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鶏がなつく理由と性格|科学的根拠と動物福祉の視点から徹底解説

鶏がなつく理由と性格

 

「鶏ってなつくの?」と聞かれたとき、あなたはどう答えますか。

「三歩歩くと忘れる」という俗説が今も根強く残るせいか、鶏は感情を持たない家畜だと思われがちです。

しかし、それは大きな誤解です。

 

2017年に科学雑誌Animal Cognitionに掲載された神経科学者ロリ・マリーノ博士の論文は、鶏が高い認知能力・感情・社会性を持つことを科学的に明らかにしました。鶏は確かに人間になつきます。そしてその「なつき方」には、明確な理由があります。

 

この記事では、鶏がなつく理由を科学・行動学・動物福祉の観点から丁寧に解説します。飼育を検討している方にも、すでに鶏と暮らしている方にも、きっと新しい発見があるはずです。


鶏がなつく理由① 鶏は人の顔を認識している

 

鶏の認知能力は想像をはるかに超えている

まず前提として知っておきたいのは、鶏の知能の高さです。

前述のマリーノ博士の研究によると、鶏には次のような能力があることが示されています。

  • 人間の顔や声を識別する能力を持っている
  • 長期記憶があり、過去に会った人間を覚えている
  • 演繹的推理の能力があり、これは人間が約7歳で発達する認知機能に相当する
  • 将来の出来事を予測する能力がある
  • 他者の感情に共感する、シンプルな共感能力を持つ

また、鶏は24種類以上の鳴き声を使い分けて仲間とコミュニケーションをとることも知られています。

「ここにエサがあるよ」と仲間に知らせる鳴き声、天敵を発見したときの警戒の鳴き声、ひなが親に甘える鳴き声など、鶏の「言葉」は意外なほど豊かです。

 

つまり鶏は、あなたのことを個体として認識し、記憶しているのです。これが「なつく」という行動の根本的な前提になります。


鶏がなつく理由② 社会性の高い動物だから

 

鶏は群れで生きる「社会的な生き物」

鶏はもともと、東南アジアに生息するセキショクヤケイを祖先に持ちます。

野生状態では群れを作り、明確な社会的順位(ペッキングオーダー)の中で生活してきました。この群れの中で、特定の個体との信頼関係を構築することが、鶏の生存戦略として組み込まれているのです。

つまり、鶏が「なつく」のは偶然ではありません。信頼できる相手と絆を結ぶ本能が、もともとDNAに刻まれているのです。

 

飼育者が毎日同じ時間にエサを持ってきて、同じ声で話しかけ、穏やかに接し続けると、鶏はその人を「自分の群れの仲間」として認識するようになります。

これが、鶏がなつく最も根本的な理由です。

 

一人になると極端に不安定になる

鶏の社会性の高さは、逆の面からも確認できます。

研究によると、群れを持つ動物を意図的に1羽だけで飼育すると、攻撃性が著しく高まることが分かっています(広島大学・河上眞一准教授の研究より)。

 

これは、孤立することが鶏にとって大きなストレスであることを示しています。人間でいえば、孤独から生じる精神的な不調に近いものです。

鶏にとって「群れの仲間」は、安全と安心の象徴。その群れの中に人間が自然に加わることができれば、鶏は確実になついてきます。


鶏がなつく理由③ エサと安心感の積み重ねが信頼になる

 

信頼関係はある日突然生まれない

鶏がなつく過程は、犬や猫と似ています。毎日の積み重ねが、信頼関係という土台を作っていきます。

具体的には、次のような行動が効果的です。

  • 毎日同じ時間にエサをあげる(予測できる安心感を与える)
  • 低い声でゆっくり話しかける(突然の大きな声は恐怖を与える)
  • 手からエサを与える(手=安全・喜びの記憶を作る)
  • 無理に触ろうとしない(鶏が自分から近づくのを待つ)
  • 同じ服装・においで接する(鶏は嗅覚でも人を識別する)

特に「手からエサを与える」は、非常に効果的です。鶏にとって、手が「エサを持ってくる安全なもの」と学習されると、その手に対して積極的に近づくようになります。

 

実例:平飼い農家での観察

複数の平飼い農家の話では、毎朝エサを持って鶏舎に入ると、鶏たちが足元に群がってくるといいます。

中には飼育者の肩に乗ったり、膝の上で眠ったりする個体もいます。これは決して特別なことではなく、適切な接触を重ねた結果として自然に生まれる行動です。


鶏がなつく理由④ 品種によって「なつきやすさ」は異なる

 

品種別の性格・気質の違いを知ろう

鶏がなつく理由を語るうえで、品種による性格の違いは外せません。

長年の品種改良の過程で、鶏の気質は品種ごとに大きく異なるようになりました。なつきやすい品種を選ぶことが、信頼関係を築く大きな近道です。

 

