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猫の肺水腫とは|呼吸が苦しい時の緊急疾患を知る

猫の肺水腫とは

 

「なんだか呼吸が変だな」と感じた、その数時間後に愛猫が急変した——。

そんな経験をした飼い主さんの声が、動物病院には後を絶ちません。

猫の肺水腫は、発見が遅れると命に直結する緊急疾患です。

しかし、「肺水腫」という病名を正確に知っている飼い主さんは、まだ多くはありません。

 

この記事では、猫の肺水腫とは何か、その原因・症状・治療・予防まで、獣医師の診察室レベルの情報を、できるだけわかりやすく解説します。

「もしかして…」と思ったときに、この記事が行動のきっかけになれば幸いです。


猫の肺水腫とは何か

 

肺水腫のメカニズムをわかりやすく解説

肺水腫(はいすいしゅ)とは、肺の中に液体(水分)が異常に溜まった状態のことです。

正常な肺は、酸素と二酸化炭素を効率よく交換できる構造になっています。

 

ところが何らかの原因で肺の組織内や肺胞(空気を取り込む小さな袋)に液体が溢れ出すと、ガス交換がうまくいかなくなります。

その結果、猫は「息はしているのに、酸素が体に入らない」という状態に陥ります。

溺れているのと似た状態、と表現する獣医師もいます。

それほど緊迫した病態です。

 

心原性と非心原性——2つの種類を理解する

猫の肺水腫は大きく2種類に分けられます。

 

心原性肺水腫(しんげんせいはいすいしゅ)

心臓の機能が低下することで、血液の流れが滞り、血管から肺へ水分が漏れ出すタイプです。

猫では心筋症(特に肥大型心筋症)が最も多い原因です。

 

非心原性肺水腫(ひしんげんせいはいすいしゅ)

心臓以外の原因で起こるもので、主に以下のような要因が挙げられます。

  • 電気コードや異物の誤飲による感電
  • 上部気道閉塞(首輪による絞め付け、異物誤飲など)
  • 重篤なアレルギー反応
  • 脳神経系の障害
  • 肺炎や敗血症などの重篤な感染症

どちらのタイプであっても、治療の緊急性は変わりません


猫の肺水腫の原因

 

最も多い原因——猫の心筋症

日本で飼育されている猫に最も多い心臓病は「肥大型心筋症(HCM)」です。

肥大型心筋症とは、心臓の筋肉が異常に厚くなり、心臓の内腔が狭くなる病気です。

心臓が十分に血液を送り出せなくなると、肺の血管に圧力がかかり、液体が肺胞へ漏れ出します。

これが心原性肺水腫の主なメカニズムです。

 

メインクーンやラグドール、ブリティッシュショートヘアなどは遺伝的に肥大型心筋症になりやすいことが知られており、定期的な心臓検査が推奨されます。

また、甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)も心臓に負担をかけ、間接的に肺水腫のリスクを高めます。

中高齢の猫、特に10歳以上の猫では発症率が高くなるため、定期健診が特に重要です。

 

その他の原因

心臓疾患以外にも、以下のような状況が肺水腫を引き起こすことがあります。

  • 電気コードの感電:室内飼育の猫では特に注意が必要です。感電後、数時間〜数日後に遅発性で肺水腫が現れることがあります
  • アナフィラキシー(重篤なアレルギー反応):ワクチン接種後などに稀に見られます
  • 胸部への外傷:交通事故や高所からの落下
  • 低たんぱく血症:血液中のたんぱく質が減ることで血管内に水分が保てなくなる状態

猫の肺水腫の症状——見逃してはいけないサイン

 

