。そして、日本はどこへ向かっているのか。
この記事では、殺処分が少ない国のランキングと具体的な取り組みを徹底解説します。データと制度の両面から、正確な情報をお届けします。感情論だけでなく、社会構造から問題を捉えてみましょう。
殺処分が少ない国ランキング|世界の動物福祉先進国TOP5
世界規模で「殺処分数」を単純比較するのは、定義や統計基準が国によって異なるため簡単ではありません。しかし、動物福祉の水準・法整備・実績をもとに、代表的な国を紹介します。
第1位:ドイツ|世界で最も有名な「殺処分ゼロ」国家
ドイツ動物保護連盟は、ティアハイムの運営において、基本的に殺処分してはならないと定めています。
「ティアハイム(Tierheim)」とはドイツ語で「動物の家」を意味する民間の動物保護施設のことです。ドイツ全土に550ヵ所存在し、飼い主の都合で保護された動物を預かり、新しい飼い主を探してくれます。
ドイツがここまで動物福祉を整備できた背景には、長い歴史があります。1933年にはすでに動物保護法が制定され、捕獲された野良犬や野良猫はまずティアハイムに収容し、14日間の検査を経て伝染病の兆候がなければ飼い主を探すという取り組みが法律で定められていました。
また、2002年には憲法に「動物保護」が導入され、犬の飼育については毎日の散歩や居住空間の広さなど数値を設けて細かく決められています。
ただし、注意が必要な点もあります。ドイツには「狩猟法」が存在し、狩猟できる地域において犬や猫が駆除されるという事実があります。ドイツの「殺処分ゼロ」はあくまでも保護施設内の話であり、完全な意味でのゼロではないことは押さえておく必要があります。
第2位:オランダ|路上の野良犬をゼロにした国
オランダは、全土から路上の野良犬を事実上ゼロにした唯一の国として知られています。
その方法は、殺処分ではありません。不妊・去勢手術の普及、厳格な繁殖規制、そして動物保護施設の充実によって達成しました。ペットを捨てる行為に対しても厳しい罰則があり、「捨てる」という選択肢そのものが文化として成立しにくい社会が形成されています。
ドイツやオランダは殺処分施設がなく、殺処分ゼロを達成した国としても知られています。オランダの取り組みは、日本でも近年注目を集め、「なぜ可能なのか」という研究対象になっています。
第3位:スウェーデン|世界一厳しい動物保護法の国
世界で一番厳しいといわれているのがスウェーデンの動物保護法です。犬や猫をケージに入れて飼育することや、6時間以上お留守番させることも禁止されています。また、犬同士の社会的なコンタクトも義務化されています。
スウェーデンでは、動物を「物」として扱う発想そのものが法律によって排除されています。ペットを飼う側に相当の責任と義務が課されているため、無責任な飼育や遺棄が起きにくい社会構造になっています。
第4位:イギリス|世界初の動物愛護団体を生んだ国
イギリスは1824年に世界初の動物愛護団体「RSPCA(王立動物虐待防止協会)」が設立された、動物福祉の発祥地ともいえる国です。
国立国会図書館の調査(2014年)によれば、イギリスの動物保護施設に入居した犬猫の殺処分率は1割程度とされており、数値として見ても低い水準を保っています。RSPCAやBattersea Dogs & Cats Homeなど民間団体が資金と人員を大規模に動員し、行政を補完する役割を担っています。
第5位:スイス|繁殖から管理する「予約制ブリーダー」
スイスのブリーダーは、予約が入ってはじめて出産してもらうシステムを採用しており、引き取り手のない子が産まれることのないよう調整していることが特徴です。また、うさぎやモルモット、インコなど社会性のある動物は1匹での飼育を禁止するなど、動物の生態系に合わせた独自の法律が細かく定められています。
スイスの特徴は、「産まれる前から管理する」という発想です。需要と供給のバランスを取ることで、引き取り手のない動物を生み出さない仕組みを作っています。
日本の現状と課題|データで見る殺処分の実態
環境省データが示す日本の現在地
日本の殺処分数は、過去20年で劇的に減少してきました。
- 2004年度:約155,870頭(犬のみ)
- 2008年度:犬猫合わせて約27万6千頭
- 2017年度:約4万3千頭
- 2022年度(令和4年度):犬2,434頭・猫9,472頭 合計11,906頭
- 2023年度(令和5年度):犬2,118頭・猫6,899頭 合計9,017頭(過去最少)
(出典:環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」)
2023年度の殺処分数は9,017頭で、統計開始以来過去最少の記録です。
しかし、1日に換算すると約25頭。毎日これだけの命が失われています。
殺処分が多い都道府県・少ない都道府県
2023年度のデータでは、犬の殺処分数が最も多かったのは徳島県で、次いで長崎県、香川県と続きました。猫および犬猫合計の殺処分数が多かったのは福島県、兵庫県、岐阜県の順で、四国・九州地方の一部や東北・近畿地方で比較的高い傾向が見られます。
一方、殺処分が少ない自治体もあります。神奈川県や東京都、奈良市など、行政と民間の積極的な取り組みにより数年間連続で殺処分ゼロを継続している自治体もあります。奈良市では令和元年度以降4年連続で犬猫殺処分ゼロを達成し、殺処分機(ガス室)も撤去したことが公表されています。
なぜ地域差が生まれるのか?
