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野生動物との共存は可能?里山保全の最新動向と具体対策を徹底解説

野生動物との共存

 

 

 

はじめに——あなたが「里山」を気にかけているなら、この記事を読んでください

 

「最近、近くの山にイノシシが出た」
「クマが民家に侵入したというニュースを見た」
「子どものころ遊んだ里山が、気づいたら荒れてしまっている」

 

そんな経験や疑問を持っている方が、今この記事にたどり着いたのではないでしょうか。

野生動物との共存は、もはや山間部の話だけではありません。都市近郊でも、野生動物が人の生活圏に迫っている事例が急増しています。そしてその背景には、「里山の荒廃」という長年の問題が深く横たわっています。

 

この記事では、里山保全の現状と最新動向を、環境省などの公的データをもとに分かりやすく解説します。感情論だけでなく、具体的な事実・方法・課題を整理しながら、あなた自身が今日からできることを一緒に考えていきます。

 

里山保全の現状:数字が示す「危機」のリアル

 

日本の里山はなぜ失われつつあるのか

環境省が公表している「生物多様性国家戦略2023-2030」によると、日本の自然生態系は過去50年で大きく変容しており、特に二次的自然環境(里山・里地)の劣化が顕著な課題として挙げられています。

 

里山とは、人が農業や林業を通じて適度に管理することで維持されてきた、田んぼや雑木林、ため池などが複合した生態系のことです。ところが、農村人口の減少と高齢化、そして林業の採算悪化によって、この「人の手が入ることで保たれていた生態系」が急速に失われています。

 

主な原因を整理すると、以下のようになります。

  • 農業の担い手不足:2020年農業センサスによると、農業就業人口は約136万人で、10年前と比べ約40%減少しています
  • 耕作放棄地の拡大:農林水産省の調査では、全国の耕作放棄地面積は約42万ヘクタール(2015年)にのぼり、里山の荒廃に直結しています
  • 人工林の手入れ不足:戦後に植えられたスギ・ヒノキの人工林の多くが間伐されないまま放置され、光が届かない暗い林床は生物多様性を著しく低下させています

 

里山の荒廃が野生動物との共存を難しくする

かつての里山は、野生動物と人間の間に「緩衝地帯」として機能していました。

雑木林が管理されていた時代、森と集落の間には明確な境界線がありました。しかし、その境界線が消えると何が起きるか——野生動物は自然に人の生活圏に近づいてきます。

 

農林水産省のデータによれば、2021年度の野生鳥獣による農作物被害額は約155億円。その主な原因はシカ、イノシシ、サルなどで、被害地域は全国47都道府県に及んでいます。

クマの出没件数も増加傾向にあり、2023年度は環境省の調査でも各地で過去最多を記録。人との接触事例が報道され、社会問題となりました。

 

しかしここで大切なのは、野生動物が「悪い」わけではないという視点です。動物たちは本能に従って行動しているだけであり、彼らが人の生活圏に近づいてくるのは、私たち人間が里山という緩衝地帯を失った結果とも言えます。

 

Q&A:里山保全と野生動物共存に関するよくある疑問

 

Q1. 「里山保全」ってどういう意味ですか?具体的に何をするのですか?

 

A. 里山保全とは、農業や林業の営みを通じて維持されてきた「二次的自然」を守り、再生するための取り組みです。具体的には以下のような活動が含まれます。

  • 放棄された農地や田んぼの再生・耕作再開
  • 雑木林の下草刈りや除間伐による光環境の改善
  • ため池や水路の整備・維持管理
  • 外来種の駆除と在来種の保護

行政だけでなく、NPOや地域住民によるボランティア活動、企業のCSR活動なども里山保全の重要な担い手となっています。


Q2. 野生動物を「追い払う」だけでは解決しないのですか?

 

A. 残念ながら、追い払いや駆除だけでは根本的な解決になりません。

環境省の「鳥獣の保護及び管理を図るための事業の実施に関する基本的な指針」でも明確に述べられているように、野生動物の管理は「科学的・計画的な個体数管理」と「生息環境管理」の両輪で進める必要があります。

単に追い払っても、食料や生息地を求める動物たちは場所を変えてまた戻ってきます。根本的な解決には、なぜ動物が里に降りてくるのかという原因を取り除くことが欠かせません。


Q3. 動物福祉の観点から、「駆除」は問題ないのですか?

