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老犬・シニア犬のしつけ直しはできるか?やり方・注意点を動物福祉の視点で徹底解説

老犬・シニア犬のしつけ直しはできるか

 


「うちの子、もう高齢だからしつけ直しは無理だよね」
そう思って、諦めていませんか?

結論からお伝えします。

 

老犬・シニア犬のしつけ直しは、できます。

ただし、「若い頃と同じやり方」では通用しません。 シニア犬の心と体の変化を理解したうえで、アプローチを変える必要があります。

 

この記事では、動物福祉の観点から、老犬のしつけ直しが本当に可能な理由・具体的なやり方・注意点を5,000文字以上かけてわかりやすく解説します。

「この記事を読んで、もう一度やってみよう」と思っていただけることを目指して書きました。


1. シニア犬のしつけ直しが「できる」科学的根拠

 

「老犬に新しいことは教えられない」は誤解

「老犬に新しい芸は教えられない(You can’t teach an old dog new tricks)」という英語のことわざがあります。

しかし、これは科学的に否定されています。

2016年にウィーン大学が発表した研究では、高齢犬も若い犬と同様に認知的柔軟性(新しい問題への対応力)を持っていることが示されました。加齢によって「学習能力がゼロになる」わけではなく、学習のスピードや方法が変化するにすぎないのです。

また、犬の脳には神経可塑性(ニューロプラスティシティ)と呼ばれる性質があり、適切な刺激があれば高齢になっても神経回路を新たに形成できることがわかっています。

 

ポイント(PREP法で整理)

  • 結論: 老犬のしつけ直しは可能
  • 理由: 脳の神経可塑性は高齢犬でも機能する
  • 根拠: ウィーン大学などの認知科学研究が裏付け
  • まとめ: ただし「若い頃と同じ方法」ではなく「シニア犬に合った方法」が必要

2. 老犬・シニア犬の定義と体の変化を知る

 

何歳からがシニア犬?

環境省が発行する「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」では、犬の高齢化についての具体的な年齢区分は定められていませんが、一般的には以下が目安とされています。

 

犬の体格 シニア期の目安
小型犬(〜10kg) 10〜12歳から
中型犬(10〜25kg) 8〜10歳から
大型犬(25kg以上) 6〜8歳から

 

一般社団法人ペットフード協会の調査によると、2023年時点での国内の犬の平均寿命は約14.62歳(小型・中型犬)とされており、犬の「シニア期」は決して短くありません。

むしろ、犬生の後半の多くをシニア期として過ごす時代になっています。

 

シニア犬の体と心に起きる主な変化

しつけ直しを始める前に、まず老犬の体がどう変化しているかを理解することが大切です。

 

身体的な変化

  • 関節炎・筋力低下による運動機能の衰え
  • 視力・聴力の低下
  • 嗅覚の変化(ただし比較的長く保たれることが多い)
  • 消化機能の低下
  • 疲れやすくなる(運動耐性の低下)

認知・行動面の変化

  • 反応速度の低下(指示に対するレスポンスが遅くなる)
  • 睡眠時間の増加
  • 新しい環境への適応に時間がかかる
  • 不安感が増すケースがある(認知症様症状の場合も)

これらの変化を無視してしつけ直しを行うと、犬に不必要なストレスをかけることになります。

体の変化を把握したうえで、しつけのアプローチを設計する。

これが、シニア犬のしつけ直しの第一歩です。


3. シニア犬のしつけ直しが必要になる主な理由

 

「なぜ今さらしつけ直しが必要になるのか」と疑問に思う方もいるかもしれません。

しかし、シニア期になって問題行動が出てきたり、しつけ直しが必要になる状況は、実はよくあることです。

 

代表的なきっかけ

 

① 引っ越しや家族構成の変化

新しい環境や新しい家族(赤ちゃん・別の犬・同居家族の変化)が加わることで、それまでできていたことができなくなるケースがあります。

 