呼吸に関するサイン

猫の肺水腫の最も重要なサインは、呼吸の異常です。

以下の症状が見られたら、すぐに動物病院へ連絡することが必要です。

  • 口を開けて呼吸している(開口呼吸):猫が口呼吸をすること自体が異常のサインです
  • 腹部を激しく動かして呼吸している(努力呼吸):肩や脇腹を大きく動かしながら息をしている状態
  • 呼吸が速い(頻呼吸):安静時に1分間に40回以上の呼吸
  • ゼーゼー・ゴロゴロという異常な呼吸音
  • 前足を踏ん張って頭を下げるような姿勢(起座呼吸様の姿勢)

猫は犬と違い、呼吸が苦しくても声を出さないことが多く、静かに悪化していくのが特徴です。

 

全身に現れるサイン

呼吸以外にも、以下のような全身症状が見られます。

  • 口腔内や舌の色がチアノーゼ(青紫色)になる:酸素不足の危険なサインです
  • 極度の元気消失・虚脱状態
  • 食欲の完全消失
  • 体が冷たくなる(特に末梢部)
  • 突然倒れる・立てなくなる

これらの症状が重なっている場合、すでに重篤な状態にある可能性が高いです。

「様子を見よう」という判断が、命取りになります。


猫の肺水腫の診断——動物病院では何をするか

 

身体検査と問診

獣医師はまず聴診器で胸を聴き、肺の音を確認します。

肺水腫の猫では、水泡音(ぷくぷくとした音)や捻髪音(髪の毛をこするような音)が聴こえることがあります。

問診では次のような点が確認されます。

  • いつから症状が出始めたか
  • 心臓病の既往歴はあるか
  • 最近、感電や外傷の可能性はあったか
  • 飲んでいる薬はあるか

 

画像検査・血液検査

X線検査(レントゲン)は肺水腫の診断に最も重要です。

正常な肺は空気で満たされているため黒く映りますが、肺水腫では液体が溜まっているため白くぼんやりとした陰影が見られます。

ただし、状態が不安定な猫に無理に検査を行うと急変するリスクもあるため、まず酸素投与で状態を安定させてから検査を行うのが一般的です。

 

超音波検査(エコー)は心臓の形態や機能を確認するのに有用で、心筋症の診断にも使われます。

血液検査では、心臓マーカー(NT-proBNP)や腎臓・肝臓の機能も同時に確認することが多いです。


猫の肺水腫の治療

 

救急対応——まず酸素を

猫の肺水腫の治療でまず行われるのは、酸素吸入です。

酸素室(酸素ケージ)に入れるか、フェイスマスクで酸素を供給しながら、猫の状態を安定させます。

ストレスが呼吸状態を一気に悪化させることがあるため、猫に過度な処置を行わず、落ち着いた環境を確保することが最優先です。

 

利尿剤による治療

酸素投与と並行して行われるのが、利尿剤(ふろせみどなど)の投与です。

利尿剤は尿の排出を促し、肺に溜まった余分な水分を体外に排出させる効果があります。

多くの場合、注射による迅速な投与が選ばれます。

効果が現れると、排尿が増え、呼吸が徐々に楽になっていきます。

 

根本原因の治療

肺水腫そのものを治めた後は、原因疾患の治療が必要です。

  • 心筋症が原因の場合:心臓薬(アテノロール、フロセミド、ACE阻害薬など)の継続投与
  • 甲状腺機能亢進症が原因の場合:抗甲状腺薬や放射線ヨウ素療法
  • 感染症が原因の場合:抗生物質などの感染対策

根本治療なしでは、肺水腫は繰り返します。

「一度治ったから大丈夫」とはならないのが、この疾患の難しさです。


猫の肺水腫の予後と生存率

 

早期発見・早期治療が生存率を左右する

猫の肺水腫の予後は、どれだけ早く適切な治療を受けられるかに大きく依存します。

発症初期に適切な治療を受けた場合、多くの猫が急性期を乗り越えることができます。

一方、チアノーゼや虚脱状態が見られる段階まで進行していると、治療しても救命できないケースも少なくありません。

「様子を見る時間」は、猫の肺水腫には存在しないといっても過言ではありません。

 

