犬のブラッシングの頻度と犬種別の正しいやり方|動物福祉の専門家が徹底解説

「毎日ブラッシングしているのに、なぜか毛並みが悪くなってきた」 「うちの子は嫌がって暴れてしまう…」
そんな悩みを持つ飼い主さんは、思っているよりずっと多いです。
犬のブラッシングは、ただの「お手入れ」ではありません。 皮膚の健康を守り、愛犬との信頼関係を深める、毎日のコミュニケーションでもあります。
この記事では、犬のブラッシングの適切な頻度と犬種別の正しいやり方を、動物福祉の観点から科学的・実践的に解説します。
「うちの子に合ったブラッシング方法を知りたい」という方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
なぜ犬のブラッシングが必要なのか?その科学的根拠
皮膚・被毛の健康維持に直結する
犬の皮膚は人間よりも薄く、デリケートです。 適切なブラッシングを行うことで、以下のような効果が期待できます。
- 抜け毛・死毛の除去:放置すると毛玉ができ、皮膚の通気性が低下します
- 皮脂の分泌促進:ブラシの刺激が皮脂腺を活性化し、被毛に自然なツヤをもたらします
- 血行促進:皮膚への適度な刺激が血液循環を改善します
- 寄生虫・皮膚異常の早期発見:ノミ・ダニの付着や湿疹、できものを早期に発見できます
環境省の「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」でも、犬の飼育者に対して「定期的なグルーミングを行い、皮膚・被毛の清潔を保つこと」が求められています。
ブラッシングは義務ではなく「愛犬の健康を守るための投資」と捉えることが、動物福祉の観点からも重要です。
ストレス軽減・社会化にも効果がある
ブラッシングには、精神的なメリットもあります。
幼犬期から体に触られることに慣れさせることで、動物病院での診察やトリミングへの抵抗感が少なくなります。 これは「ハンドリング訓練」とも呼ばれ、愛犬の社会化において非常に重要なプロセスです。
また、飼い主が落ち着いた状態でブラッシングすることで、犬にもリラックス効果をもたらすことが研究でも示されています(参考:Human-animal interaction研究、2019年)。
犬のブラッシングの頻度はどのくらいが正解?
「毎日」が理想だが、犬種によって異なる
ブラッシングの頻度に「万能な正解」はありません。 被毛の長さ・量・タイプによって、適切な頻度は大きく変わります。
以下の表を参考にしてください。
| 被毛タイプ | 代表犬種 | 推奨頻度 |
|---|---|---|
| ロングコート(長毛) | シーズー、マルチーズ、ヨークシャーテリア | 毎日 |
| ダブルコート(換毛期あり) | ゴールデンレトリーバー、柴犬、ハスキー | 週3〜7回(換毛期は毎日) |
| ショートコート(短毛) | ビーグル、ラブラドール、ダックスフンド | 週2〜3回 |
| カーリー・ウェービーコート | プードル、ビション・フリーゼ | 毎日〜週3回 |
| スムースコート(滑らかな短毛) | ボクサー、グレートデン | 週1〜2回 |
換毛期は「頻度アップ」が鉄則
日本の犬の多くは春(3〜5月)と秋(9〜11月)に換毛期を迎えます。 この時期は抜け毛が激増するため、普段の倍以上の頻度でブラッシングを行うことが推奨されます。
換毛期に怠ると、
- 室内への大量の抜け毛
- 毛玉の形成による皮膚炎のリスク
- 排水溝や家電へのダメージ
…といった問題につながります。
「換毛期はブラッシングの季節」として、生活リズムに組み込んでいくことが大切です。