② 飼い主の生活スタイルの変化

在宅ワークが増えた・逆に外出が増えたなど、ルーティンの変化が犬の行動に影響を与えることがあります。

 

③ 老犬ならではの問題行動の出現

シニア期に入って初めて出てくる問題行動もあります。

  • 夜鳴き・夜間の徘徊(認知機能の変化による)
  • 排泄の失敗(トイレトレーニングのやり直し)
  • 攻撃性の増加(痛みや不安によるもの)
  • 分離不安の悪化

④ 保護・譲渡によるケース

老犬を保護・引き取った場合、基本的なしつけがされていないことも多くあります。

環境省の統計によれば、2022年度の犬の引き取り数は全国で約1万6千頭。そのうち一定数がシニア犬であり、保護後にしつけ直しが求められるケースは少なくありません。


4. 老犬のしつけ直し|基本の考え方と準備

 

「罰」ではなく「報酬」で教える

動物福祉の国際基準において、現在主流とされるしつけの手法は「ポジティブ強化(Positive Reinforcement)」です。

これは、望ましい行動をとったときに褒美(おやつ・声かけ・遊びなど)を与えることで、その行動を定着させる手法です。

シニア犬に対しては特に、叱る・罰を与える方法は避けるべきです。

 

理由は次の通りです。

  • 視力・聴力が低下したシニア犬は、なぜ叱られているかを理解しにくい
  • 痛みや不安を抱えている場合、罰がさらに攻撃性や委縮を引き起こす
  • 信頼関係が損なわれると、学習意欲そのものが失われる

動物福祉の観点からも、シニア犬には必ずポジティブ強化を中心にしつけを行うべきです。

 

しつけ直しを始める前の3つの準備

 

① まず動物病院で健康チェックを受ける

問題行動の裏に、関節炎・甲状腺の異常・認知症・視力低下などの医学的原因が隠れていることがあります。

しつけを始める前に、必ずかかりつけの獣医師に相談してください。 「しつけ直しを考えているが、問題行動の裏に病気の可能性はあるか」と明示的に聞くことが大切です。

 

② 目標を「完璧」にしない

シニア犬に「若い頃の完璧な状態」を求めてはいけません。

目標は「生活の質(QOL)を上げること」です。 飼い主も犬も無理をしない範囲で、少しずつ改善を積み重ねる姿勢が重要です。

 

③ セッションは短く・毎日続ける

シニア犬は集中力が長続きしません。

1回のトレーニングは3〜5分程度を目安にし、毎日続けることを優先してください。長時間のトレーニングは疲労やストレスにつながります。


5. 具体的なしつけ直しのやり方【ステップ別解説】

 

ステップ1:現状の把握と記録

まず、どのような問題行動がいつ・どこで・どんなきっかけで起きているかを記録しましょう。

 

記録すべき項目

  • 問題行動の種類
  • 発生した時間帯・場所
  • きっかけと思われる出来事
  • 犬の体調・睡眠・食欲の状態

記録することで、問題行動のパターンが見えてきます。 「実は特定の音がきっかけだった」「空腹時に限って起きる」など、解決のヒントが見つかることも多いです。

 

ステップ2:基本コマンドの再確認・再教育

まずは「おすわり」「ふせ」「待て」「来い」などの基本コマンドを一から確認します。

 

シニア犬向けの再教育のコツ

  • 声のトーンは落ち着いて、明瞭に。 聴力が低下していることを考慮して、はっきりとした声で。
  • 手のサインを組み合わせる。 視覚的なサインを加えると、聴力低下があっても理解しやすい。
  • できたら即座に報酬を。 タイミングが遅れると何に対して褒められたかわからなくなる。
  • おやつは小さく・柔らかく。 歯や消化器に優しいものを選ぶ。

 

ステップ3:問題行動に対するアプローチ

問題行動に対しては、「やめさせる」ではなく「別の行動に置き換える(代替行動の強化)」を意識します。

 

