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狩猟者が減っている日本の危機|鳥獣管理の担い手不足と野生動物問題の現状

狩猟者が減っている日本の危機

 

 

はじめに――あなたが「狩猟者の減少」を気にしているなら、この記事は必読です

 

「最近、山や田畑にシカやイノシシが増えた気がする」

そう感じている方は、決して気のせいではありません。

日本では今、鳥獣管理の担い手である狩猟者が急速に減少しており、それが農作物被害・生態系の崩壊・そして動物福祉の悪化という深刻な問題を引き起こしています。

環境省のデータによると、1975年頃には全国に約51万人いた狩猟免許保持者が、2020年代には約20万人前後まで激減しました。

しかもそのうちの多くが60歳以上の高齢者です。

 

この記事では、狩猟者の減少がなぜ「日本の危機」なのかを、データと具体例を交えながら丁寧に解説します。

感情論ではなく、事実と構造から問題を読み解き、私たちひとりひとりに何ができるかを一緒に考えていきましょう。

 

狩猟者減少の現状――データが示す日本の危機

 

狩猟免許保持者数の推移

 

まず、数字から現実を直視してみましょう。

環境省「鳥獣関係統計」によれば、狩猟免許保持者数の推移は以下のとおりです。

 

年代 狩猟免許保持者数(概数)
1975年 約51万人
1990年 約43万人
2000年 約35万人
2010年 約19万人
2020年 約21万人(微増)
2023年 約20万人前後

 

2010年代に底を打った後、若干の回復傾向は見られます。

しかし実態は楽観視できません。

現在の狩猟免許保持者の約65%が60歳以上というデータがあり、10年後には多くのベテランハンターが現役を退くことが確実視されています。

 

野生動物による農業被害の深刻化

 

担い手の減少は、直接的に農業被害の拡大につながっています。

農林水産省の統計では、野生鳥獣による農作物被害額は年間約155億円(2022年度)に達しています。

 

内訳を見ると:

  • シカによる被害:約54億円(最多)
  • イノシシによる被害:約45億円
  • サルによる被害:約9億円
  • カラスなどの鳥類:約27億円

これは報告されている数字にすぎず、実際の被害は数倍に上るとも言われています。

廃作・離農につながった農家の損失は、金額に換算しきれないほどです。

 

過疎化・高齢化との二重苦

 

問題はさらに複合的です。

狩猟者の減少は、農村部の過疎化・高齢化と同時進行しています。

かつて地域コミュニティで受け継がれてきた「山の知恵」「けもの道の読み方」「罠の仕掛け方」といった技術が、後継者のいないまま失われつつあるのです。

これは単なる人手不足ではありません。

数十年、数百年かけて積み上げてきた人と自然の共存の知恵が、消えようとしているという文化的危機でもあります。

 

狩猟者の減少がなぜ「鳥獣管理」の危機なのか

 

鳥獣管理とは何か

 

「鳥獣管理」という言葉を初めて聞く方もいるかもしれません。

簡単に言えば、野生動物の個体数を適切にコントロールし、人間社会・生態系・動物自身の健全なバランスを保つことです。

 

日本では、鳥獣保護管理法(正式名称:鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律)に基づき、都道府県が中心となって管理計画を策定・実施しています。

その中核を担うのが、有害鳥獣捕獲を行うハンター(狩猟者)です。

 

個体数管理が崩れると何が起きるか

 

狩猟者が減り、個体数管理が機能しなくなると、以下のような連鎖が起きます。

  1. シカ・イノシシの個体数が爆発的に増加
  2. 農作物被害が拡大し、農家が離農
  3. 山林の下草がシカに食べ尽くされ、土壌が崩壊
  4. 土砂崩れ・洪水リスクの上昇
  5. 生物多様性の喪失(植物・昆虫・小動物への影響)
  6. 過密状態の野生動物に疾病が蔓延(人畜共通感染症リスク)

これは仮定の話ではありません。

すでに奈良・長野・北海道などでは、シカの過剰増加による森林の「シカ害」が深刻な問題となっています。

長野県では、ニホンジカの個体数が推定20万頭を超えており、高山植物の食害が国立公園の景観を著しく損なっています。

 

動物福祉の観点から見た過密問題

 