品種 性格の特徴 なつきやすさ
名古屋コーチン 穏やか・飼育しやすい・人に慣れやすい
プリマスロック(横斑) おとなしい・のんびり屋
ロードアイランドレッド 活発・好奇心旺盛
白色レグホーン 神経質・警戒心が強い
シャモ 攻撃性が高い・縄張り意識が強い
烏骨鶏(シルキー) 温和・おとなしい

 

名古屋コーチンについては、鶏三和の公式情報によると「飼育条件が厳しいものの、人によく慣れているため性格は比較的穏やか」とされており、愛玩飼育にも向いているとされています。

 

プリマスロックはワールド牧場の紹介によると「性格はとてもおとなしくボーっとしている」とのことで、初心者にも扱いやすい品種です。

 

一方で、白色レグホーンのような採卵専用に改良された品種は、産卵能力を高める方向で育種されてきた分、神経質で警戒心が強い傾向があります。

 

ひよこから育てるのが最も効果的

なつきやすさという点では、ひよこの段階から人間に接触させることが圧倒的に効果的です。

生後数日以内の鶏は「刷り込み(インプリンティング)」が起きやすく、最初に頻繁に接触した対象を「仲間」として認識します。ひよこ期からていねいに接することで、成鶏になっても人を恐れない鶏に育ちます。


鶏がなつく理由⑤ 感情豊かな動物だから

 

鶏は喜び・恐怖・悲しみを感じる

「鶏に感情があるのか?」という問いに対して、現代の動物行動科学は明確にYESと答えています。

マリーノ博士の研究では、鶏が複雑な否定的・肯定的な感情を持つことが科学的に示されています。鶏は幸せを感じ、ストレスを感じ、他者の感情に共感します。

 

嬉しいときにはダンスのような動きをすることもあり、仲の良い飼育者が近づいてくると小走りで駆け寄る鶏の姿は、多くの飼育者が目撃しています。

 

鶏がなつくサインを見逃さない

鶏が「なついている」ときに見せる行動は、次のようなものです。

  • 飼育者の足元に自然に近づいてくる
  • しゃがんだときに膝に乗ろうとする
  • 手を差し出すとつつかずにエサを食べる
  • 近づいても逃げない・フリーズしない
  • 低くやわらかい声で鳴きかける(接触の鳴き声)

逆に、まだなつき切っていない鶏は、近づくと逃げる、羽を広げて威嚇する、突発的な大声で鳴くといった反応を見せます。これはまだ信頼関係が育っていないサインです。焦らず、毎日少しずつ距離を縮めていくことが大切です。


動物福祉と鶏のなつき方の関係

 

「5つの自由」を知ることが出発点

鶏がなつく環境を作るためには、動物福祉(アニマルウェルフェア)の視点が欠かせません。

国際獣疫事務局(WOAH)が定める「5つの自由」は、家畜の福祉を守るための国際基準です。

  1. 飢えと渇きからの自由(清潔な水と適切な食事)
  2. 不快からの自由(快適な環境と休息場所)
  3. 苦痛・傷・疾病からの自由(適切な治療と予防)
  4. 正常な行動を表現する自由(砂浴び・止まり木・巣作りができる環境)
  5. 恐怖と苦悩からの自由(ストレスのない飼育)

この5つが満たされた環境でこそ、鶏は本来の社会性を発揮し、人間との信頼関係を築くことができます。

 

日本の現状:農林水産省の指針と課題

農林水産省は2023年7月、国際基準(WOAHコード)に基づき「採卵鶏の飼養管理に関する技術的な指針」を新たに公表しました。これは、日本が初めて国として畜種ごとのアニマルウェルフェア指針を示した重要な一歩です。

一方で、農研機構の調査によると、日本の採卵鶏の90%以上がバタリーケージ飼育であり、砂浴び・止まり木・巣作りなど、鶏本来の行動欲求を満たせない環境が続いているのが実態です。

 

ケージフリー飼育の割合はわずか1.11%(2023年時点)にとどまっています。

こうした環境では、鶏が本来持つ社会性や感情表現が抑制され、結果として「なつく」という行動も出にくくなります。

鶏がなつくかどうかは、飼育環境が大きく関係しているのです。


鶏の性格と個体差について

 

鶏にも「個性」がある

「鶏はどれも同じ」というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし実際に飼育してみると、鶏には明確な個体差があることに驚かされます。

マリーノ博士の研究でも、「鶏はすべての動物と同じく、それぞれ個性が異なり、認知的・感情的・行動的に、各々が複雑な個体である」と明記されています。

実際に見られる個体差の例をあげると、次のようなものがあります。

  • 大胆で好奇心旺盛な鶏:見知らぬ物にすぐ近づく。人にも早くなつく傾向がある
  • 慎重で警戒心の強い鶏:なつくまでに時間がかかるが、一度信頼すると非常に深い絆を結ぶ
  • 甘えん坊な鶏:飼育者のそばを離れたがらず、常に追いかけてくる
  • 独立心の強い鶏:群れからやや離れて行動するが、エサの時間には必ず戻ってくる

こうした個性を観察しながら、その鶏のペースに合わせて接することが、なつかせるうえで最も大切なことです。

 

オスとメスで性格は違う?

