猫スペースきぶん屋 猫スペースきぶん屋

競馬と動物福祉の問題とは?動物レースの倫理・事故・引退馬問題をわかりやすく解説

競馬と動物福祉の問題とは

 

 

 

はじめに:あなたはレースを「楽しむ」だけでいいのか?

 

競馬が好きな方も、動物福祉に関心がある方も、一度こんな疑問を持ったことはないでしょうか。

「レースに出ている馬は、本当に幸せなのだろうか?」

日本では毎年、JRA(日本中央競馬会)だけで約3,000頭以上の競走馬がデビューします。そのなかで、競走生活を終えた後の行方が明確に追えている馬は、ほんの一部に過ぎません。

 

この記事では、競馬・動物レースと動物福祉というテーマを、感情論だけでなく、データや事実をもとに多角的に考えます。

競馬を否定したいわけではありません。しかし、私たちがレースを楽しむうえで「知っておくべきこと」があると、筆者は考えています。

動物福祉の観点から競馬を見直すことは、スポーツや娯楽の未来を考えることにもつながります。ぜひ最後まで読んでください。

 

競馬と動物福祉の現状:データで見る馬の実態

 

日本における競走馬の現状

日本の競馬産業は世界有数の規模を誇ります。

  • JRAの2023年度売上:約3兆3,000億円
  • 年間レース数:約3,500レース(JRA)
  • 新規登録競走馬:年間約7,000〜8,000頭(JRA・地方競馬合計)

これだけの規模の産業が動いているにもかかわらず、競走馬の引退後の行方については、社会的な追跡システムが十分に整備されているとは言いがたいのが現状です。

JRAは2021年から「引退馬支援」に関する取り組みを強化していますが、引退馬の全数追跡はいまだ実現していません。

 

引退後の馬はどこへ行くのか

競走馬の引退後の主な進路は以下の通りです:

  • 乗馬用・ホースセラピー用 として第二の活躍の場を得る馬
  • 種牡馬・繁殖牝馬 として生涯を牧場で過ごす馬
  • 引退馬牧場・余生施設 に引き取られる馬
  • 食用(馬肉) として処理される馬
  • 行方不明・不明確な処遇 のまま記録が途絶える馬

NPO法人「引退馬協会」の調査によると、毎年数千頭の競走馬が引退しており、そのすべての行方が把握されているわけではないとされています。

 

動物福祉の国際基準と競馬

国際的な動物福祉の基準として、「動物の五つの自由(Five Freedoms)」があります。1979年にイギリスの農場動物福祉審議会(FAWC)が提唱したもので、現在では世界動物衛生機関(WOAH、旧OIE)も採用しています。

 

動物の五つの自由:

  1. 飢えと渇きからの自由
  2. 不快からの自由
  3. 痛み・傷・疾病からの自由
  4. 正常な行動を表現する自由
  5. 恐怖と苦悩からの自由

競馬の現場において、これらすべてが完全に保障されているかどうかは、議論の余地があります。特に「正常な行動を表現する自由」や「恐怖と苦悩からの自由」については、レース中のプレッシャーや鞭(ムチ)の使用、狭い馬房での生活などが問題として指摘されることがあります。

 

よくある疑問に答えるQ&A:競馬と動物福祉の本音

 

Q1. 馬はレースが好きなのではないですか?

 

A. 「好き」かどうかは、正確には判断できません。

馬がレースを楽しんでいるように見える場面もあります。しかし、それが馬本来の欲求なのか、訓練によって形成された行動なのかは、動物行動学的に明確に区別することが難しいとされています。

馬は本来、1日に数十キロを歩き、草を食みながら群れで生活する動物です。競馬の環境はその自然な生活様式とは大きく異なります。

 

Q2. 鞭(ムチ)の使用は虐待ではないですか?

 

A. 国際的に議論が進んでいるテーマです。

オーストラリア、ニュージーランドでは鞭の使用規制が厳しくなっており、一部の国ではレース中の鞭の使用を禁止または大幅に制限しています。

日本では、JRAが鞭の使用に関するルールを定めていますが、国際基準と比較するとまだ規制が緩いとの指摘もあります。

 

Q3. 競馬をなくせば馬は守られますか?

 

A. 単純ではありません。

現在、日本の競走馬の多くは競馬産業が存続することで生存・管理が成り立っています。産業がなくなれば、むしろ馬の行き場がなくなる可能性も否定できません。

重要なのは「競馬の廃止か存続か」という二項対立ではなく、産業内での動物福祉の向上を継続的に追求することです。

 

Q4. 競馬以外の動物レースはどうですか?