 

A. これは非常に難しい問いです。

動物福祉の観点では、「不必要な苦しみを与えない」ことが基本原則です。しかし現実には、個体数が増えすぎた野生動物が農地や生態系に深刻な影響を与えている地域も多く、一定の個体数管理が避けられないケースもあります。

重要なのは、駆除を「最終手段」として位置づけ、事前の防除策や生息環境の整備を優先することです。また、やむを得ず捕獲・処分を行う場合も、動物に最小限の苦痛しか与えない方法を選ぶことが動物福祉の観点から求められています。

近年では「ゾーニング管理(地域を区分して管理する手法)」など、共存を前提とした管理手法の研究も進んでいます。


 

里山保全の実践パート:今すぐ始められる6つのステップ

 

ステップ1:まず「知る」ことから始める

里山保全への参加を考えるなら、最初は地域の生態系や野生動物の現状を知ることから始めましょう。

環境省が運営する「いきものログ」や、各都道府県が公開している野生動物の生息情報、農作物被害マップなどは誰でも閲覧できます。自分の住む地域でどのような動物が、どのくらいの数が生息しているかを把握することが出発点です。

 

ステップ2:地域のNPO・ボランティア活動に参加する

全国には里山保全を専門に行うNPOや任意団体が多数あります。たとえば、公益財団法人日本自然保護協会(NACS-J)や各地の「里山ネットワーク」などが、定期的な保全作業(下草刈り・田植え・水路整備など)のボランティアを募集しています。

一度体験参加してみることで、里山の現状を肌で感じることができます。

 

ステップ3:鳥獣被害防止の「物理的対策」を知る

農業をされている方や、農地に近い地域に住んでいる方には、電気柵・ワイヤーメッシュ柵などの防護柵の設置が効果的です。

農林水産省の「鳥獣被害防止総合対策交付金」を活用すると、防護柵の整備に国費補助が受けられます。市区町村の農業委員会や農政担当窓口に相談してみてください。

ポイントは、柵の「切れ目」を作らないこと。わずかな隙間からでも動物は侵入してくるため、地域全体で連携した設置が重要です。

 

ステップ4:耕作放棄地を整備する

空き農地や放棄畑は、イノシシやシカが潜む「隠れ場所」になりやすく、獣害を引き起こしやすくなります。

地域の農業委員会や市区町村に相談することで、耕作放棄地の再利用や整備に関する支援を受けられる場合があります。また、「農地中間管理機構(農地バンク)」を通じて、耕作できる人に土地を貸し出す仕組みも整備されています。

 

ステップ5:里山産品・地域ブランドを消費者として支援する

里山を守るためには、そこで農林業を続ける人が経済的に持続可能でなければなりません。

里山で生産された米・野菜・薪・木材・ジビエ(シカ・イノシシなどの野生鳥獣肉)を積極的に購入することは、消費者として里山保全に参加することを意味します。

近年、ジビエ料理は地方の観光資源としても注目されており、環境省と農林水産省が連携してジビエ利活用を推進しています。食べることで里山保全に貢献できる——これも立派な「共存」の形です。

 

ステップ6:地域の話し合いに参加する

獣害対策や里山保全は、個人の努力だけでは限界があります。

地域の自治会や集落単位での「被害防止計画」の策定、行政との連携、猟友会との協力体制の構築など、地域全体でのコミュニケーションが不可欠です。

自治体が開催する説明会や勉強会への参加、地域の話し合いへの積極的な関与が、長期的な野生動物との共存につながります。

 

里山保全に取り組むメリット・デメリット

 

メリット

  • 生物多様性の回復:里山が再生されると、そこには多様な植物・昆虫・鳥類が戻ってきます。環境省「生物多様性国家戦略」でも里地里山は30by30目標(2030年までに国土の30%を保全)の重要なエリアとされています
  • 獣害の軽減:適切に管理された里山は、野生動物と人の生活圏の「緩衝地帯」として機能し、農業被害の軽減に貢献します
  • 地域の活性化:里山体験農業・エコツーリズム・ジビエ産業など、新たな地域経済の創出にもつながります
  • 防災機能の向上:管理された森林は土砂崩れや洪水を防ぐ機能があり、地域防災にも貢献します
  • 心理的・精神的な豊かさ:自然との関わりは、都市生活者に精神的な充足感をもたらすことが研究でも示されています