長期管理の現実

心臓病が根本原因の場合、肺水腫は再発するリスクが常にある慢性疾患です。

生涯にわたる投薬管理と定期的な検診が必要になります。

投薬と管理を適切に続けることで、良好な生活の質(QOL)を維持しながら天寿を全うできる猫も多くいます。

飼い主さんの理解と継続的なケアが、そのまま猫の寿命と直結します。


猫の肺水腫を予防するために——飼い主ができること

 

定期健診の重要性

環境省の調査によると、国内で飼育されている猫の数は2023年時点で約900万頭以上とされています。

その中で心臓病の罹患率は高く、特に中高齢の猫(7歳以上)では心疾患のリスクが顕著に上昇します。

しかし、猫は痛みや不調を隠す本能があるため、症状が出たころにはすでに病気が進行していることも多いです。

だからこそ、年1回以上の定期健診と、7歳以降は年2回の心臓検査が推奨されます。

 

以下のような検査が有効です。

  • 胸部X線検査(肺と心臓の状態確認)
  • 心臓超音波検査(心筋症の早期発見)
  • 血液検査(甲状腺ホルモン、腎機能、心臓マーカーなど)
  • 血圧測定

 

日常生活でのチェックポイント

日々の観察が、異変の早期発見につながります。

以下を習慣にしましょう。

  • 毎日の呼吸数を確認する:安静時に1分間30回以上なら要注意
  • 体重を週1回計る:急激な増減は体内の水分バランス異常のサインになることがある
  • 食欲・水分摂取量の変化に注意する
  • 遊び時間が減った、すぐ疲れるようになった変化を見逃さない

また、室内の電気コードは保護チューブで覆うなど、感電事故を防ぐ環境整備も非心原性肺水腫の予防になります。

 

かかりつけ動物病院との関係を築く

緊急時に「どこへ行けばいいかわからない」という状況は、命に関わります。

かかりつけ医を決めておくこと、そして休日・夜間に対応できる動物病院の連絡先を事前に調べておくことが重要です。

日本では、各都道府県の獣医師会が夜間救急動物病院の情報を公開しています。


救急時の対応——動物病院へ行くまでにできること

 

絶対にやってはいけないこと

肺水腫が疑われる状態の猫に対して、以下の行為は症状を悪化させる危険があります。

  • 抱きしめたり、強く保定する
  • 無理に水や食べ物を与える
  • 人間用の薬を飲ませる
  • 様子見を続ける

猫は強いストレスで急変することがあります。

できるだけ静かに、刺激を与えずに運ぶことが最善の対処です。

 

病院へ向かう際の注意点

  • キャリーバッグに毛布を敷き、猫が自然な姿勢でいられるようにする
  • 車の中は涼しく保つ(高温は呼吸をさらに苦しくする)
  • 電話で症状を伝えておくと、病院側が受け入れ準備をしてくれる場合がある

まとめ

 

猫の肺水腫は、呼吸困難という形で突然牙をむく緊急疾患です。

原因は心臓病から感電事故まで多岐にわたりますが、どのケースでも「早期発見・早期治療」が予後を決定的に左右します。

 

この記事でお伝えしてきた重要なポイントを振り返ります。

  • 肺水腫とは、肺に液体が溜まり、呼吸ができなくなる状態
  • 猫に最も多い原因は肥大型心筋症
  • 開口呼吸・腹式呼吸・チアノーゼは即時受診のサイン
  • 治療は酸素投与+利尿剤が基本で、根本原因の治療が再発防止に必須
  • 予防の鍵は定期健診と日常の観察

猫は不調を隠す生き物です。

だからこそ、飼い主さんが「知っている」かどうかが、猫の命を守る最大の武器になります。


今日から、愛猫の安静時の呼吸数を数えてみてください。それが、命を救う第一歩になるかもしれません。

 

 

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この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

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