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競走馬の引退後はどうなる?セカンドキャリアと食肉処理の現実を動物福祉の視点で解説

 

引退馬の運命と現実

 

  

はじめに|あなたが知りたいのはこういうことではないですか?

 

「競走馬って、引退したらどこに行くんだろう?」

競馬観戦をしていると、ふとそんな疑問が頭をよぎることがあります。

テレビの前で声援を送っていたあの馬が、レースを走らなくなった後、どんな人生(馬生)を歩むのか。

 

実は、競走馬の引退後の現実は、多くの人が想像するよりもはるかに複雑で、厳しいものです。

乗馬クラブで第二の人生を歩む馬もいれば、繁殖に入る馬もいます。しかし一方で、食肉処理される馬が一定数存在することも、事実として知っておく必要があります。

 

この記事では、競走馬の引退後の行き先・セカンドキャリアの実態・食肉処理の現状を、データと事実に基づいてわかりやすく解説します。

 

感情論ではなく、社会的・経済的背景も含めてフラットに向き合うことで、あなた自身が動物福祉について深く考えるきっかけになれば幸いです。

 

競走馬の引退後はどうなる?現状のデータと実態

 

毎年何頭の競走馬が引退しているのか

 

日本中央競馬会(JRA)によると、毎年おおよそ7,000〜8,000頭前後の競走馬が国内で登録・活動しています。

そのうち、怪我や成績不振、年齢などを理由に毎年数千頭規模の競走馬が引退していきます。

地方競馬も合わせると、引退馬の数はさらに増えます。

 

引退後の主な行き先は、大きく以下の4つに分類されます。

  • 繁殖用(種牡馬・繁殖牝馬):成績優秀な馬の一部が次世代の競走馬を生み出すために活用される
  • 乗馬・ホーストレッキング:乗馬クラブや観光施設などで人を乗せる仕事に転職する
  • 功労馬として余生を過ごす:牧場や施設で保護・飼養される(ごく一部)
  • 食肉処理(と畜):馬肉として流通するルートに入る

このうち、最も多くの馬が辿る現実的なルートが食肉処理であるという事実は、多くの競馬ファンにとってショックかもしれません。

 

食肉処理される馬の割合

 

公式な統計は非常に限られていますが、業界内の推計や動物福祉団体の調査によると、引退競走馬の相当数(一説では半数以上)が最終的に食肉処理されると言われています。

農林水産省の畜産統計によると、日本では年間数万頭規模の馬が食肉用として処理されており、その一部に引退競走馬が含まれています。

 

馬肉(桜肉)は熊本県や福島県などで古くから食文化として根付いており、食用馬の流通は合法的に行われています。

しかし問題は、「競走馬としてキャリアを終えた馬が、どのような経緯でそのルートに入るのか」というプロセスの透明性の低さにあります。

 

よくある疑問に答えます(Q&A形式)

 

Q1. 有名な馬も食肉処理されることがあるの?

 

重賞勝ち馬や人気馬の多くは繁殖に入るか、功労馬として余生を過ごすことが多いです。

しかし、地方競馬や下級クラスの馬、成績を残せなかった馬については、経済的な事情から食肉処理されるケースが少なくありません。

馬を飼い続けるには年間100万円以上の維持費がかかるとも言われており、馬主や牧場が費用を負担し続けることは難しいのが現実です。

 

Q2. 引退馬を乗馬クラブに送ることはできないの?

 

可能ではありますが、乗馬クラブにも受け入れキャパシティの限界があります。

乗馬用に再調教するには時間とコストがかかります。また、競走馬として鍛えられた馬は気性が激しいものも多く、初心者向けの乗馬には向かないケースも多いです。

全国乗馬倶楽部振興協会(現・公益社団法人日本馬術連盟の関連組織)によると、乗馬クラブの数は全国に約700〜800施設ありますが、引退馬の受け入れ能力には限りがあります。

 

Q3. 競走馬を個人で引き取ることはできるの?

 

法律上は可能ですが、飼養管理の知識・施設・費用が必要です。

馬は犬や猫のように室内で飼えるペットではありません。馬房(馬小屋)、運動スペース、飼料費、獣医療費など、維持するには相応の環境が求められます。

個人での引き取りを検討される方は、後述する支援団体やNPOを通じたマッチングサービスを利用することをおすすめします。

 

Q4. JRAは引退馬支援に何か取り組んでいるの?

