韓国の食用犬問題とは?禁止法成立の背景と動物福祉の現在地【2024年最新】
はじめに:あなたが「韓国 食用犬問題」を検索した理由
「韓国では今でも犬を食べているの?」「禁止されたって聞いたけど、本当に終わりにいくの?」
こうした疑問を持ってこの記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。
2024年1月、韓国国会は食用を目的とした犬の飼育・屠殺・販売を全面禁止する「犬食用禁止特別法」を賛成208票、反対0票、棄権2票という圧倒的多数で可決しました。
これは、韓国で約36年間にわたり続いてきた「犬食論争」に終止符を打つ、歴史的な一歩でした。
しかし、法律が成立したからといって問題がすべて解決したわけではありません。施行は2027年。それまでの猶予期間に何が起きるのか、残された50万頭以上の食用犬たちはどうなるのか——この記事では、韓国の食用犬問題の全貌を、データと事実をもとに、感情論に流れることなく丁寧に解説します。
動物福祉の視点から、この問題を正確に理解したい方のために、必要な情報をすべてまとめました。ぜひ最後までお読みください。
韓国の食用犬問題の現状——数字で見る実態
食用犬の規模はどれほどか
韓国政府(農林畜産食品部)の2022年の調査によると、当時の韓国国内には:
- 食用犬の飼育農場:約1,100か所
- 飼育されている犬の頭数:約57万頭以上
- 犬肉を提供する飲食店:約1,600か所
が存在していました。
国際動物保護団体「ヒューメイン・ソサエティー・インターナショナル(HSI)」によれば、韓国ではかつて年間約100万頭の犬が食用目的で屠殺されていたとされます。韓国動物権益団体「KARA」の推計でも、年間78万〜100万頭という数字が示されています。
これほどの規模の産業が、社会的な価値観の変化と動物福祉への意識の高まりによって、ついに法律で禁止されることになったのです。
韓国人の意識はどう変わったか
かつては「体力増進の夏の食文化」として広く受け入れられていた犬肉文化ですが、近年は急速に変化しています。
ギャラップ・コリアの2023年の世論調査では:
- 「過去12か月間に犬肉を食べた」と答えた韓国人はわずか8%(2015年の27%から大幅減少)
- 犬肉の消費を「支持する」と答えた人は20%以下
また、ニールセンコリアの調査では、86%の韓国人が「将来的に犬肉を食べない」と回答し、犬食禁止を支持した人は57%に上ります。
現在、韓国でペットとして暮らす犬は約600万匹。「伴侶動物」としての犬との共生が当たり前になった社会では、食用犬という存在そのものへの違和感が、特に若い世代を中心に広まっています。
韓国「犬食用禁止特別法」の内容を詳しく解説
法律の正式名称と施行スケジュール
正式名称は「犬の食用目的の飼育屠殺及び流通等の終息に関する特別法」(略称:犬食用禁止特別法)。
2024年1月9日に可決・成立し、罰則の施行は2027年(公布から3年後)とされています。
施行スケジュールのポイントをまとめると:
- 2024年前半:法律の公布。農場主・屠殺業者・飲食店は施設情報を地方自治体へ申告義務
- 2024年〜2027年:3年間の猶予期間。廃業・転業支援が国・自治体から提供される
- 2027年以降:全面禁止。違反した場合は刑事罰の対象
違反した場合の罰則
法律に違反した場合、以下の罰則が科されます:
- 食用目的で犬を屠殺した場合:3年以下の懲役、または3,000万ウォン(約330万円)以下の罰金
- 食用目的で犬を飼育・繁殖・流通・販売した場合:2年以下の懲役、または2,000万ウォン(約220万円)以下の罰金
これは韓国史上初めて、犬食関連の産業全体を包括的に取り締まる法律です。
業者への補償問題
一方で、食用犬産業で生計を立ててきた業者への補償は、現在も議論が続いています。
食用犬飼育農場主の団体「大韓育犬協会」は、犬1頭あたり200万ウォン(約22万円)の補償を政府に要求。この試算通りに補償した場合、韓国政府には約1兆ウォン(約1,000億円)の予算が必要になるとされており、財政的な課題も浮き彫りになっています。
よくある疑問に答えるQ&A
Q1. 犬肉を「食べること」自体は罰せられますか?