ここで、動物福祉の視点も欠かせません。

「狩猟=動物を殺す行為」というイメージから、狩猟に否定的な方もいるでしょう。

しかし、個体数管理が機能しないと、野生動物自身が苦しむことになります。

  • 食料不足による餓死・衰弱死の増加
  • 過密による疾病の蔓延
  • 人里への出没増加による交通事故・駆除の増加

適切な個体数管理は、野生動物が健全な状態で生きられる環境を維持するためにも不可欠なのです。

これが「鳥獣管理=動物福祉」というパラドックスの本質です。

 

よくある疑問とその回答(Q&A)

 

Q1. 狩猟者が減っているなら、代わりに行政が対応すればいいのでは?

 

A. 行政だけでは対応できない規模と専門性が求められます。

有害鳥獣の捕獲には、地形の把握・動物の習性への理解・罠の設置技術など、長年の経験に基づく専門知識が必要です。

また、日本の山林は急峻で広大なため、行政職員だけでカバーするのは物理的に不可能です。

現状でも、都道府県や市町村は民間のハンターに委託して有害鳥獣捕獲を行っています。

そのハンター自体が減少しているため、行政も対応に苦慮しているのが実態です。

 

Q2. ドローンやAIなどの技術で解決できないのでしょうか?

 

A. 技術は補助手段として有効ですが、現時点では完全な代替にはなりません。

近年、ドローンによる個体数調査・AIによる出没予測・スマート罠の導入など、テクノロジーを活用した鳥獣管理が進んでいます。

しかし、実際の捕獲作業・適切な処理(解体・利活用)には、依然として人の手が必要です。

また、山岳地帯では電波が届かず、技術的なソリューションが適用しにくい地域も多く存在します。

技術と人材は「どちらか」ではなく、両方を組み合わせて進める必要があります。

 

Q3. 狩猟に興味があるけど、始めるのは難しいですか?

 

A. 制度的なハードルはありますが、支援制度も充実してきています。

狩猟を始めるには、狩猟免許の取得が必要です。

免許の種類は以下の4種類:

  • 第一種銃猟免許(散弾銃・ライフル)
  • 第二種銃猟免許(空気銃)
  • わな猟免許(くくりわな・箱わな)
  • 網猟免許(むそう網・はり網)

試験は知識・技能・適性の3段階で、特に銃猟は銃刀法や猟銃等所持許可も別途必要です。

一方で、近年は各都道府県や市町村が狩猟免許取得の費用補助・講習会の開催などの支援を行っています。

「ハンターバンク」(農林水産省が運営するマッチングシステム)など、新規ハンターをサポートする仕組みも整いつつあります。

 

Q4. 捕獲した動物はどうなるのですか?

 

A. ジビエとして活用する動きが広がっています。

かつては捕獲後の処理・利活用が課題でしたが、近年は「ジビエ(野生鳥獣肉)」として食肉加工・流通させる取り組みが全国で広がっています。

農林水産省はジビエ利用を推進しており、2022年度のジビエ利用量は約2,900トンに達しています(農林水産省「ジビエ利用実態調査」)。

捕獲した動物を「無駄にしない」という倫理的観点からも、ジビエ活用は動物福祉の文脈で重要な取り組みです。

 

鳥獣管理の担い手になるための具体的なステップ

 

STEP 1:情報収集と意識形成

 

まずは地域の鳥獣被害の現状を知ることから始めましょう。

  • 都道府県の農林水産担当部署のウェブサイト
  • 環境省「鳥獣保護管理をめぐる現状について」
  • 農林水産省「野生鳥獣被害防止総合対策交付金」関連資料

これらを読むだけでも、問題の全体像が掴めます。

 

STEP 2:狩猟免許の取得

 

次のステップは狩猟免許の取得です。

初心者に最もハードルが低いのは「わな猟免許」です。

銃を使わず、くくりわなや箱わなで捕獲するため、銃刀法の規制を受けず、費用も比較的安く抑えられます。

 

取得の流れ:

  1. 都道府県の農林水産部(鳥獣担当)に申し込み
  2. 狩猟免許試験(知識・技能・適性)を受験
  3. 合格後、狩猟者登録を行い活動開始

試験対策として、各都道府県の猟友会や自治体が主催する事前講習会への参加が強くおすすめです。

 