 

JRAは2019年度から「引退馬支援事業」を本格化させ、乗馬や馬術競技への転用を支援する取り組みを進めています。

また、公益財団法人馬事文化財団や一般社団法人サラブレッドリボーンなどの団体と連携し、引退後のセカンドキャリア支援を推進しています。

しかし、予算や対象馬の数に制限があり、すべての引退馬をカバーするには至っていないのが現状です。

 

競走馬のセカンドキャリア:具体的な選択肢と手順

 

① 乗馬への転用(最も一般的なセカンドキャリア)

 

引退競走馬を乗馬用に転換することを「転用」または「乗馬転用」と呼びます。

具体的なプロセスは以下の通りです。

  1. 引退馬を受け入れる乗馬施設またはNPOへ相談・申請
  2. 再調教(レース用の走りグセを取り除き、人を乗せる訓練を行う)
  3. 性格・体力・健康状態の評価
  4. 乗馬クラブや馬術競技への正式な配置

再調教には通常3ヶ月〜1年程度かかります。

サラブレッドリボーンが運営する「引退馬オーナー制度」では、月額数万円の支援金を出すことで特定の馬のスポンサーになることができ、個人でも引退馬支援に参加できます。

 

② ホーストレッキング・観光業

 

自然豊かな地域では、引退競走馬をホーストレッキング(乗馬による観光ツアー)に活用するケースも増えています。

北海道・長野・熊本などの牧場エリアでは、廃業農家の土地を活用した引退馬の余生施設兼観光施設の開設が進んでいます。

 

③ 教育・療育への活用(ホースセラピー)

 

近年注目されているのが、ホースセラピー(馬を使った心理・身体療法)への活用です。

馬と触れ合うことで、子どもの情緒発達や障害者の身体機能回復、高齢者のQOL向上などに効果があるとする研究が蓄積されています。

日本ではまだ普及段階ですが、欧米ではすでに多くの医療・福祉機関で導入されており、引退馬の有力な受け皿として期待されています。

 

④ 保護牧場・シェルターへの入所

 

NPOや個人が運営する保護牧場(馬のシェルター)に入所し、余生を過ごすケースもあります。

代表的な施設としては、NPO法人「引退馬協会(RARF)」が管理するファンドシステムがあり、寄付や会員費によって馬の生活を支えています。

 

引退馬支援のメリットとデメリット

 

メリット

  • 動物福祉の向上:命を大切にする社会的文化の醸成につながる
  • 経済的波及効果:乗馬・観光・療育など新たな産業・雇用の創出
  • 競馬ファンとのエンゲージメント強化:引退後も馬と関われることでファン層が拡大する
  • 教育的価値:子どもや若者が命と向き合う体験教育の場になる

デメリット・課題

  • 維持コストの高さ:1頭あたり年間100万円以上の費用が継続的に必要
  • 受け入れキャパの限界:乗馬施設・保護牧場には物理的・財政的な限界がある
  • 再調教の難しさ:すべての馬が乗馬や療育に向いているわけではない
  • 社会的認知の低さ:引退馬問題を知っている一般市民はまだ少ない

 

エピソード|引退馬と歩んだ女性の話

 

北海道日高地方の小さな牧場で働く田中さん(仮名・30代女性)は、もともと競馬ファンとして観戦を楽しんでいました。

あるとき、ネットで「競走馬の引退後の現実」を調べたことをきっかけに、引退馬支援のボランティアに参加。

「最初は怖かったです。サラブレッドってとても大きいので。でも、毎日ブラッシングしているうちに、目が合うようになって。あの子が私を認識してくれた瞬間、胸が熱くなりました」

田中さんが支援に関わった馬は、現在ホーストレッキング施設で子どもたちに乗られながら、穏やかな余生を送っています。

「引退馬の問題は、決して遠い話じゃないと思っています。競馬を楽しむなら、その馬のその後にも関心を持ってほしい」と彼女は語ります。

こうした個人の関わりが、引退馬支援の大きな力になっています。

 

注意点|引退馬支援に関わる前に知っておくこと

 

引退馬支援に関心を持った方が行動する前に、いくつかの重要な注意点があります。

 

① 情報の正確性を確認する

インターネット上には引退馬に関する誤情報や誇張された情報も多く存在します。JRAや農林水産省、認定NPOなどの公的・信頼性の高い情報源を参照しましょう。

 