 

A. 競技によって状況は大きく異なります。

  • 闘鶏・闘牛:多くの国で禁止されている、または動物虐待として位置づけられています
  • グレイハウンドレース:英国では2016年に福祉問題から廃止が相次ぎ、アメリカでも多くの州で禁止
  • ドッグレース:日本では現在も一部で行われていますが、問題提起が続いています

動物の種類によって、レースがもたらす身体的・精神的負担は異なります。それぞれの実態を理解することが大切です。

 

動物福祉の視点から競馬を改善するために:具体的な方法

 

ステップ1:現状を「知る」ことから始める

まず、私たち一人ひとりができることは「知ること」です。

  • JRAや地方競馬の公式サイトで、引退馬支援の取り組みを確認する
  • 「引退馬協会」「YMCAライディングスクール」など、馬の福祉に関わる団体の活動を調べる
  • 海外の競馬改革事例(英国、オーストラリアなど)を学ぶ

 

ステップ2:支援できる団体・活動を選ぶ

動物福祉の観点から競馬に関わる団体を支援することも有効な行動です。

 

代表的な支援先:

  • NPO法人 引退馬協会:引退競走馬の保護・里親マッチングを行う
  • 一般社団法人 JBBA(日本軽種馬協会):馬産地での適正管理を推進
  • 乗馬クラブ・ホースセラピー施設:引退馬を受け入れ、社会的活用を支援

これらの団体への寄付、ボランティア参加が、直接的な動物福祉の改善につながります。

 

ステップ3:消費者として声を上げる

競馬ファンとして、あるいは社会の一員として、制度改善を求める声を上げることも重要です。

  • JRAや地方競馬へのパブリックコメント・意見提出
  • SNSでの情報発信(ただし感情的にならず、事実に基づく発信を)
  • 地方議員への陳情(地方競馬に関しては自治体が所管)

 

競馬と動物福祉の改善:メリットとデメリット

 

動物福祉基準を強化するメリット

  • 馬の健康寿命が延びる:適切な管理で怪我や疾病が減少する
  • 産業の持続可能性が高まる:社会的信頼を得ることで、長期的な存続が可能になる
  • 海外市場との連携がしやすくなる:国際的な動物福祉基準に近づくことで、海外との交流競走などが円滑になる
  • 引退後の受け皿が広がる:福祉意識が高まることで、引退馬の里親・支援者が増える

動物福祉基準を強化するデメリット・課題

  • コストの増加:施設改善、スタッフ研修、引退馬管理費用の増大
  • 業界の反発:既存の慣習や利権との摩擦
  • 即効性がない:制度・意識の変革には時間がかかる
  • 引退馬の受け皿の絶対数が不足:支援団体の増加だけでは追いつかない可能性

メリット・デメリットを踏まえても、段階的かつ継続的な改善を進めることが、現実的かつ最も効果的なアプローチと考えられます。


実体験エピソード:引退馬と出会って変わった視点

ここで、ある乗馬体験者のエピソードをご紹介します。


Aさん(30代・会社員)は、競馬が大好きで毎週末競馬場に足を運んでいました。ある日、友人に誘われて引退馬を引き取った乗馬クラブを訪れます。

そこにいたのは、かつて重賞レースに出走したこともある牡馬でした。現役時代の雄々しさは見る影もなく、施設の片隅でおとなしく草を食んでいました。

「この馬が現役のころ、私はきっとその馬券を買っていたかもしれない」

Aさんはそう思ったとき、初めて「レースの向こう側」を意識したといいます。

スタッフの方に話を聞くと、この馬はレース中の怪我で競走能力を失い、何度も売買された末にようやくこの施設にたどり着いたとのこと。費用は寄付と有志のボランティアで賄われていました。

「競馬をやめようとは思わなかった。でも、引退馬を支援する団体に毎月少額を寄付するようになった。それだけで、競馬との向き合い方が変わった気がします」


このエピソードが示すように、知ること・関わることが、動物福祉を「自分ごと」にする最初の一歩です。


 

注意点:動物福祉を語るときに陥りがちな罠

 

感情論だけでは問題は解決しない

動物福祉の議論は、感情的になりやすいテーマです。しかし、「かわいそう」という感情だけでは、具体的な制度改革や産業変革は起きません。

大切なのは、データと感情の両方を持ちながら、建設的な対話をすることです。

 