具体例:飛びつきの場合

❌ NG:飛びついたときに叱る、膝で押し返す
✅ OK:飛びつく前に「おすわり」を指示し、座れたら褒める

 

飛びつく行動そのものをなくそうとするのではなく、「飛びつかなくてもいいことがある(座っていれば褒められる)」と学ばせる方法です。

 

ステップ4:環境を整える(環境管理)

しつけは「トレーニング」だけではありません。

環境そのものを整えることで、問題行動を減らすことができます。

  • トイレの場所を増やす・近づける(排泄の失敗対策)
  • 滑りやすい床にカーペットを敷く(転倒防止・関節への配慮)
  • 興奮しやすい刺激(来客・他の犬の視界)を物理的に減らす
  • 夜間の徘徊対策として、安心できる寝床を確保する

 

ステップ5:一貫性を保つ

しつけで最も重要なのは「一貫性」です。

家族全員が同じルールで接することが必要です。 ある人は「ソファに乗っていい」、ある人は「だめ」という状態では、犬は混乱します。

シニア犬はもともと一定のルーティンや習慣を好む傾向があります。 ルールを変えるときは、ゆっくりと段階的に変えることが大切です。


6. シニア犬のしつけ直しで絶対に避けるべき注意点

 

① 体への負担を無視しない

関節炎を抱えているシニア犬に、長時間座らせる・繰り返しジャンプをさせるなどの行動を求めることは、苦痛につながります。

しつけの内容が「犬の体に合っているか」を常に意識してください。

 

② 認知症(犬の認知機能不全症候群)の可能性を見落とさない

シニア犬の問題行動のうち、夜鳴き・徘徊・トイレの失敗・飼い主を認識しにくくなるなどの症状が複数出ている場合、「犬の認知機能不全症候群(CDS:Canine Dysfunction Syndrome)」の可能性があります。

これはしつけで改善できるものではなく、獣医師による診断と医療的サポートが必要です。

日本獣医学会をはじめ多くの動物医療機関が、シニア犬の認知機能チェックリストを公開しています。気になる症状がある場合は、早めに受診することを強くお勧めします。

 

③ 焦りとイライラは最大の敵

老犬のしつけ直しには時間がかかります。

「何回言ってもわからない」と感じたとき、それは犬の問題ではなく、アプローチを変えるサインです。

イライラした状態でのトレーニングは、犬にとって恐怖体験になりえます。 うまくいかない日はトレーニングをやめ、普段通りに接することを選んでください。

 

④ SNSや口コミの「なんとなく情報」に頼らない

インターネットには「老犬のしつけ直し」に関する情報が溢れています。 しかし、根拠のない方法や、むしろ犬を傷つける可能性のある情報も少なくありません。

困ったときは、動物行動学を専門とする獣医師や、資格を持ったトレーナー(例:CPDT-KA認定トレーナー、日本動物病院協会認定行動診療科)に相談することを推奨します。


7. 問題行動別|シニア犬のしつけ直し実践例

 

ケース1:トイレの失敗が増えた

考えられる原因

  • 筋力低下によるトイレまでの移動が困難になった
  • 認知機能の変化でトイレの場所を忘れた
  • 泌尿器系・消化器系の疾患

対応策

まず獣医師に相談し、医学的原因を除外します。 その後、トイレの場所を増やす・ペットシーツのサイズを大きくする・移動距離を短くするなどの環境調整を行います。

しつけとしては、トイレに成功したらすぐに穏やかに褒めることを繰り返します。 失敗したときは無言で片付け、叱らないことが鉄則です。


ケース2:吠えが増えた・夜鳴きをするようになった

考えられる原因

  • 視力・聴力低下による不安感の増大
  • 認知機能の変化(夜間に混乱する)
  • 痛みや不快感

対応策

まず痛みや不快感の医学的チェックが必要です。

環境面では、夜間に薄明かりをつける・安心できるベッドを置く・飼い主の匂いがするもの(使用済みTシャツなど)を近くに置くなどが効果的なことがあります。

認知症が疑われる場合は、薬物療法や栄養補助食品(オメガ3脂肪酸・SAMeなど)が選択肢になることも。必ず獣医師と相談してください。


ケース3:保護した老犬に基本的なしつけができていない

 