- 野犬の多さ(四国・九州は自然環境や気候が影響)
- 自治体と民間団体の連携度
- 不妊・去勢手術の助成制度の充実度
- マイクロチップの普及率
- 保護活動ボランティアの活動量
よくある疑問(Q&A)|殺処分が少ない国について
Q1. ドイツは本当に殺処分ゼロなの?
A. 保護施設(ティアハイム)内では原則ゼロです。ただし、治癒の見込みのない病気や苦痛が著しい動物に対しては、獣医師の判断のもと安楽死が行われます。また、ドイツの狩猟法により野良犬・猫が「駆除」される場合もあり、完全な意味での「ゼロ」とは言い切れない側面もあります。
Q2. 日本が殺処分ゼロを達成できない理由は?
A. 主な原因は以下の3つです。
- ペットショップでの生体販売が今も続いており、売れ残りや飼育放棄が起きやすい
- 不妊・去勢手術の普及が欧米に比べて遅れている
- 野良猫・野犬の個体数管理が追いついていない
日本では、多くの先進国で定められている繁殖の制限、8週齢規制、動物取扱業のライセンス制がいまだに実現していません。これが「大量に生産して大量に捨てる」流通構造の温床となっています。
Q3. 「殺処分ゼロ」を名乗っている自治体でも実は処分しているって本当?
A. 定義の問題があります。たとえば東京都は「殺処分」という言葉の解釈を独自に定め、「致死処分」という別の言葉を使っています。環境省が分類している「①譲渡に適さない病気・攻撃性のある動物」への処置をカウントしないなど、数字のからくりが存在することもあります。数字だけでなく、定義と内容を確認することが重要です。
Q4. 個人でできることはある?
A. あります。具体的な行動は後述しますが、「購入より引き取り」「不妊・去勢手術」「マイクロチップ登録」「保護団体への寄付・ボランティア」などが代表的です。
殺処分を減らすために今すぐできること|実践ガイド
殺処分が少ない国の取り組みを参考に、日本でも個人・社会両面でできることを整理します。
ステップ1:ペットを「買う」より「迎える」選択を
殺処分が少ない国では、ペットショップでの生体販売そのものを禁止している国が多いです。日本でも保護施設からの引き取りを選ぶことが、殺処分を減らす最も直接的な行動です。
全国の自治体や保護団体が運営する譲渡会情報は、環境省の「動物愛護管理行政事務提要」や各都道府県のホームページで確認できます。
ステップ2:不妊・去勢手術を行う
野良猫の増加を防ぐ最も確実な方法です。地域によっては自治体の助成金が受けられます。「TNR活動(Trap-Neuter-Return:捕獲→去勢・避妊→元の場所に戻す)」は、地域猫問題の解決策として広く採用されています。
不妊手術の助成制度については、お住まいの自治体のホームページで確認してみてください。
ステップ3:マイクロチップを装着・登録する
2022年6月より、ペットショップなどで販売される犬・猫へのマイクロチップ装着が義務化されました。迷子になった際の返還率が格段に向上します。
2023年度の統計では、引き取られた犬のうち約半数が飼い主の元に返されており、これはマイクロチップ装着の普及や自治体の情報公開の成果といえます。
ステップ4:保護団体を支援する
金銭的な寄付だけでなく、ボランティア参加、SNSでの情報拡散、一時預かりボランティアなど、様々な形で支援できます。
特に「一時預かりボランティア」は、シェルターの収容スペースを確保し、より多くの命を救う直接的な手段です。近年は在宅でもできる形式も増えています。
ステップ5:声を届ける・制度に関わる
地域の自治体議員や首長に「動物愛護の取り組み強化」を要望することも有効です。奈良市のように殺処分機を撤去した自治体は、市民と行政が一体となって動いた結果生まれています。パブリックコメント(意見公募)への参加も、一つの行動です。
日本の取り組みのメリット・デメリット
現在の日本の取り組みで評価できる点
- 殺処分数が20年で70分の1以下に減少(2004年比)
- マイクロチップ義務化が進んだ
- 動物愛護管理法が2019年に大幅改正され、飼育放棄が難しくなった
- 民間保護団体・ボランティアの活動が活発化している
- 奈良市・神奈川県など殺処分ゼロを達成した自治体が増えている
課題・改善が必要な点
- ペットショップでの生体販売が継続しており、流通構造が変わっていない
- 繁殖業者への規制がまだ緩い(8週齢規制は導入されたが不十分との声もある)
- 自治体間の格差が大きい(殺処分ゼロの自治体と年間数百頭の自治体が共存)
- 猫の殺処分数がまだ犬の3倍以上ある
- 欧米に比べてボランティア支援のインフラが弱い
エピソード|保護犬「ムク」との出会い
ある動物保護ボランティアの女性(30代・大阪在住)は、3年前に保健所から引き出された柴犬のオスを引き取りました。