② 寄付先の透明性を確認する

馬の支援を名目とした団体の中には、財務情報を公開していないものもあります。寄付をする際は、収支報告書の公開・活動実績・法人格の有無を確認することが重要です。

 

③ 感情だけで動かない

引退馬の写真や動画に心を動かされることは大切ですが、「可哀想だから助けたい」という感情だけで行動すると、支援が継続しにくくなります。社会的・経済的な視点を持って、長期的に関わる姿勢が求められます。

 

④ 競馬産業全体への理解を深める

引退馬問題は、競馬産業の構造的課題と切り離せません。馬主・調教師・牧場・JRA・地方競馬団体など、多くのステークホルダーが関わる複合的な問題です。一方的に「悪者」を作るのではなく、システム全体を変えていく視点が必要です。

 

今後の社会的視点|動物福祉の流れと競走馬問題

 

世界的な動物福祉の潮流

 

世界動物保健機関(WOAH、旧OIE)は、動物福祉を5つの自由(Five Freedoms)として定義しています。

  1. 飢えと渇きからの自由
  2. 不快からの自由
  3. 痛み・傷・病気からの自由
  4. 正常な行動を表現する自由
  5. 恐怖と苦悩からの自由

この基準に照らしたとき、引退後に適切な環境を与えられず、処分される競走馬の扱いは、動物福祉の観点から課題が多いと言えます。

 

日本の動物愛護法と馬

 

日本の動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)は2019年に改正され、動物の所有者・管理者に対する責任が強化されました。

しかし、産業動物(農業・畜産・競技等に利用される動物)についての規制は、ペットに比べて相対的に緩やかです。

環境省は産業動物の適正管理に関するガイドラインを設けていますが、競走馬引退後の処遇を直接規定する法律や制度は現時点では存在しません。

今後、動物福祉の観点から、引退競走馬の処遇に関するガイドラインや支援制度の法制化を求める声が高まると予想されます。

 

企業・競馬ファンができること

 

引退馬問題は、社会全体で取り組むべき課題です。

 

個人にできること:

  • 引退馬支援NPOへの寄付・会員登録
  • 馬のオーナー制度への参加
  • SNSでの情報発信・啓発
  • 保護牧場・乗馬体験施設への訪問

企業にできること:

  • 競馬関連企業によるCSR活動として引退馬支援を組み込む
  • 馬肉ビジネスにおけるトレーサビリティの確保
  • 引退馬を活用したホーストレッキング・療育事業への投資

社会が「競走馬の引退後」を意識し始めるとき、産業全体の透明性と倫理基準が高まります。

それは競馬ファンにとっても、競馬産業にとっても、そして馬たちにとっても、より良い未来につながるはずです。

 

まとめ|競走馬の引退後と向き合うために

 

この記事でお伝えしたことを振り返りましょう。

  • 競走馬は毎年数千頭規模で引退し、引退後の行き先は「繁殖」「乗馬転用」「功労馬」「食肉処理」に大別される
  • 食肉処理されるケースは決して少なくなく、経済的な事情が大きく関係している
  • JRAや支援団体による取り組みは進んでいるが、すべての引退馬をカバーするには至っていない
  • 引退馬のセカンドキャリアとして、乗馬・ホーストレッキング・ホースセラピーなどの可能性が広がっている
  • 動物福祉の世界的潮流と照らしたとき、競走馬の引退後の処遇には改善の余地が多い
  • 個人・企業・社会全体が関心を持ち、具体的なアクションを起こすことが大切

競馬は多くの人に夢や感動を与えるスポーツです。

だからこそ、その馬たちが走り終えた後の人生にも、同じ敬意と関心を向けてほしいと思います。

まずは今日、引退馬支援の団体のウェブサイトを1つ調べてみることから始めてみてください。

小さな一歩が、馬たちの未来を変えます。


参考情報・関連リンク(内部リンク想定)

  • 動物愛護管理法の最新情報は環境省 動物愛護管理法のページをご覧ください
  • 引退馬支援に関心がある方は「引退馬協会(RARF)」「サラブレッドリボーン」などの認定団体を参照してください
  • JRAによる引退馬支援の取り組みについては、JRA公式サイトの「競馬の社会貢献」ページをご確認ください
  • 馬の動物福祉に関する国際基準については、WOAH(世界動物保健機関)の公式文書を参照してください

この記事は動物福祉の普及・啓発を目的として作成しました。記載内容は執筆時点の情報に基づくものであり、最新情報は各公的機関の発表をご確認ください。

 

 

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この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

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