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ネイチャーポジティブとは?意味・企業の取り組み・個人ができることをわかりやすく解説

ネイチャーポジティブとは

 


「ネイチャーポジティブ」という言葉を最近よく耳にするけれど、実際に何をすればいいのかわからない。

そんな疑問を持つ方は、今とても多いのではないでしょうか。

地球の生物多様性が急速に失われている今、単に「環境に優しくする」だけでは足りない時代になっています。 必要なのは、自然を守るだけでなく、回復させ、増やしていくという発想の転換です。

 

この記事では、ネイチャーポジティブの定義から、企業・個人それぞれにできる具体的な取り組み、メリットと注意点まで、専門的な視点でわかりやすく解説します。

動物福祉や生態系保全に関心がある方はもちろん、SDGsやESGに取り組む企業担当者の方にも、ぜひ最後まで読んでいただきたい内容です。


ネイチャーポジティブとは?定義と背景をわかりやすく解説

 

ネイチャーポジティブの正式な定義

ネイチャーポジティブ(Nature Positive)とは、「2030年までに生物多様性の損失を止め、反転させ、2050年までに完全回復させる」という国際的な目標概念です。

 

2022年12月にカナダ・モントリオールで開催されたCOP15(生物多様性条約第15回締約国会議)にて採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組み」において、この考え方が世界的な政策目標として明確に位置づけられました。

 

環境省の資料によれば、ネイチャーポジティブは単なるスローガンではなく、測定可能な目標値を伴う行動指針です。 具体的には「2030年までに陸と海の30%以上を保護地域や自然共生サイトとして保全する(30by30目標)」が柱のひとつとなっています。

 

なぜ今「ネイチャーポジティブ」が注目されるのか

気候変動対策(カーボンニュートラル)が先行して話題になってきましたが、生物多様性の危機はそれと並ぶ、あるいはそれ以上の緊急課題として認識されるようになっています。

 

WWF(世界自然保護基金)の「生きている地球レポート2022」によると、1970年から2018年の間に脊椎動物の個体数は平均69%減少しました。 半世紀足らずで、地球上の野生動物の約7割が失われた計算になります。

 

この危機的状況を受けて、各国政府・国際機関・民間企業が「もはや現状維持では足りない。自然を積極的に回復させなければならない」という認識を共有したのが、ネイチャーポジティブという概念が生まれた背景です。


生物多様性の現状|データで見る「失われゆく自然」

 

日本における生物多様性の危機

日本は世界有数の生物多様性ホットスポットのひとつです。 固有種が多く、豊かな自然生態系を持つ一方で、その損失も深刻です。

 

環境省が公表している「生物多様性国家戦略2023-2030」によると:

  • 日本の絶滅危惧種は3,772種(2023年時点)
  • 哺乳類・鳥類・両生類・爬虫類・魚類・植物など多岐にわたる
  • 里地里山の面積は1970年代以降、継続的に減少
  • 外来種による在来種への影響が各地で報告されている

また、農業・林業・漁業の変化、都市化の進展、気候変動との複合的な影響により、多くの野生動物が生息域を失いつつあります。

 

動物福祉との深いつながり

ネイチャーポジティブは、生態系全体を守る取り組みですが、個々の動物の福祉とも密接につながっています

野生動物が本来の生息地を失えば、餓死・傷病・ストレスにさらされます。 自然環境の回復は、野生動物が「自然な行動を表現できる場所」を守ることにも直結するのです。

動物福祉の観点からも、ネイチャーポジティブへの取り組みは極めて重要な意義を持ちます。


Q&A|ネイチャーポジティブについてよくある疑問

 

Q1. 「カーボンニュートラル」と「ネイチャーポジティブ」は何が違うの?

 

A. カーボンニュートラルは温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすること(気候変動対策)、ネイチャーポジティブは生物多様性の損失を止め回復させること(自然・生態系対策)です。

両者は密接に関連しており、例えば森林を守ることはCO₂吸収にも生物多様性保全にも貢献します。 これを「ネイチャーベースドソリューション(NbS)」と呼び、現在注目されている考え方です。

 

Q2. 中小企業でも取り組める?コストはどのくらいかかる?