「ムクは、保健所の収容期間が3日後に切れるタイミングで連絡をもらいました。人に慣れていなくて、最初は食事も食べてくれなかった。でも1ヶ月後には笑顔を見せてくれるようになって。保護施設のスタッフの方が『この子が新しい家族と出会えてよかった』と泣いてくれたんです。私もまた泣きました」
このような命のリレーが日本中で起きています。一頭の命を救う体験は、動物福祉への関心を深め、社会全体の意識を少しずつ変えていきます。
殺処分が少ない国の共通点は、法律だけではありません。「自分が動物の命に関わっている」という市民一人ひとりの当事者意識があることです。
注意点|「殺処分ゼロ」という言葉に潜む複雑さ
定義の違いに注意する
「殺処分ゼロ」を宣言している国・自治体でも、以下のケースは「殺処分」に含まれないことがあります。
- 治癒の見込みのない病気への安楽死
- 攻撃性が高く譲渡できない動物への処置
- 狩猟法に基づく野良犬・猫の駆除(ドイツの場合)
- 収容施設外での死亡
数字の背景にある定義を理解した上で情報を読むことが、正しい理解につながります。
単純な「ゼロ比較」には意味がない
各国の動物の頭数・法制度・文化的背景・野良動物の数はまったく異なります。ドイツやオランダを「そのままコピーすれば解決する」というほど単純ではありません。日本の文化・社会に合った形での制度設計が必要です。
感情だけで動くと支援が長続きしない
保護活動に感情的に関わることは大切ですが、継続的に支援するには冷静な視点も必要です。「多頭飼育崩壊」や「シェルターの資金難」など、現場の課題は複雑です。信頼できる団体を選び、持続可能な形で関わることが重要です。
今後の社会的視点|動物福祉の潮流が変わっている
国際社会における動物福祉の高まり
EUは2009年の基本条約(EU機能条約)に動物福祉の尊重を盛り込み、加盟国全体で法的基準を引き上げています。動物の福祉は今や、SDGsや「ワンヘルス(人・動物・環境の健康は一体)」という概念とも結びついており、国際的な議論の中心的テーマになっています。
日本の変化の兆し
殺処分数の減少の背景には、動物愛護管理法の改正や自治体の取り組み強化があります。マイクロチップの装着義務化や不妊・去勢手術の普及により、野良犬猫の繁殖が抑えられ、殺処分の対象となる動物が減っています。
また、動物愛護団体やボランティアによる譲渡活動の活発化も大きく影響しています。SNSで里親募集情報が広がり、若い世代を中心に「保護犬・保護猫を迎える」という選択肢が定着しつつあります。
これからの日本に必要なこと
- ペットショップ生体販売の段階的廃止
- 繁殖業者へのより厳格なライセンス制
- 地域間格差の是正(殺処分が多い地域への集中支援)
- 学校教育における動物福祉教育の導入
- 保護施設運営への公的資金投入の拡大
日本は今、転換点にいます。2004年に15万頭以上だった殺処分数が、2023年には9,000頭台まで減りました。この変化は、法律だけで生まれたものではありません。市民一人ひとりの関心と行動が積み重なって生まれた成果です。
まとめ|殺処分が少ない国から日本が学べること
この記事では、殺処分が少ない国のランキングと取り組みを紹介しました。最後に要点を整理します。
殺処分が少ない国の共通点:
- 動物保護を定めた強力な法律がある
- 民間の保護施設が充実しており、行政と連携している
- 繁殖から流通まで厳格に管理されている
- 不妊・去勢手術が社会に浸透している
- 国民の動物福祉への意識が高い
日本の現状:
- 殺処分数は20年で70分の1以下に減少(2023年度:9,017頭・過去最少)
- しかし1日約25頭が今も命を失っている
- 自治体間の格差が大きく、構造的な課題が残る
個人でできること:
- 保護犬・保護猫を迎える
- 不妊・去勢手術を行い、野良猫問題に関わる
- 信頼できる保護団体を支援する
- マイクロチップを装着・登録する
- 動物福祉に関心を持ち、声を上げる
殺処分が少ない国は、ある日突然そうなったわけではありません。何十年もかけて、法律を整え、文化を育て、市民が関わり続けた結果です。
日本でも、変化は確実に起きています。あなたの一つの選択が、その変化を加速させます。
まずは今日、近くの保護施設や譲渡会を検索してみることから始めてみてください。その一歩が、命を救う未来につながります。
参考資料: ・環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」各年度版 ・国立国会図書館「諸外国における犬猫殺処分をめぐる状況」(2014年) ・環境省「動物愛護管理行政事務提要」 ・ドイツ動物保護連盟(Deutscher Tierschutzbund)公表資料
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