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猫のエコー検査でわかる病気|お腹・心臓・膀胱のチェックポイントを獣医師監修で解説

猫のエコー検査でわかる病気

 

「うちの猫、最近元気がない気がする」「定期検診でエコー検査を勧められたけど、何がわかるの?」

そんな疑問を抱えているあなたのために、この記事では猫のエコー検査(超音波検査)でわかる病気を、お腹・心臓・膀胱のカテゴリー別に徹底解説します。

 

エコー検査は猫にとって痛みを伴わない安全な検査です。しかし「何をどこまで調べられるのか」が不透明なまま受診しているオーナーさんも多いのが実情です。

 

この記事を読むことで、検査の目的・判断基準・病気との関係性まで、ひとつの記事で完結して理解できます。愛猫の健康を守るための知識を、ぜひ最後まで読んで持ち帰ってください。


猫のエコー検査(超音波検査)とは何か

 

エコー検査の基本的な仕組み

エコー検査とは、超音波を体内に送り込み、臓器や組織から跳ね返ってくる音波を画像化する検査です。正式には「超音波検査」と呼ばれ、放射線を使わないため猫への身体的負担がほとんどありません。

X線検査(レントゲン)が骨格や臓器の「形・大きさ・位置」を平面的に把握するのに対し、エコー検査は臓器の内部構造・厚み・血流・動きをリアルタイムで確認できます。

 

たとえば肝臓であれば、レントゲンでは「大きさが正常かどうか」しかわかりません。しかしエコー検査を使えば、肝細胞の変性・腫瘤の有無・胆嚢の状態まで把握できます。

 

猫にエコー検査が必要になる主な理由

猫のエコー検査は、以下のような場面で推奨されます。

  • 嘔吐・下痢・食欲不振が続いている
  • お腹が張っている・触ると嫌がる
  • 体重が急激に落ちている
  • 血尿・頻尿・排尿困難の症状がある
  • 咳・息切れ・呼吸が荒い
  • 7歳以上のシニア猫の定期健診

環境省の調査によると、日本で飼育されている猫の平均寿命は2023年時点で約15.79歳(一般社団法人ペットフード協会「全国犬猫飼育実態調査」参照)に達しています。寿命が延びるほど、慢性疾患のリスクも上昇します。シニア期に入った猫に対して定期的なエコー検査を取り入れることは、早期発見・早期治療の観点から非常に重要です。

 

検査前の準備と当日の流れ

腹部のエコー検査では、絶食4〜6時間が必要になることがあります。胃の中に食物が残っていると、臓器の描出が妨げられるためです。

 

当日の流れは以下のとおりです。

  1. 診察室で問診・触診
  2. 検査部位の毛刈り(毛の多い猫の場合)
  3. ジェルを塗布してプローブを当てる
  4. リアルタイムで画像確認・記録
  5. 結果の説明とプリントアウト

検査時間は部位によって異なりますが、腹部全体で15〜30分が目安です。麻酔が必要なケースはまれですが、極度に興奮しやすい猫や腫瘤の詳細な確認が必要な場合は、鎮静剤を使用することもあります。


お腹(腹部)のエコー検査でわかる病気

 

肝臓・胆嚢の異常を発見する

猫に多い肝疾患として「肝リピドーシス(脂肪肝)」があります。

肝リピドーシスは、数日間の食欲不振が続いた後に急速に進行する肝臓疾患です。エコー検査では、肝臓全体の輝度(エコー輝度)が上昇し、白く明るく見えます。この所見が見られた場合、血液検査と組み合わせて確定診断に向かいます。

 

胆嚢に関しては、以下の状態がエコーで確認できます。

  • 胆泥(たんでい):胆汁の粘度が上がり沈殿物が生じた状態
  • 胆嚢炎:胆嚢壁の肥厚・不整
  • 胆石:高輝度な影(後方音響陰影)として描出される
  • 胆嚢粘液嚢腫:内部が「キウイの断面」のような特徴的な外観を示す

 

胆嚢粘液嚢腫は破裂リスクがあるため、早期発見が極めて重要です。見た目の症状が出る前にエコーで見つかるケースも少なくありません。

 

腸・膵臓の病変チェック

猫の消化器系でとくに注意すべき病気のひとつが「小細胞性リンパ腫」です。

小細胞性リンパ腫は高齢猫に多く発生する消化管の腫瘍で、エコー検査では小腸壁の「筋層の肥厚」として確認されます。早期であれば内科的な治療(ステロイドやクロラムブシル)で比較的長期にわたって管理できることが知られており、早期発見の意義は非常に大きいです。