 

A. はい、取り組めます。 むしろコストをかけずにできることから始めることが重要です。

例えば:

  • オフィスや工場周辺の緑化・在来種の植栽
  • サプライチェーンにおける生物多様性リスクの把握
  • 地域の自然保護活動への寄付・参加

大企業と同じ規模のアクションは不要です。自社の事業規模に応じた「できること」から始めることが、ネイチャーポジティブの第一歩です。

 

Q3. 個人が取り組んでも意味があるの?

 

A. 意味があります。

消費行動は企業の行動を変える力を持っています。 「生物多様性に配慮した商品を選ぶ」「地元の保全活動に参加する」といった個人の行動が積み重なることで、企業・行政を動かす社会的圧力になります。

また、「市民サイエンス(シチズンサイエンス)」として、野生動物の目撃情報をアプリで報告する取り組みなども広がっており、個人が生物多様性データの収集に貢献できる時代になっています。

 

Q4. TNFDやSBTNって何?企業が対応しなければいけないの?

 

A. TNFDは「自然関連財務情報開示タスクフォース」の略で、企業が自然資本・生物多様性に関するリスクと機会を開示するための国際的なフレームワークです(2023年最終版公表)。

SBTNは「科学的根拠に基づく自然目標(Science Based Targets for Nature)」のことで、企業が生物多様性への影響を科学的根拠に基づいて設定・管理するための枠組みです。

現時点では義務ではありませんが、欧州を中心に投資家・取引先からの要求が強まっており、将来的には日本企業も無視できない流れになってきています。


企業にできるネイチャーポジティブの取り組み|具体的な手順

 

STEP 1|まず自社の自然への依存・影響を「見える化」する

企業がネイチャーポジティブに取り組む第一歩は、自社事業が自然にどう依存し、どう影響を与えているかを把握することです。

TNFDが提唱する「LEAP(Locate, Evaluate, Assess, Prepare)アプローチ」が参考になります:

  1. Locate(特定):事業活動・サプライチェーンが接触する自然環境を地図上で特定する
  2. Evaluate(評価):その自然環境の状態と、自社の依存・影響を評価する
  3. Assess(査定):財務リスク・機会として定量化する
  4. Prepare(準備):開示・目標設定・行動計画を策定する

 

STEP 2|優先的に取り組む領域を決める

全てを一度に変えようとする必要はありません。 自社のバリューチェーンの中で、生物多様性への影響が最も大きい部分を特定し、そこから優先的に改善を進めましょう。

農業・食品業界なら農地の農薬使用量削減や有機農業への転換、建設業なら用地開発時の生態系調査と代替生息地の創出、小売業なら認証製品(FSC、MSC、ASCなど)の調達比率の向上といった取り組みが代表例です。

 

STEP 3|社内外のステークホルダーと連携する

ネイチャーポジティブは単独企業の努力だけでは達成できません。

  • 社内:CSR・サステナビリティ部門だけでなく、調達・生産・営業などの現場部門を巻き込む
  • 取引先:サプライヤーへの要件として生物多様性配慮を盛り込む
  • 地域社会:地元NPO・行政と連携して生息地保全プロジェクトを実施
  • 業界団体:同業他社と協力して業界標準を作る

 

STEP 4|目標設定と進捗の開示

何を、いつまでに、どのように達成するかを数値目標で設定し、毎年の統合報告書やサステナビリティレポートで開示することが重要です。

 

目標例:

  • 2030年までに自社工場・オフィス敷地の緑地率を30%以上に維持
  • 2025年までに調達する木材・紙の100%をFSC認証品に切り替える
  • 2030年までにサプライチェーン上位50社に生物多様性評価を実施

個人にできるネイチャーポジティブの取り組み

 

日常の消費行動から変える

個人がネイチャーポジティブに貢献するもっとも簡単な方法は、消費行動を見直すことです。

 

選ぶ際に意識したいポイント:

  • FSC認証:持続可能な森林管理から生産された木材・紙製品
  • MSC/ASC認証:持続可能な漁業・養殖から獲られた水産物
  • 有機農産物・農薬削減農産物:農地の生物多様性を守る
  • ペット由来の野生動物には手を出さない:違法野生生物取引を助長しない

こうした選択は「少し割高」に見えることもありますが、その差額は生物多様性を守るための社会的コストと考えることができます。

 

