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野良犬に遭遇したときに絶対やってはいけない行動|動物福祉の専門家が解説

野良犬に遭遇したときに絶対やってはいけない行動

 

野良犬と突然すれ違ったとき、あなたはどう行動しますか?

「かわいそうだから近づいてみた」「追い払おうとして石を投げた」「怖くて走って逃げた」——こうした行動が、実は自分にとっても犬にとっても、最悪の結果を招くことがあります。

 

日本では、環境省の統計によると2023年度の犬による咬傷事故は年間約4,000件以上にのぼります。その多くは、野良犬や放し飼いの犬との遭遇時に人間側が取った「誤った行動」が引き金になっているのです。

 

この記事では、野良犬に遭遇したときに絶対やってはいけない行動を専門的な視点から徹底解説します。なぜその行動が危険なのか、動物福祉の観点からも丁寧に説明していきます。読み終えたとき、あなたは「知っていてよかった」と感じるはずです。


野良犬の現状|日本にはどのくらいいるのか

 

まず、現状を正確に把握しておくことが大切です。

環境省の「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」によると、自治体が引き取った犬の数は近年大幅に減少しています。2000年代初頭には年間30万頭を超えていた引取数が、2022年度には約2万頭以下まで減少しました。これは動物愛護行政の取り組みや不妊手術の普及によるものです。

 

しかし、だからといって「野良犬はもうほとんどいない」と油断するのは禁物です。

地域によっては依然として多くの野良犬が生息しており、特に地方部や観光地、廃墟周辺などでは遭遇率が高いことがわかっています。また、飼い主が手放した「元飼い犬」が野外に放置されるケースも後を絶ちません。

 

野良犬は「凶暴な生き物」ではありません。

彼らのほとんどは、人間社会の中で居場所を失い、恐怖と空腹の中で生きています。攻撃的に見える行動の多くは、防衛本能からくるものです。だからこそ、人間側が正しい行動を知ることが、双方にとって安全な共存につながるのです。


野良犬に遭遇したときに絶対やってはいけない行動

 

ここからが本記事の核心です。「やってはいけない行動」を、理由とともに一つひとつ丁寧に解説します。


① 大声を出す・叫ぶ

野良犬に遭遇したとき、驚いて大声を出してしまうのは自然な反応です。しかし、これは最もやってはいけない行動の一つです。

犬は音に非常に敏感な生き物です。突然の大きな声は犬を極度に興奮させ、防衛本能を刺激します。「攻撃されるかもしれない」と感じた犬は、先制攻撃として咬みつくことがあります。

 

具体例: 公園で野良犬に遭遇した女性が「キャーッ!」と叫んだ直後、犬が向かってきて腕を咬まれた事例があります。犬は最初、警戒しながらも距離を保っていましたが、叫び声によって一気に臨戦態勢に入ってしまったのです。

 

正しい対応: 声を出さず、落ち着いて、ゆっくりと距離を取ることが基本です。


② 走って逃げる

「怖いから走って逃げた」——これも非常に多い誤った行動です。

犬には「動くものを追う」という強い本能があります。これは捕食本能と関係しており、特にストレス状態にある野良犬では顕著に現れます。走ることで「追いかけてもいい対象」と認識されてしまうのです。

実際に、自転車や走っている人間が犬に追いかけられる事故の多くは、この本能が引き金になっています。

 

動物行動学の観点から見ると: 走って逃げる行為は、犬の「プレイ・ドライブ(追いかけっこの本能)」または「プレデター・ドライブ(捕食本能)」を刺激します。これは野良犬に限らず、家庭犬でも同様に見られる行動です。

 

正しい対応: 犬と目を合わせず、体を横向きにしながら、ゆっくりと後退してください。急な動作は避けることが重要です。


③ 目をじっと見つめる(アイコンタクト)

「目が合ったから見つめ返した」という経験はありませんか?

犬の世界では、じっと目を見つめる行為は威嚇・挑戦のサインです。人間同士なら「誠実さ」を示すアイコンタクトも、犬に対しては「かかってこい」というメッセージに変換されてしまいます。

特に野良犬はすでにストレスが高い状態にあるため、アイコンタクトが引き金となって攻撃に転じることがあります。

 

正しい対応: 視線を外し、体を斜めに向けてください。これは犬の世界における「敵意がない」というサインです。カーミングシグナル(落ち着きのシグナル)とも呼ばれる、犬同士が使うコミュニケーション方法の一つです。


④ 食べ物を無闇に与える

「かわいそうだから」「懐かせたいから」という善意でも、食べ物を与えることには大きなリスクが伴います。

 

問題点は複数あります:

  • 野良犬が特定の場所に居着くようになり、地域住民との摩擦が生まれる
  • 食べ物をめぐって犬が興奮し、咬傷事故が起きる
  • アレルギーや消化器系のトラブルを引き起こす食べ物を与えてしまうリスクがある
  • 他の野良犬が集まり、群れを形成するきっかけになる

環境省のガイドラインでも、野良犬・野良猫への無断給餌については自治体によってルールが設けられており、条例で禁止している地域もあります。愛情から始まった行動が、地域全体の問題に発展するケースは少なくありません。

 

正しい対応: 給餌をしたい場合は、必ず地域の動物愛護センターや自治体に相談し、適切な手順で行うことが求められます。


⑤ 石や棒で追い払おうとする

「怖いから石を投げた」「棒で脅した」——これは絶対にしてはいけない行動です。

野良犬は過去に人間から虐待や暴力を受けていることが少なくありません。そのような経験を持つ犬に対して威嚇行動を取ると、防衛のために全力で反撃してくることがあります。

また、石や棒が命中した場合、犬に深刻なケガを負わせることになります。これは動物愛護管理法の観点からも問題となる行為です。

 