一般的に、メスのほうが穏やかで人になつきやすい傾向があります。

オス(雄鶏)は縄張り意識と闘争本能が強く、特に繁殖期には攻撃的になることがあります。これはテストステロン(男性ホルモン)の分泌によるもので、広島大学の研究でもその関係が科学的に確認されています。

ただし、ひよこの段階から丁寧に人慣れさせれば、オスでも十分になつくことは多くの飼育者が経験していることです。


鶏と暮らすうえで知っておきたいこと

 

鶏を飼うための基本情報

鶏をペット・家禽として飼う前に、知っておくべき基本情報を整理しておきます。

 

法律・条例について

都市部で鶏を飼う場合、自治体の条例によって規制がある場合があります。特にオス(雄鶏)の鳴き声は騒音トラブルになりやすく、事前に自治体や近隣への確認が必要です。

鶏の飼育は、環境省「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護法)の管轄外ですが、自治体によっては独自の規定を設けているケースもあります。飼育前に地元の農政担当窓口へ問い合わせることをおすすめします。

 

鶏の平均寿命

適切な飼育環境のもとでは、鶏の平均寿命は10〜15年ほどです。愛情を持って育てることで、20年以上生きる個体もいます。

 

飼育に必要なもの

  • 安全な鶏舎(外敵から守れる構造)
  • 止まり木(地面から30〜50cmが目安)
  • 砂浴びができるスペース
  • 清潔な水と適切な飼料
  • 巣箱(産卵のための静かな場所)

これらはすべて、前述の「5つの自由」を満たすために不可欠な要素です。


よくある質問(FAQ)

 

Q. 鶏はどのくらいの期間でなつきますか?

 

A. 品種・個体差・接触頻度によって大きく異なります。ひよこから丁寧に育てた場合は数週間でなつくこともあります。成鶏から始める場合は、数か月かかることもありますが、毎日同じリズムで接し続けることが重要です。

 

Q. 鶏は抱っこできますか?

 

A. なついた鶏であれば、抱っこを受け入れます。ただし無理に抱き上げると恐怖を与えるため、まず鶏が自分から近づいてきてからやさしく触れ、段階的に慣らしていくことが大切です。

 

Q. 鶏が近づいてきてつつくのはなついているサインですか?

 

A. 必ずしもそうとは限りません。鶏は「つつく」ことで周囲を探索する習性があります。強くつつかれる場合は好奇心やエサへの期待、軽くつつく場合は友好的なコミュニケーションである可能性が高いです。

 

Q. 鶏は名前を覚えますか?

 

A. 繰り返し同じ名前を呼びながらエサを与えることで、その音に反応するようになります。人間の名前認識と同じ仕組みとはいえませんが、特定の音に対して反応するよう学習することは可能です。


まとめ

 

鶏がなつく理由を、改めて整理します。

  1. 鶏は人の顔・声を識別し、長期的に記憶する認知能力を持っている
  2. 群れで生きる社会性の高い動物であり、信頼できる相手と絆を結ぶ本能がある
  3. 毎日のエサやり・声かけの積み重ねが、安心と信頼の記憶を作る
  4. 品種によってなつきやすさに差があり、名古屋コーチン・プリマスロックが特におすすめ
  5. ひよこから育てると、より深い絆を結びやすい
  6. 感情豊かな生き物であり、喜び・恐怖・共感を感じる能力を持っている
  7. 動物福祉の観点から快適な環境を整えることが、なつかせるための根本条件

「三歩歩くと忘れる」はただの俗説です。鶏は賢く、感情豊かで、人を愛する力を持った生き物です。

彼らの本来の姿を知り、適切な環境と愛情を持って接することで、鶏との間には犬や猫と変わらない深い絆が生まれます。


鶏を飼いたい、もっと知りたいと思ったら、まずはあなたの住む地域の動物福祉に配慮した農家や、平飼い養鶏場を訪ねてみてください。本物の鶏との出会いが、きっとあなたの価値観を少し変えてくれるはずです。


参考資料

  • Lori Marino (2017) “Thinking chickens: a review of cognition, emotion, and behavior in the domestic chicken” Animal Cognition
  • 農林水産省「採卵鶏の飼養管理に関する技術的な指針」(令和5年7月26日)
  • 農研機構「鶏・豚のアニマルウェルフェアに対応した飼養管理手引き」(2025年)
  • 広島大学・河上眞一准教授「家畜飼養管理学研究室」研究資料
  • 国際獣疫事務局(WOAH)アニマルウェルフェアガイドライン

 

 

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この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

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