イラン情勢で肥料不足の時代へ|里山管理で日本の食料自給率を高める方法

はじめに|あなたの食卓は、中東の情勢に左右されている
「肥料が値上がりしている」「野菜の価格が不安定だ」——そんなニュースを耳にしたことはありませんか?
その背景には、イランをはじめとする中東・東欧の地政学的リスクが深く関わっています。
日本は肥料原料の大半を輸入に頼っており、国際情勢の変化がそのまま農業コストに直結します。食料自給率はカロリーベースで38%(農林水産省・2023年度)と先進国最低水準。この数字は、日本の食が「他国の安定」の上に成り立っていることを意味します。
しかし、解決の糸口は意外にも、私たちの足元にあります。
それが「里山」です。
里山の管理を見直し、山の恵みを活かした循環型農業を再構築することで、外部依存から脱却し、自給率アップへの道が開けます。そして、その営みは野生動物との共生、つまり動物福祉とも深くつながっています。
この記事では、イラン情勢と肥料問題の現状から、里山管理の実践方法、動物福祉への影響まで、一気通貫で解説します。
イラン情勢が日本の肥料に与える深刻な影響
肥料価格高騰の構造的背景
2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降、世界の肥料市場は大きく揺れています。ロシア・ベラルーシは世界の窒素・カリウム系肥料の主要輸出国であり、その供給途絶が価格を跳ね上げました。
そしてイランをめぐる情勢も、見過ごせない変数です。
- イランはリン酸肥料の原料となるリン鉱石の重要産出国のひとつ
- 中東情勢の緊張は、ホルムズ海峡を通じる海上輸送コストの上昇を招く
- 日本の化学肥料原料(尿素・リン酸アンモニウム・塩化カリ)はほぼ100%輸入依存(農林水産省データ)
農林水産省の調査によれば、2021年度と比較して2022〜2023年度の肥料価格は平均で約1.5〜2倍以上に上昇。農家の経営を直撃しています。
日本の食料自給率という「地雷」
食料・農業・農村基本法の改正議論でも自給率向上は大きな課題です。
- カロリーベース自給率:38%(2023年度、農林水産省)
- 生産額ベース自給率:58%(同年度)
- 先進国(フランス127%・カナダ233%)と比べると、日本の数字の低さは際立つ
肥料コストが上がれば農業経営が圧迫され、耕作放棄地が増える。耕作放棄地が増えれば自給率はさらに下がる——この負のスパイラルから抜け出すための選択肢が、里山管理による地産地消・有機肥料の活用です。
よくある疑問に答えます|里山管理と自給率の関係Q&A
Q1. 里山って何ですか?農業と関係あるの?
A. 里山とは、人が適度に手を入れることで維持されてきた二次的自然のことです。雑木林・田んぼ・ため池・畦道などが組み合わさった景観を指します。
環境省の定義では、里山は「農業・林業・狩猟などの人間活動と自然生態系が共存してきた地域」とされています。単なる景観ではなく、資源供給の場でもあります。
農業との関係は非常に直接的です。里山から得られる落ち葉・木材・腐葉土は、有機肥料や土壌改良材として活用でき、化学肥料への依存を減らすことができます。
Q2. 山の恵みで本当に肥料代が下がるの?
A. 実際に下がります。
たとえば、落ち葉堆肥(腐葉土)は窒素・リン・カリウムを含む優れた有機肥料です。1ha分の畑に必要な有機堆肥の一部を、近隣里山の落ち葉から補えれば、年間数万円単位のコスト削減につながるとされています(農研機構の有機農業研究より)。
Q3. 里山管理は手間がかかりすぎませんか?