庭・ベランダでできるネイチャーポジティブ

実は自宅の庭やベランダも、小さな生態系の拠点になれます。

  • 在来植物を植える:在来の草花・樹木は地域の昆虫・鳥と共進化しており、より多くの野生生物を呼び込めます
  • 農薬・除草剤の使用を控える:特に蜂や蝶などの花粉媒介者(ポリネーター)を守るために重要
  • 水場を作る:小さなビオトープや水鉢でも、鳥・昆虫・両生類の生息を助けます
  • 落ち葉・枯れ木を残す:分解者の生き物(昆虫・菌類など)の住処になります

 

シチズンサイエンスで生物多様性データに貢献

近年、スマートフォンアプリを使った野生生物の目撃情報収集が活発になっています。

  • iNaturalist(アイナチュラリスト):世界最大の市民生物観察プラットフォーム。スマホで撮影した生き物をAIが同定し、科学データとして蓄積
  • eBird:コーネル大学が運営する鳥類観察記録プラットフォーム
  • いきものログ:環境省が運営する日本の生物多様性データベース

観察した場所・日時・種名を記録するだけで、科学者・行政の生物多様性把握に貢献できます。


メリットとデメリット|ネイチャーポジティブに取り組む前に知っておくこと

 

企業にとってのメリット

 

① ESG投資家からの評価向上

現在、世界のESG投資残高は約30兆ドル(PRI調べ)に達しています。 生物多様性リスクへの対応を開示することは、長期投資家からの資金調達において競争優位になります。

 

② サプライチェーンリスクの低減

農業・林業・漁業・観光業など、自然資本に依存する産業では、生物多様性の喪失が原材料調達難・コスト高騰に直結するリスクがあります。 予防的に対応することが経営上のリスクヘッジになります。

 

③ ブランド・レピュテーションの向上

生物多様性への配慮を示す企業は、消費者・求職者・地域社会からの信頼を高められます。 特に若い世代は環境問題への感度が高く、採用活動にもプラスに働きます。

 

注意点・デメリット

 

① 「グリーンウォッシュ」のリスク

実態が伴わないまま「ネイチャーポジティブな企業」を名乗ると、消費者・投資家・NGOからの批判を招きます。 目標は科学的根拠に基づいて設定し、第三者検証を受けることが重要です。

 

② 測定・評価の難しさ

CO₂排出量と異なり、生物多様性への影響は多面的で測定が難しいという課題があります。 TNFDやSBTNのフレームワークを活用しながら、段階的に測定精度を高めていくことが現実的なアプローチです。

 

③ 短期的なコスト増

調達先の見直し・生態系調査・認証取得などには初期コストがかかります。 ただし中長期的には、自然資本へのアクセスを維持することによる事業継続性の確保という形でリターンが得られます。


実体験エピソード|ある農家の「再生」の物語

 

長野県の果樹農家・Aさん(仮名)は、10年前まで農薬と化学肥料を多用した慣行農業を営んでいました。

ある年の春、蜂が来なくなったことに気づきました。 受粉が不十分になり、果実の着果率が落ち、収量が3割減少。

「このままでは続けられない」と感じたAさんは、農薬の使用量を段階的に減らし、果樹園の周囲に在来の花を植え始めました。 3年後には蜂が戻り、5年後には果実の品質も向上。今では「自然栽培に近い形」で安定した収量を保っています。

Aさんが実感したのは「自然を回復させることで、自分の農業も豊かになった」ということ。 これはまさに、ネイチャーポジティブが目指す自然と人間の共栄の姿です。

この事例は個人農家の話ですが、企業規模の農業においても同様のアプローチが各地で試みられています。


ネイチャーポジティブに取り組む際の注意点

 

オフセットに頼りすぎない

「他の場所で植林すれば、ここで開発してよい」という考え方(生物多様性オフセット)は、一定の条件下では認められていますが、本来の自然環境は代替できないことを忘れてはなりません。

特に、絶滅危惧種の生息地、古い成熟した森林、湿地帯などは、失われると回復に数十年〜数百年かかります。 オフセットはあくまで最後の手段であり、まず「回避→最小化→修復」の順に対策を取ることが国際標準です。

 