A. 現行の法律では、犬肉を「食べること」自体には罰則がありません。
今回の法律が禁止しているのは、飼育・屠殺・流通・販売という「供給側」の行為です。ただし、2027年以降に供給が途絶えることで、実質的に犬肉食は消滅すると見込まれています。
Q2. なぜ今まで禁止できなかったのですか?
A. 長年にわたる「文化か虐待か」という対立と、産業従事者の生計問題が障壁になっていたからです。
韓国では1988年のソウルオリンピック前後から国際的な批判を受け始め、2002年のFIFAワールドカップ開催時にも議論が再燃しました。しかし、犬肉を「韓国の伝統文化」と捉える層の反発と、農場主・業者の反対が長く続いていました。
法律成立の背景には、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の妻・金建希(キム・ゴンヒ)氏が「犬の食用を止めなければならない」と公言したことや、与野党を超えた議員たちの合意形成が大きく貢献しています。
Q3. 残された食用犬たちはどうなりますか?
A. 保護施設への移送、または安楽死という選択肢が議論されています。
これが現在進行形で最も難しい問題の一つです。52万頭以上とも言われる食用犬を一斉に保護施設で受け入れることは、キャパシティーの面で現実的に困難です。HSIなどの国際団体は「できる限り多くの犬を救出するよう国に働きかける」としていますが、具体的な解決策はまだ模索中です。
Q4. 日本はこの問題とどう向き合うべきですか?
A. 他国の文化問題として「批判するだけ」の姿勢を超えることが重要です。
日本でも過去には馬肉・鯨肉・兎肉など、時代や地域によって食用とされてきた動物が変化してきた歴史があります。韓国の事例は「どんな動物を守るべきか」という問いを、私たち自身に突きつけてもいます。動物福祉の観点から、隣国の変化を敬意をもって見守り、学ぶ姿勢が求められます。
食用犬問題の歴史的背景——なぜ韓国で続いてきたのか
犬食文化の起源
韓国における犬食の歴史は、三国時代(紀元1世紀頃)にまで遡るとされています。
Wikipediaをはじめとする資料によれば、高麗王朝時代にモンゴルの影響を受けて犬肉食が広がり、朝鮮王朝時代には貧困層の食料として定着していったとされます。夏の初伏(ちょぼく)・中伏(なかぼく)・末伏(まつぼく)の「三伏」と呼ばれる時期に体力をつけるため、「ポシンタン(補身湯)」と呼ばれる犬肉鍋が食されてきました。
しかし、高度経済成長とともに生活水準が向上し、犬がペットとして普及するにつれ、こうした文化への違和感が社会的に広まっていきました。
国際的な批判と国内の変化
1988年のソウルオリンピックの際、韓国政府は国際的なイメージを懸念して犬肉料理店の一時的な閉鎖を求めました。
その後も2002年のFIFAワールドカップ、2018年の平昌冬季オリンピックなど、国際的なイベントのたびに「犬食問題」が注目されてきました。国際的なプレッシャーだけでなく、韓国国内の若い世代を中心とした価値観の変化こそが、今回の法律成立を後押しした最大の要因と言えます。
動物福祉の観点から見た問題点と課題
飼育・屠殺環境の実態
国際動物保護団体が長年にわたって報告してきた食用犬の飼育・屠殺環境は、動物福祉の観点から深刻な問題をはらんでいます。
主な問題点:
- 非衛生的かつ過密な飼育環境:金属製のケージに長期間閉じ込められ、十分な運動や社会化が行われない
- 残酷な屠殺方法:電気ショックや首吊りによる屠殺が報告されており、動物への苦痛が極めて大きい
- 獣医学的ケアの欠如:食用犬として飼育される間、適切な医療が受けられないケースが多い
- 感染症リスク:過密状態での飼育は、人獣共通感染症(ズーノーシス)のリスクを高める懸念もある
これらの問題は、韓国国内の動物保護団体だけでなく、国際的な動物福祉団体からも長年にわたって指摘され続けてきました。
法律が成立しても続く課題
法律が成立した今なお、課題は山積しています:
- 猶予期間中の取り締まり強化:2027年の完全施行まで、違法な屠殺や取引が続く可能性がある