対応策

保護直後は犬も環境に慣れていないため、最初の1〜2週間は無理に何かを教えようとしないことが大切です。

まず「ここは安全な場所だ」と感じてもらうことを優先します。 その後、「名前を呼んだら来る」「おすわり」など、生活に直結するコマンドから少しずつ教えていきます。

保護犬・老犬のしつけについては、自治体の動物愛護センターが相談窓口を設けているケースもあります。ぜひ活用してみてください。


8. 動物福祉の観点から見た「正しいしつけ」とは

 

動物福祉の5つの自由

動物福祉の国際基準として知られる「5つの自由(Five Freedoms)」は、1979年にイギリス農場動物福祉委員会が提唱したものです。

  1. 飢えと渇きからの自由
  2. 不快からの自由
  3. 痛み・傷害・疾病からの自由
  4. 正常な行動を表現する自由
  5. 恐怖と苦悩からの自由

シニア犬のしつけ直しを考えるとき、この5つの自由がすべて守られているかを確認することが、動物福祉的に正しいアプローチの出発点です。

恐怖を与えるしつけは、第5の自由を侵害します。 痛みを無視したしつけは、第3の自由を侵害します。

しつけは「命令に従わせること」ではなく、「犬と人が共に安心して暮らせる関係を築くこと」です。

 

日本での動物福祉の現状

日本では、動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)が、動物の適切な扱いを定めています。 2019年の改正では、動物への虐待の厳罰化が進み、「不適切なしつけ」も問題視される時代になっています。

老犬・シニア犬のしつけ直しにおいても、動物福祉の観点を持つことは、法的にも倫理的にも重要な時代です。


9. まとめ|老犬のしつけ直しは「愛情の再設計」

 

この記事でお伝えしたことを整理します。

 

まとめ

  • 老犬・シニア犬のしつけ直しは、科学的に可能です。
    脳の神経可塑性は高齢犬でも働き、適切なアプローチで学習できます。

  • ただし、若い犬と同じ方法ではいけません。
    シニア犬の体と心の変化を理解したうえで、ポジティブ強化を中心に進める必要があります。

  • まず動物病院での健康チェックが最優先。
    問題行動の裏に医学的原因が潜んでいることは珍しくありません。

  • セッションは短く・毎日・一貫して。
    3〜5分のトレーニングを毎日続けることが、長期的な変化につながります。

  • 環境を整えることも、しつけの一部です。
    トレーニングだけでなく、生活環境を犬に合わせて調整することが問題行動の減少につながります。

  • 動物福祉の「5つの自由」を基準にする。
    恐怖や痛みを使わず、犬の尊厳を守るしつけが、長期的な信頼関係を育みます。


老犬のしつけ直しは、「問題を直す作業」ではありません。

それは、年を重ねた大切な家族と、もう一度関係を築き直す時間です。

シニア期の犬は、若い頃よりも時間がかかるかもしれません。 うまくいかない日もあるかもしれません。

でも、その一歩一歩が、あなたと愛犬の「残りの時間をより豊かにする」ための積み重ねです。


まず今日、かかりつけの獣医師に「シニア犬のしつけ直しを始めたい」と相談してみてください。その一言が、すべての始まりになります。


本記事は動物福祉・動物行動学の知見をもとに作成しています。個々の犬の状態により対応は異なります。問題行動が深刻な場合は、必ずかかりつけの獣医師または認定動物行動コンサルタントにご相談ください。


 

 

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この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

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