 

膵臓については以下の所見が確認可能です。

  • 膵炎:膵臓の腫大・周囲脂肪組織の高輝度変化
  • 膵腫瘍:膵臓内の低エコー領域
  • 膵外分泌不全(EPI):膵臓の萎縮・輝度低下

猫の慢性膵炎は症状が曖昧なため見逃されやすく「サイレント・パンクレアタイティス」とも呼ばれます。エコーによる定期的なモニタリングが推奨される疾患のひとつです。

 

脾臓・リンパ節の変化を見る

脾臓は免疫機能に深く関わる臓器で、エコー検査では以下が確認できます。

  • 脾臓の腫大(スプレノメガリー)
  • 脾臓内の結節・腫瘤
  • 脾臓の梗塞(血流途絶による壊死域)

とくに「脾臓の腫大+リンパ節の腫大」は、リンパ腫や他の腫瘍性疾患のサインとなり得ます。腹腔内リンパ節(腸間膜リンパ節など)のサイズ・形状・内部エコーパターンも、病変の広がりを評価するうえで欠かせない情報です。

 

腹水・腫瘤の有無を確認する

腹水(お腹に液体が溜まった状態)はエコー検査で最も明確に確認できる所見のひとつです。

腹水の原因は多岐にわたります。

  • 猫伝染性腹膜炎(FIP):コロナウイルスが変異して起こる致死的疾患(現在は治療薬が登場し予後が改善)
  • 心不全:右心不全による体液貯留
  • 低アルブミン血症:肝臓・腸・腎臓疾患による二次的な腹水
  • 腹腔内出血:外傷・腫瘍破裂

エコーガイド下で腹水を採取し、細胞診や生化学検査を行うことで原因の絞り込みが可能です。


心臓のエコー検査(心エコー)でわかる病気

 

猫の心疾患とエコー検査の重要性

猫に最も多い心臓病は「肥大型心筋症(HCM)」です。

HCMは心筋(心臓の筋肉)が異常に厚くなる病気で、猫全体の約15〜20%が罹患しているとも言われています(各種獣医学文献より)。問題は、多くの猫が症状を示さないまま病気が進行することです。

「先週まで元気だったのに、急に呼吸が苦しくなった」というケースの背景には、長期間気づかれていなかったHCMが存在することが珍しくありません。

 

心エコー(心臓のエコー検査)では以下の情報を得ることができます。

  • 心筋の厚さ(左心室後壁・心室中隔の計測)
  • 心臓の大きさ(各心腔のサイズ)
  • 心臓の動き(収縮・拡張機能)
  • 血流の方向・速度(カラードプラ法)
  • 弁の状態(僧帽弁・三尖弁など)

 

肥大型心筋症(HCM)の発見

HCMのエコー所見には以下が含まれます。

  • 左心室壁厚の増大:6mm以上が異常の目安とされる
  • 左心房の拡大:血栓リスクの指標
  • 動的左室流出路閉塞(DLVOTO):収縮期に血流が閉塞されるパターン
  • 心嚢液の貯留:心臓を包む液体の増加

とくに左心房の拡大は重要な指標です。左心房が大きくなると、そこで血栓(血の塊)が形成され、動脈血栓塞栓症(ATE)を引き起こすリスクが高まります。ATEは後肢麻痺として突然発症し、生命の危機に直結します。

品種的リスクも把握しておくことが重要です。

  • メインクーン:遺伝性HCMの報告が多い
  • ラグドール:MYBPC3遺伝子変異との関連
  • ブリティッシュショートヘア:心疾患リスクが比較的高い

上記の品種を飼っている場合、症状がなくても年に1回の心エコー検査が推奨されます。

 

その他の心疾患

HCM以外にも、猫の心エコーでは以下が確認できます。

  • 拘束型心筋症(RCM):心筋の線維化・硬化
  • 拡張型心筋症(DCM):心筋が薄く収縮力が低下する(タウリン欠乏との関連も)
  • 先天性心疾患:心室中隔欠損・動脈管開存症など
  • 心膜疾患:心嚢液の貯留・心膜炎

心エコー検査は、聴診で心雑音が聞こえた場合の「次のステップ」として実施されることが多いです。しかしHCMは必ずしも心雑音を伴わないため、シニア期以降は無症状であっても定期的な心エコーが望ましいと多くの獣医内科専門医が推奨しています。