在来種と外来種に気をつける

緑化・植栽を行う際に、外来種を植えてしまうと逆効果になる場合があります。

例えば、観賞用に持ち込まれたオオキンケイギク(特定外来生物)は現在、全国各地で在来植物の生育を脅かしています。 緑化・ガーデニングを行う際は、地域の在来種を使うことが鉄則です。

地域の在来植物情報は、各都道府県の環境部局や環境省の「侵入外来種リスト」等で確認できます。

 

「やっているふり」にならないために

ネイチャーポジティブは中長期的なコミットメントが必要です。 単年度の植樹イベントや「緑化面積を○%増やした」という表面的な数字だけでなく、生態系としての機能が向上しているかを継続的にモニタリングすることが重要です。


今後の社会的視点|ネイチャーポジティブが変える未来

 

国際的な政策動向

昆明・モントリオール生物多様性枠組みの採択を受け、各国で政策が動き始めています。

  • EU:2024年に「自然再生法(Nature Restoration Law)」が成立。2030年までにEU陸域の20%・海域の20%を生態系回復の対象とすることを義務化
  • 英国:2021年に「環境法(Environment Act)」を施行。開発事業に「生物多様性ネットゲイン(BNG)」を義務化し、開発前比10%以上の生物多様性増加を求める
  • 日本:「生物多様性国家戦略2023-2030」を策定。30by30目標の達成に向け、自然共生サイトの認定制度(OECMの活用)を開始

日本では2023年から「自然共生サイト」の認定申請受付が始まり、企業・自治体・NGOが管理する場所も30by30の達成に貢献できる仕組みが整いつつあります。

 

企業経営における自然資本の「内部化」

従来、自然環境は「無償で利用できる公共財」として扱われてきました。 しかし今後は、自然資本を企業の財務リスク・機会として評価し、開示することが当然となる時代が来ます。

TNFDフレームワークへの準拠を求める金融機関・投資家は急速に増えており、日本でも大手金融機関が対応を始めています。

「自然に依存しない事業はない」という認識のもと、あらゆる業種で自然資本の内部化が進む——これが今後10年の大きな流れです。

 

動物福祉と生物多様性の統合的アプローチ

野生動物の保護と、生態系全体の健全性を高めるネイチャーポジティブは、本質的に同じ方向を向いています。

欧州では動物福祉と生物多様性を統合した「One Welfare(ひとつの福祉)」アプローチが広がっており、人・動物・生態系の健全性を一体的に考える「One Health(ワンヘルス)」の概念とも連動しています。

日本でも、動物福祉の観点から野生動物との共存を考えることが、ネイチャーポジティブ実現への重要な鍵となるでしょう。


まとめ|ネイチャーポジティブは「今すぐ始められる」

 

本記事では、ネイチャーポジティブの定義から、企業・個人にできる具体的な取り組み、メリット・注意点、そして今後の社会的動向まで幅広く解説してきました。

 

重要なポイントをおさらいします:

  • ネイチャーポジティブとは、2030年までに生物多様性の損失を止め、反転・回復させる国際的な取り組みの概念
  • 生物多様性の損失は、野生動物の福祉を脅かすだけでなく、農業・水産業・観光業など人間の生活基盤にも深刻な影響をもたらす
  • 企業はTNFD・SBTNのフレームワークを活用しながら、自社の自然への依存・影響の見える化からスタートできる
  • 個人は消費行動・ガーデニング・シチズンサイエンスなど、日常の中でできることがたくさんある
  • 大切なのは「完璧にやろうとしないこと」。小さな一歩を踏み出すことが、社会全体のうねりにつながる

自然は待ってくれません。 しかし、今日からあなたが始めた一つの行動が、未来の生態系を変える力を持っています。

まずは、今日の買い物で「MSC認証」や「FSC認証」を探してみてください。 それがあなたのネイチャーポジティブの第一歩です。


参考資料・データ出典

  • 環境省「生物多様性国家戦略2023-2030」
  • 環境省「自然共生サイト認定制度」
  • 生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)「昆明・モントリオール生物多様性枠組み」
  • WWF「生きている地球レポート2022(Living Planet Report 2022)」
  • TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)最終版フレームワーク(2023年9月)
  • EU Nature Restoration Law(2024年)
  • 英国 Environment Act 2021

本記事は動物福祉・生物多様性保全の情報提供を目的としています。最新の政策情報は各公的機関の公式発表をご確認ください。

 

 

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この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

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