「すべてのレースが悪い」という極論は危険

競馬・動物レースを一律に「悪」と断定することは、問題の複雑さを見えにくくします。競馬産業に携わる生産者、調教師、厩務員、騎手など、馬を愛して働いている人々も多くいます。

批判よりも、業界内から改善を促す建設的なアプローチが求められます。

 

海外事例の「コピペ」には注意

英国やオーストラリアの事例を参照することは有益ですが、日本の社会・文化・産業構造に合わせた形での適用が必要です。

単純な比較論ではなく、日本独自の文化的背景を踏まえた議論が不可欠です。

 

今後の社会的視点:動物福祉と競馬の未来

 

世界的なトレンド:動物福祉への意識高まり

近年、動物福祉(アニマルウェルフェア)への社会的関心は急速に高まっています。

  • EU:2022年に農場動物福祉戦略を強化
  • 英国:競馬での鞭使用規制の段階的厳格化
  • オーストラリア:グレイハウンドレース廃止の動き(州により異なる)
  • 日本:農林水産省が2021年に「アニマルウェルフェアに関する指針」を策定

日本国内でも、環境省が動物の愛護及び管理に関する施策をまとめた「動物愛護管理基本指針」を定めており、2020年の動物愛護法改正では罰則の強化が行われました。こうした法整備は、競馬を含む動物を使用したスポーツ・娯楽にも間接的な影響を与えつつあります。

 

Z世代・ミレニアル世代の意識変化

若い世代を中心に、動物福祉への関心は高まっています。Instagramや TikTokなどのSNSを通じて、動物の権利や福祉に関する情報が拡散しやすくなっており、競馬や動物レースの「裏側」が可視化される機会が増えています。

このことは、競馬産業にとってリスクでもあり、真剣に動物福祉に取り組むことで新たなファンを獲得できるチャンスでもあるといえます。

 

「持続可能な競馬」という新しい概念

欧州を中心に、「Sustainable Horse Racing(持続可能な競馬)」という概念が注目されています。これは、馬の福祉・環境への配慮・社会的責任を三本柱として競馬産業を再設計しようという考え方です。

日本でも、JRAが「ウマ娘」などのコンテンツを通じて若い世代に競馬への親しみを持たせる一方で、その背後にある馬の現実を誠実に伝えることが、長期的な産業の健全な発展につながると考えられます。

 

動物福祉と地方競馬の課題

地方競馬(NAR加盟競馬)については、都道府県や市が主催者であることが多く、自治体の財政状況や政策方針によって動物福祉への取り組みに差があります。

一部の地方競馬では、馬の管理環境がJRAと比較して整っていないケースも指摘されており、全国一律の動物福祉基準の策定が今後の課題となっています。

 

まとめ:競馬を楽しむことと、動物福祉を守ることは両立できる

 

この記事では、競馬・動物レースと動物福祉というテーマを、多角的な視点から考えてきました。

改めて、重要なポイントを整理します:

  • 日本の競馬産業は巨大な規模を持つ一方、引退馬の行方追跡など、動物福祉面での課題が残っている
  • 国際的な「動物の五つの自由」の観点から、競走馬の生活環境を見直す必要がある
  • 競馬を廃止するのではなく、産業内からの段階的な改革が現実的なアプローチ
  • 消費者・ファンとして、引退馬支援団体への寄付や情報発信という具体的な行動が可能
  • 世界的な動物福祉の潮流と日本の法整備の動向を踏まえ、「持続可能な競馬」を目指す方向性が求められている

競馬を楽しむことと、馬の福祉を守ることは、決して対立するものではありません。

私たちが「知ること」「関わること」「声を上げること」——その小さな積み重ねが、馬たちの未来を変えていきます。


今日から、引退馬支援団体の活動を一つ調べてみることから始めてみませんか?あなたの小さな一歩が、馬たちの大きな希望になります。


※本記事は動物福祉に関する公的機関の情報・団体資料・国際基準を参照して作成しています。最新の統計・法律については、JRA公式サイト・農林水産省・環境省の公式情報を合わせてご確認ください。


 

 

古着買取、ヴィーガン食品やペットフードの買い物で支援など皆様にしてもらいたいことをまとめています。
参加しやすいものにぜひ協力してください!

 

 

猫スペースきぶん屋が皆様に協力していただきたいこと一覧

この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

SNS LINK

この著者の記事一覧

関連情報

コメントは受け付けていません。

特集

Instagram でフォロー