膀胱・腎臓のエコー検査でわかる病気

 

猫の泌尿器疾患とエコー検査

猫は泌尿器疾患が非常に多い動物です。環境省の「動物愛護管理行政事務提要」やペット保険各社のデータによれば、猫の通院理由として「泌尿器系疾患」は常に上位に入っています。

エコー検査は、尿検査・血液検査と組み合わせることで泌尿器疾患の診断精度を大きく高めます。

 

膀胱の病変チェック

膀胱のエコー検査でわかる代表的な病変を見ていきましょう。

 

膀胱結石(尿石症)

膀胱内に結石が存在すると、エコー上では高輝度な点状〜塊状の像として描出され、後方に「音響陰影」と呼ばれる影が伸びます。ストルバイト結石・シュウ酸カルシウム結石など種類を問わず、エコーで検出可能です。

ただし結石の成分(種類)を特定するにはX線検査や分析が別途必要です。

 

膀胱炎・特発性膀胱炎(FIC)

猫の下部尿路疾患(FLUTD)のうち、明確な原因がない「猫特発性膀胱炎(FIC)」は最も多いカテゴリーです。エコーでは膀胱壁の肥厚・不整が確認されます。

ストレスや環境変化が引き金になることが多く、動物福祉の観点からも環境エンリッチメントが治療・予防に重要とされています。

 

膀胱腫瘍

移行上皮癌などの膀胱腫瘍は、エコーで膀胱内腔に突出する不整形の腫瘤として見えます。早期発見によって治療の選択肢が広がるため、血尿や排尿困難が繰り返す場合はエコー検査の実施が必須です。

 

膀胱内血塊・砂状結石

血尿が続く猫では、膀胱内に血塊が形成されることがあります。砂状の細かい結晶(スラッジ)もエコーで描出が可能です。

 

腎臓の形態・機能評価

腎臓のエコー検査では以下を評価します。

  • 腎臓のサイズ(左右の大きさ・対称性)
  • 腎臓の輝度(皮質の輝度上昇は慢性腎臓病のサイン)
  • 腎盂拡張(水腎症・尿管閉塞のサイン)
  • 腎臓内の石灰化・腫瘤

 

慢性腎臓病(CKD)との関連

猫のCKDは非常に一般的な病気で、7歳以上の猫の約30〜40%が何らかの腎機能低下を抱えているとも言われています(各種獣医学文献)。

エコー検査単独でCKDを確定診断することはできませんが、腎臓の萎縮・輝度変化・形態異常は慢性腎臓病の進行を示唆する重要な所見です。血液検査・尿検査と組み合わせることで、より精度の高い病態把握が可能になります。

 

尿管閉塞(水腎症)

腎盂(腎臓の中心部)が拡張して液体が溜まった状態を水腎症といいます。原因として多いのが尿管結石による尿管閉塞で、数時間で腎機能が不可逆的に障害されるため、早期発見・緊急対応が必要です。

エコー検査は尿管閉塞の診断において非常に有効であり、状況によってはエコーガイド下での尿路ドレナージ処置につながります。


エコー検査と他の検査の組み合わせ方

 

エコー検査だけでわからないこと

エコー検査は万能ではありません。以下の点は他の検査で補う必要があります。

  • 病変の組織診断:細胞診・生検(エコーガイド下で実施可能なケースあり)
  • 結石の組成:X線や結石分析
  • 血液・代謝異常:血液検査
  • 感染症・ウイルス検査:PCR・血清検査
  • 内分泌疾患:ホルモン測定検査

エコー検査の結果をもとに「次に何を調べるか」を決めていくのが実際の診断プロセスです。獣医師との対話を通じて、必要な追加検査を理解しながら進めることが、適切な医療を受けるうえで大切です。

 

CT・MRIとの違い

近年は動物医療でもCTやMRIが普及しつつあります。それぞれの特徴を比較してみましょう。

 

検査 主な用途 麻酔の要否 コスト
エコー 軟部組織・腹部・心臓 基本不要 低〜中
X線 骨格・胸部概観 不要
CT 腫瘍の広がり・骨病変 必要
MRI 脳・脊髄・軟部組織詳細 必要 非常に高

 

エコー検査の最大の強みは「麻酔なしでリアルタイムに軟部組織を評価できる」点にあります。繰り返し実施しやすいため、慢性疾患のモニタリングに特に適しています。


検査費用と受診のタイミング

 