動物愛護管理法 第44条には、「みだりに動物を殺し、傷つけ、または苦しめること」への罰則が定められており、悪意がなくとも過剰な追い払い行為は違法となる可能性があります。

動物福祉の視点から言えば、野良犬は「問題ある存在」ではなく、「適切な支援が届いていない存在」です。恐怖心だけで行動せず、冷静さを保つことが最善の対応です。


⑥ 子どもや他の動物に近づけさせる

これは保護者として特に注意が必要な点です。

子どもは大人に比べて犬と目線が近く、突然の動作や声を出しやすいため、野良犬を刺激するリスクが高くなります。また、小型の飼い犬やネコを連れている場合、野良犬が興奮して飛びかかってくることがあります。

厚生労働省のデータ(犬による咬傷事故)によると、被害者の中では10歳以下の子どもの割合が高い傾向にあります。その多くは、大人が目を離した隙の事故です。

 

正しい対応: 子どもが近くにいる場合は、子どもをすぐに自分の後ろに移動させ、体で保護しながらゆっくりと離れましょう。


⑦ SNSで拡散するために近づいて撮影する

近年、「野良犬がかわいい」「野良犬と触れ合ってみた」という動画をSNSに投稿するケースが増えています。

しかし、撮影のために野良犬に近づく行為は、非常に危険です。スマートフォンを向ける動作や、無防備に距離を縮める行為が犬を刺激し、咬傷事故につながることがあります。

 

また、こうした動画が「野良犬は近づいても大丈夫」という誤ったメッセージを拡散してしまうリスクもあります。動物福祉の観点からも、野良犬を「コンテンツ」として消費することは推奨できません。


野良犬に遭遇したときの正しい行動フロー

 

ここで、正しい行動の流れを整理しておきましょう。

 

STEP 1|まず立ち止まる 慌てず、その場でゆっくりと立ち止めます。走らない、叫ばない。

 

STEP 2|視線を外す 犬と目を合わせず、体を斜めに向けます。「敵意がない」というメッセージを体全体で伝えます。

 

STEP 3|ゆっくり後退する 背中を向けず、正面または横向きのままゆっくり距離を取ります。

 

STEP 4|建物や車に逃げ込む 近くに安全な場所があれば、ゆっくりとそちらへ移動します。

 

STEP 5|自治体や動物愛護センターに連絡する 同じ場所で野良犬を繰り返し見かける場合は、地域の動物愛護センターや自治体の担当窓口に情報提供することが地域全体の安全につながります。


野良犬問題の根本にあるもの|動物福祉の視点から

 

野良犬の多くは、もともと人間が飼育していた犬です。

飼い主の死亡、引っ越し、経済的困難、「飼えなくなった」という身勝手な理由——様々な事情で手放された犬たちが、野外で生きることを余儀なくされています。

 

公益財団法人日本動物愛護協会などの調査でも、野良犬になった経緯として「飼い主の遺棄」が大きな割合を占めることが示されています。

 

犬は本来、人間と共に生きることに適応した動物です。彼らを危険な存在として排除するのではなく、なぜそこにいるのかを社会全体で考えることが、動物福祉の本質的なアプローチです。

 

一方で、野良犬による人への被害や、野良犬自身が受ける苦しみ(飢え・病気・交通事故)も深刻な問題です。感情論だけでなく、行政・地域住民・動物愛護団体が連携した現実的な解決策こそが求められています。

 

TNR(捕獲・不妊手術・元の場所に戻す)活動や、地域猫・地域犬としての管理体制、シェルターからの譲渡促進など、様々な取り組みが全国で進んでいます。こうした活動に関心を持つことも、動物福祉への貢献の一つです。


もし野良犬に咬まれてしまったら

 

万が一、野良犬に咬まれた場合の対処法も知っておきましょう。

 

すぐに行うべきこと:

  • 傷口を流水で10〜15分以上十分に洗い流す
  • 清潔なタオルや布で圧迫止血する
  • 速やかに医療機関を受診する(外科・救急)
  • 狂犬病ワクチンの接種について医師に相談する

狂犬病について: 日本は1957年以降、国内での狂犬病感染例はありませんが、海外からの輸入感染リスクはゼロではありません。また、野良犬が狂犬病ワクチンを接種しているかどうかは不明なため、咬傷事故後は必ず医師の指示に従ってください。

(参考:厚生労働省「狂犬病に関する情報」)

 

また、咬傷事故が発生した場所・時刻・犬の特徴を記録しておき、最寄りの保健所または動物愛護センターに報告することも重要です。


野良犬に遭遇したときに絶対やってはいけない行動|まとめ

 

この記事では、野良犬に遭遇したときに絶対やってはいけない行動を7つ解説しました。

最後にポイントを整理します。

  • 大声を出さない
  • 走って逃げない
  • 目をじっと見つめない
  • 無闇に食べ物を与えない
  • 石や棒で追い払おうとしない
  • 子どもや他の動物を近づけさせない
  • 撮影目的で接近しない

これらの行動は、すべて「善意」や「恐怖」から生まれることが多いですが、結果として人間にも犬にも被害を与えてしまいます。

野良犬は「敵」ではなく、人間社会のひずみの中で生きている存在です。正しい知識を持つことが、あなた自身を守ることにも、動物福祉の推進にもつながります。


この記事を読んだ今日から、「野良犬に会ったら冷静に」を家族や友人にも伝えてみてください。あなたの一言が、人も動物も守る社会への第一歩になります。


参考資料:環境省「動物愛護管理行政事務提要」/厚生労働省「狂犬病に関する情報」/動物愛護管理法 第44条/公益財団法人日本動物愛護協会

 

 

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この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

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