- 食用犬の引き取り先問題:数十万頭に上る犬の処遇が決まっていない
- 業者の転廃業支援:十分な補償と支援がなければ、地下に潜った違法産業として存続するリスクがある
- 監視・執行体制の整備:法律の実効性を担保するための行政インフラが必要
実体験が語る——現地の変化と人々の声
韓国在住の日本人ライター・Aさん(30代)は、ソウル生活の中でこの問題を肌で感じてきたといいます。
「5年前に韓国に引っ越した頃は、地元の市場でまだ犬肉料理を扱う店を見かけました。でも、ここ2〜3年で急に減った印象があります。若いカップルや家族連れが多いエリアでは、もはや犬肉料理店を探す方が難しいくらいです」
「韓国の友人に聞いても、『食べたことはあるけど、最近は考えられない』という人が多い。ペットとして犬と暮らしている人が増えたことで、感覚が変わったんだと思います」
また、動物保護活動に関わる韓国人ボランティアのBさん(20代)は、法律成立について「長年の活動がようやく実を結んだ」と語りながらも、「法律はスタート地点に過ぎない。残された犬たちの命を守るために、まだやることは山ほどある」と話しています。
こうした現場の声は、法律の成立が終わりではなく、新たな段階の始まりであることを示しています。
食用犬問題への関わり方——今すぐできること
法律は成立した。でも、私たちにできることは何か——。
以下に、日本にいながらでも関われる具体的なアクションをまとめました。
国際NGOを支援する
- ヒューメイン・ソサエティー・インターナショナル(HSI):韓国の食用犬農場から実際に犬を救出・引き取る活動を継続中
- FOUR PAWS(フォー・ポーズ):アジア全体の動物福祉問題に取り組む国際団体
- 韓国動物権行動KARA:韓国国内の動物保護活動の最前線に立つ団体
これらの団体への寄付・署名活動への参加は、直接的な支援につながります。
正確な情報を広める
SNSで「韓国 食用犬問題」を共有する際には、感情的な批判に終始せず、法的な変化や現状のデータに基づいた発信を心がけることが重要です。
誤った情報や煽情的な投稿は、むしろ問題解決を遠ざけることがあります。この記事のような一次情報・データに基づくコンテンツを活用してください。
動物福祉全般への関心を持ち続ける
韓国の食用犬問題は、決して「遠い国の話」ではありません。
日本でも、畜産動物の福祉(アニマルウェルフェア)、ペット流通における問題、殺処分ゼロの取り組みなど、動物福祉に関わる課題は無数にあります。
一つの問題を入口に、動物福祉全体への関心を広げていくことが、長期的な変化につながります。
メリット・デメリットで考える「食用犬禁止」の影響
禁止のメリット
動物福祉の観点から:
- 年間数十万〜100万頭もの犬が非人道的な状況に置かれる問題の根本解決
- 動物の苦痛を減らすという普遍的な倫理観との整合性
- 獣医学的な適切なケアを受けられない環境の解消
社会・経済的観点から:
- 韓国の国際的なイメージ向上
- 動物福祉産業(ペット関連市場、動物病院、トレーナーなど)への資源の移行
- 食品衛生・感染症リスクの低減
禁止のデメリット・課題
業者・従事者への影響:
- 生計を失う農場主・屠殺業者・飲食店経営者が多数存在
- 十分な補償・転業支援がなければ違法産業として存続するリスク
- 農村部の高齢者など社会的弱者への影響が特に懸念される
動物への即時の影響:
- 法律成立後、廃業を急ぐ農場主による大量の犬の遺棄・安楽死リスク
- 保護施設のキャパシティーを大幅に超える数の犬が発生する可能性
- 食用犬と保護犬の間で資源の取り合いが生じる懸念
これらの課題に対して、政府・自治体・NGO・民間企業が連携した包括的な対応が不可欠です。
注意点——この問題を語る上で大切な視点
文化的背景を無視した批判は逆効果
「韓国人は残酷だ」「野蛮な国」——インターネット上では、こうした短絡的な批判を見かけることがあります。
しかし、この問題を感情論だけで語ることは、解決を遠ざけます。