猫のエコー検査にかかる費用の目安

費用は動物病院・地域・検査内容によって異なりますが、一般的な目安は以下のとおりです。

  • 腹部エコー(基本):3,000〜8,000円
  • 心エコー(カラードプラ含む):5,000〜15,000円
  • 腹部+心臓(セット):8,000〜20,000円

 

ペット保険に加入している場合、エコー検査が補償対象になるプランも多いです(保険の種類・プランによって異なります)。

日本では動物の医療費に対して公的な補助制度は現在ありませんが、ペット保険の加入率は年々上昇しており、一般社団法人ペットフード協会のデータによると、猫を飼育する家庭の保険加入率は2020年代以降に急速に増加しています。

 

こんな症状があれば早めにエコー検査を

以下の症状が見られる場合は、早期にエコー検査を含む精密検査を受けることをおすすめします。

  • 2日以上食欲がない
  • 繰り返す嘔吐・下痢
  • お腹が触ると張っている・嫌がる
  • 血尿・尿が出ない・何度もトイレに行く
  • 急激な体重減少
  • 呼吸が浅い・速い・口呼吸をしている
  • ぐったりしている・後ろ足に力が入らない

猫は症状を隠す動物です。「少しだけ元気がない」という飼い主さんの直感が、重篤な疾患の早期発見につながるケースが実際に存在します。


動物福祉の観点からみる定期検査の意義

 

「痛みのない医療」を猫に届けるために

動物福祉(アニマルウェルフェア)とは、動物が身体的・精神的に健康で、自然な行動を発現できる状態を守るという考え方です。

世界動物保健機関(WOAH)が提唱する「5つの自由」のうち、「痛みや疾病からの自由」を守るためには、早期診断が不可欠です。 

エコー検査はその中心的なツールのひとつです。侵襲性が低く、繰り返し実施できるため、猫の負担を最小限に抑えながら「今の体の状態」を把握できます。

 

日本でも近年、獣医師会や行政機関による動物福祉の啓発が進んでいます。環境省が策定した「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」においても、適切な医療の提供が飼い主の責任として明記されています。

愛猫の健康を守ることは、飼い主さんの義務であり、同時に幸せな関係を長く続けるための投資でもあります。

 

「かかりつけ医」を持つことの重要性

猫のエコー検査を最大限に活かすためには、定期的に診てもらえるかかりつけ獣医師を持つことが大前提です。

同じ医師が継続的に検査をすることで、「前回より腎臓が小さくなっている」「左心房が拡大傾向にある」といった変化を比較・追跡できます。一度の検査では判断できなかったことが、継続的なモニタリングによって見えてくるのです。


まとめ

 

猫のエコー検査(超音波検査)でわかる病気は多岐にわたります。

 

お腹(腹部) では、肝臓・胆嚢・膵臓・腸・脾臓・腹水・腫瘤の確認が可能です。

 

心臓(心エコー) では、肥大型心筋症をはじめとした心疾患の早期発見・血栓リスクの評価ができます。

 

膀胱・腎臓 では、結石・膀胱炎・腫瘍・水腎症・慢性腎臓病の所見を把握できます。

 

エコー検査は痛みを伴わず、猫への負担が少ない検査です。しかし「症状が出てから受ける検査」というイメージをまず変えてほしいのです。

多くの重篤な疾患は、症状が出る前からエコーで異常として描出されています。シニア期の猫を飼っている方は年1〜2回の定期エコー検査を、何らかの症状を感じている方は早めに動物病院でご相談ください。

 

今日の小さな一歩が、愛猫の明日を守ります。まずはかかりつけの獣医師にエコー検査について相談することから始めてみてください。


※本記事は一般的な情報提供を目的としています。実際の診断・治療については、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。

 

 

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この記事を書いた人

阪本 一郎

1985年兵庫県宝塚市生まれ。
新卒で広告代理店に入社し、文章で魅せるということの大事さを学ぶ。
その後、学習塾を運営しながらアフィリエイトなどインターネットビジネスで生計を立て、SNSの発信力を磨く。
ある日公園で捨てられていた猫を拾ってから、自分の能力を動物のために使いたいと思うようになり、猫カフェを開業。
ヴィーガン食品、平飼い卵を使った商品を開発。
今よりもっと動物が自由に生きられる世の中にしたいと思い、行動しています。

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