 

デメリット・課題

  • 継続的な人手と費用が必要:里山の管理は一度やれば終わりではなく、毎年の継続が不可欠です。ボランティアの高齢化や資金不足が深刻な課題です
  • 短期的な成果が見えにくい:生態系の回復は数十年単位のプロセスであり、すぐに目に見える効果が出にくい点が継続のモチベーションを下げることがあります
  • 利害関係の対立:農家・猟師・観光業者・自然保護団体など、里山に関わるステークホルダーの意見が必ずしも一致せず、合意形成に時間がかかることがあります
  • 外来種問題との複合:アライグマ・ヌートリアなど外来哺乳類の増加が、在来生態系の回復を阻害するケースもあります

 

実体験から見えてくるもの——里山ボランティアが語る「変化」

 

兵庫県の中山間地域で5年間にわたり里山保全活動に参加してきた40代の会社員・田中さん(仮名)は、こう語ります。

「最初に参加したとき、かつて田んぼだったはずの場所が、完全にススキとセイタカアワダチソウに覆われていて驚きました。でも地域の人たちと一緒に少しずつ草を刈り、水路を直し、翌年に田植えをしたとき——久しぶりに水が張られた田んぼにアマガエルが戻ってきたんです。そのとき、里山保全というのは、動物たちが戻れる『場所』を取り戻す仕事なんだと実感しました」

田中さんが参加する団体では、近くの小学校と連携して子どもたちに田植え体験を提供しており、地域の子どもたちが里山を「自分ごと」として感じるきっかけになっているといいます。

「里山にはニホンイタチやフクロウも戻ってきました。人間が場所を整えることで、野生動物との共存が少しずつ実現していく。それを目の当たりにすると、やめられないですね」

この事例からわかるのは、里山保全は野生動物への「贈り物」であり、同時に私たち人間が失いつつあった自然とのつながりを取り戻す営みでもあるということです。

 

里山保全・野生動物共存で気をつけたいこと

 

注意点①:野生動物に餌を与えない

善意から野生動物に餌を与える行為は、動物を人に慣れさせ(餌付け)、長期的には動物にとっても人にとっても危険な状況を生みます。

環境省や各自治体は、野生動物への餌付けを厳に慎むよう呼びかけています。特にクマ・イノシシ・サルについては、一度餌付いた個体が攻撃的になるリスクが高まるため、法律による規制が設けられている自治体もあります。

 

注意点②:里山での活動は安全対策を万全に

里山でのボランティア活動は、野生動物との遭遇リスクを伴います。特にクマの生息地域では、複数人での行動・クマ鈴の携帯・ゴミの持ち帰りなど、基本的な対策を徹底してください。

環境省・林野庁のウェブサイトでは、クマとの遭遇時の対処法など詳細な情報が公開されています。活動前に必ず確認しましょう。

 

注意点③:「自分たちだけで解決しよう」とは考えない

里山保全と野生動物管理は、専門知識が必要な分野です。鳥獣被害対策の捕獲や個体数管理は、法律(鳥獣保護管理法)に基づく免許・許可が必要であり、素人判断での行動は違法になる場合があります。

専門家(獣医師・生態学者・行政担当者・猟友会)と連携しながら進めることが大切です。

 

注意点④:外来種の不適切な放出に注意

「かわいそうだから」と外来種の動物を野外に放すことは、生態系を破壊する行為です。ペットとして飼われていたアライグマや、学校で飼育されていたカメなどが野外に放されて繁殖し、在来種を脅かす問題が全国各地で起きています。

里山の生態系を守るためには、外来種を自然に放さないという基本的なルールを守ることも重要です。

 

今後の社会的視点——野生動物との共存は「新しい常識」になる

 

国際的な流れ:「ネイチャーポジティブ」へ

2022年にカナダのモントリオールで開催された「生物多様性COP15」では、「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」が採択されました。この枠組みでは、2030年までに世界の陸地・海洋の30%を保全する「30by30目標」が国際公約として設定されています。