STEP 3:地域の猟友会・捕獲隊への参加

 

免許を取得したら、地域の猟友会有害鳥獣捕獲実施隊に参加しましょう。

ベテランハンターから技術・知恵を直接学べる貴重な機会です。

「いきなり一人では不安」という方でも、チームで活動するため安心して経験を積めます。

 

STEP 4:スキルアップと専門化

 

経験を積んだら、以下のような専門分野を目指すことも可能です:

  • 鳥獣被害対策実施隊員(市町村長が任命)
  • 認定鳥獣捕獲等事業者(国が認定する事業者として活躍)
  • ジビエ加工・販売(捕獲後の利活用まで担う)

 

狩猟・鳥獣管理への参加――メリットとデメリット

 

参加するメリット

  • 地域貢献:農家や山村コミュニティを守ることができる
  • 自然との深い繋がり:山の生態系・動物の習性を深く学べる
  • 体力・判断力の向上:野外活動を通じた心身の鍛錬
  • 収入の可能性:自治体から捕獲報奨金が支払われるケースも
  • ジビエビジネス:捕獲→加工→販売の一貫した経済活動が可能
  • 希少なスキルの保有:担い手不足の今、市場価値が高い

参加するデメリット・課題

  • 初期コストがかかる:銃猟の場合、銃・弾薬・装備で数十万円の初期投資が必要
  • 時間的拘束:シーズン中は早朝・休日の活動が多い
  • 精神的負担:動物を捕獲・とめ刺しすることへの心理的ハードル
  • 体力的ハードル:山岳地帯での長時間移動・重い装備
  • 法的手続きの複雑さ:免許取得・銃所持許可など多くの手続きが必要

これらを理解した上で、自分のライフスタイルに合った関わり方を選ぶことが大切です。

 

実体験から見える現場のリアル

 

ある中山間地域で農業を営むAさん(60代・長野県)はこう話します。

「昔はね、秋になれば近所のハンターたちが山を歩いて、自然とイノシシやシカを追い払ってくれていた。でも今は、その人たちもみんな亡くなったり、体が動かなくなってしまった。今年も畑のトウモロコシがイノシシに全滅させられた。もう農業を続けるのが嫌になってきた……」

一方、30代でわな猟免許を取得したBさん(移住者・岐阜県)はこう語ります。

「都市部で会社員をしていた頃には想像もしなかったけど、鳥獣管理に携わるようになって、初めて『自分が地域に必要とされている』という実感が持てた。山の中でひとりで罠を確認するのは大変だけど、農家のおばあちゃんに『ありがとう』と言われた時の充実感は何物にも代えられない」

この二つのエピソードが示すのは、問題の深刻さと、関わる人の豊かさが同時に存在するということです。

鳥獣管理は「義務」ではなく、自然と人が共存するための文化的行為でもあるのです。

 

鳥獣管理に関わる際の注意点

 

法律・規制を必ず守る

 

狩猟・鳥獣捕獲は、鳥獣保護管理法・銃刀法・各都道府県の狩猟規制などによって厳しく規制されています。

以下の点に特に注意が必要です:

  • 無許可捕獲は厳禁(法律違反となり罰則あり)
  • 捕獲禁止期間・禁止区域を必ず確認
  • 錯誤捕獲(意図しない動物を捕まえた場合)の対処法を事前に学ぶ
  • 捕獲した動物の適切な処理(放置は法律上問題となる場合も)

 

安全管理を最優先に

 

銃猟の場合、銃器の取り扱いミスによる事故は絶対に避けなければなりません。

わな猟でも、設置場所・標識の取り付けなど安全への配慮が不可欠です。

単独行動は避け、必ず連絡体制を確立した上で活動しましょう。

 

動物への配慮を忘れない

 

「必要以上の捕獲をしない」「苦痛を最小限にする処理方法を学ぶ」という動物福祉的な視点を常に持ちましょう。

鳥獣管理の目的は「殲滅」ではなく「バランスの維持」です。

この意識が、持続可能な鳥獣管理の根幹となります。

 

今後の社会的視点――動物福祉と鳥獣管理の未来

 

世界の流れ:動物福祉と野生動物管理の両立

 