犬種別・被毛タイプ別の正しいブラッシングのやり方
① ロングコート犬(シーズー・マルチーズ・ヨークシャーテリア)
長毛の犬種は、毛が絡まりやすく毛玉ができやすいのが特徴です。 放置すると、毛玉が皮膚を引っ張り、痛みや炎症の原因になります。
正しいやり方
- まずコーム(くし)で毛の流れに沿って全体を梳かす
- 毛の根元から少しずつほぐしていく(いきなり引っ張らない)
- 毛玉を発見したら、指で優しくほぐしてからブラシをあてる
- 最後にスリッカーブラシで仕上げ
- 終わったらご褒美と声かけで終了
注意点
- 毛玉は「引っ張る」のではなく「ほぐす」が基本
- 毎日行うことで毛玉の形成を予防できる
- 顔まわりは特に繊細なので、専用の小型ブラシを使う
② ダブルコート犬(ゴールデンレトリーバー・柴犬・秋田犬)
ダブルコートとは、外側の「オーバーコート」と内側の「アンダーコート」の2層構造を持つ被毛です。 日本の国犬である柴犬も典型的なダブルコートです。
日本ペットフード協会の調査(2023年)によると、柴犬は国内の飼育犬種の中でも上位に位置する人気犬種であり、そのグルーミングに悩む飼い主が多いことが報告されています。
正しいやり方
- アンダーコートレーキ(アンダーコート専用のブラシ)で内側の死毛をかき出す
- スリッカーブラシで全体を整える
- 最後にコームで仕上げ、引っかかりがないか確認する
換毛期の集中ケア手順
- 屋外でブラッシングを行うと室内の汚れを防げる
- 1回のセッションは10〜15分を目安に、無理をしない
- アンダーコートが大量に取れる時期は、1日2回行う飼い主も多い
③ ショートコート犬(ラブラドール・ビーグル・ダックスフンド)
短毛の犬種は毛玉になりにくいため、ブラッシングが簡単に思われがちです。 しかし、換毛期には細かい毛が大量に抜け、洋服や家具に付着するため、こまめなケアが必要です。
正しいやり方
- ラバーブラシ(シリコン素材のブラシ)で全身をマッサージするように撫でる
- 毛の流れに沿って撫でることで、死毛を効率よく絡め取れる
- 最後に獣毛ブラシ(天然素材のブラシ)で整え、ツヤを出す
ポイント
- 短毛犬は「ブラッシング時間が短くても」毎週定期的に行うことが重要
- 耳の後ろ・首まわり・しっぽの付け根など、皮膚トラブルが起きやすい箇所を丁寧に確認する
④ カーリー・ウェービーコート犬(トイプードル・ビション・フリーゼ)
プードルに代表されるカーリーコートは、抜け毛が少ない代わりに毛が伸び続けるタイプです。 放置すると毛が絡まり、フェルト状に固まってしまいます(これを「フェルティング」と呼びます)。
正しいやり方
- スリッカーブラシで全体をほぐす
- 毛の根元→中間→毛先の順番でブラシをあてる(逆から行わない)
- コームで最終確認(引っかかりがなければOK)
- 定期的(4〜8週ごと)にトリマーによるカットも組み合わせる
フェルティングに注意
フェルティングは見た目だけの問題ではなく、皮膚を締め付けることで皮膚炎を引き起こすリスクがあります。 「少しくらい大丈夫」と思わず、日々のブラッシングで予防することが最善策です。
⑤ スムースコート犬(ボクサー・ドーベルマン・ワイマラナー)
最もケアが簡単な被毛タイプです。 短くなめらかな毛は絡まりにくく、グルーミング初心者にも扱いやすいです。
正しいやり方
- ラバーグローブやラバーブラシで全体を撫でる
- マッサージ感覚で行うことで、愛犬もリラックスしやすい
- 週1〜2回を目安に、体全体をチェックしながら行う
犬が嫌がるときの対処法と慣れさせるステップ
なぜ犬はブラッシングを嫌がるのか?