A. 確かに労力は必要です。しかし近年は、地域おこし協力隊・NPO・ボランティア団体との連携により、個人農家の負担を分散できる仕組みが各地で生まれています。
また、環境省・林野庁・各都道府県は里山整備への補助金制度を設けており、費用面でもサポートを受けられる場合があります。
実践編|里山管理で自給率アップを実現する具体的な方法
Step1. 地域の里山資源を「見える化」する
まず取り組むべきは、自分の地域にどんな里山資源があるかを把握することです。
確認すべきポイント:
- 近隣に雑木林・竹林・広葉樹林はあるか
- 耕作放棄地や休耕田の状況
- 地元の農業委員会・森林組合・市区町村の林務課への相談
環境省が公開している「自然環境情報GIS」や、農林水産省の「耕作放棄地マップ」なども活用できます。
Step2. 落ち葉堆肥・竹チップ堆肥を作る
里山管理の中でもっとも取り組みやすい入口が、有機堆肥の自家製造です。
落ち葉堆肥の作り方(基本):
- 秋〜冬に広葉樹の落ち葉を集める(クヌギ・コナラが最適)
- 落ち葉を積み上げ、米ぬかや鶏糞を少量混ぜる
- 水分を保ちながら月1〜2回切り返す
- 6ヶ月〜1年で腐葉土(落ち葉堆肥)が完成
竹チップ堆肥の活用: 放置竹林は里山荒廃の象徴ですが、竹を粉砕したチップは堆肥や土壌改良材として優秀です。竹チップにはケイ酸が豊富に含まれ、病害虫への抵抗力を高める効果も報告されています。
Step3. 野生動物との境界線を「共存型」に設計する
里山管理で忘れてはならないのが、野生動物との関係です。
イノシシ・シカ・クマなどによる農作物被害は年間約155億円(農林水産省・令和4年度)に上ります。これは里山の荒廃が生み出した動物福祉と農業の矛盾でもあります。
解決策として注目されているのが「緩衝帯(バッファゾーン)」の整備です。
- 里山と農地の間に、動物が近づきにくい植生帯を設ける
- 里山整備によって動物の生息環境を本来の山奥に誘導する
- 電気柵・においフェンスなどを動物福祉に配慮した形で設置する
農林水産省の鳥獣害対策交付金を活用することで、緩衝帯整備の費用補助も受けられます。
Step4. 地域コミュニティと連携した里山ガバナンス
個人の取り組みには限界があります。持続可能な里山管理には、地域のガバナンスが不可欠です。
効果的な連携先:
- 地域おこし協力隊(総務省制度)
- 森林ボランティア団体
- 農業高校・大学との連携
- 市民農園・CSA(地域支援型農業)の導入
長野県飯田市や岐阜県恵那市では、里山管理と農業を組み合わせた地域循環モデルが実践されており、農業コストの削減と自給率向上の両立に成功しています。
里山管理のメリットとデメリットを正直に伝えます
メリット
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 肥料コスト削減 | 有機堆肥の自家製造で化学肥料依存を低減 |
| 生物多様性の保全 | 里山整備により在来種・希少種の生息環境が回復 |
| 動物福祉の向上 | 野生動物の生息域が回復し、無用な駆除を減らせる |
| 地域経済の活性化 | 木材・竹材・山菜など里山産品の流通が生まれる |
| 防災効果 | 適切な森林管理は土砂崩れ・洪水リスクを下げる |
| 食料自給率の向上 | 地産地消の強化で輸入依存を緩和できる |
デメリット・課題
- 労力がかかる:堆肥作りや林道整備は体力・時間を要する
- 初期投資が必要:チッパー・粉砕機・電気柵などの設備費用
- 専門知識が必要:適切な樹種管理・野生動物対策には学習コストがある
- 担い手不足:農山村の高齢化・過疎化が里山管理の大きな壁
- 短期的な収益性が低い:効果が出るまでに時間がかかる
ただし、これらのデメリットは補助金・地域連携・技術支援の活用で大幅に緩和できます。最初から完璧を目指さず、できるところから始めることが重要です。
実体験エピソード|里山と向き合った農家の変化
岐阜県中山間地域でブルーベリー農園を営むAさん(60代)は、数年前まで化学肥料に頼り切った農業を続けていました。
「肥料代が上がるたびに、何かが間違っていると感じていました。でも、どう変えればいいかわからなかった」
転機は、地域の里山保全NPOとの出会いでした。荒れ果てた竹林を整備し、竹チップ堆肥を作る取り組みに参加したことで、肥料費が以前の約6割に削減。同時に、イノシシによる獣害も「緩衝帯を整えたことで明らかに減った」と言います。
「山を手入れすることで、動物も落ち着いた場所に戻っていくんです。追い詰めるんじゃなく、共存できる環境を作る。それが一番長続きする方法だと思います」