犬食の文化が長年続いてきた背景には、貧困の歴史、高齢世代の生活習慣、地域ごとの文化的差異が複雑に絡み合っています。重要なのは「批判すること」ではなく、動物の苦痛を減らすという目的に向けて、建設的な対話を続けることです。
日本もまた動物福祉の課題を持つ国
韓国の問題を批判する前に、日本国内の状況についても冷静に目を向ける必要があります。
日本でも:
- 畜産動物のアニマルウェルフェア基準は国際水準に比べて遅れているとされる
- ペットショップにおける子犬・子猫の展示販売は、欧米の多くの国では禁止または規制されている
- 年間殺処分数は減少傾向にあるものの、2022年度には環境省のデータで約1万7,000頭(犬・猫合計)が今なお存在する
自国の問題に向き合いながら、他国の変化を応援する——これが動物福祉を本気で考える姿勢だと言えます。
今後の社会的視点——動物福祉の世界的な流れと韓国の意義
アジアから発信された歴史的メッセージ
今回の韓国の「犬食用禁止特別法」は、アジアにおける動物福祉立法の大きなターニングポイントとして国際的に高く評価されています。
台湾は2001年に犬・猫の食用を禁止しており、香港でも1950年代から法律で保護されてきました。それでも、韓国ほどの規模の犬食産業が存在した国が、国際社会からの批判に押される形ではなく、自国民の意識の変化によって禁止に踏み切ったことの意義は大きいと言えます。
EU・国際機関が推進するアニマルウェルフェアの潮流
世界的に見ると、EUは農場動物の福祉基準を引き上げ続けており、2023年にはケージ飼育の廃止を目指す「ケージ飼いからの脱却」政策を推進しています。
国連食糧農業機関(FAO)も、動物福祉を食料安全保障・持続可能な農業の一環として位置づけるようになっています。
こうした国際的な潮流の中で、韓国の動きは「アジア発の動物福祉先進事例」として機能する可能性を秘めています。
日本の動物福祉政策の現在地
日本では、2019年に動物愛護管理法が改正され、虐待に対する罰則強化や、幼齢動物の展示規制が導入されました。しかし、畜産動物を含む動物福祉の総合的な基準という観点では、欧州諸国と比較するとまだ整備が途上にあります。
韓国の変化を機に、日本でも動物福祉に関する社会的な対話がより活発になることを、多くの動物福祉関係者が期待しています。
まとめ——韓国の食用犬問題が私たちに問いかけること
韓国の食用犬問題は、2024年の「犬食用禁止特別法」成立によって、大きな転換点を迎えました。
この記事でお伝えしたポイントを振り返ります:
- 現状のデータ:年間最大100万頭が食用に。2022年時点で1,100農場・57万頭以上が飼育
- 法律の内容:2027年から全面施行。違反には最高3年の懲役
- 意識の変化:過去12か月に犬肉を食べた人は8%(2023年)と激減
- 残された課題:食用犬の処遇、業者への補償、法の実効性確保
- 私たちができること:NGO支援、正確な情報発信、自国の動物福祉への関心
動物福祉の問題に「完成形」はありません。韓国の法律成立は、ゴールではなくスタートです。
そして、この問題は「韓国だけの話」でもありません。すべての動物が不必要な苦痛を受けることなく生きられる社会——そのための問いは、日本に住む私たちにも等しく向けられています。
この記事を読んで何か感じたなら、まず一つだけ行動してみてください。
HSIやKARAへの支援、SNSでの正確な情報の共有、あるいは自分の周りで飼われている動物をより丁寧に見つめ直すこと——どんな小さな一歩も、動物福祉の未来につながっています。
参考情報:ヒューメイン・ソサエティー・インターナショナル(HSI)、韓国農林畜産食品部(2022年調査)、ギャラップ・コリア(2023年世論調査)、ニールセンコリア調査、Sustainable Japan、Newsweek日本版(2024年1月)、Wikipedia「大韓民国における犬肉の消費」ほか
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