犬がブラッシングを嫌がる理由は、主に以下の3つです。
- 過去に痛い思いをした(毛玉を無理に引っ張られたなど)
- 体に触られること自体に慣れていない
- ブラシの感触が怖い・不快
嫌がる行動を「わがまま」と捉えず、「そう感じる理由がある」と考えることが動物福祉の基本的な姿勢です。
慣れさせるための5ステップ
ステップ1:ブラシを「見せるだけ」から始める ブラシを犬の近くに置き、においを嗅がせる。 この段階でご褒美を与え、「ブラシ=良いこと」という印象づけをする。
ステップ2:ブラシで体を「軽くタッチ」する ブラッシングはしなくていい。 ブラシで体に触れるだけで、ご褒美を与える。
ステップ3:3〜5回だけブラシをあてる 「少しやって終わり」を繰り返す。 成功体験を積み重ねることが重要。
ステップ4:徐々に回数・時間を増やす 1日1〜2分から始め、少しずつ延長していく。
ステップ5:ブラッシング後に必ず褒める 「終わった=楽しいことの後」という関連付けで、自然と好きになってくれます。
ポイント:決して力づくで行わないこと。 1度でも怖い経験をすると、その記憶は長く残ります。 焦らず、愛犬のペースに合わせることが最短ルートです。
ブラッシングに必要な道具と選び方
主なブラッシング道具の種類
| 道具名 | 特徴 | 向いている犬種 |
|---|---|---|
| スリッカーブラシ | 細いワイヤーが密集。死毛や毛玉除去に最適 | ほぼ全犬種 |
| コーム(くし) | 仕上げや毛玉チェックに使用 | ロング・カーリーコート |
| アンダーコートレーキ | 内側の死毛をかき出す専用ブラシ | ダブルコート犬 |
| ラバーブラシ | シリコン素材でマッサージ効果あり | ショート・スムースコート |
| 獣毛ブラシ | 天然毛でツヤ出し・整毛 | ショートコート・仕上げ用 |
| ピンブラシ | 先端が丸くなったピンが毛をほぐす | ロング・ウェービーコート |
道具選びの3つのポイント
① 犬種・被毛タイプに合ったものを選ぶ 「何でも使える万能ブラシ」は存在しません。 愛犬の被毛タイプを把握した上で選ぶことが、効果と安全性の両方につながります。
② 品質にこだわる 安価な粗悪品は、先端が鋭利だったり、ピンが脱落したりするリスクがあります。 最初から信頼性の高いブランドの道具を揃えることを推奨します。
③ 犬のサイズに合わせる 小型犬に大きなブラシを使うと、力の調整が難しくなります。 手の大きさに合ったサイズを選びましょう。
ブラッシングで気をつけたい皮膚トラブルのサイン
ブラッシング中に発見できる異常
定期的なブラッシングのもうひとつの大きな意義は、皮膚の健康状態を毎回チェックできることです。
以下のサインが見られたら、速やかに獣医師に相談してください。
要注意のサイン一覧
- 皮膚が赤くなっている・炎症している
- フケが大量に出ている
- 脱毛(円形・斑点状)が見られる
- 皮膚にしこりやイボがある
- ノミの糞(黒い砂粒状のもの)が付着している
- 強いかゆみで引っかいている
- 独特の臭いがする(皮膚の感染症の可能性)
日本における皮膚トラブルの現状
日本小動物獣医師会のデータによると、犬の来院理由の上位には「皮膚疾患」が常にランクインしています。 アトピー性皮膚炎・食物アレルギー・マラセチア性皮膚炎などは、早期発見・早期治療が回復を大きく左右します。
日々のブラッシングは、単なるケアを超えた「健康チェックの機会」でもあるのです。
ブラッシング後のケアも忘れずに
ブラッシング後には、以下のケアも合わせて行うと効果的です。
- 耳の確認:臭いや耳垢の増加は耳の疾患サイン
- 爪の確認:伸びすぎは関節への負担につながる
- 目まわりの確認:涙やけや目やにのチェック
- 肛門腺のチェック:お尻を床にこすりつける行動があれば要注意
これらは「ブラッシングのついで」に習慣化しやすいため、セットで行うことを推奨します。 (※爪切り・耳掃除・肛門腺絞りについては、別記事で詳しく解説しています)
まとめ
この記事では、犬のブラッシングの頻度と犬種別の正しいやり方について解説しました。
改めて重要なポイントを整理します。
この記事のポイントまとめ
- ブラッシングは皮膚・被毛の健康維持だけでなく、愛犬との信頼関係づくりにもつながる
- 適切な頻度は被毛タイプによって異なる(毎日〜週1〜2回)
- 犬種別のブラシ選びと正しい手順が、効果と安全性の両方を高める
- 嫌がる犬には段階的な慣らしが必要。力づくは逆効果
- ブラッシングは皮膚トラブルの早期発見の場でもある
- 環境省の指針でも、定期的なグルーミングが推奨されている
犬のブラッシングは、毎日のルーティンの中に組み込むことで、愛犬の健康と幸福を守る最もシンプルで確実なケアになります。
「今日から少しだけ、ていねいにブラシをあててみよう」 その一歩が、愛犬との関係をより深くしてくれるはずです。
📌 今日の行動:愛犬の被毛タイプを確認して、この記事に合ったブラシを1本選んでみてください。それだけで、明日からのブラッシングが変わります。
【参考資料・出典】
- 環境省「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」
- 日本ペットフード協会「全国犬猫飼育実態調査(2023年)」
- 日本小動物獣医師会 診療統計データ
- Fine, A.H. (2019). Handbook on Animal-Assisted Therapy. Academic Press.
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