このAさんの言葉は、里山管理の本質を突いています。人間の都合だけでなく、野生動物の生態を尊重しながら農業を続けることこそ、持続可能な動物福祉と自給率向上の両立です。
注意点|里山管理で絶対に押さえておくべきこと
無許可の伐採・採取は違法になる場合がある
里山の木材・竹・落ち葉を活用する際には、土地の所有権を必ず確認してください。
- 国有林・民有林の区別を市町村林務課に確認する
- 他者の土地での採取は必ず許可を取る
- 里山整備活動に参加する場合は、地権者・団体との協定を文書化する
無許可の伐採は森林法違反になる可能性があります。
野生動物への餌付け・不用意な接触は厳禁
里山管理の中で動物と接触する機会が増えますが、以下の点は厳守してください。
- 野生動物への餌付けは禁止(鳥獣保護管理法)
- イノシシ・シカ・クマへの不用意な接近は事故につながる
- 発見時は静かに距離を取り、必要に応じて行政機関(市区町村・都道府県自然保護課)へ連絡
動物福祉の観点からも、野生動物を「管理すべき害獣」としてではなく、「生態系の一員」として捉える視点が重要です。
堆肥の品質管理を怠らない
自家製有機堆肥は、使い方を誤ると逆効果になります。
- 未熟堆肥の使用は土壌障害・病害の原因になる
- C/N比(炭素窒素比)を意識した材料選びが必要
- 農研機構や都道府県農業試験場の技術指導を積極的に活用する
品質不安がある場合は、市販の有機JAS認証堆肥との併用から始めるのがおすすめです。
今後の社会的視点|動物福祉と里山管理の未来
欧州では「自然との共生農業」が主流へ
EUでは2030年までに農薬使用量50%削減・有機農業面積25%以上を目標とするFarm to Fork(農場から食卓へ)戦略が動いています。その根底にあるのは、動物福祉と生態系の保全を農業政策の中心に置くという価値観の転換です。
日本でもみどりの食料システム戦略(農林水産省・2021年)が打ち出され、2050年までに有機農業面積を25%に拡大する目標が示されています。里山管理はこの戦略に直結する取り組みです。
里山管理が動物福祉に果たす役割
荒廃した里山は、野生動物にとっても「住みにくい環境」です。
- 植生が単純化し、食物連鎖が乱れる
- 餌を求めて人里に下りてくるシカ・イノシシが増加
- 結果として「有害鳥獣」として駆除される動物が増える
逆に、里山が適切に管理されれば:
- 多様な植生が戻り、野生動物が山の中で生きていける環境が整う
- 農地への侵入が減り、不必要な駆除が減少する
- 在来の小動物・昆虫・鳥類の生息地が回復し、生態系全体が健全化する
これは動物福祉の観点から見て、非常に重要な変化です。人間が山を手入れすることで、動物の「生きる権利」が守られる——里山管理はまさに動物福祉の実践でもあるのです。
里山カーボンクレジットという新たな可能性
2023年以降、日本でもJ-クレジット制度を活用した森林管理のカーボンクレジット化が広がっています。里山の森林を適切に管理することで、CO₂吸収量をクレジットとして企業に売却し、農家・地域の収益にできる仕組みです。
里山管理は今後、農業コスト削減・自給率向上・動物福祉・気候変動対策・地域経済活性化を同時に実現できる、日本の農村に残された最大の切り札になり得ます。
まとめ|山の恵みに目を向けることが、日本の食と動物を救う
この記事で伝えたかったことを整理します。
ポイントの総括:
- イラン情勢・国際情勢の不安定化が日本の肥料価格を直撃している
- 食料自給率38%という現実は、他国依存の危うさを示している
- 里山管理・山の恵みの活用は、化学肥料依存からの脱却を可能にする
- 落ち葉堆肥・竹チップ堆肥など、足元の資源を活かす技術はすでにある
- 適切な里山管理は野生動物の生息環境を回復させ、動物福祉の向上にも直結する
- 補助金・地域連携を活用すれば、個人農家でも始められる
難しく考える必要はありません。
近所の里山を歩き、地域の農業委員会や森林組合に相談する。それだけで、里山管理への第一歩が始まります。
国際情勢に翻弄される農業から脱却し、山の恵みを活かした持続可能な食と動物の共存——その実現は、あなたの「一歩」から始まります。
監修・参考資料:
- 農林水産省「令和4年度食料自給率について」
- 環境省「里地里山の保全・活用について」
- 農研機構「有機農業技術情報」
- 農林水産省「令和4年度鳥獣被害の現状と対策」
- 農林水産省「みどりの食料システム戦略(2021年)」
古着買取、ヴィーガン食品やペットフードの買い物で支援など皆様にしてもらいたいことをまとめています。
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