日本政府もこの目標に参加しており、「自然共生サイト」の認定制度を通じて、民間企業や自治体が保全に関わる土地を国際目標の達成に算入できる仕組みを整備し始めています。里山はこの文脈で、極めて重要な位置を占めています。

 

企業・ESGの文脈でも里山が注目される

近年、ESG投資(環境・社会・ガバナンスを重視した投資)の広がりを受け、企業が里山保全に関与するケースが増えています。

水源涵養や生物多様性保全を「自然資本」として経営に組み込む動きは、国内外の大手企業で見られるようになりました。サントリーの「天然水の森」や、トヨタ自動車が工場周辺で行う里山保全活動などが代表的な例です。

里山保全は「ボランティアの善意」の話だけでなく、社会経済システムの中に組み込まれていく流れが生まれています。

 

動物福祉の視点から見た「新しい共存モデル」

動物福祉の分野では、野生動物管理に「Five Freedoms(5つの自由)」や「One Welfare(ワン・ウェルフェア)」という概念が適用されるようになっています。

「ワン・ウェルフェア」とは、動物の福祉・人間の福祉・環境の健全性は相互に連動しているという考え方です。つまり、里山の生態系が健全であることは、野生動物の福祉にとっても、そこに暮らす人間の福祉にとっても、同時に良いことであるという視点です。

この考え方は、これからの野生動物管理・農村政策・都市計画の中にも徐々に取り入れられていくと予想されます。

また、自治体レベルでも進化が見られます。例えば兵庫県では「ツキノワグマ保護管理計画」を策定し、個体数の科学的なモニタリングと、地域住民への普及啓発を組み合わせた管理モデルを実践しています。感情論でも過度な駆除でもなく、データに基づく「共存のマネジメント」が全国各地で広がりつつあります。

 

AIと最新技術が里山保全を変える

近年、AIを活用した野生動物のモニタリングが本格化しています。センサーカメラの映像をAIが自動解析し、動物の種類・個体数・行動パターンを把握する技術は、すでに国内複数の自治体・研究機関で実用段階に入っています。

ドローンによる森林調査や、ICT(情報通信技術)を使った防護柵の遠隔監視システムなども普及が進んでおり、少ない人手で広い面積の里山を守るためのインフラが整いつつあります。

里山保全の現場は、テクノロジーとの融合によって急速に変わろうとしています。

 

まとめ:里山を守ることは、命を守ること

 

この記事で見てきたように、里山保全と野生動物との共存は、単なる「自然愛好家の趣味」ではありません。農業被害の軽減・生物多様性の回復・地域経済の活性化・防災・動物福祉——さまざまな社会課題の解決につながる、複合的な意義を持つテーマです。

 

ポイントをあらためて整理すると、

  • 里山の荒廃が、野生動物と人間の軋轢を生む主要因のひとつ
  • 年間155億円規模の農業被害は、里山の管理不足と深く関連している
  • 野生動物との共存には「追い払い」ではなく「生息環境の管理」が不可欠
  • 個人・地域・企業・行政がそれぞれの立場でできることがある
  • 国際的な「30by30目標」の達成にも、里山保全は欠かせない柱

動物福祉の視点からも、駆除に頼り続ける管理から、共存を前提とした持続可能な管理へのシフトが求められています。

野生動物たちは、「人の世界に入り込んでやろう」と思っているわけではありません。ただ、生きるための場所と食べ物を求めているだけです。私たちが里山という「緩衝地帯」を取り戻すことで、動物たちは動物たちの領域で生きることができる——そのシンプルな事実が、共存の出発点です。


今日できることから、一歩踏み出してみませんか? まずはお住まいの地域の里山保全活動や、行政の鳥獣害対策情報を検索してみてください。あなたのその一歩が、野生動物との未来を変える力になります。


関連情報(公的機関)

  • 環境省「生物多様性国家戦略2023-2030」
  • 農林水産省「鳥獣被害の現状と対策」
  • 環境省「自然共生サイト認定制度」
  • 農林水産省「ジビエ利活用拡大対策」
  • 環境省「クマ類の出没対応マニュアル」

掲載データは作成時点の最新情報をもとにしていますが、最新の数値は各省庁の公式サイトでご確認ください。

 

 

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この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

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