欧米では、野生動物管理における「ヒューメイン(人道的)」な手法への関心が高まっています。

単純な個体数削減だけでなく、生息環境の整備・人との共存エリアの設計・非致死的管理手法の開発など、多角的なアプローチが主流になりつつあります。

日本でも、この流れを受けて「共存型の鳥獣管理」への転換が求められています。

 

新世代のハンター像:「環境管理士」としての担い手

 

かつての「趣味としての狩猟」から、「地域の環境管理を担うプロフェッショナル」へのシフトが始まっています。

農林水産省・環境省は連携して、鳥獣被害対策実施隊員の処遇改善認定鳥獣捕獲等事業者制度の拡充を進めています。

将来的には、鳥獣管理を担う人材が地域の「グリーン公務員」的な役割を果たすことが期待されています。

 

ジビエ産業の拡大と経済的循環

 

鳥獣管理とジビエ産業の連携は、経済的に持続可能な担い手育成の鍵となります。

農林水産省は2023年度にジビエ利用の拡大を目指す方針を打ち出しており、学校給食へのジビエ導入・高級レストランでの活用など、需要の多様化が進んでいます。

捕獲→加工→流通→消費という地域経済の循環モデルが確立されれば、担い手への経済的インセンティブが生まれ、参入者の増加につながるはずです。

 

AIとDXが変える鳥獣管理の現場

 

テクノロジーの進化も見逃せません。

  • AI画像認識による自動カウント(ドローン・センサーカメラ)
  • IoT罠(捕獲を自動通知するスマートわな)
  • GISを活用した出没予測・被害マップの作成
  • ビッグデータによる個体群動態のシミュレーション

これらの技術が普及することで、少ない人手でも効率的な鳥獣管理が可能になります。

人とテクノロジーが協働する「スマート鳥獣管理」の時代が、すぐそこまで来ています。

 

子どもたちへの自然教育の重要性

 

長期的な担い手育成には、次世代への自然教育も欠かせません。

「山の生き物」「食と命」「自然の循環」を子どもの頃から学ぶことが、将来の担い手育成につながります。

一部の地域では、学校教育にジビエ体験・有害鳥獣捕獲の見学などを組み込む試みも始まっています。

こうした取り組みが全国に広がることで、鳥獣管理を担う文化が世代を超えて継承されていくでしょう。

 

まとめ――私たちが今、できること

 

この記事でお伝えしたかったことを整理します。

 

問題の本質

  • 日本の狩猟者は50年で約60%減少し、鳥獣管理の担い手が深刻に不足している
  • その結果、農業被害・生態系崩壊・動物福祉の悪化という連鎖が起きている
  • 問題は「人手不足」だけでなく、技術・文化の継承危機でもある

解決への道筋

  • 狩猟免許取得の支援制度を活用した新規担い手の育成
  • ジビエ産業との連携による経済的に持続可能なモデルの構築
  • AIやIoTを活用したスマート鳥獣管理の実装
  • 次世代への自然教育と文化継承

 

動物福祉の核心

 

適切な鳥獣管理は、動物を「排除する」ことではありません。

人と野生動物が健全に共存できる環境を守ること――それが本当の意味での動物福祉につながります。

狩猟者の減少は、決して「ハンターが減った」だけの問題ではありません。

それは、日本の山村・農業・生態系・動物福祉すべてに連鎖する、社会全体の危機なのです。


あなたにできることは、今日から始まります。

まずは地域の鳥獣被害の現状を調べてみてください。そして、狩猟免許に関心があるなら、都道府県の農林水産担当部署に問い合わせてみましょう。「自分には関係ない」と思っていた問題が、あなたの地域の食・自然・動物の命と直結していることがきっと見えてくるはずです。


 

参考資料・データ出典

  • 環境省「鳥獣関係統計」各年版
  • 農林水産省「野生鳥獣による農作物被害状況」2022年度
  • 農林水産省「ジビエ利用実態調査」2022年度
  • 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護管理法)
  • 農林水産省「ハンターバンク」関連資料
  • 環境省「特定鳥獣保護・管理計画作成のためのガイドライン(シカ編)」

この記事は動物福祉の観点から、鳥獣管理における担い手問題を解説したものです。狩猟に関する実際の活動は、必ず法令に従い、有資格者の指導のもとで行ってください。

 

 

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この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

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